乂阿戦記4 第二章 紫の絶対無敵アイドル ブリュンヒルデの恋バナ相談-3 サバゲールール
「第4試合“サバゲー対決”のルールを説明します!」
魔法学園のクラス委員長神楽坂レイミが、ホログラムを操作しながら語り出す。
「①戦場は専用のサバイバルフィールド!
②武器は光学式ペイントガンと発光模造刀!命中すれば“マーキング”として色が残ります!
③素手での打撃は禁止!女子が多いですからね!……でも、投げ技や寝技はOK。ただし怪我は禁止!
④攻撃を受けすぎた者は“退場扱い”となり、フィールド外から見学してもらいます。
⑤衛生兵が“ペイント除去薬”を用いて回復役を務めます。
⑥最後に――教師は“王将”です。王将がやられたら、即敗北です!」
そして締めくくるように、運営委員は付け加えた。
「参加者は教師1名+生徒25名、計26名ずつ。役割分担が勝負の鍵です!」
仕入れた情報によるとフェニックスヘブンこと鳳天は第四試合に、アシュレイ族の神子リーンは第五試合に出る予定だという。
それを念頭において皆で話し合い、まずは第4試合サバゲー対決に出場する生徒メンバー25人を選ぶことにした。
中等部三年からは6人
露木サウロン、紅烈人、狗鬼漢児、羅漢、羅刹、エドナ・ソウル
中等部1年女子からは10人
神羅、鵺、絵里洲、アクア、フレア、レイミ、ルシル、リリス、セレスティア、ネロ
中等部1年男子からは6人
雷音、龍獅鳳、アキンド、オーム、キース、イポス
小学部5年からは3人
雷華、ミリル、白水晶
以上25名の生徒が第4試合に選抜された。
そして選抜が終わると、すぐさま作戦会議が始まった。
「まず、全員を三つのチームに振り分ける必要があるわね。
一つ、敵の“王将”を狙う【アタッカーチーム】。
二つ、私たちの“王将”であるタット先生を守る【ガーディアンチーム】。
三つ、攻撃を受けた仲間を回復する【衛生兵チーム】。この三系統が基本よ」
「衛生兵は普段からヒーラー役やってるメンツがいいだろ。で、除去薬キットは5つ……。なら、神羅・絵里洲・レイミ・鵺、あと一人はどうする?」
「挙手! アポート使いのアキンド先輩を推薦します!」
白水晶の名指しに皆が頷くと、次なる話題は残る20名の配分だ。
「アタッカー16、防御4がバランスいいっしょ!」
「いやいや、攻撃全振り20で突っ込む“神風ロマン戦法”だろ!!」
「むしろ防御20で籠城しようぜ! 逆に燃える!」
「お前ら極端すぎィィィ!!」
そんな具合でやいのやいのと明日の試合の作戦会議は盛り上がっていた。
「はいはいみんな静かに!!それじゃ各自、明日の試合に備えて今日はゆっくり休んでね~」
「あ、そうだ、その前に一ついい?」
「ん、何だよフレア、まだ何か質問あるの?」
「うん、『魔法』って直接攻撃とかに使わないなら使ってもいいんだよな?」
「……ああ、そういや説明してなかったっけか」
説明不足だったかと反省しながら、雷音は一同に向き直った。
「ルールブックによれば、直接攻撃や危険行為に使わない限り、補助系や偽装・隠密系を含む各種魔法や特殊能力は自由に使用してOKみたいだな。」
「もちろん、それは相手チームにも許されてるってことだ」
「ってことは……多分だけど、“勇魔共鳴”をどう活用するかが、このサバゲーの勝敗を分けるカギになる気がする! あたしたちの中には、共鳴できるペアが結構いるでしょ? 勇魔共鳴って、時間制限つきのリスクはあるけど、終了間際に使えばほぼ無敵のフィニッシュブローが可能になる。だって、幽体化してる片方は物理無効なんだもん!」
フレアがそう言うと全員が納得の表情を見せた。
「よし!勇魔共鳴出来る者同士はペアを組んでおこうぜ!」
「「「「「賛成!!」」」」」
議論の中、雷音が手を挙げて忠告する。
「ただし── 勇魔共鳴は制限時間が切れた後は、“共鳴”したまま戦い続けると、幽体側の魔力が暴走して、最悪……ペア2人がガス欠になって動けなくなるから注意な!」
皆がうなずく中、アキンドが一旦意見をまとめる。
