乂阿戦記4 第二章 紫の絶対無敵アイドル ブリュンヒルデの恋バナ相談-6 雷華の相談
(それにしても彼女とまさかこんな形で戦う事になるとはね……)
鵺はそう思いながらも自分に近づいてくる黄緑の盗賊服の美女を見た。
妖艶な盗賊服の女は首を傾げながら鵺に声をかける。
「……あれ?あなたもしかしてユエ?龍麗国蛮王アン・ユドゥグの娘アン・ユエじゃない?」
「えっ……?」
その言葉に思わず動揺してしまい反応してしまうのだが直ぐに平静を取り戻した振りをする事にしたようだ……。
「……人違いよ」
鵺がそう答えた瞬間、暮森レヴェナの唇が、妖艶に歪んだ。
(やっぱり……隠し事が下手な性格、変わってないのね。ユエ……)
「あら、そう……じゃあ、あなたの“右手のヨグソトースの刻印”も見間違いかしら? ふふ、勘違いってコワいわねぇ…そうよね。タイムトラベラーじゃあるまいし……」
どうやらまだバレてはいないみたいだな……と思いたいが果たして本当にそうなのだろうか……?
あの女、暮森レヴェナはしたたかな女だ。
気づかないふりをして、本当は私の正体に勘づいている可能性が高い。
彼女の目は誤魔化せないかもしれない……?
なぜなら彼女は人の心を読む事に長けたスパイだから!
今はそんな事を考えている場合では無いと思う。
とりあえず、サバイバルゲームを楽しむ学生のふりをしてやりすごそう。
鵺はそう決めペインティング光線銃を構え、レヴェナに立ち向かっていった。
先輩陣が戦っている様子を横目で見ていた神羅と絵里洲は溜息交じりの会話を交わし始めた。
「はぁ~、全くもうなんなのよぉ~!なんで私達までこんな事しなくちゃいけないのよ~!」
そう言いながらプンスカ怒る絵里洲をなだめながら神羅が答える。
「……仕方がないでしょ……。これもアテナちゃんをアカデミア学園に取られない為なんだから……。」
するとそこへ突然やってきた一人の女生徒が話しかけてきたのである。
それは赤髪の少女だった……
神羅の妹雷華である。
「神羅姉様ーすみませんっ!!」と言いながら元気よく走ってきた少女は満面の笑みを見せている。
「あら雷華ちゃんどうしたの?何かあったのかしら?」
そんな妹の様子を見てニコリと微笑む姉に雷華は言った。
「……あの、実はちょっとお願いがあるんだけどいいですか……?その……殿方に関する相談事です……」
もじもじしながら上目遣いで見つめてくる妹を見て一瞬ドキッとした神羅であったがそれを悟られないよう冷静に答えた。
「いいわよ♪何かしら♪」
しかしそんな彼女の気持ちを知ってか知らずか雷華は少し恥ずかしそうにモジモジしながらも意を決して言ったのである!
「ね、姉様ってオームさんとどのくらい仲が進んでるんでるの?教えてほしい!そ、その、もうデートしたりとかしたの?」
(えっ……?)と驚くと同時に一気に顔が熱くなるのを感じた彼女は慌てて誤魔化すように言ったのだが逆に怪しく思われてしまったようだった……。
そしてその様子を見ていた他の生徒たちからは何やら生暖かい視線が向けられているように感じてしまい余計に恥ずかしくなったのだ。
だがそれでも何とか平静を装いつつ返事を返すことにしたのだった。
「か、彼とは買い物に行ったり、お弁当食べたり……えっ?それってデート!?ま、まさか……私って、もうそんなに進展してるの!?」」
……それにしてもどうしてこの子はそんな事を聞いてくるのだろう……?
もしかして私の知らない間に何か獅鳳君との間で関係が進展しているとでもいうのだろうか??
だとしたら非常にまずい事になるかもしれないわね…………。
まさか妹に恋の進展で負けるなんて……姉として、いや女として負けた気分……っ!
よし!!こうなったら直接聞くしかないわ!!! そう思った神羅は思い切って聞いてみる事にしたようだ…………
(ゴクリッ……!)
緊張のあまり思わず唾を飲み込む彼女だったが覚悟を決めて質問することにしたようである。
「そ、それで、雷華は獅鳳君とは今どうなのかしら??」
ドキドキしながら返答を待つ彼女に対して、当の雷華はというとキョトンとした顔で首を傾げると、みるみると顔を赤らめさせていき、ようやく口を開いたかと思うと予想外の答えを口にしたのである!
「え?な、何がぁ?な、なぜそこで獅鳳の名前が!?」
雷華にそう尋ねられた瞬間頭が真っ白になってしまった神羅らは思わず叫んでしまう!
「ちょっ……!!ちょっと待って頂戴!まさかあなたまだ獅鳳君と付き合ってもいないっていうの!?第三試合であんなに可愛くおめかししてゲームセンターデートを満喫しておきながら?!」
……(ピシッ)
周囲の空気が凍った。
沈黙が流れる中で当の雷華は赤い顔を俯かせ困惑していると、そこへ助け船を出すかのように一人の人物が近づいてきたのである!
そこに、白銀の髪を風になびかせて近づいてきたのは――アカデミア学園の対戦相手、ゼロ・セイラ。
(雷華が知らない彼女の双子の姉)
――その足音は静かだった。まるで舞踏会の令嬢のように、気品すら漂わせながら。
だが次の瞬間、豹変したように雷華を抱きしめる。
「うふふ♡可愛い我が半身よ~♡♡ 意中の相手を落としたいならアテが可愛いあなたにいいこと教えましょう♡♡♡いや〜!ドアダ帝国の王子様と結婚とかなったら乂族ガチで繁栄待ったなしじゃ〜ん!!組織をあげて雷華ちゃんの恋路をサポートするよ! え? ジーマーで獅鳳君といい雰囲気なの? こいつぁパパに連絡いれなきゃ!! ……あ、コレ聞いたらパパ発狂するかな??」
「えっ?あ、あのっ……?」
突然の事に動揺している雷華をよそに、そのまま顔を近づけてくるゼロ・セイラ
その顔は真っ白な髪の色以外は、寸分違わず雷華と同じ顔であった。
「アテってねぇ、雷華ちゃんの幸せ応援団なの♡♡ だから超絶将来有望株の獅鳳君と付き合ってくれたら、アテ……死んでもいい♡♡♡いや、死なないけど♡♡♡でも指輪のサイズは知ってる♡♡♡」
雷華が恋の相談と言う気恥ずかしさからが必死になって逃れようと身を捩ると今度は別の声が聞こえてきたのである。
その声はまるで、耳元で天使が囁いたように――優しく、慈愛に満ち、どこか現実離れしていた。
そして声の主の方へ視線を向けるとそこには優しい微笑みを浮かべた美しい女性が立っていた。
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