乂阿戦記4 第四章 漆黒の魔王クロウ・アシュタロス-9 あんたに人の心はないのんか〜〜!?
一方その頃、こちらはオームとエドナのペアだ。
現在、彼らは廃墟と化したビルの屋上に陣取っていた。
「姉上!このままでは埒があきません……」
「よっしゃ!一丁うちらがかましたるか!」
そう叫びながら投擲槍型のペイントアイテムを振るうエドナに対してオームは冷静に対処しながら答える。
「……ええ。確かにこのまま続けていても拉致があかないのは確かです。この位置から残りの敵を狙撃していきましょう……」
そう言って2人はスコープ魔法の映像を覗き込むと、遠くに見える敵の姿を捉え、投槍を放ったのである……!!
エドナより放たれた光の弾丸の如き槍は、魔王オームにより自動追尾の魔法がかかっている。
クレオラ達を守護する人形兵の一体の胴体を貫いたかと思うと、続けざまに他の三体にも命中していきあっという間に四体を戦闘不能に陥れた。
それを見て狙撃に気づいたクレオラ達は、すぐにその場から離脱しようとするのだが……。
「逃がすわけないやろがぁあっ!!!」
すかさず追いかけるように駆け出すエドナに一瞬遅れてオームが続く形で走り出し、そのまま追撃を仕掛けていくことになった。
2人の接近に気付いたクレオラ達が応戦しようと身構えたところである異変が起こった……。
突如地面が大きく揺れ始めてしまったのだ!
その影響でバランスを崩してしまう2人だったが、なんとか踏みとどまることができたようだった……。
その地震はオームが放ったアースシェイクの呪文である。
足元がおぼつかない彼女らの前に一人の女が現れた。
オームの姉エドナである。
彼女の手には一本の光り輝く槍があった……。
もちろんサバゲー用の槍だ。
クレオラとティンクは銃を手に応戦の構えをとる。
(まずいわ……このままだと本当に負けるかもしれない……!)
そんなことを考えていた矢先だった─────突然の出来事であった―――――………… 空から巨大な玉が降ってきた!!
まるで液体の隕石。気づいた時には遅く、直後に大爆発──塗料が噴き出し周囲を真っ赤に染めた。
そしてその後に残ったものは塗料まみれになったクレオラとティンク・ヴェル、そして何も無かったかのように静寂だけが残ったのだった…………
「あーははは!引っかかってもうたなあクレオラはん!」
自分達と一緒にペイント爆弾を浴びたはずのエドナは汚れ一つなく仁王立ちで笑っている。
よく見たら薄っすらと透けている。
「や、やられた!幻影魔術ね!」
クレオラが悔しそうに歯噛みする。
そう、幻影のエドナは揺動
真上に用意した塗料爆弾から注意をそらす為のおとり
木陰からエドナ、オーム姉弟が現れタオルをクレオラとティンクに差し出す。
「悪いなクレオラ・フェレス、謀らせてもらったよ」
そう言って笑う二人の笑顔はとても無邪気で楽しそうであった。
負けたクレオラとティンクはムスッとしながらも差し出されたタオルを受け取り体を拭くのだった。
2人は悔しかったのだろう…………
でも本気になって戦えて楽しかった。
この戦いはとても楽しい時間だった…………
だから彼女は敗北にも満足していた…………
クレオラは思う。
この馬鹿馬鹿しい戦争ごっこは自分にとって忘れえぬ思い出になるだろうと………
一方その頃、別の場所ではバットーイアイとロキの戦いが続いていた。
イアイはロキに向かって斬撃を放つのだが、ロキはそれを避けながら上空に飛び上がるとお返しとばかりに銃のペイント弾を撃ち攻撃した!
それをひらりと躱すと、今度はイアイが雉の翼を広げ飛び上がった!
そして空中を自在に移動しながらロキを追いかけると刀による攻撃を繰り出した!
しかし、それも虚しくロキはひょいひょいと避ける銃で反撃する!
