乂阿戦記4 第四章 漆黒の魔王クロウ・アシュタロス-14 マグネットパワー
「悪いな。その挟まってるアーレスタロスはもぬけの殻だ。鉄を操る能力で作った変わり身の術だよ。お前さんが磁力使いだって気付いたんでな。一芝居打たせてもらった。さっきの攻撃でやられたのも全部演技だぜ」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべながらナイトアーサーに語りかけた。
(馬鹿な!?いつの間に後ろを取られたっすか!? ボクがまんまとハメられるなんて!この人ホントに地球人すか?!まるで本物のニンジャじゃないっすか!!!)
そんな動揺を隠しきれないままナイトアーサーは狗鬼漢児に言い返す。
「くっそーーこうなったら奥の手を使わせてもらうしか無さそうですね………」
そう言うと同時に目にも止まらぬスピードで走り出す!
否!
磁石の力でリニアモーターカーのように高速移動する。
そして一瞬にしてその場から姿を消した!!
そのあまりの速さに観客席からどよめきが起こった……。
……しかし次の瞬間には狗鬼は既に背後に回り込んでいた!!
いや違う!!
彼が消えたのではない!!
速いのではなく動きが速すぎるため残像が発生していただけなのだ!!
そしてその素早い動きで次々と攻撃を繰り出す!!
だがナイトアーサーはその全てを見切り避けることに成功したようだ……!
それどころか逆にカウンターを仕掛けようとする動きさえ見せる始末である!!凄まじい攻防が繰り広げられている!!
両者の武器が激しくぶつかり合い火花が飛び散り両者一歩も譲らず膠着状態が続いたその時だった!!!
突然二人の間に巨大な亀裂が入ったかと思うと二人の下の地面が真っ二つに分かれたのである!
一体何が起きたというのか?
割れた地面の光景を見て愕然となる観客達。
これが武仙の高みにいる達人同士の闘いで起きる現象
同格の武仙による『破壊の中和』を必要とする達人級同士の戦いで起きる現象なのだ!
つまり今起きていることは紛れもない事実なのである!!
その事実を認識した時、この場にいる全ての者達の背筋が凍ったことだろう……。
寸止めをしあっているにも関わらず、それほどまでにお互いの一撃の威力が凄まじい!!
まさに一瞬の出来事であった!!
狗鬼漢児の放った渾身の右ストレートによって放たれた衝撃波は地面を割ったのだ!!
その威力たるや想像を絶するものであろう!!
一撃で勝負を決めてしまうほど強力だったのだ!!
もはや疑いようもない圧倒的な破壊力だった!!
だがナイトアーサー
なんと彼は手にしていた拳銃を持ったままで、その手を振りかぶり衝撃波を消し去った!!
狗鬼漢児はその隙にアーレスタロスのマスクだけを拾って装着する。
あくまでHERO対HEROの格好でナイトアーサーと決着をつけたいのだ!
「ようナイトアーサー!お前のいう奥の手って一体何だよ?」
叫ぶアーレスタロスにナイトアーサーは答える。
「決まってる、HEROが最後の最後に頼るもの、己が鍛え続け磨き上げた自分の肉体! そして勇気だ!……お前はまだ己の限界を超えちゃいないようだな。ならば見せてやろうじゃないか!この僕の真の力を!!」
そう言って構えを取る彼に対し狗鬼漢児もまた同じように身構え戦闘態勢に入った!
「おいおいなんだよそれ!まさかお前、磁力操作だなんて大層なもの持っておきながらただの脳筋バカだってのか!?最高じゃねえか!!!!」
「その通りだとも!人間最後の最後に頼るのは鍛えあげた自分の肉体!筋肉は裏切らない……!!いくぞぉぉぉぉおおっ!!!!」
叫びと同時に突進してくるナイトアーサーに対してアーレスタロスも雄叫びを上げながら向かっていくのだった……!
互いにナイフ型の切先がついたハンドガンで赤い塗料を付け合うだけの模擬戦
だがその模擬戦も武仙級同士が仕合えば戦争のごとき有り様となる。
繰り広げられる技の数々は凄まじく、見ている者たちにはまるで映画を見ているかのような錯覚に陥ってしまうほどだった!
そんな激戦の最中、不意に戦いをしながら二人がこんなことを言い出したのである……!
