乂阿戦記1 第四章- 白の神子リーン・アシュレイと神鼠の鎧にして白神の槍ナインテイル-7 vs銀仮面 洗脳されし兄
\超展開✖️熱血変身バトル✖️ギャグ✖️神殺し/
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ナイアはもう一度雷音に洗脳魔法をかけ利用してやろうと考えていたのだがあてが外れてしまった。
あまりここに長居していると、黒天ジャムガや覇星の魔王が駆けつけてくるかもしれない。
(まあここはひとまず退散しておくか……)
ナイアが空間転移の魔法を詠唱しようとした時だった!
「逃さないわよ!」
神羅の矢が発射され転移の魔法陣を砕きナイアの逃亡を阻止した。
「……ちっ!」
「もう一度言うわ。エリリンはどこ?」
「クックック、そんな怖い顔しないでくださいよ。同じドアダ7将軍じゃないですか?絵里洲さんならスパルタカス将軍が保護してくれてます。神羅お嬢様、私と一緒にドアダ本部に帰りましょうよ?悪いようにはしませんから…」
「……ヨドゥグおじさんかガープお祖父ちゃん、もしくはボマーさんを連れてきて!スパルタクスさんやイブさんだっていい!けど貴方とナイトホテップは信用できない!」
「分りました。転移魔法でお二人をこちらにお呼びいたします。」
素直に言うことを聞く偽絵里洲を見て少し驚く一同だったがそれも束の間……。
「なーーんてね♪」
そう言うと後ろ髪の中から【契約の刻印】と呼ばれるカードをとりだした。
そしてそのカードに書かれた文字を読み始める。
「契約者たる私の命ずる……いでよメガルヨムルガルド!」
すると空中に召喚用の魔法陣が現れると中から一体の巨大ロボが現れた。
大きさは10メートル弱といったところだろうか……しかし見た目はロボットというよりどちらかというと巨大な蛇といったほうがしっくりくる。体の色は灰色で金属のような素材で構成されているように見える。
そして頭部に当たる部分からは禍々しい有機的な目が覗いていた……これは明らかに生物の目だっだ。
「なっ、なによあの気持ち悪いロボは!?まるで機械じゃないみたい!!」
「ええ、その通りでございます。これこそはアシュレイ族が戦争に備え、開発した機械と魔物の合成生物です。これさえあればもう人間なんか敵ではありませんわ!」
「ううっ……」と思わず神羅がたじろいだその瞬間であった!
巨大ロボが目にも止まらぬスピードで襲い掛かってきたのだ!
咄嗟に雷華は魔剣の力を発動した!
魔剣の炎に炙られメガルヨムルガルドが苦しそうに身をよじる。
それにより神羅は間一髪で敵の攻撃をかわすことに成功した!
そして今度は雷音が攻撃に移る!
