乂阿戦記3 終章 最強でQ極のZ対無敵アイドルs‼︎-14 主人公は婚約者とキスを済ませ戦場に戻る
「……ハッ! あ、あれ……? 私は一体……?」
意識を取り戻した雷華が見たものは信じられない光景だった。
そこには倒れたまま動かなくなっている雷音の姿があったからだ。
雷音と雷華のダメージにより、クトゥグァ機は機械神としての顕現を維持できなくなり元の魔剣に戻ってしまう。
その光景を見たアタラ達は思わず息を飲んだ。
(まずい……! いまの衝撃でライブステージも使い物にならなくなってしまった!)
上空にいるアモン・サーガが大慌てで雷華の元に向かう。
「い、いかん!雷華ああああああ!!」
アモン・サーガを駆る乂阿門が叫んだ瞬間、ケイオステュポーンは右手を軽く払っただけで彼らを吹き飛ばしてしまったのである!
地面に激突し動かなくなった彼らを見て怒り心頭のアタラ達だったが、今は目の前の敵を倒さねばならないと判断したようだ。
戦況は劣勢だ。
そんな中、一人離れた場所にいたロキはあることを考えていた。
(このままじゃいずれ全滅するだろう……。だけとアイツの協力で君たち、ひょっとしたら逆転できるかもしれないよ?……)
ロキは内心ほくそ笑んでいたが、それを表情に出すことはなかった。
一方、気を失っていた雷音は夢を見ていた……。
婚約者ミリルに膝枕をしてもらい、頭を撫でてもらっている夢だ。
とても心地よく暖かい気持ちになれるのでずっとこうしていたいと思っていたのだが、ふと周りを見渡すと辺り一面が炎に包まれていることに気付く。
慌てて起きようとすると、何者かが自分の頭を掴み寝かしつけようとした。
「あ!まだ休んでおくのだ!」
それは自分を膝枕しているミリルだった。
「あれ?夢じゃない?」
「何を言ってるのだ?さっきまで気絶していたのだぞ。心配したのだから……」
そう言って彼女は少し涙目になっていた。
「あはは、わ、わりぃ……。」
「雷音は苦笑いしながら起き上がる。胸の奥に、どこか懐かしくも切ない匂いが残っていた。」
「ここは――神羅たちが“希望の歌”を響かせていたステージエリアだ。」
戦闘に巻き込まれたのか、エリアの中は天井が崩れ瓦礫が散乱していた。
自分の隣で雷華が絵里洲から回復魔法を受けている。
その隣ではクレオラが気を失い倒れている。
そばでスフィンクスが涙ぐみながらクレオラの手を握っている。
戦闘で天井が崩れたとき、クレオラは咄嗟にスフィンクスを庇い重症を負ったのである。
(くそッ!俺がもっと強ければ……!)
そんな後悔の念に苛まれていると、突然新たな負傷者が運び込まれてきた。
ラ・ピュセルに同乗していた副操縦者レイミである。
「ルシル!レイミ!お前までケイオステュポーンにやられちまったのか!?』
雷音が声を掛けると、ルシルは辛そうにしながらも答えた。
「すまない、油断した……私がふがいないせいでレイミさんに怪我を負わせてしまいました!」
そう言うとルシルはがっくりと膝をつくのだった。
レイミの容態を見た神羅はすぐに治療を開始した。
「これは酷い……急いで手当てしないと命に関わる!ねえ、誰か手伝ってくれない!?」
神羅の呼び掛けに応えたのは意外な人物であった。
その人物とはなんと、アシュレイ族の神子リーン・アシュレイだったのだ。
「私が治療にあたろう」
そういうと彼は軽々と彼女を担ぎ上げた。
「お、おう……助かるぜ」
(あれ? この人はてっきり惑星ヨトゥンヘイムのトップ会談に参加してると思ってたんだけど?)