イアイがロキの銃弾をすべてを刀で切り落とす。
しかしその瞬間にはロキの姿は無かった…………どうやら逃げられたようである。
その様子を遠くから見ている者がいた……。
ハジキである。
彼女は戦いの様子をしばらく眺めていた後、ふと呟くように言った。
「これが本当の殺し合いだったら死んでいたのはロキの方だろうな……」
そう言うと懐からタバコを取り出しくわえる。
「あー、ハジキいっけないんだー!学生がタバコなんか吸っていっけないんだー!」
カイトーがハジキをからかう。
「いいんだよ、別に、俺の肉体年齢は18だし転生前の年齢も足したらもっと歳いってるんだ」
「ふーん、じゃあ俺も吸っちゃおーっと♪」
そう言いながら火をつけると、大きく吸い込みぷはぁ~っと煙を吐き出した。
その様子を見ていたレヴェナは呆れたように言った。
「2人とも、そもそも学園内でタバコ吸う事自体モラルがなってないわよ!」
「まあそうだけどな」
レヴェナにたしなめられ2人は渋々タバコを消す。
その時だった!
突如空から何かが降ってきたかと思うと強烈な光が辺り一面を覆い尽くした!
その光はあまりにも強烈すぎて目を開けていられないほどであった……
眩しさに思わず目を瞑り顔を背けてしまう……。
3秒ほど経っただろうか……?
バットーイアイがようやく目が慣れてきたのか薄目で様子を見るとそこにはなんとロキの姿があったのだ!
彼はニヤニヤ笑いながらペイントまみれになったイアイを眺めているようだった。
(なんだ!?何が起こったんだ??)
イアイ混乱する頭で必死に考える……すると不意に声がかかった。
それはロキの声であった。
「よぉ、無事か?悪いね。謀らせてもらったよ~♪」
その言葉を聞いた瞬間にイアイは全てを理解したのだろう。
彼の顔色がみるみる変わっていくのがわかった。
そう、最初に交わしたロキの弾丸、あれはイアイを狙った攻撃では無い。
試合前ロキは会場の至る所に入念な罠を仕掛けまくっていた。
たとえば目眩しの閃光弾。
最初の狙撃でワザとイアイへの攻撃をはずし、閃光弾発射装置のスイッチを入れる為の攻撃だったのだ!
予想外の目眩しに視界を奪われたイアイはロキの銃撃をモロに喰らう。
殺気のこもった銃撃ならば、イアイの技量を持ってすれば難なく殺気に反応して対処出来ただろう。
だがいかんせんこれはゲーム
ロキの不意打ちの攻撃に殺気はなかった。
「ウェーイ!大金星〜!!ねえねえイアイちゃん悔しい?ねえ悔しい?ねえ今どんな気分?wwwwクレオラちゃん達助けるとき、『可憐なる乙女よ、助太刀いたす!』(キリッ)とか言ってたよね? くぅ〜かっこいい〜!そんでもって負けちゃうなんて超うけるー♪」
ロキが子供のようにはしゃいでいる。
バットーイアイは屈辱のあまり短刀を取り出し切腹しそうになる。
「おあーっ!イアイはん!早まったらあか〜ん!!」
それを見たエドナ、オーム、クレオラ、ティンクが慌ててイアイを押し留める。
「は、はなせー!この様な屈辱的な敗北、腹を切って汚名を注がねばご先祖様に申し訳がたたん!!」
「あかんたらあか〜ん!!」
慌てて全員でタックルして止める姿は、まるで学園のドタバタコントだった。
「うえーい!強キャラ感出しといて格下に負けるとかマジウケる〜www」
ロキはいつの間にか変身解除し、露木姿に戻ってイアイのまわりをぐるぐる回りながらおちょくり続ける。
絶好調である。
「ちょっと露木会長〜!これ以上イアイさんをおちょくらないで〜!!」
「あんたに人の心はないのんか〜〜!?」
「人の心〜?なにそれ美味しいの? あ、君の無様な姿スマホ写真撮っていい? ってもう撮っちゃった☆てへぺろ❤︎」
『げ、外道〜〜!!』
オーム、エドナ、クレオラ、ティンクはたまらず叫ぶ。
その様子を横目で見ながらカイトーは舌打ちをしていた。
(チッ!あんにゃろ〜!やっぱり姑息な小細工を仕掛けてきやがったか……しかも死者にムチ打ちすぎ〜っ!!)
最初から何かしてくるだろうと予想していたのだが、まさかこんなに早く仕掛けてくるとは思っていなかった。
(イアイは真っ向勝負なら負けなしだが搦手に弱いからな〜)
カイトーがそう思った瞬間、
ドゴォォォォンンン!!!!
ズシィィィンンン!!!!!!
試合場で轟音が鳴り響き地鳴りのような振動が辺りに響き渡った。
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↑イメージリール動画




