乂阿戦記3 第六章 水色の初代魔法女神イサカ・アルビナスとクリームヒルト・ドラゴニア-1 クリームヒルトさん復活!
船の甲板に設けられた特設ステージの上では、今も尚ライブが続けられようとしていたのだった。
さて、ここで少し時間を巻き戻り、場面はアテナ達親子が病院に向かった直後の特設ステージ上になる。
ステージの上でクレオラはブリューナクのリーダー乂聖羅に向かって吠えた。
「さて絶対アイドルブリューナクの皆さ〜ん、私たちは女神メティムを見事甦らたわ! 次はあなたたちの番よ?『タルタロスに封じられた巨人達を解放する』ライブを見事歌いこなすことができるかしらぁ? それとも〜、『ぴえーん、わたし達には貴方達みたいな奇跡の女神ムーブはできませ〜ん(泣)』って土下座して謝ってみるぅ〜? さあどうするのかな、ねえねえ? んふふふふ〜♪」
と、すごい意地悪な顔でノリノリに煽っていた。
しかしそんな煽りに対して当のアイドルたちは怒るどころかむしろ余裕の表情を見せていた。
ブリューナクリーダー乂聖羅は胸をそらして煽りかえす。
「ふっふ〜ん♪あんた達がメティムちゃんを生き返らせた〜?ふんっ!上等だよ!ウチの『絶対無敵アイドル』にして『希望の女神』ブリュンヒルデちゃんのライブをなめんなよ〜! あんたたちが『生意気言ってごめんなさい』って謝るような、どでかい奇跡を今から起こしてやんよ!!」
そう言いながら腰に手を当てて胸を張っているその姿はなんとも自信に満ち溢れており、なんだかちょっと小馬鹿にしているようにも見えなくもない感じだった。
「んな〜……っ!!」
そんな彼女らの態度を見てイラッときたらしいティンクが文句を言おうとしたその時である!
突然会場全体に大きな声が響いたのだ!!
ざわ……ざわ……
「うぉぉぉおおおおっ!!!ブリューナク最高ォオオッ!!!!」
「いけぇええええええええっ!!!!俺たちに歌を聞かせてぇぇえええ!!!!!!」
その声の迫力にビックリした全員が慌てて周囲を見回すと、いつの間にか地上に多くの観客たちが集まっており、まるで地鳴りのような歓声を上げていた。
どうやら先程の煽りを聞いたファンたちが集まってきたようだった。
あろうことかハクア・プロジェクトは先程のライブからずっと生放送を全世界に流していたようだ。
このライブはハクア・プロジェクト決勝特別試合と言う位置づけで全国放送されているらしい。
その様子を見たミネルヴァやメフィストの一同は思わず呆気に取られてしまうほどであったという。
するとそこへ更に追い討ちをかけるかのように別の声が響き渡った!
「おおおお!!いいぞぉお!!頑張れぇえええっ!!!」
その声に反応するように次々と声援の声が上がる。そんな中、一際大きな声で叫ぶ者がいた!
「そうだぁあああああ!!!いけぇええええええええっ!!!!俺たちに歌を聞かせてぇぇえええ!!!!!!」
その声を皮切りに大勢の観客が一斉に声を張り上げる。
もはや収拾がつかないほどの大音量となったその瞬間であった!
突如床が大きく揺れ動き始めたかと思うと、轟音と共に下から床がせり上がり、スーパーアイドルブリュンヒルデが颯爽と登場したのである!!
