乂阿戦記3 第三章 黄衣の戦女神 峰場アテナの歌-12 雷帝の野望
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それは今から100年前のこと……
当時、天空神ウラヌスの妻である女神ユミル・ガイアは夫を殺した息子クロノスへの復讐の機会を狙っていた。
そんな時、たまたま地上へ降り立った時に人間として暮らしていた孫のデウスカエサルに再会してしまうのである。
デウスカエサルは邪神軍に組みした邪悪な父クロノスよりも人格者で神聖天空拳の師匠でもある祖父ウラヌスの方を敬愛していた。
当時の彼は兄ノーデンス・ポセイドンとともに、祖父を殺した父クロノスへの復讐の機会を虎視眈々と狙っていた。
そんな折、偶然出会った祖母を見て、このまま放っておいてはいけないと思い声をかけたのだった。
「おばあさま、なぜこんなところにいるんですか!?」
「デウスカエサルかい……?久しぶりだね」と懐かしそうに言うガイアだったが、すぐに険しい顔になる。
「ところでアンタは地球に何しをに来たんだい?」と聞くと、デウスカエサルはこう答えた。
「もちろん、父クロノス…否、オリンポスを裏切った暗黒時空神ヨグソトースを殺しに来たんですよ」
それを聞いた瞬間、ガイアの顔が強張るのが分かった。
そして恐る恐る聞いてみることにした。
「もしかして……また何か企んでいるのかい?」
それを聞いてデウスカエサルは少し悲しそうな顔をした後、静かに頷いた。
「その通りです」と言ってさらに続ける。
「父クロノスが生きている限り、いずれ必ず争いが起きます。だからその前に私が殺すんです。それに父は大切な兄弟達を次々と殺していった。もう許せないんです」と言った後で拳を握りしめる仕草を見せる。
それを見たガイアは思った。
この子は本気だと……。
「クロノスや配下の邪神軍は強大だ。今のお前たちでは勝ち目はない」と言うとデウスカエサルは首を横に振って言った。
「いいえ、私たちならやれます」自信たっぷりな様子だったのでガイアは心配になった。
(この子は昔から血の気が多いからなぁ)と思いつつも一応忠告しておくことにする。
「いいかいデウスカエサルよくお聞きなさい、たとえお前がどんなに強くても一人で出来ることなんてたかが知れてるさ」
その言葉に少しムッとするものの黙って聞いていた。
そんな彼に向かって言い聞かせるように話を続ける。
「横暴なクロノスには私も思うところがある。私も力を貸そう。私の研究の成果である巨人族の軍勢を使うと良い。ギガース、ヘカトンケイル、サイクロプス…彼ら巨人族は皆非常に強力だからね、きっと役に立つはずだよ」そう言ってウインクをするガイアに対してデウスカエサルは申し訳なさそうに頭を下げるのだった。
「ありがとうございます……おばあ様の助力があれば百人力です」と言う彼に思わずやれやれと首を傾げるガイアであった。
それからしばらくして地球連邦軍と旧神軍による邪神軍への総攻撃が始まったのだが、ガイアの巨人達は大いに戦争に貢献した。
だが戦後デウスカエサルは巨大すぎる巨人族の力に危機感を抱き彼らを封印してしまった。
後に彼はこう語ったという。
「私は愚かだった。あの時もう少し考えて行動していれば良かったのだ……巨人族などという制御出来ぬ力に頼らなければ地球は滅びずにすんだのだ……」と……。
意識の世界でメティムは祖母の残留思念に尋ねる。
「地球が滅んだってどういうこと!?」
すると祖母は答えた。
「そのままの意味だよ。お前も知っての通り、この地球は一度滅んだのじゃ」
それを聞き驚愕するメティムに対し彼女は続けてこう言った。