リーンはまるで雷音の心でも読んだかのように彼の疑問に答える。
「ああ、各国とアング殿との会談は一通りのまとまりを見せてね。鵺君の封獣エリゴスに乗せてもらいアルゴー号にお邪魔させてもらってるのだよ」
なるほど、そういうことだったのかと思いながら納得していると、いつの間にか隣に立っていた鵺が話しかけてきた。
「奇跡の歌が止まったからギガス・オブ・ガイア達が『巨竜王の服従咆哮』でまた巨人に戻って暴れ出そうとしているわ……。早く奇跡の歌を再開しないと、一刻も早く止めなければ手遅れになるわ!!」
それを聞いた雷音はすぐさま立ち上がると叫んだ。
雷音が拳を握りしめ、声を張った。
「よし、任せてくれ!もう一度出撃して、奇跡の歌を取り戻す!」
その言葉に雷華も立ち上がる。
「兄よ、私も一緒に行くぞ。もう、回復魔法は済んだわ!」
雷華も再び戦場に赴こうとする。
だがそれに待ったをかけた人物がいた。
ハクア・プロジェクト社長ゼロ・カリオン(乂阿門)である。
「まて雷華、お前は赤の魔法少女としてステージに残り奇跡の歌を歌ってくれ!紅茜は俺のアモン・サーガのサブパロットに入ってもらうことにした。やっぱり二人乗りじゃなきゃ封獣、乂獣の力は引き出しにくいようだ。さらに付け加えるなら、アルゴー号の演奏伝達システムがオシャカになっちまった。俺のアモン・サーガとテイルのマルコキアスで奇跡の歌を巨人達に聴かせて回る事にした。だから紅茜の代わりに雷華、お前が赤の歌姫をやってくれ」
そう言われた雷華は少し考えた後こう答えた。
「分かった、では私はステージで皆のサポートをするとしよう!」
「……よし、頼んだぞ!」
そう言うと二人は拳を合わせた。
そして阿門と紅茜はアモンサーガを顕現させ、そのまま戦場へと駆けていった。
またアン・テイルはブリューナクの迦楼羅スモモをサブパロットに呼び込み戦場に飛び出した。
その様子を見ていた雷音は自分はどうやってクトゥグァ機を顕現させるか思案にくれていた。
正直言って自分1人では、機械神羅を顕現させるのは、1分がせいぜいである。
そんな時ミリルが雷音の両手をつかみ訴えかけてきた。
「雷音!私が雷音のパートナーになるのだ!私達勇魔共鳴もできるし、機械神の招来もきっと一緒にできるのだ!お願いするのだ……」
(そうか……!その手があったのか……!!)
雷音はそう心の中で呟くと大きく頷いた。
「そうだな!俺とミリルで力を合わせれば必ず出来るはずだ!」
そう言ってミリルの手を握りしめると、早速二人で精神を集中し始めた。
その瞬間二人の身体が光り輝き始める。
「我、汝の力を借り受けん……!」『我、汝の力を欲す!』
2人の声が重なり合い光の渦となって一つになっていく。
そしてミリルは目を瞑りキスをねだるポーズをする。
周りの女子たちがキャーキャーと騒ぎ出す!
「ば、バカ!だから、いちいちキスしなくてもクトゥグァの力は引っ張り出せるんだってば!!ったく……」と言いながらも雷音の顔はまんざらでもない表情であった。
ゆっくりと顔を近づけていくのだが、唇が触れる寸前で動きを止めてしまった。
ミリルの瞳が細められる。その距離は、あと数センチ。
雷音の心臓が、鼓動で喉を打った。――今にも、何かが始まりそうな気がした。
(なんだこれ……?なんか凄くドキドキするんですけど……)
すると次の瞬間、彼の耳に声が響いた。
「………雷音君、婚約者同士なのは知っているが、君は妹としょっちゅう接吻を交わしているのかね?」
ミリルの兄リーン・アシュレイだった。
雷音は青い顔をして義兄さんの方をみた。
その視線の先には冷たい視線で彼を見つめるリーンの姿があった。
彼は冷や汗をかきながら慌てて弁明した。
「ち、ちがうんすよ!これは儀式なんです!俺達の魂をひとつにするための!!」と言い訳するもリーンの目はさらに冷たくなっていった。
「ほう……それで毎回妹の唇を奪っていると……? 君は“儀式”と称すれば何でも通ると思っている口かね?」
そう言いながら近づいてくるリーンの姿に恐怖を覚えた雷音が逃げ出そうとしたその時、なかなかキスをしてこない雷音にごうをにやしたミリルが強引に雷音とキスを済ませた。
しかもしっかり舌まで入れてきてる。
女子達の黄色い声がさらに昂まる。
雷音は顔を赤らめながらもなんとか平静を保ちつつ、機械神クトゥグァを顕現させ戦場に戻っていくのだった。
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↑イメージリール動画




