乂阿戦記4 第三章 桜の魔法少女神羅と天下の大泥棒-8 クレオラの人形兵団
カイトーの前に現れたのは黒髪の美しい少女
彼女はスフィンクスの仲間の一人クレオラだった……。
「あらぁ……たしかカイトーさんでしたっけ?ふふっ、まだ生きていらっしゃったのですね……。」
そう言って妖艶な雰囲気を漂わせつつ不敵な笑みを浮かべてる。
そんな彼女を見た他の仲間達からも次々と声が上がる……。
どうやら今回のイベントでは彼女達もまた本気モードのようだ……!
その証拠に全員が目の色を変えており凄まじい闘志を放っているのが分かるほどだった…………だがそれだけでは無いらしい……?
何やら怪しげな儀式を行っている様子なのだ…………一体何が始まるのだろうか………………まさか本当に邪神召喚でもするつもりなのだろうか?
……などと皆が思っているうちにいよいよ準備が終わったらしく遂に動き始める事となった様だ……一体どんな恐ろしい事をしてくるのかと固唾を飲んで見守っている中ついに始まった────────それは予想外の展開を迎える事となる事になる
森の木々が削れていき、人の形を取る。
森の木で作った即席の人形軍団だ。
その数ざっと100体
「さあ、我が軍団よ――敵の首を取っておいで!」
クレオラの号令一閃。人形たちは小剣を構え、地を揺らす勢いで進軍を開始する。
それに対する魔法学園側の戦力はと言うと、「うん、そっちが数で来るならこっちも数で対抗するわ!」
そう言ったのは吸血姫リリス・ツェペシュだった。
リリスは手持ちの龍の牙に魔力を込め、龍牙兵を錬成する。
数は40体ほどだ。
それに続いてアクアも同じく深き者族の力を行使するべく、人魚に変身し、自らの尻尾に手をかける。
……そして一気に鱗を引き抜いたかと思うとそこから、鱗は空飛ぶピラニアの群れに変化するのだった。
クレオラの人形部隊とアクア&リリスの錬金ピラニア&竜牙兵部隊が激しく衝突する。
(ちなみにアクアの鱗を抜いた後の傷口からは血が噴き出しているがすぐに塞がっているようだ)
……アクアの身体から噴き出した血を見て、一部の味方たちは一瞬、目を丸くした。
だが今は戦闘中――全員、敢えて見なかったことにして戦いに集中するしかなかった。
「さてとそれじゃあ俺も行きますかねぇ……」
そう呟いた後カイトーもまた行動を開始する事にしたようで彼は懐から愛用の銃を取り出すとその銃口を敵軍へと向けた。
躊躇なく引き金を引くすると銃声と共に放たれた弾丸はそのまま真っ直ぐに飛んでいき、敵の軍勢の真ん中で炸裂した。
それは煙幕弾だった。辺り一帯に立ち込める煙が晴れるとそこには誰一人いなかったのである……当然だろう何故なら今の攻撃によって電光石火の早業でドアーダ学園の選手たちの足にロープをくくりつけていった。
そして煙が晴れた頃バイクのモーターを利用して一気にロープを引っ張った。
足を絡め取られた生徒は一気に高い木と木の間に、まるで洗濯物の様に宙吊りになった。
『きゃああああ!!』と女生徒達の悲鳴が上がる。
女生徒たちは、慌ててスカートの裾を押さえながら絶叫する。
「ちょ、見ないでぇぇぇっ!!!」
戦場に似つかわしくない、乙女の悲鳴がこだました。
彼女達は必死になってスカートを押さえている。
その姿はとても可愛らしいものだったが当人たちからすれば、たまったもんではない。
「ちょっとぉ!!降ろしなさいよ!!」と喚き散らすセレスティア達女子生徒だったがその声は虚しく響くだけであった。
そんな中で一人のリリスだけは冷静に状況を把握していた。
彼女はこの状態から抜け出す方法を考えていたのだ。
まず最初に思い付いたのは吸血鬼である特性を使うことであった。
吸血鬼の特性
それは、自身を狼や蝙蝠、そして霧に変化できることである。
リリスは霧と化して、フワリと宙へ溶けた――
が、その瞬間、カイトーのバイクに“ゴモォォッ!”という音が響く。
吸引モード発動。
「ちょ、ちょっと待って!? なにこれーー!?!?」
リリスは霧のまま、容赦なく吸い込まれてしまったのだった。
「ちょ!?何よそれーーっ!?!いやぁぁあぁあああっ!!!」と叫びながら吸引されて行くリリスだが次の瞬間、バキュームベッドの様な物に放り込まれてしまい身動きが取れなくなってしまった。
更に追い打ちをかける様に電流が流れ出し始めた。
「ふんぎゃああああ!」
バチバチィイイイッ!!!と言う音と共にリリスは堪らず失神してしまった……
そんな彼女の様子を見ながらニヤと笑うカイトーの姿があった……。
「悪いなお嬢ちゃん。けど電圧威力は調節してあるから、後遺症とかは残ったりしない。安心しな」
かくしてドアーダ魔法学園も1名の退場者を出すことになった。
リリスが退場になった事により消滅する竜牙兵の部隊
必然的に勢力を盛り返すクレオラの人形兵部隊
カイトーの悪戯によって戦況は一時混乱していたが、やがて場の流れはふたたび“戦い”へと収束していく。
クレオラの人形兵部隊が、いまだ宙吊りにされているセレスティアたちに襲い掛からんとしたその時――
そんな彼らの前に意外な難敵が現れたのだった……。
木々の影から、にじむように現れた黒い塊――
ズルリと這い出たその異形に、クレオラは思わず目を見開いた。
「……あれは……まさか、ショゴス!?」
彼女の声が、ほんの一瞬だけ震えていた。
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