『阿修羅豪打拳!』
雷音の連撃が、メガルヨムルガントに叩き込まれようとした、その瞬間だった。
銀の影が割り込み雷音の前に立つ。
──止まった。
拳が、空を裂く寸前で静止する。
否、止められていた。鋼をも粉砕する雷音の“阿修羅豪打拳”を、たった一方の腕で。
しかも、その肢体には。
「……傷、一つも……ついてねぇ……?」
呆然と呟く雷音の言葉に、誰もが目を疑った。
ゆっくりと、銀の仮面が顔を上げる。
その仮面には感情の影一つなく、ただ月光を反射する滑らかな曲面があった。
喉元に巻かれた黒鉄の首輪。その中心に彫られた意匠──三つ首の魔獣、封獣ケルベロス。
「やあ、紹介するよ」
不意に割って入るナイアの声は、どこか陶酔に似た愉悦を孕んでいた。
「我らドアダの最強の戦士。そして次代七将軍の候補──《銀仮面シルバーマスク》君だ!」
名を告げられても、仮面の男は一言も発さない。ただ沈黙のまま、そこに“在る”。
その姿を見た瞬間だった。
雷音の拳が微かに震える。
雷華の目が見開かれ、そして動かない。
神羅の唇が、音もなく震えていた。
「そ……そんな、まさか……」
最初に口を開いたのは雷華だった。
声は震え、空気を刃のように裂いた。
「……ら、羅漢お兄ちゃん……なの……?」
呼ばれた名前が、誰よりも痛切だった。
ナイアが嘲るように指を鳴らす。
パチン、と軽快な音が室内を満たした。
その合図とともに、銀仮面の男──“羅漢”は、胸元のペンダントに手を添える。
そして、まるで死んだ人間のような、乾いた声で呟いた。
「……変神……」
その一語が、世界を変える。
次の瞬間、空気が反転するような凄まじい圧力が周囲を圧し潰す。
空が悲鳴を上げ、陽光が消えた。
黒き瘴気が渦巻き、空間の温度が一気に零下まで落ちる。
それはまるで、夜そのものが具現化したかのようだった。
──爆ぜる闇。
黒金の鎧に覆われ、肩からは禍々しい角飾り。
仮面はより獣じみた造形となり、その双眸には──神でも獣でもない、“命令”にのみ従う兵器の光が灯っていた。
その背に浮かぶは、黒き虎の魔神像。
「これが羅漢君の新しい変神フォームだ!」
ナイアの声が歓喜に震える。
「名付けて──**《ケルビムベロス・アナザー》!!** 今の彼は、完全無敵だよ!!」
電撃のような衝撃が、雷音の脳裏を貫く。
神羅の奥底には、己の過去に対する深い罪悪感が疼いた。
そして雷華は……ただ凍りついていた。
(……あれが……羅漢兄さん……?)
技、構え、気配──すべてが、忘れ得ぬ“兄”のものだった。
けれども、それはもう戻らぬもの。
あまりにも冷たく、変わり果てた、“銀の勇者”の姿。
そして──
「──来るぞ!」
雷音が叫ぶと同時に、背後の黒き虎が咆哮を上げた。
口腔から放たれた光の帯が、三人に向かって奔る。
「バインド系の操気術! 闘気を帯びた捕縛術式よ!!」
神羅が叫び、雷音と雷華を突き飛ばす。
自らの身を捧げ、光の鎖に絡め取られる。
「くっ……!」
瞬時に上半身が拘束され、聖弓は使えない。
炎の共鳴者たる雷音と雷華は、今まさに立ち上がろうとしていた。
──“堕ちた兄”との戦いに、終焉か、再起か。
その狭間にて、赤と黒が交差し始める。
「くそっ!!こうなったらやるしかない!! 雷華、準備はいいか!?」
「雷音兄! 羅漢兄様相手に手加減なんかしたら、一秒も持たない! 最初から全開で行くぞ!!」
その言葉と共に、雷音の足元に灼熱の陣が展開される。
空気が一瞬で灼けつき、地の底から鳳凰の咆哮のような音が響いた。
「──顕現せよ……魔剣クトゥグァの力!!」
次の刹那、雷音の肉体が変貌する。
四肢は龍の如き鱗に覆われ、背中には朱の翼が顕現する。
彼の手には、雷華の姿を取り込んだ魔剣──赤熱の斬馬刀が宿った。
