乂阿戦記2 EXバトル あまりに酷い戦争の結末-1 呪いの魔神マクンブドゥバの最後
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EXバトル あまりに酷い戦争の結末
ここは大いなるクトゥルフが12の女神に敗れし戦場跡
マクンブドゥバは自軍の敗北を認め、ルルイエ遺跡ごと敵もろともの自爆を試みていた。
マクンブドゥバは巨大な魔法陣の上で、クトゥルフの死体に埋もれながら呪文を詠唱していた。
「我が名は狂王三狂神が一人"呪いの魔神"マクンブドゥバ!偉大なる神クトゥルフの力を受け継ぎし者なり!!ルルイエとともに爆ぜるこの身こそ邪神の化身!!さぁ、ルルイエ遺跡よ!我が命と引き換えに奴らを殺せえーーっ!!」
そしてマクンブドゥバが念波で自爆スイッチを起動した瞬間……。
轟音と共に遺跡ごと大爆発が起こり、辺り一面が吹き飛び、その光と爆風に呑み込まれた連合軍兵士たちの命はエクリプスもろとも瞬時に消滅するはずだった……。
……………………………………。
「……何故だ?……何故自爆装置が起動しない?なぜワシは生きている?」
マクンブドゥバは自分の状況を見ながら呆然と呟いた。
((我は大いなるクトゥルフ。貴様が自爆装置を起動することはない。))
どこからともなく聴こえてくる声に、マクンブドゥバは焦った様子で辺りを見回す。
「馬鹿な……これは一体どういうことだ!?」
すると頭の中で再び声が鳴り響く。
((我の復活に尽力せし大司教よ。遺憾ながらお前は我が後継の不興をかってしまった。これよりお前におとずれるのは死ではない。それすら生ぬるい絶望だ。せめて覚悟を抱き絶望を受け入れるがよい))
「なっ、なんだとおおおおおお!??」絶叫するマクンブドゥバの全身を禍々しいオーラのようなものが包み込んだかと思うと彼の身体は見る間に異形の姿へと変貌していく……。
意識はクリアなのだが体が一切動かなかった。
ただ、視線だけが動くことだけは分かった。
そして、目だけを動かして辺りを見回すと自分の部下や邪神たちも同じように異形の姿へと変えられていることがわかった……。
彼らの肉体は徐々に巨大化していき、やがてその体色は紫に近い灰色に変色していく。
さらに身体中の血管が浮き上がり、ボコボコと波打ちながら全身を駆け巡っていく様子が見て取れる。
(おのれぇ!!よくも我らをこのような姿に変えてくれたなあああ!!許さないぃいいい!!!)だがマクンブドゥバにはどうすることも出来ないことを彼は知っていたので怒りに任せて叫ぶしかなかったのである……ぐぬぬ!このままではまずいぞ……!一体どうすれば良いのじゃ!??
マクンブドゥバは必死になって考えた。しかし何も思い浮かばない。
そんな彼の脳裏に再び声が響いてきた。
(無様なり、呪いの魔神よ。貴様の負けだ……ニカへの呪力を失ったとき、貴様はもう詰んだのだ。レッドめが言ったように、貴様はイサカの母の愛によって斃されるのだ。子を想う愛の前に勝ち目など最初から無かったのだ。大人しく我の一部となれ……そして我が娘夫婦を手にかけた罪と孫達を悲しませた罪を、我が体内にて無限に等しい時間、死にたいと思っても死ねぬ苦痛をもって贖うがいい……)
「ふざけるなああぁぁ!!」叫ぶと同時に、マクンブドゥバの身体が激しく悶え苦しみ出した!!
肉塊と化した肉体を何とか動かすために最後の力を振り絞って抗っているのだ……!
だがもはや手遅れであった……ついに彼の全身から煙が噴き出し始めたではないか……!!
