乂阿戦記3 第一章- 赤き復讐の牙レッド-5 凹られた悪魔ども
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狗鬼家上空――
晴れ渡る青空に、ひときわ尊き気配が舞う。
「見よ、始まるでござるぞ」
「ほんとですわね」
空を舞う二体の聖獣――尊く気高き空飛ぶ猫。その背にまたがるは、紅き衣装と黒髪の戦巫女・紅茜と、異国風の装束を纏った桜髪の少女・迦楼羅。
彼女たちは、眼下の家屋をじっと見下ろしていた。
「峰場アテナ……どう切り取っても、ただの幼女でござるな……」
「本当に……ジュエルウィッチ・タイプエキドナと言われても、ただの可愛い女の子にしか見えませんわ」
ふたりは肩をすくめたが、その目は獲物を狙う獣のように鋭い。
「だが我々はまだマシ。問題は、悪魔共ですわ。子供だろうと容赦なく攫いに来る……このまま見逃したら?」
「いや、心配は無用でござる。あの“御仁”が、既に動いておる」
二人はふっと笑い、目を細める。
「ふふ……あの子に手出しなど、不可能でござる」
「なるほど。それならば、今は静観ですわね」
次の瞬間、彼女たちの姿は風のようにかき消えた。
⸻
狗鬼家・庭――
雷音と神羅が自宅に戻ると、そこには――地獄の光景が広がっていた。
「「……うぇっ……」」
焦げた肉の匂い。血の臭い。そして、呻き声。
庭の中央には、半死半生の巨大悪魔が二体、のたうち回っていた。肉が黒く焼け、骨が覗いている。
さらに、全裸で拘束され、正座させられた50体ほどの悪魔たちがブルブルと震えていた。
その背後には、黒焦げの死体が累々と積まれ、その数は百体を優に超えていた。
空中には無数の魔法陣が浮かび、そこから現れた黒く焦げた骨の手が悪魔たちを押さえつけている。
別の陣からは、銃を構えた焼け焦げた骸骨兵たちが現れ、悪魔たちのこめかみに銃口を突きつけていた。
まるで冥界の刑場だった。
「これは……どういう……」
雷音が呻くように言う。その前方で、静かに全てを見下ろしていたのは――姉、乂羅刹。
「……おい、豚ども。この黒い焼き豚は誰だ?」
「「は、はい! 羅刹様の妹君とそのご学友を襲おうとした我々の隊長と副隊長です!」」
「ど、どうか命だけはっ! 上からの命令で……!」
ペコペコと頭を下げる悪魔。その背に、一人の小太りの男が蹴りを入れた。
「おうおうおうおう!
なに調子良いことぬかしとんのやこの三下〜っ!
ウチのお嬢に手ぇ出して、五体満足で済まそうとか……
眠たいこと抜かしとるんちゃうやろなぁ!?
誰に言われてやったか、さっさと吐けやァ!
さもなければ、ケジメとして金よこさんかーい!
あるいはワテの耳を楽しませるために――
ブヒブヒと泣き喚けやぁああ!
ぶひぶひぶひ〜〜〜!!」
そう言うと、正座している悪魔の頭をゲジゲジと蹴り出した。
「………えーと、お前それ何やってんのセトアザス?」
雷音が絶句する。先のクトゥルフ戦争で敵として現れた雑魚敵・セトアザスだった。
「なんでお前がここで悪魔拷問してんの!? 羅刹さんの横で、正義面してんじゃねぇよ!?」
アキンドも頭を抱える。
「いやいや〜もうワテも改心しましてな。戦争も終わったし、仲ようやろう思うて! お宅のお嬢ちゃん達が襲われそうやったから、ワテが華麗に助けたったっちゅうわけや! おひねりよろしくな〜!」
「……シッシ! 帰れ!」
手を振って追い払うアキンド。
そして羅刹が、ゆっくりと口を開く。
「……この悪魔共が、庭で遊んでた妹達を襲おうとした。狙いは……アテナ。どうやら誰かに命じられて、彼女を攫うつもりだったらしい」
「で、返り討ちにしたのね、お姉ちゃん?」
神羅が尋ねる。
羅刹は、わずかに首を振った。
「いいや、私ではない。
……“あの者”が、すべてを終わらせた。影も音もなく、悪魔たちを屠り、証拠すら残さずにな」
雷音と神羅は息をのむ。
羅刹が名を出す前に、空の奥で、ひとつの影がこちらを見ていた。
「え……じゃあ、その人が……?」
「ああ。ここから先は――その“顛末”を、話してやろう」
羅刹の視線が、暗雲を裂くように鋭くなる。
悪魔の惨劇、その真相とは――。
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↑イメージリンクドウガ