乂阿戦記4 第四章 漆黒の魔王クロウ・アシュタロス-10 バイクバトル
土煙を裂き、二台のバイクが飛び出した。
一台は黒地に蒼のラインの巨大二輪、もう一台は水色の大型。
正面衝突――絡み合ったまま転倒し、タイヤが空転する。まるで二輪版ジャイアントスイング。
均衡が崩れ、蒼黒のマシンが吹き飛ぶ。転がりながら体勢を立て直したのは、狗鬼漢児――HERO。
対する水色スーツの男、ロイ――HEROはバイクを止め、ヘルメット越しに言い放つ。
「無免許でやんすか? 私有地でも危ないでやんすよ?」
「説教は路肩で聞くぜ。――来い!」
ガァン! 火花が散り、バイク同士の鍔迫り合い。
押し合いは僅差でアーレスタロス優勢――
徐々に押されていくロイであったが突然ニヤリと笑うと叫んだ。
「――エスカリボルグ・ガンブレイド!」
柄が分離し、水銀色の銃身が露わになる。魔力弾が連射され、さらに刃がドリル状に回転して突進。
アーレスタロスは回避が間に合わず、左肩アーマーに赤い塗料のペナルティを受けた……。
(くそォオオオ……!!次こそは必ず避けてみせるぜェエ工ッ!!)
アーレスタロスは左肩アーマー部分を剥ぎ取り叫んだ。
「アーレスタロス・ガンソード!!モードチェンジだぜえええ!!!」
そう叫びながら彼は右腕を大きく振りかぶると思い切り振り下ろす。
すると手の中にある肩アーマーかピストル銃剣に変形していた。
ナイトアーサーの真似をしたのである。これで今度こそ仕留めてやるとばかりに駆け出して行く彼だったがここで思わぬ事態が起きた!
なんと突如地面が浮かび上がり、ナイトアーサーもアーレスタロスもバイクに乗ったまま、地面ごと投げ飛ばされてしまったのだ!
「「うおおお!?」」
地面を投げ飛ばしたのはホドリコ・アントニコ
投げ飛ばされた先にはルシル・エンジェルがいた。
彼女は剣を構え変身の口上を述べていた。
「To live gives up which person you are, and without having faith, is more regrettable than dying. Than dying while young.Advance bravely. When doing that, everything would work!」
――あなたが何者であるかを放棄し、信念を持たずに生きることは死よりも悲しい。だから勇敢に進みなさい。そうすれば総てはうまくゆくでしょう!
ルシルの呪文に呼応し、ラ・ピュセルが眩い光を放つ。
そして空中に緑光の巨大な魔法陣が浮かぶ。
魔法陣の中で彼女の衣装が変わる。
その姿はいつもと違って騎士装束に身を包み頭頂部には太陽を模した冠を装着していて、手には金色に輝く聖剣を携えている。
聖剣が振るわれ投げ飛ばされてきた土の塊が真っ二つに切り裂かれる。
さらにもう1発飛んできた大岩も難なく切り捨ててみせた。
だがホドリコにとって、今の攻撃はただの揺動に過ぎなかった。
彼女は懐から1つの宝石を取り出す。
赤紫色の宝石だ。
漢児は1度見た事があるものだったのですぐに分かった。
あれはデカ・ギーガスを倒したとき現れた巨人の石だ。
それも赤紫の肉塊の巨人Κρεοφάγος Γίγας (クレオファゴス ギーガス)
の石である。
それが今ここにあるということはつまり……───────。
ドゴォンンッッッ!!! 強烈な衝撃音が鳴り響く。
どうやらルシルが繰り出した技のようだ。
凄まじい威力であったらしく周囲の木々が薙ぎ倒されているのが見えた。
「まさかここまでの威力とは……」思わず呟く漢児。
だがホドリコは無傷だ。
赤紫の巨人の力で生み出したホドリコの分身がマッスルポーズをとった状態でホドリコの肉盾となり、ルシルの風の一撃を防いだからである。
赤紫色の分身達は攻撃を防いだ後、ポーズを取ったまま透明になっていて消えた。
どうやらホドリコが使う宝石の能力は、遠距離攻撃の防御に特化した能力のようだ。
ならば接近戦に持ち込めば良いだけの話だと判断するルシルだったが────────それは甘い考えだったようだ。
何故なら目の前に居たはずのホドリコの姿が消えているからだ。
ホドリコ本体と思ったモノは肉塊の巨人の力で作った偽物だった。
驚いて周囲を見渡すも見つからないためどこに行ったのかと探すルシル
背後に気配を感じ振り向くと同時に剣を振り下ろすのだが間一髪で避けられてしまう。
本物のホドリコは肉壁で偽物を作り揺動を誘っていたのだ。
(危ない危ない! 危うくまたスリーパーホールドをかけられてしまうところでした!)
(遠距離は通らない……なら接近戦で――)
ルシルが踏み出した刹那、目の前のホドリコが霞のように消えた。
本体は背後。気配に反応して振り向きざまの斬撃――紙一重で外れる。
「甘い」
前蹴りが炸裂。距離が再び開く。
「ぐうっ!?」
柔術マジシャン、アントニコ・ホドリコ・ノゲノーラの壁は厚かった。
https://www.facebook.com/reel/1717200965758120/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0
↑イメージリール動画