(無駄な足掻きをせずに運命を受け入れるがいい……エサ分際で自爆で消えようなどとおこがましい。反物質爆弾のエネルギーは全て我が養分として喰らったぞ…… )
カツーン、カツーンと遺跡の通路の奥から足音が聞こえてきた。
灰色の髪と暗いコートが特徴的な2メートルを超える大柄な60代の男性が歩いてくる。
「……さて、少し焼け焦げているが邪神クトゥルフの味はどんな味かな?」
マクンブドゥバはその男が誰か気づいて悲鳴を上げた。
「ゲエエエエ!?九闘竜No2、Dr.ファウストーーーーーーッ!!」
ファウストは無表情の仏頂面で、恐怖に震えるマクンブドゥバを見下ろすようにして立っていたのである。
そしてそれを見た阿烈も愉快そうに笑った。
「グルァーッア"ッア"ッア"……連中め、まだこんな隠し玉を秘しておったか……」
だが、阿烈はそんな状況など関係なく、目の前に立つ男に対して強さを測ろうと気配や圧を値踏みする。
そして、その目をぎらつかせて思案する。
(はて? あの男の顔を昔どこかで見たような?……あー、思い出した! 昔ワシが"鉄仮面"楚項烈として活躍していた時代、ワシのクローンを作りたいと接触してきたファウストなる科学者の顔だ。……だが、あれはファウストではないなぁ。と言うかアレはヒトですらない。リーン・アシュレイと同じヒトのガワを被ってるだけのナニカだ……)
阿烈は敵を分析しつつ、どう対処すべきか考えていく。
(……仮にあれをワシのクローンとして、その能力をどこまで引き継いでいるのか?という疑問が残るが……まあそんなことは些細なことだな。問題はアレがどのような目的でここに現れたかということだ)
阿烈はその答えを推測するとニヤリと笑うのだった。
ファウストは阿烈や周りの兵達を気にする風もなくマクンブドゥバと問答をしていた。
「マクンブドゥバよ……忌まわしき我が娘達の怨敵よ。最後に我が友パピリオに免じ貴様に死に方を選ばせてやる。どのように殺されたい? 慎重に答えるがいい。貴様が気に食わぬ回答をした場合、最初の予定通り貴様は我が体内にて無限に等しい時間、死にたいと思っても死ねぬ苦痛を味わい続けることになる。せいぜいよく考えるがいい」
マクンブドゥバは恐怖に怯えつつも、その選択の回答からどう逃れるかとばかり考えていた。
(くそ!どうする!?どうすればこの怪物から逃げられる?考えろ!!)
必死に頭を回転させどうにか逃げるための方法を模索するが、考えがまとまる前にファウストが口を開いた。
「さあマクンブドゥバよ、……選べぃ!!」
だがここで予想外な事が起きる。
なんとマクンブドゥバはファウストに対し迷いなくこう言い放ったのだ。
「ワシを苦しませ続けるうちは殺さないのだな? ならばワシを殺すな! 生かし続けろ!! 憎いワシを嬲り続けるがいい!!」
追い詰められマクンブドゥバは覚悟を決めた。
如何なる責苦を味わい尽くそうが、必ず生き延び、この化け物を出し抜き、真狂王様のもとに駆けつけて、もう一度あの方に忠義を尽くすのだ!
彼の真狂王への心酔はもはや殉教者の域にあった。
結局のところこの大司教が狂信する神は真狂王ジ・エンドだったと言うわけだ。
その迷い無い決断がマクンブドゥバの運命を決めた。
「……………呪いの魔神マクンブドゥバよ。汝を警戒すべき脅威として認めよう」
「!?」
ファウストは野獣の直感から確固たる決断を決め宣言する。
「…… 貴様は弱いが危険だ。」
ファウストは淡々と、まるで書類を処理するかのように言い放った。
「力は取るに足らぬ。だが、狂信に殉じる意志は“理性”より遥かに危うい。……それは、時として世界を歪める」
彼は一歩、マクンブドゥバに近づいた。
その声は冷たく、怒りも悲しみもない。ただ、**すべてを捨てた者だけが持つ“執行の静けさ”**がそこにはあった。
「ゆえに私は、いまここで感情を殺し、慈悲を捨て、貴様を“確実に”殺す。魂すらも残さぬ。これが、私の正義だ」
マクンブドゥバは自身の咄嗟の発言を悔いた。
「あ、あああ、ああああああ…………」
顔を真っ青にし、カチカチと歯を鳴らして怯える。
(し、しまった!我が覚悟をこの怪物に知られるべきではなかった!ワシはこの怪物が少しでも長く嬲り殺したがるよう、不快な畜生外道を演出すべきだったのだ……)
今ここに彼の命運は尽きた。
彼はハラハラと涙を流し絶望する。
ファウストは意図しなかったが、これこそがマクンブドゥバにとっての最大級の絶望だった。
そう、真狂王に忠義を尽くせず、ただ死ぬという事こそが狂信者たる彼にとって、なににも勝る絶望だった……
「……最後に言い残す事は?」
ファウストの問いにマクンブドゥバが答える。
「我が主に礼を捧げたい……」
マクンブドゥバは力無くそう答える。
涙を流すその顔は一気にやつれ老け込んでいた。
目の焦点もあってない。
武士の情けかファウストは取り込んでいたマクンブドゥバの身体を解放した。
解放された時、マクンブドゥバの身体は小さなヨボヨボの老人の身体だった。
マクンブドゥバは真狂王が逃げ去った虚空を見据え、震える膝を折り拝礼した。
「……お許し下さい……お許し下さい我が主……忠を尽くせぬまま、死にゆくこの身の非力を……」
マクンブドゥバは泣きじゃくりながら、虚空に拝礼を続けた。
その姿は哀れなただの年寄りだった。
(エンザ様はきっと、我が死を嘆いてくださる……だが、それすら忝い! 我が身がもっと強ければ……)
その嘆きは、見捨てられた絶望ではなく、**“主の信頼に報いられなかった愚臣としての断腸の想い”**だった。
彼の忠義は、最期まで真狂王ジ・エンドに向けられたままだった。
「……エンザ様……エンザ様ぁ……」
拝礼が終わったのを見計らい、混沌の怪物ファウストはその腕を巨大な怪物の顎に変化させ、一気にマクンブドゥバを喰らい殺した。
完全絶対確実に!
