乂阿戦記4 第二章 紫の絶対無敵アイドル ブリュンヒルデの恋バナ相談-8 絵里洲に飛び火した
雷華の恋愛相談を恥ずかしがる様子を微笑ましそうに見ていた絵里洲はクスリと笑った後で口を開いた。
「何を言ってるの?雷華ちゃん?そのぎこちなさが萌えるポイントなのよ!意中の相手に素直になれずギクシャクしてぎこちない!それに男はキュンキュンくるものなの!そのぎこちなさのまま、とにかく一緒にいるように過ごすの!そのうち獅鳳はあなたの萌え力に屈して理性のタガが外れて押し倒してくれるわ!!(ドヤッ☆)」
自信満々で言い切る彼女に思わず唖然としてしまったものの、その内容には納得せざるを得なかったようで、次第にやる気に満ち溢れた表情へと変わっていくのが分かった。
そして二人は握手を交わし合うと意気投合した様子を見せていた。
「ちょっと絵里洲ちゃーーん!!ウチの雷華はまだ小学5年生なのよ!!押し倒されるとか絶対認めませええええん!!マジでいい加減にしてよねぇぇぇ!!!」
怒り狂う神羅の姿にオロオロとするばかりの絵里洲であったが、やがて涙目になりながら訴えるように言った。
「ごっごめんなさいぃぃいいい!!!でもどうしても獅鳳×雷華ちゃんのカップリングを成立させたいのぉぉぉおおおお!!!」
そんな悲痛な叫びを聞いた瞬間、遂に堪忍袋の緒が切れたらしい彼女が叫んだ……!
「やかましいわっ!!人の妹の恋路を、世話焼く暇があるなら、あなたこそアキンド君との仲を進展させなさいよ!!」
すると彼女も逆切れしたように反論し始める。
と、いうか思わぬ名前が出たことで絵里洲の顔は真っ赤に染まり頭から湯気が出ていた。
怒りで顔が赤くなった風ではない。
甘酸っぱい感情による赤らみだ。
「なっ何よ!ユッキー一体何言ってるの!?ど、どうしてそこで明人の名前が出るの?この私がなんであんなバカアキンドとカップリングフラグ建てられてるの!?意味わかんないんですけどぉおおおお!!!」
もう完全にパニック状態になっているようだった。
その様子を見ていた他の面々は思わず笑い出してしまいそうになる気持ちを必死に堪えつつ見守っていたのだが……。
その時不意に背後から声をかけられたかと思うと一人の少年が姿を現したので全員がそちらに目を向けることになった。そこには茶髪の緑服の少年が立っていたのだ。
浪花明人ことアキンドである!!
彼は爽やかな笑顔で挨拶をした後に皆にやたらいい声で自己紹介を始めたのである。
「どうも、狗鬼絵里洲の想い人──浪花明人です」
一瞬、時が止まった。
……そして次の瞬間。
「なに言ってるバカアキンドーーーー!!!」
顔を真っ赤に染めた絵里洲がありったけの魔力を込め水鉄炮魔法をアキンドにぶっつける。
「あーれーーーー!!」
と悲鳴を上げ、アキンドは空の彼方に飛んでいった。
「おわー!?アキンド〜〜〜!!」
翼竜に変化した雷音が慌ててアキンドを空中キャッチする。
(これでしばらくは帰ってこないだろう)
そう思いながら彼女は大きなため息をつくと、同時に呼吸を整え平静を取り繕いながら誤解をとこうとした。
「い、い、い、言っとくけどアキンドとはただのお喋り相手であってそれ以上の関係はないわ!」
動揺しながらも懸命に説明する彼女に対して皆の反応は……
「「「え?あれだけ四六時中いつも一緒で喋り合っているのにまだ付き合ってなかったの……?」」」
という反応であった。
(主に女性陣だが男性陣も似たようなものだったりする)
そのため絵里洲は余計に墓穴を掘り続ける羽目になってしまったようだ。
「えー?嘘でしょう絵里洲〜?本当はアキンド君の事憎からず思ってるんじゃないの〜〜?」
まずセレスティア
「だって絵里洲ったら明らかにクラスの中でアキンド君と絡む事が多いじゃん?」
続いてリリス
「そう言えば絵里洲ちゃんて休み時間になったら、まず真っ先にアキンド君に声かけるよね?それってやっぱりそういうことじゃないのー?」
と、これはアクア
と、まあ皆から口々に問い詰められる始末である。
そんな様子を目の当たりにしたレイミは慌てて止めに入ったのだった……!
「ま、待って下さい皆さん!お気持ちは分かりますがその辺で許してあげてください!これ以上追求すると流石に可哀想ですし……」
ところがドッコイもう手遅れだったのである!!
何故なら既に絵里洲は顔を真っ赤にして目をグルグル回してしまっていたのだから……!!
もはや意識を保つことすら困難な様子である……。
そして次の瞬間──。
絵里洲は前のめりに、バタリと崩れ落ちた。
(ドサッ)
その場にいた全員が、三秒ほど沈黙したあと──慌てて彼女の元に駆け寄り、保健室へと運ばれていった。
〜数分後〜……う、うーん…………私は一体どうしたんだっけ……?確か皆が私とアキンドの関係について聞いてくるからついムキになっちゃってそれで…………あれ?そこから先の記憶がないや……あ、そうだ思い出したわ!
私あの時急に意識が遠くなって倒れたんだったんだわ……!
でも何でいきなり気絶なんかしちゃったんだろう……?
もしかして魔力切れかな??
まぁいいやとりあえず起きようっと……。
そして絵里洲が目を覚まし横を向くと隣のベッドでアキンドが横になっていた。
「ぴ!?」
「よ!」
擦り傷だらけのアキンドが手を上げ絵里洲に声をかけてくる。
それを見た途端怒りが込み上げてきたようで再び攻撃しようとした瞬間横から静止の声がかかった。
声の主は保険医のイブ・バーストエラー先生のようだ。
よく見るとその横には他のクラスメイト達も立っていた。
全員呆れ顔だったが先生は続けてこう言った。
「まったくあなた達ときたら本当に仲がいいんデスから」
とため息をつきながら言われてしまったものだから恥ずかしさのあまり俯いてしまった二人だった。
そんな様子を見ていた神羅達がニヤニヤしながら言った言葉がこれであった。
「お二人さん、夫婦喧嘩は犬も食わないわよ〜❤︎」
「「誰が夫婦かーーーっ!!!」」
──ハモった。
クラス中に爆笑が巻き起こる。
そして第4試合は、彼らの“いちゃつき騒動”により、仕切り直しとなった──。
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