乂阿戦記3 第四章 黄緑の勇者キラグンター・ドラゴニア-11 対バン準々決勝vsアフロディーテ
『それでは次は第4グループの登場となります!』
ミネルヴァのメンバーはすぐに次のステージに上がることになった。
出場者の入場を待つ間も観客の声援は止むことなく、否応なしに緊張感が高まる中、いよいよ運命の時がやってきたのである!
予選の順位はミネルヴァが二位でアフロディーテが五位
なので対バンはランキングが下のアフロディーテから先に演奏する事になった。ヴォーカルはセレスティア・ヴィーナス 、ギターはヘルメス、ベースは峰場イリス、そしてドラムはレジェンドミュージシャン、オルフェウスその人である!!
観客席からはどよめきが起こった。
それはそうだろう。
何しろ優勝候補筆頭たるブリューナクよりも知名度がさらに上の音楽界伝説の巨匠が出てきたのだから。
「おおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
会場全体に広がる割れんばかりの歓声の中、ついに両者の演奏が始まった! まずはオルフェウスによる激しいドラムソロから始まった。
それに呼応するかのように観客達のボルテージも一気に跳ね上がり、やがてリズムに合わせて手拍子まで始まった。
続いてセレスティア・ヴィーナス率いるガールズバンドのパートになったのだが、ここでもオルフェウスは圧倒的存在感を放っていた。
圧倒的なテクニックと迫力のあるサウンドで見るものを圧倒しつつ、それでいてどこか儚げなメロディーを奏でて観客達を魅了していくその姿はまさに生ける伝説と呼ぶにふさわしいものだったに違いない。
一方のオルフェウスが指導したアフロディーテのメンバー達も負けてはいなかった。
まるで一つの生き物かのように息のあったダンスとコーラスで盛り上げていく様は見事としか言いようがなかった。
その後の曲でも終始両者譲らずといった展開が続いたものの、最終的にはオルフェウスの存在感をまざまざと見せつける演奏になった。
しかしその音を聴いた者達は後にこう語ったという。
「あれはもはや音楽の戦争だった……」と……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 それから数分後、神羅達ミネルヴァの出番がまわってきた。
ミネルヴァのメンバーは先の演奏に気押され顔が青かった。
そんなメンバーの様子を察してか、漢児は声をかけた。
「オイオイみんな大丈夫か?」
その問いかけにメンバーはなんとか頷き返す事しかできなかった。
(……)
その様子を気にかけたのか今度は神羅に声をかけた。
「おい神羅ちゃん、あいつらの演奏聞いただろ? あれどう思う?」
「……さすかはオルフェウスさんだと思いました」
それを聞いてメンバーの顔色はますます悪くなっていった。
しかし神羅はそれを否定したのだ。
「違う違う!そうじゃないんです。あんな凄いミュージシャンと対バン出来るなんて……今日はすごく、ラッキーな日だと思うんです」
神羅は静かに、けれど確かな強さで微笑んだ。
「ね、ユノちゃん。アタラちゃん――一緒に、歌おう」
その一言に、二人は思わず息を呑む。
(……え? 今の声……)
(この落ち着き……この透明な気配……まさか、これは……!)
――女神ユキル。
かつて歌で世界を救済した伝説の光。その残響が、今、神羅の中に宿っている。
彼女はまだ気づいていない。だがその瞳は、確かに“あの日のユキル”と同じ輝きを宿していた――。
オルフェウスの音楽は凄かった。
凄すぎた。
だがそれはかつて歌で世界を救済した伝説の女神の記憶を刺激し、女神ユキルの再臨を暫定的に成してしまったのだ。
神羅本人はその事に自覚はないが、今彼女は転生前の奇跡の歌の女神ユキルに近い状態になっていた。
「……さあ、みんな行こう!私達も目一杯歌おう!アテナちゃんの想いをこの会場の何処かにいるお父さんに届けてあげよう!」
そう言って神羅はステージに向かって歩き出した。
他のメンバーも慌ててそれに続くのだった。
『それでは次の対戦グループの登場です!!』
MCの合図と共に神羅達は颯爽と現れた。
その姿を見た観客達からは割れんばかりの拍手が巻き起こる。
中にはスマホを取り出し写真を撮ろうとする者もいた。
そんな中、神羅は堂々とマイクスタンドの前に立ち、一呼吸置いてから話し始めた。
「はじめまして、私は今回チームを組む事になった神羅と言います。私達の歌を聞いてください」
「皆さん初めまして、私の名はアテナといいます。本日はよろしくお願いします」
こうして挨拶を終えたところでいよいよライブが開始された。1曲目は前回の大会でも披露したアップテンポなナンバーで始まった。
2曲目は感情を込めたバラード。3曲目は跳ねるようなポップソングで観客を沸かせた。
そして迎えた4曲目――イントロが流れた瞬間、空気が一変する。
まるで、光と音がねじれ合うような空間。
さらに5曲目へ。突如、激しいドラムビートが鳴り響いた!
観客席からどよめきが起き、そのうねりが波紋のように広がっていく。
〜♪〜♪〜〜♪〜♪〜〜〜〜〜〜!
その瞬間、神羅たちの本気がぶつかり合い、空間全体を震わせた。
「よっしゃあ!!」
叫んだファンの声は、その場の熱狂を象徴していた。
その後、5曲目が終わり最後の6曲目に入ろうとした時だった……突然異変が起こった。
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