これが此度のクトゥルフ戦争の元凶たる、恐るべき呪いの魔神マクンブドゥバの最後だった。
「さらばだマクンブドゥバ、貴様は卑劣で、邪悪で、こざかしく、忌々しい外道だったが、このファウストが脅威と認めざるを得ない難敵だった……」
ファウストはそう呟くと、周囲に取り囲んでいたクトゥルフの軍勢を一気に皆殺しにしていく。
彼の体から伸びて来た無数の魔獣のアギトが、クトゥルフ配下の邪神達を喰い殺し、彼の養分として取り込んでいく。
そして生首状態のクトゥルフも喰らうべく龍に変形した巨腕を伸ばした。
クトゥルフは抵抗する素振りも見せずそれを受け入れる。
クトゥルフを喰らうファウストの脳内に邪神の声が聞こえてきた。
『……時は来たれり。我が後継よ、我が名と力を受け継げ……』
ファウストの脳裏に響く邪神の声は、滅びの中にどこか静かな安らぎを帯びていた。
『我が滅びは、すでに“星の時”より定められしもの……だが、貴様のような者が現れるとは思わなかった。狂気と理性を併せ持つ者――それは我にすらなかった力だ』
『創造神アザトースより賜りしこの力……それが貴様に渡るのもまた、宇宙の流れのひとつ。ならば我は、その流れに身を委ねよう』
それは敗北ではなかった。
“神としての責務を終え、次代へ力を託す”という覚悟の宣言だった。
『……我が後継だと? フン、神だかなんだか知らぬが捕食されるエサの分際で大言壮語を吐いてくれる……』
『否、我を喰らう貴様こそ我が後継なり。さあ、継承の時だ……』
そしてクトゥルフとの対話は脳内から肉体へと移行した。
捕食でクトゥルフが持つ水の四大霊の力と改獣の力がファウストに宿ったとき、それは起こる。
クトゥルフの力は、それまでとはケタが違う強大な力として、ファウストの全身に駆け巡る。
「ほう・・・これは・・・なかなか凄まじいものだな・・・」
ファウストが笑うと同時に、その力が肉体という檻を突き破り外へと溢れ出てくる。
それは、世界すら滅ぼしかねないほどの暴走だった。
「むぅん!」
だがファウストは一声発し、アッサリと力の暴走を抑えこんだ。
「クックックックック、美味い! 存外ゲテモノ料理も美味なものだ! クトゥルフよ。コレは貴様元来の力では無いな?……なにか高次の存在から譲り受けた力のようだが?」
『……しかり、この力は我等が主、創造神アザトース様より賜りし力……全ての宇宙を作り直す力の一旦……我は本来なら百年前のラグナロクでとうに滅びた神……だか主より賜ったこの力で、死したまま消滅を免れていた……だがこれでようやく消える事が出来る……さらばだ。捕食者よ、だが最期に感謝する。お前にこの大いなるクトゥルフの名をくれてやろう……』
ファウストは肩をすくめ鼻で笑った。
「フン、小神ごときが不遜な……だがまあいい。ちょうどパピリオの"胡蝶蜂剣"やレッドの"ロート・ジークフリード"のような戦場の二つ名が欲しいと思っていたところだ。フム……クトゥルフよりも九闘竜がいい……よし、カオスクトゥルー(混沌の九闘竜)と名乗らせてもらおうか……」
かくしてここに――
水の四大霊と、大改獣クトゥルフの力を取り込んだ究極の戦闘生物、**“カオスクトゥルー”**が誕生した。
それは神でも魔でもなく、意思を持つ災厄。
天が震え、大地がざわめき、空気さえ逃げ出すような沈黙が広がる。
誰もが本能で悟った――これは“世界が踏み越えてはならぬ一線”だった、と。
「さて、これで我が望みだったマクンブドゥバの殺害および、クトゥルフの捕食は叶った……ロキとの約定通り、次はエクリプスの奪還、もしくは破壊をおこなうとしよう……」
そう言うやカオスクトゥルーは連合軍の方を向いた。
「……さあ、絶望の続きを始めようか」
その声は静かだった。だが、連合軍の誰もが理解していた――
“あれ”は、今この瞬間から世界そのものを破壊するために動き出す。
↓イメージリール動画
https://www.facebook.com/reel/432455969223831