乂阿戦記4 第三章 桜の魔法少女神羅と天下の大泥棒-17 馬鹿と天才は紙一重
非常識極まりない鳳博の行動に発狂したのは――雷音達だけではなかった。
「わああああ!! 会長!!」
ヒースが涙目になりながら、鳳博の背中をポカポカ叩く。
「私達のロボコントローラーになんて真似してるんですかぁぁぁ!?」
「博、正直ドン引きだお……」
デブちんも顔を引きつらせる。
「けど、そこに痺れる憧れる――」
一瞬溜めて。
「わけねえだろ!! テメー何やってんだぁぁぁ!!」
「ぼ、僕達の技術の集大成が……」
ウチウは真っ青。
「ないわー。会長、マジでこれはないわー」
ドリやんも開いた口が塞がらない。
そしてヒースが――トドメを刺した。
「会長……」
涙目で軽蔑の眼差しを向ける。
「あなたって、本当に最低のクズですね!」
「ぐはっ!?」
仲間からの容赦ない罵倒。
だが――。
鳳博は心の中でほくそ笑んでいた。
(フンと言っても、粘土に臭いを付けただけの偽物だけどな!)
そう。
実は本物ではない。
アキンドに《アポートしたくない》と思わせるためだけに用意した――ただの嫌がらせである。
(勝つためなら手段なんざ選んでられるか! 最後に勝てば、こいつらも俺の偉大さに涙するはずだ!)
たぶんしない。
「さあ――」
鳳博がコントローラーを構える。
「続きを始めようか!!」
◇◆◇◆
一方。
飛竜形態で空を飛ぶ雷音と、その背中に乗ったアキンドは――。
「なあ、雷音」
「ん?」
「アカデミア学園の代表って、エリートが集められてるんだよな?」
「そう聞いてるけど?」
アキンドは地上のスパロボ研を見る。
「……あれ、実は問題児ばっか集めてね?」
「…………」
「俺らも大概だけど、あいつらには負けるわ~」
「分かる」
雷音も真顔で頷いた。
「揃いも揃ってキャラ濃すぎだろ。馬鹿と天才は紙一重ってヤツじゃね?」
「絶対そうだわ」
そんな失礼極まりない会話をしている間にも――。
巨大ロボが動いた。
ドンッ!!
「速っ!?」
巨体からは想像もできない速度で戦場を駆け抜ける。
雷音が空中からブレスを放つが――。
ゴォォォォ!!
「当たらねぇ!?」
巨大ロボは急旋回。
ブレスをかわし、そのまま頭部バルカンを乱射する。
ババババババババ!!
「うおっ!?」
雷音が慌てて上昇。
ペイント弾が翼を掠める。
「ふはははは!!」
鳳博が高笑い。
「どうした赤の勇者! 我らスパロボ研の技術力はこの程度ではないぞ!!」
悔しいが――。
鳳博達が作り上げたロボットの性能は、本物だった。
圧倒的な機動力。
さらに鳳博自身も相手の動きを読むことに長けている。
雷音とアキンドは、次第に追い詰められていった。
――だが。
その時だった。
「…………ん?」
鳳博がコントローラーを見る。
見慣れないボタンが一つ増えていた。
真っ赤なボタン。
その上には――。
《押すな!!》
「…………」
鳳博が固まった。
こんなボタン。
設計者である自分は知らない。
(ヒースか……デブちんだな)
もう一度見る。
《押すな!!》
「…………」
押すな。
そう書かれている。
《絶対に押すな!!》
「…………」
人類には――。
抗えない誘惑というものがある。
ポチッ。
押した。
『ガガピー!!』
「え?」
『自爆スイッチが押されまシタ』
「…………は?」
『自爆まで――三秒』
「短ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
鳳博の絶叫が戦場に響き渡った。
3。
「待て待て待て待て!!」
2。
「解除ボタンどこだぁぁぁぁ!?」
「ありません!!」
「ヒースぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「わああああ!! 鳳博さん、どうして押したんですかぁぁぁ!?」
ヒースまで大混乱。
「ちゃんと《押すな》って書いたじゃないですか!!」
「やっぱり犯人お前かぁぁぁ!!」
鳳博が絶叫する。
「あんなもん書いてあったら逆に押したくなるに決まってんだろぉぉぉ!!」
「普通は押しませんよ!!」
「押すわ!!」
「押しません!!」
「押す!!」
「だったら、どうせ自爆するなら私が作った《自爆塗料ダイナマイト巻きつけスーツ君》を着て敵へ特攻してくださいよ!!」
「もっと嫌じゃああああ!!」
「せっかく作ったのにぃぃぃ!!」
「この自爆大好きマニアがぁぁぁぁ!!」
1。
「…………あ」
鳳博が止まった。
ヒースも止まった。
周囲の全員が――止まった。
0。
「ちょっ――」
ドッカァァァァァァァァァン!!!!
巨大ロボが盛大に爆発した。
爆風が戦場を駆け抜ける。
「うわあああ!?」
「なんだぁぁぁ!?」
土煙が巻き起こり――。
やがて。
煙の中から。
「むぎゅう~~……」
プスプスと煙を上げながら、真っ黒になった鳳博が姿を現した。
そして。
ポテッ。
倒れた。
『鳳博選手――リタイア!!』
※なお、爆発の八割は自業自得で構成されています。
「…………」
上空では。
飛竜形態の雷音とアキンドが呆然と見下ろしていた。
「……南無三」
「……アホや」
二人は静かに手を合わせた。
◇◆◇◆
それからしばらくして――。
会場内にアナウンスが流れた。
『ただいまの爆発により負傷者が確認されました。安全確認およびドクターチェックのため、第四試合を一時中断いたします』
「…………」
「…………」
誰も異論はなかった。
こうして第四試合は――。
まさかの《自爆》によって、一時休憩へ突入することとなったのである。
⸻
https://vt.tiktok.com/ZSgqSrE8h/
↑イメージリール動画




