乂阿戦記4 第一章 蒼の魔法少女狗鬼絵里洲の子守騒動-3 不審者セトアザス
「ちょっとちょっと!なんで私いきなりこんなところに呼び出されちゃってるわけ!?」
アキンドにアポートに呼び出された妖精がプリプリと絵里洲達に文句を言いいだした。
どうやら彼女は今回の作戦の強制参加に不満があるらしいのだが……。
(うーん……なんかこの子見た感じ性格キツそうだし、あんまり協力的じゃなさそうなんだけど……)
そんなことを考えている間にも話はどんどん進んで行くので仕方なく話に交じる事にした。
「まあまあそう言わずにさ!とにかく話だけでも聞いてくれよぉ〜!実は今俺達はある使命を受けて行動してるんだけどさ!」
アキンドの言葉に首を傾げる妖精であったがとりあえず話を聞くことにしたようだ。
すると今度は妖精が口を開く。
「対抗試合のお使いイベントの協力ねぇ。まぁ別にルール違反でもないみたいだし、ちょうど暇してたから手伝ってあげてもいいけど。後でスイーツ奢りなさいよ!まずは自己紹介をしようかしら!あたしはティンクっていうんだ。アカデミア学園小学部の五年生よ!よろしくね!」
そう言って握手を求めるティンクに戸惑いつつも、絵里洲は握手を返そうとした。
そして気づく。
相手は手のひらサイズの大きさだから、とても握手しにくい。
「あ、この姿じゃ握手しづらいわね」
ドロンと音を立てて、ティンクの姿がふわりと膨らみ、人間サイズの美少女へと変わる。
その変身の華やかさに、絵里洲はほんの一瞬、ちょっと羨ましくなった。
「ん?あれ?あなたザ・メフィストでベースやっていたティンク・ヴェルさん?あなたアカデミア学園の生徒だったの?」
「ありゃ?そういうお姉さんはミネルヴァのヴォーカル絵里洲さん? お姉さんこそドアーダ魔法学園の生徒だったんだ〜」
思わぬ所で意外な再会を果たした二人は驚きながらも喜び合った。
「いやータオルミーナで私たちを誘拐した一味と、こんなとこで出くわすとは思わなかったわ。この前はアテナちゃんのお母さんを助けるライブに協力してくれてありがとうね❤︎」
「いえいえ、こちらこそ⭐︎ 一応私たちのバンド、表向きにはメフィストギルドとは無関係って立ち位置だから誘拐犯呼びは堪忍して下さいね。表向き私達も誘拐犯の被害にあったってことになってるから。それよりそちらのお連れさんはどなたですかぁ?」
「ああ、そうだったわね!紹介するわ。アキンドと言ってアタシのパシリの下僕くんよ❤︎」
「なんでやねん!」
アキンドが即突っ込む。
「そちらの男の子の妖精さんは、あなたの家族?」
「そうよ、こちらは私の弟のエルデンリンクです」
紹介を受けた妖精はティンクより年下の男の子だった。
皆はそれぞれ挨拶を済ませた。
「ふーん……アキンドさんと絵里洲ちゃんは同じ魔法学園の生徒さんなんだ!何か2人って雰囲気似てるなぁ!何かしら?ヨシトモ出身の漫才コンビみたいな雰囲気?ところで二人は恋人同士なの?」
その言葉に反応したのはアキンドの方であった。
「え?君達妖精の目は節穴?俺とこの娘の関係はダメダメな問題児を指導する保護者とその庇護をうけるダメダメ駄目魔法女神だよ?」
その言葉を聞いた瞬間ティンクは噴き出し笑い転げだしたかと思うと、腹を抱えながらゲラゲラと笑った。
「ギャハハハハハッ!!あはっあははははっはははっっ!!!!」
まるで腹筋が崩壊したかのように、ティンクは地面を転げ回った。
読んでいるこっちまで釣られて笑いそうになるほどの、堂々たる爆笑だった。
おこちゃま達はちょっとしたことでも笑いのツボにハマってしまうものだ。
絵里洲だけが顔は笑っているようだが怒り心頭の様子だwww
(アキンド〜お前あとでボコる!!)
一方その頃、運動場の方でもちょっとしたアクシデントが発生していたようで……。
女生徒達がなんといつの間にか会場内に入り込んでしまっていた不審者を発見してしまったのだ!!
中年小太りの男であり年齢は40代前半くらいだろうか……?
何やらカメラを持って怪しい挙動をしている模様だ……!
彼は一体何者なのか……?
謎である……!……おや?どうやら彼の近くに座っていた女の子が怯えているようだが一体どうしたのだろう……?
そして更にその近くにいた別の女の子も何故か震えているように見える…………これはどういう事なのだろうか??
ますますわからない事だらけだが一つだけ確かな事は彼が只者で無いという事だけは言える……。
とりあえずまずはあのアホを何とかしなければならんな!!!
よし分かった任せろッ!!!!!!
アキンドは早速行動を開始する事にしたのだった。
「アポート!」
〜数分後〜
学園の女子達を盗撮していたセトアザスが、ぐるぐる巻きにふん縛られ、絵里洲達の前に正座していた。
「あんたねぇ、さっきから何やってるのか分かってるのかなぁ?」
絵里洲が呆れた様子で問いただすと、男は冷や汗をかきながらヘラヘラと笑って答えた。
「いやぁ~ワテなにも別にやましいこと何一つしてへんで〜!ぶへへへへへ~!」
その様子を見て、その場にいた誰もがこの男の不審者ぶりを察した。
「いやお前絶対悪い事やってただろ!?正直に言え!じゃないと今すぐお前をズタブクロにするぞ!!」
そう言いながら、エルデンリンク君は両手に風魔法を纏って威嚇した。
すると男は慌てた様子で弁明を始めた。
「いやいやマジやってマジ!ワテただの一般人ですから!!ちょっとJC、JKの萌え萌えな画像撮ってネットで売りさばこうと思ってただけなんや!」
……その瞬間、周囲の空気が完全に凍りついた。
「「それは盗撮じゃボケ!!」」
アキンドと絵里洲が息ぴったりに、何処からか取り出したスリッパでセトアザスをしばく。
バシッ!!ベチッ!!ドカッ!!ドスンッ!!ズドンッ!!ボカァンッッ!!!!!
「ちょww 2人ともwwwwどつく動きが息ぴったりすぎwwwwww」
「やべー、マジでプロの漫才コントみたい(爆笑)」
ヴェル姉弟はプロ漫才師顔負けなコントをする2人に腹を抱えて笑っていた。
スリッパ乱舞の爆笑劇が終わった後も、リリムだけはぽかんと目を丸くしていた。
彼女にとっては、大人たちの激しいやり取りがただの“変な遊び”にしか見えなかったのだ。
「お姉ちゃんたち、なんで怒ってるのぉ??」
そんな純粋な質問に対して、真顔で答える。
「ああ、こいつが盗撮の犯罪者だからだ!!!」ビシィイイッ!!!と親指を立てて言い放った言葉に、その場の全員が納得してしまったそうな……。
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↑イメージリール動画




