乂阿戦記1 第三章- 黄金の太陽神セオスアポロと金猪戦車アトラスタイタン-3 女神アタラ・アルテミス
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雲海を裂き、天の極に聳え立つは――
神すら踏み越えるをためらう、“理の壁”《アポロパルテノン》。
ギリシャ神話を想わせる荘厳な神殿建築。
かつて天界に君臨した神々の居城は、いまや《黄金宇宙》と《黒の宇宙》とを繋ぐ“異界門”にして、世界の理を統べる《オリンポス十二神》の本拠。
神と魔、聖と穢れの狭間に立つ、宇宙法則の終着点。
それが――“天衝宮”。
その聖域に、ただ一人の男が突入した。
「止まれェッ!! そこは……そこは神々の玉座だぞッ!!」
神兵たちの絶叫。
空間を打ち震わせる警鐘。
だが侵入者は止まらない。
神理の結界を踏み破り、ただ一直線に――玉座の間を目指す。
名は――ヨクラートル。
かつて《ドアダ七将軍》の筆頭、“狂乱道化”と呼ばれた最悪の悪党。
だが今、その瞳には一切の迷いもない。
「返してもらうぜ……俺のガキどもをよッ!!」
怒声が神殿の基礎構造を震わせる。
拳。蹴撃。魔力を帯びたカード。
神兵を打ち砕きながら、彼は進む。
もはや理も戦略も不要だった。
ただ“父親”として――神の国を、破壊していた。
⸻
一方、アポロパルテノン最奥。
光と静寂に包まれた玉座の間には、ひとりの女神が立っていた。
白磁の肌。月光をまとった栗色の髪。紅玉の瞳。
額に揺れる獣耳と、腰に滑らかに垂れる尾。
それは人でも、獣でもない。
いや、神ですら“隔てられたもの”――
神魔中和の体現者。
かつて“七罪の魔女”と戦い抜いた伝説の魔法少女。
今は《オリンポス十二神》の一柱、地と月の守護を担う戦乙女の神である。
その手には神霊波動通信装置。
液晶にきらめく光の紋は、星々を超えて、ある少女の気配を追っていた。
「……心配には及ばぬ。ワシが必ず取り戻す。ユノの娘は、ワシが守る」
その呟きは、“神域”すら震わせるほどの――誓約の言葉となる。
背後に控える神兵が一歩進み、問う。
「アタラ様……まさか、地球へ向かわれるおつもりで?」
「うむ。ユノの身に――いや、その娘たちの背に、“この世ならざる影”が宿っておる」
「なっ……ユノ様に、何か……!?」
「ふふ、案ずるな。ユノは変わらず元気じゃよ。まるで野山を駆ける鹿のように、な」
神兵の顔がゆるむ。安堵か、それとも困惑か。
「ですが……それでも、何故地球へ……?」
アタラはふと視線を落とし、淡く寂しげな笑みを浮かべる。
「――若き魔法少女たちが、追い詰められておる。それも、**“神ですら届かぬ闇”**によって、な」
玉座の間の空気が、氷のように張り詰める。
「……我ら神の眼は、すべてを見通している。
だがそれでも“届かぬ影”がある。ならば、我が身で照らすほかあるまい」
その瞬間、空間全体がきしむような重警報が鳴り響いた。
「報告! 神域アポロパルテノンにて敵影を感知! 侵入者、現在玉座の間に接近中ッ!!」
「なに……!? 一体どこの何者が……!」
「確認されたのは、たったの一名!」
「馬鹿を申すな! ここは神々の聖域ぞ!? たった一人で……!」
「……しかし、侵入者は――“神でもなく、魔でもない”。
纏っているのは、得体の知れぬ“異質の闇”とのこと!」
アタラの瞳が細まる。
「……ほう。骨のある阿呆が、神域にまで来おったか」
肩を軽く竦めると、女神は戦の気をまとう。
「よい。我が命、この腕、未だ鈍らぬことを示す、良き機会じゃ」
神衣が光を放つ。
月と地の加護を受けた神装が、戦闘の鎧へと変化する。
その姿は――神殺しの戦乙女。
やがて、玉座の扉が静かに開かれる。
その先に待ち構えるのは、神域にて最も無礼な侵入者。
そしてこの日。
運命をめぐる戦争の幕が、音もなく上がった――。
⸻
黄金の神殿。
神々の居城。その静寂を、踏み破る影があった。
名は――ヨクラートル。
「止めろォォッ!! 神域への侵入者だッ!!」
空を裂く咆哮。
神兵たちの刃が閃く。
だが、ヨクラートルは止まらない。
拳。蹴撃。魔力を帯びたカード。
そのすべてで、前へ前へと進み続ける。
技も、理も、神理すらもいらない。
この怒りだけが――
“父”としての誓いだけが、道を拓く。
「道を開けろォォォ!! セオスアポロォォォ!!」
黄金の柱が立ち並ぶ神殿回廊を、まっすぐに。
その突進は、理の守りを羽虫のように吹き飛ばす。
「な、なんだ……!? ただの道化ではない……!!」
「我らが誇る親衛神兵が、次々と……!」
「怯むなッ! たかがひとり! たかが人間ごときに……!」
だがその声も、まるで悲鳴だ。
ヨクラートルの疾走は止まらない。
「どこだ……! どこにいやがる……!
漢児を……絵里洲を……ユキルと獅鳳まで……!!
どこに連れて行きやがったああああああッ!!!」
怒声が空間を震わせる。
その咆哮は、天衝宮の最奥へと突き刺さった。
そして――たどり着く。
玉座の間。
そこに座すは、黄金の髪を風に翻す絶対の神。
太陽と理を統べる、宇宙の秩序そのもの。
オリンポス十二神の筆頭――セオスアポロ。
彼が指を鳴らせば、昼は夜に、真理は虚構に変わる。
宇宙における“正しさ”の象徴。
それが、この神である。
その出会いは――
神と父。
“二つの絶対”が激突する、戦争の始まりであった。
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↑イメージリール動画