乂阿戦記4 第二章 紫の絶対無敵アイドル ブリュンヒルデの恋バナ相談-7 妄想が暴走するブリュンヒルデ
そのとき、空気をぶち破るように飛び込んできたハイテンションな声が響き渡った。
「なになに〜?恋バナ恋バナ〜?お姉さんも相談に乗ってあげるわよ〜❤︎ やーんこーゆーの甘酸っぱいの大好き〜!!」
なんとそれは今世紀最大の絶対無敵アイドル、ブリュンヒルデその人だった。
「ドアーダ魔法学院の皆様、恋バナと言う非常に重要な話し合いをいたしますので、一時停戦よろしくて?」
ブリューナクのメンバー迦楼羅スモモも現れた。
……目がキラキラしている。
どうやら彼女も恋バナに目がないようだ。
こうして両校の女生徒たちによる恋愛会議が始まったのだった……。
そしてその恋愛会議の話題の中心は、もちろん相談を持ちかけてきた雷華の件である!
まず最初に口火を切ったのは意外なことに白水晶だった。
彼女は真剣な表情になると真剣な眼差しで語り始めたのである。
その表情はまるでこれから戦場に赴くかのような覚悟を感じさせるものでありその場の空気が変わった瞬間でもあったのだが、内容は至ってシンプルなものだったりする。
つまり要約するとこうだ───────…………。
「進捗!!……好きな男の子が出来たらとにかくアタックあるのみ!積極的なアプローチが肝要!!……ソースは我が主の妹君ミリル様!!!……ミリル様が猛烈スキスキアタックを仕掛けてから雷音様は随分ミリル様を意識するようになった!! きっとあともう一押しで陥落できる!! 雷華さんはミリル様を参考にすれば良いと思われる!!」
というものだった。
なんとも微笑ましいアドバイスではあるが、実際にそれが上手く行くかどうかはまた別の話なのである。
何しろ相手は雷音とは容姿は同じでも朴念仁の正義バカ龍獅鳳
ある意味雷音以上に乙女心に鈍感そうである。
……まあそれでも今の段階ではこれ以上無いくらいに的を射た助言であることに変わりはなく全員が納得していたりしたわけなんだが…………問題はここから先の話である。
特に恋愛知識だけ豊富な絶対無敵アイドルブリュンヒルデの助言が厄介だった。
恋愛に奥手な雷華とっては頭を抱えたくなる事態に陥る助言だった……!
なぜなら彼女たちの口から出た言葉はどれもこれも耳を疑うような内容ばかりだったからである!!!
その内容というのが以下の通りである!!!!
1『とりあえず既成事実を作る』
2『媚薬でも何でも相手の理性を奪うこと 』
3『相手に好意を抱いてもらうためにはどんな手段も惜しまない!』
4『相手が自分以外の女性に靡かないようにすること!!』
5『自分から告白するのではなく相手から言わせるように仕向けること!!』
6『勝負下着を身につける事!』
7『キスマークをつける事!ただし見えるところはダメ!見えないところに付けるのがポイントだよ♡』
──聞いていたスモモの頬が紅潮し、「さ、さすがにそれは……」と視線を泳がせる。
8『上目遣いに弱い男が多いので頑張ってみよう!ついでに胸を押し付けてみよう!』
9『お色気作戦も効果的!普段は清楚な子がいきなり露出度の高い服装とかしたらドキッとするでしょ?』
10『手作り料理を作ってあげるのもいいよね〜!胃袋を掴むってやつだね♪味はもちろんだけど気持ちを込めて作れば絶対に喜んでくれるはずだよ!あとは愛の言葉を添えてあげれば完璧かな?ふふふ、楽しみだね〜❤︎ 隠し味にセレスティアさんの愛のお薬入れちゃう?』
11『ムードを大切にしよう!夜景の綺麗な場所で二人きりになってロマンチックな雰囲気になったらもうこっちのものだよね♡後は流れに任せてレッツゴー!あ、勿論避妊具を忘れずに用意しておかないとダメだよ☆』
12『とにかく自分の気持ちを素直に伝えることが大切だと思うんだよね!変に駆け引きしようとするよりもストレートに言った方が伝わると思うよ?例えば「愛してる♡」とかね〜』
13『プレゼントも大事かも!高価なものは引かれちゃう可能性があるから注意が必要だけど、気持ちがこもっているなら喜んでもらえるんじゃないかな?……えへへ……』
14『そうそう!やっぱりデートは欠かせないよね!一緒に色んな所に出かけて思い出いっぱい作っていけば二人の絆はさらに深まると思うからね♡♡それにスキンシップだって大事だよ♡♡♡たとえば腕を組んだり手を繋いだりしてさりげなくボディタッチしてみたりしたらどうかな??うん絶対効果ありだから試してみて!!!!うんうん大成功間違いなし!!!!!!(^_-)-』
15『……まずは抱き締められて、耳元で囁かれて……ふふ、そしたら……んふぅぅ〜〜〜〜♡♡♡』
16『あ、あれ?これって私の妄想!?……うぅ、誰か止めて〜〜〜!(鼻血)』
ブリュンヒルデの"恋のライバル"フレアが哀れみの表情でブリュンヒルデを制止する。
「なあブリュンヒルデ?それアドバイスじゃなくて、お前がレッドの兄貴にしてもらいたい願望だよな? あとアンタいやらしい本の読み過ぎじゃない? もしくは芸能界の恋愛事情の闇を見過ぎだとか……もうそれ以上は自分を傷つけるだけだから、その辺にしておいたら? ほら鼻血まで出てるぞ?……」
そんな彼女の言葉にようやく我に返ったのか、顔を真っ赤にして慌てて鼻を押さえるブリュンヒルデであった。
(うぅ……恥ずかしい……まさか私があんな妄想をするなんて……)
彼女はそう思いつつハンカチで鼻を拭くのだった……。
一方雷華はブリュンヒルデの過激な提案に顔を真っ赤に染めていた。
そんな彼女の様子を見たネロが心配そうな表情をする。
「おい、大丈夫か?顔が赤いぞ?」
その言葉にハッとして我に帰ると、深呼吸をしてから改めて話し始めた。
「す、すまない、少し気が動転していただけだ。気にするな」
そう言って誤魔化すように咳払いをすると話を続けた。
「あ、あの勘違いしてほしくないんだけど、私はただ獅鳳の前だとぎこちなくなっちゃうから、神羅姉様や絵里洲みたいに男子と自然体に仲良く振る舞えるコツを聞きたかっただけなんだ!!」
そう言うと恥ずかしさのあまり俯いてしまった。
「……とにかく私は、もっと自然に接したいんだ。変に気取らずに……獅鳳と、普通に笑い合えるように」




