乂阿戦記3 第二章 オレンジ髪の金獅子姫スフィンクス・アルテマレーザー-4 鉄棍聖君ウィウィヴァ
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校舎裏の芝生の上、神羅とオームは並んでお弁当を広げていた。
チャイムはとっくに鳴っている。授業は始まって久しい。
「……タット先生の授業、好きなんだけどな」
「……けど今日はサボるって決めたんだろ?」
オームは気まずそうに笑いながら、卵焼きを差し出す。
神羅も微笑んで受け取り、小さく頷いた。
落ち着きを取り戻した神羅はオームにアテナちゃんに関わるこれまでのいきさつを説明をし、アテナの母メティムについて尋ねた。
「メティム姉さんに娘がいた!? それは本当なのかい神羅!!」
「ええ。けれどこの話には続きがあるの……」
「ど、どういう事?」
オームがそう言うと……突如視界が暗くなった。
神羅とオームの間に人影が割り込んだのだ。
「それ一体どういう事や!?」
その人影はオームの姉エドナだった。
「え! あれ? エドナさん何故ここに!?」
「……って言うか姉上、その手に持ったスマホで一体何を撮っていたんです? さては僕たちを出歯亀していましたね?」
「ちゃ、ちゃうねん! かわいい弟と神羅ちゃんの甘酸っぱいメモリアルを永久保存しとこうと思っただけやねん!」
「「やめて下さい!」」
オームと神羅が同時に怒鳴る。
「あ〜いやいや! それより神羅ちゃん、メティム姉さんに娘がいたってマジなんか? 一体だれに聞いたんや?」
「ご、誤魔化すのが上手いな〜、あー、はいはい分かりました……教えてくれたのは私の本当の父さん楚項烈の愛弟子だったアン・テイルさんからです。」
「っ!! あの白阿魔王ゼロ・カリオンの盟友アン・テイルから?……」
「ええ、」
オームは目を閉じてしばし考えこんだ。
「……神羅、僕達をアテナちゃんに会わせてくれないか? 一体どんな子なのか知りたいんだ。」
「あ、うん!」
翌日学校が終わり神羅達はオーム達の来訪を待つことになった。
オームとエドナはお供を一人連れ添い狗鬼家にやって来た。
「こんにちは。初めまして、私が神羅の母の狗鬼ユノと言います」
「その夫の永遠田与徳です」
2人は来客に丁寧にお辞儀した。
「これはどうもご丁寧に! ワシの名前はウィウィヴァ・ホーン。オーム様、エドナ様のじいやをしております。以後よろしくお願いいたします!」
挨拶を返してきたのはドワーフの老人だった。
「ふん、誰か来たかと思えばオヌシか…覇星の使徒十大長老筆頭のオヌシがわざわざ出向くとはな……アテナちゃんがゴーム王の孫やも知れぬというのはいよいよ真やも知れぬな……まあよう来た。いつぞやの戦場以来じゃな。確か最後に会ったのは旧支配者イタクァを封印した時じゃったか? のう鉄棍聖君ウィウィヴァよ?」
そう尋ねて来たのはなんとドアダ首領ガープ・ドアーダこと永遠田加富であった。
彼はこの家の主永遠田与徳の祖父だ。
「ふん、久しぶりじゃなガープ。お前ワシらが昔苦労して封印したイタクァをまんまと逃してしまったそうじゃな? 一体なにやっとるんじゃ? 偉くなって平和ボケしおったか?」
「じゃかましいわ。若い頃の未熟な自分ならいざ知らず、今の円熟したワシならイタクァ如きワンパンだっつーの!」
「はあ?イタクァの奴めは改獣に進化してえらくパワーアップしてるよーじゃが? 耄碌したヌシに今のイタクァを倒せるのか?」
「ぬかしたなクソジジイ!」
「クソジジイはヌシじゃろがい!」
ドアダ首領ガープと覇星の使徒十大長老筆頭ウィヴィヴァ、この二人口こそ悪いが仲がいいのだろう。
共に楽しそうに悪口を叩き合っていた。
「このやり取り懐かしいな……」
「ホントですねえ」