「よい、一旦整理しよう。現時点で出てる意見をまとめると──
・アタッカー:16〜18名
・ガーディアン:4〜6名
・衛生兵:5名
これで、あとは“勇魔共鳴”の組み合わせも意識して決めてこうぜ」
さて、雷音達魔法学園サイドが作戦会議で盛り上がるように、アカデミア学園の陣営も作戦会議に盛り上がっていた。
なにせ今回はアカデミア学園至上最高傑作の生徒と名高い生徒会長リーン・アシュレイと副会長鳳天が参加するのだから無理もないだろう。
ちなみに今回参加予定の生徒は、優等生と言えば優等生なのだが、ある意味魔法学園問題児クラスに勝るとも劣らないアクの強いメンバーが揃っている。
殺悪隊の“四強”、ブリューナクの“絶対無敵三姉妹”、ザ・メフィストの“黒き五重奏”――
アカデミアが誇る強豪ユニットが、勢揃いしていた。
その顔ぶれは、魔法学園の“問題児オールスターズ”にすら劣らぬほど、濃く、強く、そして――華やかだった。
魔法学園側が、真剣にサバゲー作戦に議論を重ねる一方。
アカデミア学園陣営も、熱い作戦会議を……やっている、ように“見えた”。
だがその実態は──
「じゃんけんポン!!」「あー負けたー! じゃ、俺オフェンス行きまーす!」
「ディフェンス希望のやつ、勝ち残りなー!」
一見すると熱気と緊張に満ちた“作戦会議”──
だがその正体は、すべての役職を**「じゃんけん」**で決めるという、アカデミア学園伝統の“全責任じゃんけん制度”だった。
この奇抜な制度の裏には、「優等生たるもの、どんな不条理にも順応すべし」という皮肉めいた合理主義が隠れている。
つまり、“勝てば攻撃、負ければ守備”という単純明快、だが運任せの大博打。
一方、戦略もロジックも飛び越えた、カオスと爆笑の戦陣がここにある。
「……なぁ、なんで俺らだけ、こんな罰ゲームみたいなことやらされてんだろうな……」
三年のプラズマ絶人が遠い目をする。
「まあまあ、こういうのは楽しんだ者勝ちっすよ♪」
下級生の浜田車虎が笑いながら肩を叩く。
「……って言いながら、ゼット君、対抗戦楽しんでるでしょ?」
キロネ海月がにやにやと茶化すと、
「これも青春だ。お互い楽しもうぜ」
クラブ・キャンサーがゼットの背中を豪快に叩いた。
そして彼らの笑顔の奥で、すでに“王将”や“護衛”の配置も決まっていくのであった──。
……そんなこんなで、ようやく決まった組み合わせは以下の通りだった。
まず王将たる担当教師は織音主水先生。彼は元々特殊部隊に所属していた経歴があり、戦闘訓練も受けているため、魔法学園側からペイント弾で狙われても自前で自分の身を守るだろうと満場一致で決められたのだった。
「主水先生は昔、女神国最強四剣神の一画で剣の風神って呼ばれていたらしい。都市伝説かと思ってたけど……今回のために来たってことは、本物ってことか」
そして次にディフェンスリーダーを担当するのは、生徒会書記を務める学年主席の少年ロイ・スィーガヌだ。
彼の能力である超高性能センサーを駆使して索敵と防衛を行いつつ司令塔として他のメンバーのサポートをする重要な役割を任されている。
さらにオフェンスチームには元傭兵上がりの体育会系生徒である、プラズマ・ゼット、海月・キロネ、浜田車虎、クラブ・キャンサー達、殺悪隊のメンバー四人が選ばれる事になった。
そしてディフェンスチームのメンバーに選ばれたのは、いずれも優秀な成績を修めた生徒たちばかりで、そのメンバーとはブリューナクとザ・メフィストのバンドメンバー達だった。
妊活中のキラグンター、スフィンクス夫妻はあまり動き回らなくてもいいように、王将の護衛役のポジションだ。
クレオラ、ティンク、ホドリコの3人は遊撃隊として参戦している。
(うふふ……私が“真のラスボス”みたいじゃない。──ふふ、だったらそれらしく、遊んであげなきゃね)
黒翼を翻し、月影の中に立つその姿は、冗談とも本気ともつかぬ不敵な微笑を浮かべていた。
……そうして全校生徒が見守る中いよいよサバゲー戦が始まる事となったのだ────…………!!




