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乂阿戦記~勇者✖︎魔法少女✖︎スパロボの熱血伝奇バトル~  変身ヒーローの勇者様と歌って戦う魔法少女は○○○○○○○○○○○○   作者: Goldj


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乂阿戦記4  第六章 強欲の魔王アモンの娘 乂聖羅-16 飢餓の騎士カルノフハート

戦艦リヴァイアサンでは、その後も戦いは続いた。

だが、結局のところ一行は誰一人として欠けることなく目的地へと辿り着いた。


──だが、そこで問題が発生する。


悪魔宝玉が安置されているという、六つの部屋。

その扉の向こう側から滲み出る気配は、ただの魔族とは桁が違った。

気配そのものが“質量”を帯び、空間に圧し掛かっていた。


《嫉妬の魔王スタンピート》

《蜘蛛の邪神アトラックナチャ》

《旧支配者イタクァ・アルカーム》

《支配の騎士・塵芥鏖ちりあくた・みなごろし

《戦争の騎士・ダークフレイム》

《飢餓の騎士・カルノフハート》


この六体は、いずれも魔王級の存在。

彼らがこの空間で“待ち受けている”という事実だけで、全身の筋肉が本能的に警告を鳴らす。


だが、それでも引くわけにはいかなかった。

なぜなら、囚われたルシルは彼らにとって──仲間であり、家族だったからだ。


ここで敗北は許されない。

雷音は静かに、だが確かな意志で思う。


……果たして勝てるのだろうか。

──いや、違う。


勝たなくてはならないのだ。


地球を、仲間を、そして愛する人たちを守るために──。


こうして、最終決戦は始まった。

皆既日食まで、もう時間がない。

各個撃破の猶予はない。

六つの部隊に分かれ、それぞれの部屋の突破に挑む。


 


ギィ……という音を立てて、ひとつの扉が開かれた。


その前に立っていたのは、フェニックスヘブン──鳳天。


次の瞬間、視界を満たしたのは異様な“存在”だった。


巨躯。圧倒的な膂力を秘めた肉塊。

それはただ立っているだけで、空気を歪ませる。

“生きている”というより、“蠢いている”というべき代物だった。


──飢餓の騎士・カルノフハート。


その男の巨体は、鉄と肉の混成獣。

巨獣にも似た輪郭、全身に張り巡らされた筋肉と脂肪。

呼吸のたび、空気が震える。


「フン。連中、部屋の番犬に豚でも飼っているつもりか」


鳳天が、静かに吐き捨てるように言った。


「ブヒヒヒ! 君がフェニックスヘブンかい? 人を豚呼ばわりとは、ずいぶんと度胸があるねぇ?」


巨体を揺らしながら、カルノフハートが笑った。


挿絵(By みてみん)


その光景に、鳳天の背後にいたドアダの戦闘員──イポスが顔を引きつらせた。

彼の目線は、垂直に上を向いていた。

カルノフハートの全高は、それだけで威圧の塊だった。


「で、デッケ〜……!」


その情けない声に、すぐさま叱声が飛ぶ。


「馬鹿者! 臆するな! 奴は図体がデカいだけだ!」


上官であり、同級生でもあるネロの言葉に、イポスは拳を握り直す。


(そうだ……奴がいくら巨大でも、同じ“人型”だ……恐れることはない……)


