乂阿戦記3 第六章 水色の初代魔法女神イサカ・アルビナスとクリームヒルト・ドラゴニア-4 英雄シグルド・スカーレット
――裏切られたのは、世界か、家族か。
銀河を護るため、実の父が率いる犯罪組織と戦ったひとりの若者がいた。
名はシグルド・スカーレット。
後に“銀河を護った巨人”と称される彼の、若き日の戦いの記録である。
かつて、巨人族主体で構成された犯罪組織が、幾多の銀河を混乱に陥れていた。
その巨悪に真っ向から挑んだひとりの宇宙刑事がいた。
彼は名を《ロート・ジークフリード》と名乗り、銀河連邦に所属する正義の執行者だった。
だが、その仮面の下の正体を知る者は当時、誰一人としていなかった。
その名は――シグルド・スカーレット。
彼はまだ若き新人刑事だった頃、自分が巨人族の末裔であることを知り、やがて衝撃の事実に辿り着く。
――実の父、ジークムンド・スカーレットこそが、メフィストギルドの総帥メフィスト・フェレスであったという真実に。
その日、彼は誓った。
父の野望を、必ずこの手で断ち切ると。
巨人族と人類が共に生きる未来のため、剣を取り、戦うと。
シグルドが宇宙刑事として初任務を任されたのは、鉱山惑星ドゥヴェルク。
その任務は、ある科学者の娘――Dr.グレートヒェンの娘・クリームヒルトの護衛だった。
だが護衛任務中、突如として彼女が拉致される。
犯人は、クトゥルフ教団の一団だった。
「くっ……このままでは……!」
彼は即座に追跡を開始。
道中、刺客の急襲を受けるも、鬼神パピリオの愛弟子であるシグルドは、卓越した剣技でこれを撃破。
そして辿り着いたのは、地下に潜むクトゥルフ教団の拠点だった。
「待てぇぇぇいっ!!」
怒号とともに飛び込んだ彼の前には、深き者どもが群がり、異形の実験装置が蠢いていた。
何人かの研究員が逃げ出そうとするも、彼は銃を構え、凛とした声で言い放つ。
「お前たちは包囲された。大人しく投降しろ」
次々と手を挙げる研究員たち。
だが、その中でただ一人、リーダー格の男――大司教マクンブドゥバだけが、笑っていた。
「グッグッグ……貴様、我らの“聖域”に踏み込んだな……!」
彼の肉体は既にヒョウモンダコのように異形と化しており、触手の毒牙が蠢く。
次の瞬間、シグルドは異空間に引きずり込まれる。
そこは、邪神の力が満ちた特殊フィールド――三倍の戦闘力を得る“邪神空間”だった。
しかし、シグルドもまた決して退かぬ。
「HERO――ロート・ジークフリード、変身!」
叫びと共に改獣の力を解放。
銀の甲冑を纏い、愛剣を抜いて立ち上がる。
触手を裂き、毒牙を避け、一閃。
「終わりだッ!」
その刃がマクンブドゥバの中心を穿ち、ついに勝利を掴んだ。
倒れた大司教に銃を向けながら、彼は問う。
「……お前らの目的は何だ?」
マクンブドゥバは笑いながら呟いた。
「シュブニアハート……ジュエルウィッチの力……我らが崇める“クトゥルフ様”の復活。それがすべてよ……!」
シグルドは沈黙のまま引き金を引いた。
麻痺銃弾が彼を眠らせ、他の研究員たちも次々と無力化していく。
すべてが終わったあと、彼はクリームヒルトを連れて脱出した。
その道中、少女がぽつりと尋ねる。
「……どうして私なんかを、助けてくれたんですか?」
その問いに、彼は静かに答えた。
「……俺の名前は、シグルド・スカーレット。銀河連邦の新米刑事さ。
そして、こういうときは助ける。それがヒーローってもんだろ?」
少女はただ、そっと微笑んだ。
「……ヒーローって、ちょっと恥ずかしいですね」
「うるせぇ、言わせんな」
二人の間に、初めて小さな笑い声が生まれた。
それからしばらくして、ふたりは交際を始める。
だが運命は、再び彼を試す。
地球圏統一国家連合の本部が置かれる巨大宇宙船が、突如テロリストの襲撃を受けた。
現場に派遣されたのは、シグルドと――パートナーであるクリームヒルトだった。
敵は予想外の存在だった。
なんと、学生時代の学友たちが、巨人族の力に覚醒し、襲撃に加担していたのだ。
「……なぜだ……お前らが、どうして……!」
交錯する想い。
だが、戦いは待ってくれない。
調査の結果、犯人たちは《巨竜王》という謎の存在による“洗脳”を受けていたと判明する。
――その時からだった。
シグルドは、巨人族の真実に向き合い始める。
歴史を遡る中で、彼は恐るべき事実に辿り着く。
《ケイオステュポーン》――あらゆる巨人族に絶対命令を下す“王”。
その存在は、遥か太古、邪神アザトースの盟友であり、今なお復活の時を待っている。
そして、その復活を目論む組織こそが――《メフィストギルド》。
総帥メフィスト・フェレスの正体は、己の父ジークムンド・スカーレット……!
その瞬間、すべてが繋がった。
裏切りと血の因縁。
英雄の中で、何かが音を立てて砕けた。
「……だったら、俺が止める」
決意のもと、シグルドは盟友アン・テイルを通じて白阿魔王ゼロ・カリオンと接触。
その協力を得て《ヤマンソスドゥヴェルク》の力を完全掌握し、銀河を駆けてメフィストギルドと死闘を繰り広げていった。
それは、やがて宇宙に刻まれる伝説となる――
ロート・ジークフリードの名とともに。
そして今、この物語を語るゼロ・カリオンは、静かに目を伏せながら語る。
「……昔のことを話そう。誰もが忘れたことだが、俺は忘れていない。
あいつは正しかった。正しいもののために、正しい剣を振るった。
シグルド・スカーレット――俺の、友だった男の名だ」
――これは、希望がまだあった頃の、英雄の記憶である。
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