「なあ、俺たち仲良くできそうじゃね?」
と狗鬼漢児は言うのだが、それに対しナイトアーサーがこう答えたのだ。
「いや違うな、ボクはあなたみたいな奴が一番嫌いだよ……!」
「ええ?なんでだよ!?」
「漢児君がマスクだけ被ってHERO対決してるからっす!! ヒーロー同士の闘いって燃えるシチュエーションでフル装備しないで対決するって、ヒーロー舐めてんすか!?」
「えー、だって仕方ねーじゃん。鉄が含まれているスーツ着ると、お前の磁石の力の餌食になっちまうんだからよ〜」
「鉄分混じらないようヒーロースーツを形成すればいいでしょ!!」
「いやー、俺我流だから、そのやり方はよく知らないんだ」
「あー、もー!これだからモグリのユキチューバHEROは!!!とにかく!僕はあなたに勝ちたい!!!」
「はいはい……わかったからそんなに怒るなよ……」
「じゃあそろそろ決着をつけましょうか?……久々ですよ、これほどの強敵は……」
「ふっ、どうせまた会うさ。お前とは──強いHERO同士は引かれ合うってな!」
「どうせなら推せる美少女HEROが良かったっす」
ナイトアーサーは軽く口を叩いた後、腰を落とし姿勢を低くした状態で右手の指をクイッと曲げて挑発してきた。
そしてナイトアーサーは一度乗り捨てたバイクにもう一度またがった。
それを見たアーレスタロスも右手を上に突き上げるようなポーズを取ったまま言う。
「……へへっ、面白いじゃねーか……最後はライダー勝負ってか?…粋な喧嘩を売られちまったなあ。その喧嘩買った!!次で決めてやるよ……」
アーレスタロスもバイクに跨る。
両者は一旦反対方向に進み距離を取る。
そして向かい合い、エンジンをふかし発信!!
両者の距離は徐々に縮まっていく中ついに決着の時が来た。
2台のエンジン音が重なり合い加速していく車体
激突した瞬間凄まじい衝撃波が発生し2人は吹き飛ばされてしまったが両雄バイクごとトンボ返りしてまた距離をとる……
互いに一歩たりとも引くことなく再びエンジンをふかす否や再度距離を詰めていく。
そして今度は同時に攻撃を仕掛けるためタイミングを合わせるように距離を縮めていき遂に互いの間合いに入ることが出来た。
((ここだっ!!!))
その瞬間二人はほぼ同時にソードハンドガンを構え攻撃を開始した。
激しい鍔迫り合いの末お互いを弾き飛ばしながらも体勢を立て直すことに成功した両者は次の一手に移ろうとしたその時だった……!!
(勝った!)
ナイトアーサーは心の中で勝利を確信する。
(先程のつばぜり合いの時アーレスタロスのハンドガンに磁力を纏わせておいた!次の一撃を放つ直前に磁力で彼の銃を奪いとり、驚いてる隙に倒す!!)
しかし次の瞬間、信じられない光景を目にすることになったのだ……なんと!?
「なっ!?」
何と彼は銃を奪う前にナイトアーサー目掛け銃を投げつけた!
(なんの真似だ!?ルールにそうならこのペイントハンドガン以外で攻撃しても試合で勝利できないはず!?)
ナイトホークは宙を飛ぶハンドガンを奪い取るべく磁力を発動する。
だが!
「奥義――受け継がれし魂の一撃……!
必殺!!《漢の鉄拳ドリルパ〜〜ンチ》ッッ!!」
アーレスタロスが必殺技を放つと、突然巨大なパンチが現れドリルのように回転して狙ったモノに命中した!
ナイトアーサーではない。
投げつけたハンドガンだ!
ハンドガンの弾丸に内蔵された塗料が、ドリルパンチで吹き飛ばされナイトアーサーにかかる!
「し、しまったあああああ!!」
慌てて飛び退くも時すでに遅し……全身に赤いインクがかかってしまったのだ……。
「おおおおおおお!!俺の勝ちだあああああ!!」
アーレスタロスが雄叫びを上げ、腕を振り上げる。
観客たちは一瞬呆気に取られたがやがて大歓声を送った!
『勝者ァア!!アーレスタロスウゥーーーーッ!!』
「な、なんだ今のは……銃を……潰してペイントをぶっかけた……!?」
「あ、あり得ねぇ……でも……ルールに沿っている!スッゲェエエエエエエ!!!!」
「ま、負けた……」
ナイトアーサーはガクリと膝をつき敗北を認めた。
こうしてアーレスタロスvsナイトアーサーの激闘はアーレスタロスに軍牌が上がることになった……。
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