「ああ、全くだ。つい懐かしくなってここまで来てしまったがまだワシの正体、楚項烈の名は秘さねばならぬと聖羅から言われておる」
そう口を開いたの隣の家の大黒柱乂阿烈だった。
「あら、聖羅ちゃんが?」
たずねかえすのは阿烈の妻プリズナ・ヴァルキリードである。
「うむ、聖羅の未来視によれば此度のガープ殿とウィウィヴァ殿の話し合いは歴史の分岐点となる重要なポイントらしい。故に此度の席には下手な干渉をせぬよう席をはずすつもりでおる。それに戦友同士の積もる話に水をさすつもりもないしな」
彼の表情から察するに多分あの2人は親友でかつては夢をともにしたこともあるのだろう。
「さてガープ、我が古き戦友よ。メティム様の娘やも知れぬと言うアテナ殿に会いたいのじゃが……」
ウィウィヴァが話すと同時に扉の向こうからノック音が聞こえた。
「失礼します。お爺様。今よろしいでしょうか?」
「ああ、いいとも!入っておいで!」
ガープは嬉々として新しいひ孫アテナを迎え入れた。
そこに入ってきたのは美しい金髪の童女アテナだった。
その少女を見てウィウィヴァは目を見開き硬直した。
そして懐からスマホを取り出して写真フォルダから昔の写真を引っ張りだす。
「あ、あ、あ! メ、メティムちゃま! メティムお嬢ちゃまああああ!! ガ、ガ、ガ、ガープ! 間違いない! 間違いないぞ! このアテナちゃまは間違いなくメティムお嬢ちゃまの御息女じゃ! 見ろ! ワシが昔記念撮影したメティムお嬢ちゃまの幼き姿と瓜二つじゃあああ! うああぁ〜ん! 可愛いらしかったメティムお嬢ちゃまと瓜二つなんじゃ〜!!」
ウィウィヴァの絶叫が家中に響き渡った。
「瓜二つじゃあああ! あのころのメティムお嬢ちゃまが……!時を超えてここに……ッ! うああああ!!」
ウィウィヴァは全力疾走でアテナに突撃、ガープ・ドアーダの側から強引にアテナを奪い取った。
そしてまるで我が子を守るかのように抱きかかえるとそのままアテナを家に連れて帰ろうとした。
アテナは突然の事に驚き目をパチクリしている。
「わあああ!じいや落ち着いてええ!」
「じいや誘拐やから! それ誘拐やから! そのままアテナちゃん城に連れ帰ったら誘拐やからああ!」
慌ててオームとエドナがウィウィヴァを止める。
「お、おいウィウィヴァ、何をとち狂っておるんじゃ? アテナちゃんがビックリしてるじゃろ! 正気に戻らんかい!」
ガープもあわててウィウィヴァを制止する。
何気にこのウィウィヴァ、ドアダ首領ガープや海王神ノーデンスに比肩する武仙でとんでもなく強い。
今この場でウィウィヴァを制止できるのはガープだけである。
「嫌じゃ嫌じゃ嫌嫌嫌じゃ! アテナお嬢ちゃまはこのまま魔王城に連れて帰るんじゃああ! もう二度とオリンポスなんて酷いところには引き渡さないのじゃあ! オリンポスと戦争になろうが、わしらの魔王城にお連れするんじゃあああ!」
ウィウィヴァはボロボロ泣きながら駄々をこねる。
「ぬあーボケたかウィウィヴァ! いい加減にせんかい!!」
「うるさい黙れ!!」
正気を失っているウィウィヴァはますます暴れだす。
その様子を見ていたプリズナは、そっと夫に耳打ちする。
「えーと、あれってあなたが止めに行ったほうがいいんじゃない? 鉄棍聖君ウィウィヴァ様が暴れたらこの辺一帯焼け野原になっちゃうわよ?」
「ぬぅ〜困ったじい様だ。だが覇星の使徒十大長老筆頭に怪我をさせると国際問題になる。なので捕縛術の達人たる羅漢を呼んで来てくれ。おっとオヌシが羅漢に鉢合わせるのはまだ時期ではない……母者を通して呼び寄せてくれ。あと羅刹ちゃんは事態をもっとややこしくしてしまうから呼ばないようにな……」
阿烈は溜息を吐くと鉄棍聖君ウィウィヴァを止めるべく行動を開始するのだった。