そう己に言い聞かせ、ネロとイポスはカルノフハートに向けてマシンガンを発射する。


──しかし。


「いきなり発砲とは、礼儀知らずの子どもたちですねぇ」


すべての弾丸は命中した。

だが、まるで意味を成していない。

むしろ──怒らせてしまったようだ。


カルノフハートの鼻息が荒くなる。

巨大な肉塊が、静かに歩み寄ってくる。


慌てて二人は退避行動に入るが、次の瞬間には掴まれていた。

そのまま握り潰される──


「スーベスベすべ、滑り草!」


イポスの能力が発動した。

摩擦を奪う異能が、ふたりの身体をツルリと滑らせる。

重力を利用し、その場から脱出することに成功する。


「ふん、小癪ですね。皆さん、やっておしまいなさい」


カルノフハートの声とともに、奥から現れたのは武装したオークの軍勢。


だが、ネロは怯まなかった。

彼女の目が鋭くなる。戦闘の覚悟が、そこに宿っていた。


「舐めるなよ、オーク共!」


ネロ・バーストエラーが叫ぶ。

同時に、彼女のドレスが光を帯びて変化を始めた。


ネロの声と共に、魔力が空間を満たす。


「武装展開──殲滅兵器起動……」


銀色の粒子が彼女の背から弾け飛び、次の瞬間、巨大な魔法陣が背後に浮かぶ。

そこから現れたのは無数の羽根──だがそれは羽根ではない。

銃火器を搭載した機械の翼だった。


「対邪神専用戦闘兵器・飛行外骨格バーストエラー、全基起動。

自動追尾型ホーミングミサイル──発射準備、完了」


羽根は百を超えていた。

それぞれが自律制御された兵器であり、ネロの意志に同期していた。


「目標補足。照準固定。オールロックオン……

──カウントダウン、10、9、8、7……

……3、2、1、ファイア」


百発を超える弾丸が、空を覆う。

怒涛の銃火の雨が、オーク兵をなぎ払った。


「ブヒーーーッ!!」


悲鳴と咆哮が入り混じる。

だが──カルノフハートは、一歩も動かない。


銃弾が肉を撃つ音は聞こえない。

むしろ、音が“吸われている”ようだった。


巨体の表皮は、鉄とゴムの混合装甲。

弾丸は跳ね返されるか、めり込んでも弾性で吸収されてしまう。


「ブヒヒ……くすぐったいですねぇ♡」


その声は、笑っているようで──どこか“壊れて”いた。


(……このままでは、突破できない)


ネロが焦りを見せた、そのときだった。


カツ、と一歩踏み出した男がいた。


オレンジのコンバットコート。

その手を鳴らしながら、静かに進み出る。


「ネロ大尉。雑魚の始末は任せた。

──この豚は、俺が落とす」


フェニックスヘブン──鳳天である。


「また豚呼ばわり……これは、お仕置きが必要ですねぇ?」


カルノフハートが咆哮し、踏み込む。


──だが。


鳳天の姿が、消えた。


瞬間移動ではない。

目で追えぬ速度での移動だった。


「速い……!」


イポスの声が漏れる。


それも当然だった。

彼の目の前で、“あり得ない”ことが起こっていた。


百貫の巨体を持つカルノフハートが、寸分の狂いもなくステップを踏んだのだ。

重力を殺し、速度を得た“動けるデブ”が、そこにいた。


「デブはいいぞぉお! この贅肉が、鎧なんだよ!

──さあ、勝負に負けたら、お前らもデブになるがいい!!」


「……何を言ってるんだ、こいつは……」


ネロが呆れたように言ったその瞬間。

鳳天が背中から突っ込む。


体重を乗せた、全身全霊の体当たり──

鉄山靠。


「ぶぎいぃぃぃっ!!」


巨体が吹き飛び、床を転がった。


鳳天はカルノフハートの身体にまたがりマウントポジションを取り一気にたたみかけようとする。

だが──倒れたまま、カルノフハートは笑う。


「効くわけねえだろ。ウェイト差、舐めんなよ。デブを……舐めんなっ!!」


(寝技の返しが上手い!)