紅茜がギターを、迦楼羅がベースを奏でる。
それぞれの音が響き合い、観客の鼓動すらリズムに取り込んでいく。
乂聖羅がドラムを叩きながらクレオラ達メフィストに吠え返す。
「メフィストの爺さんよく聞きな! 今からブリュンヒルデちゃんが歌うのは、あんたの息子シクルド・スカーレットからアテ等が託された歌だ!」
それを聞いて驚くメフィストとギルドのメンバーたち
「一体どういう事? 乂聖羅、シグルドお兄様は貴方達に何を託したというの?」
「ミネルヴァとザ・メフィストが歌った『ユミルの楽譜』はマルスがアビスダンジョンから見つけてきた半分に過ぎないのさ! 残りの半分は6年前英雄シグルド・スカーレットが見つけて来て私たちに託してくれてたんだ! 英雄シグルドは言ってたんだ。『本当に巨人たちを救いたいなら、歌えるのは君たちだけだ』って……」『ユミルの楽譜』は巨人を凍結封印やタルタロス束縛から解放する歌であるとともに、もう一つの役割があるんだよ! それが今からブリュンヒルデちゃんによって歌われる真なる『ユミルの楽譜』なんだよぉおっ!!!」
それを聞いたメフィスト達は驚愕した。
「じいさん、あんたの息子は、巨人族の裏切り者なんかじゃない! 誰よりも巨人族を想い、憂い、愛し、より良い未来を考えた英傑だ! 巨人族は戦争の道具なんかじゃない! 人だ! 普通に友情や愛情を持って仲良くなれるただのヒト種だ! それを今からわからせてやる! これはあんたの息子から託された想いだ! だから耳をかっぽじってよく聞きなあああ!」
聖羅が絶叫した後、音楽が流れ出す。
「さぁいくよみんなぁあっ!!準備はいいかいいっ!!」
「うんっ!いつでもいいよお聖羅ちゃん!」
「いっちょかましてやりますわよリーダー!!」
「いざ、参る!!」
「「「世界に輝く星のように、闇を照らし、希望の道を切り開く♪」」」
ちょうどその頃、とあるホテルにて、ブリューナクの生中継を観ていたイサカは突如立ち上がり、同席していた家族達の前でこう言った。
ちなみにホテルの部屋にはフレアの同級生アクア、リリス、レイミ、ルシル、セレスティアもいる。
彼女らはメフィストギルドの監禁場所から逃げ出した後、Dr.ファウストの膝下に逃げ込み保護してもらっていたのだ。
「Dr.ファウスト、姉上、レッド、フレア、シルフィス、ニカ、……それからフレアの友人たちよ、今から少しの間私は私でなくなるから驚かないで欲しい……」
「「「「「???」」」」」
皆が怪訝な顔をした後、イサカは目をつぶりまるで気を失うかのように椅子に座り込んだ。
そして数秒後、イサカは再び立ち上がるなり、肌の色と髪、目、魔力光の色が変わった。
肌の色は褐色から白に、髪、目、魔力光は黄緑色に変わった。
さらに髪型も大きなアホ毛がぴょこんと飛び出して変形していた。
「うあーーん、イサカ先輩体を貸してくれてありがとう! また現世に戻って来られるなんて思わなかったよー!!」
その瞬間、黄緑色の光が部屋中に広がった。
声が変わった。澄んだ少女のような声――間違いなく、かつて聞いたあの声。
「「「「「!!!???」」」」」
イサカの突然の豹変に皆が驚く。
それを見ていたずらっぽく笑うイサカだったが、すぐに真面目な顔になりこう告げた。
「お父さん、パピィ、レッド君、フレアちゃん、シルフィスちゃん、ニカちゃん! 信じられないかもだけど私だよ! クリームヒルトだよ! イサカ先輩が体を貸してくれてるおかげで今ちょっとだけ生き返っているの!!……お願い信じて……!!」
そう言うと涙を流し始めたので、一同は慌てて彼女を慰めにかかる。
そして、話をすればするほど、今のイサカがクリームヒルトだと確信せざるを得なくなっていた。
何せクリームヒルトしか知らない家族の秘密を全て言い当てている。
そして、生前のクリームヒルトと全く同じ、どこか子供っぽい喋り方と動作仕草、雰囲気気配、言いあげればキリがない。
「ま、間違いないよ……ママだよ……この感じ……間違えるわけないもん……!」
そう言いつつ泣き崩れるフレアを優しく抱きしめながら、そっと頭を撫でた後、今度は他のメンバーに向かって謝罪を始めた。
「……ごめんね、迷惑かけちゃって……こんなことに巻き込んじゃってごめんねぇぇぇえ……!!(号泣)」
それからしばらくしてようやく落ち着いたところで再び話し始める。
「みんなに力を貸して欲しいの! 夫から託された使命を今こそ果たさないといけない! お願いみんな、私をアルゴー号のところまで連れて行って!!あそこには私の仲間がいるはずなの! 彼らと合流したら一気に勝負をかけるわ!! もう一刻の猶予もないのよ!!!」
娘の懇願に父ファウストは答える。
「それは構わないが、その状態……お前とイサカは大丈夫なのか? 見たところ精神の入れ替えはかなり負荷が大きいと見た。一目でわかるように疲弊しているようだが……?」
「ええ大丈夫! 心配しないでちょうだいお父さん! 私なら平気だから安心して! それと、もう一つだけわがままを聞いてほしいんだけどいいかな……?」
「なんだ?言ってみろ」
「まずは子供達の子守をお願い!フレアちゃんとシルフィスちゃんとニカちゃんを守って!!それと--------------------して欲しいの。お願いできる?」
「…………わかった。約束しよう」
その後、彼らは準備を整えると、さっそく最終ライブが始まろうとしているアルゴー号に向け出発した。
出発したのはパピリオ、レッド、クリームヒルトの三人である。
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