乂阿戦記3 第一章- 赤き復讐の牙レッド-4 めざせ!アイドルデビュー!
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その日、ユノとアタラは、まるで“前世の罪”を思い出したかのような顔で、打ち合わせ場に向かっていた。
隣には、勝者のようにニヤけた父・与徳。
ドヤ顔で高笑いするのは、光の神セオスアポロ。
「……ほんとに、これで出場することになるとは……」
「やっちまったなあ……」
「……この結末、普通にヤバくない?」
──結論から言おう。
アテナ、ハクア・ホールデン・プロジェクト出場決定。
……ただし、家族総出で!
ギター:狗鬼漢児
ベース:獅鳳
ドラム:与徳
ボーカル:アテナ、神羅、絵里洲、ユノ、アタラの五人。
つまり、親子でアイドル参戦というカオス構成である。
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「えぇぇえええええ!? お母さん!? マジで!?」
「言わないでええええ!! まさか家族でノリで撮ったPVがバズるなんて思わなかったのよおおお!!」
――事の発端はこうだ。
ハクア・プロジェクトに参加するには最大10本までのPVをネット投稿でき、評価の高かった動画が予選通過となる。
アテナを目立たせようと色々撮った中、悪ノリで全員参加したファミリーバンド動画が――
ドチャクソにバズった。
原因の一端はアタラにある。
彼女は現在、世界的に有名なクトゥルフ討伐歌姫であり、知名度もカリスマもMAX。
ついでにユノも15年前のエクリプス大戦で伝説の歌を歌った超人だ。
そりゃ1位になる。
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「ま、諦めろ愚妹ユノ。さあ一緒に踊ろうではないか……ハハハハハ!!」
セオスアポロの高笑いが会議室に響く。
「ぐぬぬ……この私が……またもやアイドルをやる羽目になるなんて……!!」
そして悪ノリの元凶、与徳は頭を抱えていた。
「俺の軽口のせいで……家族全員で地獄行きか……」
「でもでも〜、こうなったら家族みんなで目指しましょうよ、優勝! 大会が終わったらアテナちゃんだけデビューして、私達は引退するってことで♡」
「納得いかない!なんでアテナちゃんだけ!? 私もアイドルになりたいぃぃ!!」
こうして狗鬼家はハクア・プロジェクトへ突撃することになった。
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翌日・学校にて
「よぉ、絵里洲。お前んとこのPV、マジでバズってるな!」
「……はぁ?」
「知らなかったのか? コメント欄、ユノさんとアタラさんへの絶賛で埋め尽くされてるぞ! 伝説の女神の実力、パねぇ!」
「うう……アイドル志望の私にとって最大のライバルが母親とか……メンタル削れるわ……」
「まあ、俺としてはそれより気になるのは……この女子小学生だな」
「え、アテナちゃん?」
「歌声が群を抜いてる。センターに置いたの正解だぞ、マジで光ってる」
その言葉に絵里洲は胸を撫で下ろす。
(そりゃそうだ……このプロジェクトに出るのは、アテナが次世代の歌の女神“ユキル”になり得るって証明するためなんだから!)
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そこにクラスメイトのレイミが参加。
「アテナちゃん、可愛いよね。てか絵里洲と似てない?」
「うっ……(そりゃ私の叔母だけど、年下の叔母って複雑すぎるぅ!)」
「このPV動画の上位15組がハクアProjectの参加者達なんだけど、絵里洲はライバル組のPV動画はちゃんと全部見たか?」
横から雷音が現れ口を挟んで来た。
「う〜ん自分の偉業のことばかり目がいって他の有象無象のライバルの子達なんてす〜っかり忘れたわあ。お〜ほほほほほ! さーてそれでは私の噛ませ犬になる対戦相手達はどんな子達かしらあ?」
「…………お前ほんといい性格してるなぁ。仮にもクトゥルフ退治に参加した女神の1人なんだからさあ、もっとこう、発言に自重をだなあ……」
アキンドが呆れて突っ込む。
だがランキング2位の映像を見て、絵里洲の動きが止まる。
「え、え? この赤髪の子……雷華ちゃん!? 両隣の美女って、まさか……」
「うちの母ちゃん乂鳳月ホエルと姉ちゃん羅刹だ」
「えっっっ!?」
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PVに映る羅刹は、かつて最強魔女ラスヴェードの生まれ変わり。
ロキをボコし、ナイアをビビらせ、クトゥグァすら握り潰した超人中の超人。
もはや“戦う災厄”と呼ばれる存在――それが、今はアイドル衣装でキメ顔していた。
「な、なんでこの人、アイドル衣装似合ってんの!? 腹筋バキバキなのに……!」
「可愛い系の服、案外いける人なんだな……」
雷音は苦笑して語る。
「うちも悪ノリで撮ったらバズってさ。兄貴の羅漢がギターソロで女子人気爆発。今じゃ英雄扱いだしな」
映像には羅漢のキメ顔ソロ演奏が。
「きゃーっ! 羅漢さんサインくださいっ!! ……10枚くらい! 転売用に!」
「やらんわ!!」
⸻
「で、絵里洲よ。雷音様のドラムサインなら今ここで――」
「誰が貰うかボケェ!!」
「で、こっちも気になるんだけど……」
レイミが言うランキング3位の映像に映っていたのは――
「ナ、ナイア!?」
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画面にはナイアルラトホテップ(ナイア)が、
ピンク・オレンジ・水色のサキュバスを従えメタル衣装で熱唱中。
当然、セクシーすぎる衣装とパフォーマンスはバズりまくっていた。
「ってか!! なんで邪神が女神オーディション出てんのよ!? しかも3位!?」
「世間はナイアが邪神って知らねえからな……顔で選ばれてるのよ、顔で」
「うぎぎぎぎ……このエロサキュバスめえええ!!」
雷音が締める。
「ナイアが出てる以上、この大会、まともに終わる気がしねぇ……要注意だ」
画面のナイアは――
まるで全てを見透かしたような、その微笑は、スクリーン越しにすら読み取れる。
「すべての舞台は整った」と言わんばかりの、悪魔の微笑だった。
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