「かつて神々は互いに争った挙句、自滅した……その戦いの中で生まれたものが生物兵器たる我々巨人の一族なのだ。ギガス・オブ・ガイアは敵を殲滅する兵器として生まれた。だが邪神達から人類を守るはずが、人類が邪神を倒すことに固執するあまり、意見のズレから対立し合い、巨人を暴走させ守るはずの人類ごと全てを滅ぼそうとしてしまったのじゃ」
そう言うと遠い目をしながら語り始めた。
今から百年前、神話の時代が終わりを告げようとしていた頃の話である……。
「デウスカエサルは地球の9割の地表を踏み潰した巨人族を今も警戒している。巨人族全て駆逐するか完全に奴隷にするかしなければまた地球は滅びると固く信じてるのじゃ……実際100年前地球の文明は破壊され尽くしたのだからのう……。その巨人族の王にしてすべての巨人を意のままに操れる巨竜王が再臨した現在、世界は破滅の危機にさらされておる。だからデウスカエサルはエキドナハートの力を使い現存する巨人族全てにいつでも自害を命じる事が出来る大量奴隷化計画を立てておるのじゃ。だがほとんどの巨人族は地球人を滅ぼしたいなどと思ってはおらん。彼らは操られさえしなければ、シグルド殿のように人類と友好的に共生したいと考えておる。もう一度地球が滅びるか現存する巨人族全員をデウスカエサルの家畜にさせるか。今、世界は選択に迫られている。この危機を乗り越えるためにもお前達の力でなんとかせねばならん……!」
そう言い残すと、ガイアの姿は薄れていきやがて消えていった。
メティムはその話を聞いて身震いを覚えた。
彼女が語るのは事実なのだろうか……? いや間違いなく真実なのだろう。なぜなら祖母がウソをつくはずがないからだ。しかしそれにしても話が壮大すぎてにわかに信じられないというのが正直なところだ。
でももし本当なら大変だ……!このまま放っておいたらいずれ世界が滅ぼされてしまうかもしれない……!!そう思うと居ても立っても居られなくなり、いてもたってもいられなくなったメティムは立ち上がり叫ぶように言った。
「そんな恐ろしい計画絶対に止めなきゃ!!」
彼女がそう叫んだ時、彼女の姿は人間の姿に戻りケイオステュポーンとデウスカエサルの前に立っていたのだった。
デウスカエサル、マルス、スパルタクス、ギルトン、プリズナ・ヴァルキリード
5人は突然の事に驚きのあまり言葉を失ったまま呆然と立ち尽くしていた。
そんな5人に構わずメティムは大声で彼らに呼び掛けた。
「お願いみんな!どうか私に力を貸して!!」
それを聞いて我に返ったデウスカエサルが彼女に言う。
「……一体どういうことだ? なぜお前は人間の姿に戻っている? お前は巨竜王の従属咆哮を聴き巨竜王の傀儡になったはず……巨人族の血を引く者は奴の従属咆哮に決して贖えぬ! あの最強魔女ラスヴェードでもない限り! 小娘、貴様にあのラスヴェードに匹敵する超精神力があるとは到底思えぬぞ?」
それに対してメティムは言った。
「それは私が巨人の血以外のものすごい血を引いてるからよ!」
「な、なに?まさかそれは!?」
驚くデウスカエサルにメティムは告げる。
「そう我が名はメティム・ソウル!創造神アザトースと互角に戦った破壊神ウィーデル・ソウルの孫なんだから!」
「ぬうう!」
その名を出されては、さしものデウスカエサルも得心するしかなかった。
そしてデウスカエサルはメティムに言った。
「なるほどお前が我らの敵となるなら確かに脅威だな……」
そしてメティムはこう続けた。
「おばあちゃんから聞いたわ。あなた達の世界オリンポスでは過去に何度も地球と私達の世界スラルを行き来していたらしいわね。そしてその度に私のご先祖たる巨人族と戦っていたって」
「ああ、その通りだ。もっとも我々オリンポスに侵攻しようとしたのは巨竜王ケイオステュポーンだけではなかった。奴らは邪神共と共に我々に歯向かい、この偉大なるデウスカエサルの世界を滅ぼそうとしたのだ!だが我々はそれを返り討ちにした。そして最終的にこの世界の支配権を勝ち取ったというわけだ」
