乂阿戦記4 第三章 桜の魔法少女神羅と天下の大泥棒-5 伝説の大怪盗
助かった……と、胸を撫で下ろすカイトーとレヴェナ。
だが安堵も束の間、今度は逆側からネロと白水晶が左右同時に襲いかかってきた!
「うわっ、こっちも来たァ!? このままじゃマジで挟み撃ち……!」
絶体絶命――その瞬間だった。
「カイトー殿〜、レヴェナ殿〜、助っ人するでござるよ〜!」
逆光の中、六つの影がババァン!と地面を蹴って現れる。その瞬間、まるで特撮ヒーローの登場シーンのように、背景で爆発音が鳴った(気がした)。
「な、なんだ貴様らは!?」
ネロは睨みつけるも、数で劣ると悟ったか、一旦その場から撤退していった。
(た、助かったぁ……!)
ホッと息をついたカイトーは、助っ人たちへ視線を向ける――と、言葉を失う。
そこに立っていたのは、見知った顔――いや、“絶対に会ってはいけない顔ぶれ”だったからだ。
そう、そこにいたのは……かつて何度も死闘を繰り広げてきた、銀河連邦の刑事候補生たち。
しかも全員、めちゃくちゃドヤ顔。
「ふ〜はははははははははは!!」
白衣をはためかせ、高笑いする男が前に出た。
「この俺こそ、銀河連邦が誇る狂気のマッドサイエンティスト! 鳳博!
ドアダ魔法学園の幼稚な策略などすべて見破ったわ! 我が手先A・カイトーランマよ、無事かぁあ!?」
「誰が手下じゃあああああっ!!!」
全力でツッコむカイトー。その横から、さらに怒声が飛ぶ。
「ずるいっ!! 名乗りは私がやる予定だったのにぃぃぃぃぃッ!!」
白衣の少女が叫ぶ。
「我が名は蛮童翡翠ことヒース! 銀河連邦随一の爆撃ヒーローガール!!」
ドヤアァァァン!!
効果音が聞こえるかのようなドヤ顔でポーズをキメるヒースに、空気が凍りつく。
「……中二乙」
ぽつりと冷めた声で突っ込んだのは、オタク丸出しのデブ学生――通称“デブチン”。
彼は“ブリュンヒルデ”ファンクラブ副会長でもあり、筋金入りの美少女愛好家だ。
「お、お前に言われたくないぞデブチン!」
鳳博が顔を真っ赤にして反論する。
「我が神聖なる中二魂を愚弄するとは……お前はそれでも我がスーパーロボ研究会のスーパー・ハカーか!?」
「って、リーダー!後ろ後ろ!!」
もう一人の仲間――通称ラブチン(本名ロイ・スィーガヌ)が、大盾で鳳博をかばうように立つ。
バン!と盾に銃弾が当たった。
ネロの狙撃――だが、ラブチンの盾が完全に防いだ。
ロイは端正な顔立ちと高い能力を持つイケメンだが、なぜか仲間内では出っ歯の義歯+厚底眼鏡+オタクファッションで徹底的に“キモヲタ”を演じている変わり者だった。
残る2人は、小柄な荒事苦手コンビ“ウチウ・ジン”と“ドリヤン”。
ロイの背後にぴったりと隠れている。
彼らをかばうように、狙撃態勢を取っていたのは――
銀のスナイパーライフルを構えたスフィンクス・アルテマレーザー、そしてその隣で観測支援に立つ男――キラグンターだった。
「スフィー、無理しないでねぇ〜」
妊活中の妻に呆れながらも、キラグンターは淡々と戦闘態勢に入る。
黄緑の巻き毛、微笑みを浮かべたまま――だがその瞳は笑っていなかった。
「……あなたたち、学園の生徒じゃありませんね?」
そっと、カイトーの耳元に囁くキラグンター。
「このサバゲーだけは、普通に遊び通してほしいです。でないと――
命、スコープの中で消しますから」
ビクリと震えるカイトーとレヴェナ。
周囲の“アカデミア学園”の面々を見ると……子供たちは屈託なく笑っていた。
「だってさ~、怪盗の力、借りない手ないじゃん? 勝たなきゃ意味ないし!」
天使のような笑顔で毒を吐くゼロ・セイラ。
その後ろで、ティンク・ヴェルが目をキラキラさせながら叫ぶ。
「うわー!伝説の怪盗と一緒にサバゲーできるなんてマジ神体験!おじさんサインちょーだい!」
「誰がおじさんだ誰がァ!? こっちは若返り薬で10代ボディ維持してんだよ!!」
その屈託のない笑顔が、なぜか心に響く。
(……こんな子供たちと、一緒に戦ってみるのも悪くねぇか)
「よし! この対抗戦、俺が手伝ってやるよ!」
カイトーは豪快に叫んだ。
「俺が味方するからには、負けは許さねぇぞゴラァ!! 覚悟しとけよガキ共ォ!!」
盛り上がる子供たちと怪盗たち。
――だが、その光景を冷ややかに見つめる一人の人物がいた。
……男装の麗人『テバク』。
「……茶番はここまでだ。子供の遊びに付き合っている暇などない。私は、“任務”を果たす」
静かに拳銃のセーフティを外す彼女の眼差しは、ジュエルウィッチハートをまっすぐに捉えていた。
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