カルノフハートの寝転んだ体制からの動きはテクニカルだった。

技術と体重コントロールで組み伏せると思ったが目論見が甘かった。


カルノフハートは返す体勢で逆に鳳天を組み伏せようとする。


(こいつ…やり込んでる奴だ……)

寝技への練度が明らかに素人じゃない。


だから鳳天は寝技には応じない。


(──ウェイト差から言ってもグラウンドじゃ負ける。ならば……)


すぐさま跳ね起き、スタンスを変える。

立ち技。

スピードと手数で削る、ストライカースタイルだ。



この対戦相手は死んでも寝技に付き合ってはならない。

徹底的に立ち技のスタイルで打ち倒す。


「まだまだこれからだ……」


鳳天がジャブを放つ。

狙いはフェイント。

次に叩き込んだのは、肝臓へのボディブローだった。


──効かない。


脂肪と筋肉の壁が、拳の力を殺す。

衝撃が弾かれる。拳の感触が、空っぽだ。


「ふごぉぉっ♪ ぶひぃぃいん♡」


鼻息が荒くなる。

それは、悦楽にすら似た嗜虐の気配だった。


(効かない──こいつの身体は、打撃を“殺す”構造をしている……)


そのとき。


巨体が跳び、空間が潰れる。

カルノフハートが体を丸め──砲弾となって突進してきた。


「喰らえ! ローリング・キャノンボール!!」


ドゴォオオオンッッ!!


凄まじい衝撃が発生し、鳳天が吹き飛ぶ。

受け身を取り、十字受けで衝撃を殺したが、身体は壁にまで弾き返されていた。


「おやおや〜? どうしましたぁ?

──さっきまでの威勢はどこへいったんですかねぇ?」


にやにやと嗤うカルノフハート。

だが鳳天は、口元を拭いながら呟いた。


「……やれやれだ。確かに打撃は効かない。

だが、斬撃は──別らしいな」


その指が額を指す。

カルノフハートが触れると、そこには切創があった。


額が割れていた。血が滴っていた。


「武闘家ってのは自分のスペシャルの短所を補うように、対極の技も磨いてるもんだ。やれやれだぜ、技の引き出しをもう開ける羽目になるとはな……」



「ち……血だ……いてぇ!いてぇよぉぉおおっ!!」


突如、悲鳴が上がる。

そして、再び全速力で転がり始めた。


「てめぇええ!喰らえ!ローリング・キャノンボール!!」


……が、それを待ち受けていた鳳天は、すでに構えていた。


その右手が光を帯びる。


「俺の目に、死角はない。

──同じ攻撃は、二度も食らわん」



正面の七倍の強度を持つ背面

ローリング・キャノンボールはその強固な背面の特性を活かしダメージを与える攻防一体の体当たり技

だか猛烈な回転途中でも一瞬だけ正面につけ入る隙ができる。

並みの拳士には不可能でも、その漢フェニックスヘブンはその一瞬を見極める事が出来る。


その手が閃いた。


斬撃──否、“気”の刃。

大武神流奥義《光刃斬》。



「おおおおおおおおおお、オラァ!!」


鳳天が放ったそれは、おびただしい瓦割りの修練の果て会得した“本物の刀以上の手刀”だった。

そのまま袈裟斬りにカルノフハートの巨体を両断する。


 「ぶひぃぃぃぃぃ……! ば、ばかな!? 俺の……特異脂肪の鎧がぁぁぁああああっ!!!!」


断末魔と共に、巨体が崩れ落ちる。


 


──静寂が戻る。


その場にいたオーク兵たちが、震えながら後ずさる。


「お前らのボス、まだ生きてるぜ?

──大人しく悪魔宝珠を壊すなら、止めは刺さねえ。

さあ、どうする?」


鳳天が、静かに問いかける。


オークたちは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。


「……やれやれ。薄情な部下どもだ」


鳳天が息をつき、ネロに目を向けた。


「ネロ大尉。あそこで転がってるカルノフハートを拘束し、応急手当てを頼む。

──俺は、悪魔宝玉を破壊する」


こうして、六つあるうちの一つの部屋──飢餓の部屋の戦いは、終わった。


https://www.facebook.com/reel/495170143247758/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0


↑イメージリール動画

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