「正直言って貴方もケイオステュポーンも私達からすればどっちもどっちの大悪党とって感じなんだけど……まあそこはいいわ。問題はそのあとのことよ!」
「その後だと……?」
「そうよ、あなたたちは巨人の支配権を使って地球人達もを奴隷にしたいそうじゃないの!」
メティムの言葉に、デウスカエサルの表情がゆっくりと変わっていった。
無表情だった顔が、じわじわと笑みの形に歪んでいく。
それは歓喜でも怒りでもない。まるで神が愚民を見下ろすような、冷ややかな微笑だった。
⸻
「……図星のようね」
メティムがゴクリと唾を飲む。
雷帝の声には苛立ちの色はなかった。
あるのは、余裕と確信――勝者の余裕。
⸻
「貴様ら愚かなる“人間”どもに告げよう。
我が統治は施し。命を与えるのは慈悲。
奪うのもまた当然。搾取されることに、感謝すらすべきだとは思わんか?」
⸻
メティムは目を見開く。
デウスカエサルは続けた。今やその声は、まるで演説のように響き渡っていた。
⸻
「選べ。
家畜として生き永らえるか――それとも、“誇り”とやらを抱いて滅びるかだ」
「お前のような娘が吠えたところで、この雷帝を止められると思うな。
力こそが絶対。慈愛など、我が前では無力なる飾りよ。」
⸻
そう言い切ったあと、彼はゆっくりと腕を広げる。
「ふははははっ……! 貴様のような理想主義者が幾人現れようと、世界の天秤は傾かぬ!
統べるはこの私! この雷帝デウスカエサルこそ、覇の化身にして選ばれし支配者なのだ!」
⸻
その言葉には誇張も演技もなかった。
彼は本気で――世界そのものが、自らに膝をつくべきだと信じていた。
「お断りよ!……てゆうか強豪ひしめく現世の勢力図的にそんなことが簡単にいけると思ってるの?」
「フン、確かにこの時代の覇王や魔王共の中にはこのデウスカエサルに匹敵する化け物が幾人かおるわなあ……クックック、あやつらを出し抜くためにも強大な巨人族を操るエキドナの秘宝は、なんとしても手に入れたいところよ……」
そう言うとデウスカエサルは再び邪悪な笑みを浮かべた。
「あら、やっぱりそういうこと考えてるんだ。ちなみに聞くけど、あなたの部下にはそういう野心を見抜いてる人は何人ぐらいいるのかなぁ〜?」
質問を投げかけるメティムに対しデウスカエサルは余裕たっぷりに返答する。
「フッ、当然だ。全員が承知の上よ……忠誠ではない、共犯としてな」
それを聞いてメティムはさらに表情を曇らせる。
「……ってことは、あなた一人をなんとかしても意味がないってことよね……」
すると今度は逆に、デウスカエサルの方がニヤけた表情を見せた。
「フハハ、なんだそんなこと気にしてたのか? 安心するのだな。お前の父"覇星"ゴームも俺と同じムジナの穴だ。いいやゴーム王だけではない。ドアダの蛇王ナイトホテップもタイラントの怒戦王アング・アルテマレーザーも、九つ世界のメルコール・ヴォータンも、龍麗国の蛮王ユドゥグも皆等しく天下の覇権を狙っておる! だが天に輝く極星は唯一つ! すなわち天下の覇権を握るはこの雷帝デウスカエサルのみよ! 立ち塞がるはすべて有象無象! 1人残らず排除してくれる!!」
(……そうでしょうね。あの人たちはみんな権力欲の塊みたいな連中だもんね。こんな化け物がゴロゴロいるこの世界ってマジでやばいわよね……)
「さて、話は終わりだ。そろそろこちらから仕掛けさせてもらうぞ!」
そう言い終えるや否や、デウスカエサルが巨大な雷霆を振りかざし襲いかかってきた。
メティムは咄嗟に身構えたが、その前に立ち塞がった者がいた。
その人物は全身に氷の甲冑を着込んだ騎士であった。
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