乂阿戦記4 第三章 桜の魔法少女神羅と天下の大泥棒-6 レナス・テバクの挫折
それは対抗戦が行われる数日前の事だった────────。
場所は都内某所にある高級ホテルの一室にて。
そこは完全防音対策が施された一室で外界からの干渉を完全にシャットアウトした秘密の場所であった。
そこには数々の難事件を解決に導いた敏腕宇宙刑事たちが集まっていた。
全員で4人
テバクと彼女のバディにして宇宙刑事の師匠たる鉄玄
同僚の銀雪、鋼灰
彼女ら4人は正確には集められたと言った方が正しいだろう。
目覚めた時には既にこの部屋に監禁されており、手足の自由を奪われていたのだ。
そして、目の前には銀河連邦上層部の幹部連中がおり、彼らが今回の事件の首謀者であることを理解した。
幹部連中は皆一様にサングラスを着用しており素顔を隠している。
「これは一体どういう事なのか説明してもらえるかしら?」
宇宙刑事のリーダー、コードネーム"マダム"こと鉄玄が質問すると幹部連中の一人が言った。
「我々はある人物から依頼を受けたのです」
その人物の名を明かすことはしなかったが、彼らにとってその人物は神にも等しい存在であり、逆らうことはできないのだそうだ。
「……貴様ら!さては貴様が11人委員会と内通している内通者だったのか!?」
「答える必要は無いな。上層部から捜査はやめるようお達しがあったのに無視した貴様らが悪い。さて、無駄話はこれくらいにしてそろそろ始めましょうか」
と別の幹部が言ったところで突然部屋の照明が落ち真っ暗になったと思ったら次に明かりがついたときには、自分たちの姿はHERO変身をしており、さらには武器や防具まで装備されていた。
混乱するばかりだ。
「さあ始めようか、伝説の宇宙刑事たちよ……君たちの実力、ここで見せてもらおうか。――これはゲームではない。命を賭けた、“清算”だ」
そう言って現れたのは全身暗い緑ずくめの男だった。
その男は顔にペストマスクのような仮面をつけており素顔を見ることはできなかったのだが、声からして若い男のようだ。
その男の名は『ゼロゼギルト』といった。
(この男、何者なんだ……?)と疑問に思っているうちに戦いが始まった。
最初は4対1という人数のハンデもあり、なんとか互角だったが徐々に押され始める。
彼らは強い。
だがそれ以上にゼロゼギルトの実力の方が高いようだ。
このままでは全滅してしまうかもしれないと思ったその時だった。
さらに一人の男が現れた。
そいつは漆黒の鎧を身に纏っており、禍々しいオーラを放っている。
「おやクロウ、君も来ていたのか」
「狩りの香りがしたのでな……たまには、血の舞台も悪くない。」
「ははは、君も好きだな。よろしい。2人で楽しもう!」
クロウと呼ばれた男は明らかに只者ではない雰囲気を漂わせている男だ。
どうもこの男も11人委員会の幹部の一人みたいだ。
ゼロゼギルトは言う。
「君らに恨みはないがこれも我らが秘密を守るためなのでな……悪く思わんでくれよ!」と言い放つと同時に襲いかかってきた。
戦闘が再開される。
いや、戦闘と言う名の一方的な蹂躙ショーだ。
こちらが攻撃しようにも全く当たらないのだ。
それどころか一方的に殴られ蹴られを繰り返すばかり……。
やがて体力が尽き果てた時、今度は魔法を放ってきた。
それもただの魔法ではなく、呪いや毒などの状態異常を引き起こすものばかりだったのだ。
それにより次々と倒されていく仲間たちを見て絶望するしかなかった。
しかしその中でもまだ諦めていない者がいた。
それはリーダー格のマダムこと鉄玄であった。彼女は単身で立ち向かっていったのである。
そして叫んだ。
「みんな!私が囮になる!その間に逃げて!」と……。
だがそんなことを言われて素直に従う者はいなかった。
皆一様にリーダーを助けようとしたのだ。
だが結局、その場にいた全員がゼロゼギルトとクロウの圧倒的な暴力の前に力尽きていったのだった……。
倒れた仲間たちに向かって止めを差すべく、手刀を振り上げるゼロゼギルト
仲間たちが殺されそうになった時、テバクは恥も外聞もかなぐり捨て命乞いをした。
テバクは、その場に崩れ落ちるように膝をついた。
涙も声も出なかった。ただ、頭を深々と床に擦りつけ、必死に訴えた。
「頼む……仲間だけは……助けて……!」
それは、誇りも、正義も、すべてをかなぐり捨てた懇願だった。仲間を救いたい――ただそれだけの、祈りだった。
仲間の為、それだけ必死だったのだろう。
その様子を見たゼロゼギルトはニヤリと笑うとこう答えた。
「いいだろう。銀河連邦のHERO候補生テバク。お前がこちらに従うのなら、仲間は生かしておいてやる」と……。
こうして助かったものの、もはや彼女には11人委員会の手先として生きる屈辱の道しか残っていなかった。
自分が逆らえば捕まっている仲間たちは殺されてしまうからだ……。
ゼロゼギルトはテバクに取引をもちかける。
ジュエルウィッチハートの強奪に協力すれば仲間を解放してやると
テバクは従うしかなかった。
こうして助かったものの、もはや彼女には11人委員会の手先として生きる屈辱の道しか残っていなかった。
自分が逆らえば捕まっている仲間たちは殺されてしまうからだ……。
――“これが正義の選択なのか”。
テバクは、自分の拳を見つめながら、ただ、唇を噛み締めていた。
意気消沈し、渋々と命令に従い出撃していく彼女を見送ると、ゼロゼギルトは一人呟いた。
「……全ては、舞台の上だ。役者たちがどう動くか……見ものだな」
そう言うと踵を返し部屋を出て行くのだった――。
https://www.facebook.com/reel/1902776950149279/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0
↑イメージリール動画