剣に宿る雷華の魂は、戦乙女の如き半透明の姿をとり、雷音の背後に浮かび立つ。
炎を纏った女神の如く、その瞳は宿命を見据えていた。
「雷音兄、全力で行こう。……これが、私たちの“共鳴変神”だ!」
「──ああ!」
二人のオーラが共鳴し、赤の波動が周囲を焦がす。
その姿に、ナイアが思わず毒づく。
「ちッ……同属性の勇者と魔法少女による共鳴変身か。まるで十五年前の悪夢の再来……!」
それは、ナイアにとって最も忌まわしい記憶。
転生前のユキルたちとの戦い――“七罪の魔女”が敗北を喫した、あの災厄の再現。
「──銀仮面、防御に徹し三分しのげ! あの共鳴形態は長くは保てぬ!」
「──御意」
その声に、ケルビムべロス・アナザーは即応する。
全身に魔力をまとい、構えを低く取ると、雷音の眼前に静かに立ちふさがった。
(……今のままでも勝てるが、慎重に行く……)
実戦で百戦錬磨のナイアは、冷酷な計算を続けていた。
(奴らは間違えた。強大な共鳴形態など、こちらの警戒を招くだけ。最善手は、増援が来るまで逃げに徹することだったのに……)
だが、もう遅い。
灼熱と闇が激突する。
雷音が魔剣を振りかぶる。
ケルビムべロス・アナザーが、鉤爪を構え迎え撃つ。
一瞬の間。
そして──交差。
烈火と瘴気が入り乱れ、地を穿ち、天を焦がす。
雷華が放つ炎の魔法は、虎の魔神像が放つ合気の術で逸らされる。
斬馬刀と鉤爪のぶつかり合いは、耳を裂くような衝撃波を伴い、周囲の空間を歪ませた。
均衡。
拮抗。
だが、やがてそれは破られてゆく。
クトゥグァの力が解放されるたび、雷音の斬撃は加速し、重みを増す。
(……やはり出力では押されるか……)
ナイアの顔に、初めて焦燥の影が差した。
(ならば……手数で翻弄する!!)
ナイアの右手が再び空間を裂く。
【契約の刻印】──黒き契約のカードが空を舞い、次元の門を穿った。
「出でよ、メガルスケルトン!! 女神ユキルを捕縛せよ!!」
地の底より現れたのは、骸骨と機械が融合した異形の兵たち。
剣、槍、鎌、あらゆる武具を備えた六体の機骸兵が咆哮を上げる。
「キシャアアアアッ!!」
彼らは命令に従い、神羅へと殺到する。
ユキルは魔法障壁を展開し応戦するが──
「……きゃっ!!」
背中を、捕縛の光が走る。
動かぬ腕、焦げつく空気。
聖弓は封じられ、神羅は沈黙の檻に囚われた。
「雷音! 神羅が危ない!」
「くそっ……!!」
怒号とともに振り下ろす雷音の剣──
だがその剣筋は、怒りと焦りに揺れていた。
その隙を見逃す羅漢ではない。
──合気、投げ。
──関節、捕縛。
雷音は見事に組み伏せられ、魔力の帯で動きを封じられる。
「くっ……!!」
背後霊たる雷華も、同様に炎を放とうとした瞬間、黒き虎の魔神に抑え込まれる。
斬馬刀が落ちる。
勝敗の均衡が、崩れた。
その瞬間、雷音と雷華は──死を覚悟した。
(これまで……か)
だが。
声が、天から降る。
「アシュレイ家・ミリルの名において命ずる!」
清冽にして高貴な、少女の声が響いた。
「メガルヨムルガルド、引け! メガルスケルトンもだ!! 雷音を離してやれ!」
異形の兵たちが一斉に動きを止め、跪いた。
その中心に現れたのは──ミリル・アル=メギド。
「雷音! 助けに来たのだ!! 大丈夫か?」
「ミリル……逃げなかったのか!?」
「浮気されたことが悔しくて、もう一発金玉を蹴り上げようと戻ってきたら……なんか凄いことになってたのだ!!」
「ひえっ!」
駆け寄るミリルに、雷音は安堵と恐怖をないまぜにした表情で応じる。
その瞬間。
窓の外に、黒い光をまとった影が迫っていた。
雷音が息を呑む。
「……あれは……もしかして……!」
空を裂いて現れたのは──漆黒の馬に跨る、異形の女騎士。
破砕の風が、戦場に新たな幕を引く――。




