表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/449

乂阿戦記1 第三章- 黄金の太陽神セオスアポロと金猪戦車アトラスタイタン-1 異世界に呼ばれし少年

\異世界転移✖️勇者の証✖️世界を救う使命/

目覚めたのは、見知らぬ森。

そこにいたのは、祈るように立つ白き少女――そして、七部族に崩壊の兆し。

少年の物語が、ここから始まる。


(^^) ブックマーク&評価、よろしくお願いします!


第三章- 黄金の太陽神セオスアポロと金猪戦車アトラスタイタン 


――目覚めたのは、見知らぬ森だった。


「――ここは……夢の続きか、それとも終わりか」

土と苔の匂い。森の冷気。目覚めた龍獅鳳を包んだのは、現実にしてはあまりに異質な静寂だった。


龍獅鳳はむくりと身を起こす。鼻をついたのは、湿った土と苔の匂い。

視界に広がるのは、木々が鬱蒼と茂る原生の森。差し込む斜光が神の視線のように彼を照らし、その冷たく澄んだ空気が、現実離れした感覚をさらに強調していた。


ついさっきまで、学校近くの空き地にいたはずだ。

なのに今、自分はまったく別の世界に立っている。夢か幻か――いや、これは明らかに違う。


(……どういうことだよ、これ)


混乱と不安を胸に押し込めながら、獅鳳はとりあえず森を歩き出した。


やがて、木々の切れ目からぽっかりと光が差し込む空間に出る。

その中心に聳え立つ巨木。その根元に寄り添うように、古びた祠が佇んでいた。


そしてその祠の前に、彼女はいた。


白い髪、透き通るような肌、宝石のように澄んだ蒼の瞳――

まるで幻想から抜け出してきたかのような少女が、静かに祈りを捧げていた。


少女は、獅鳳の視線に気づくと、ふと顔を上げて優しく微笑んだ。


「こんにちは、龍獅鳳くん、ですよね?」


「え……? ああ……そうだけど……」


「私はアヤシキと申します。ようこそ、《スラル》へ」


――目覚めたのは、見知らぬ森だった。


「……ここは……夢の続きか、それとも終わりか」


湿った土と苔の匂い。森の冷気。

龍獅鳳は身を起こし、周囲を見渡す。鬱蒼とした木々が天を覆い、斜めに差し込む陽光が、まるで神の視線のように彼を照らしていた。

現実離れした静寂と空気。ここが日常の延長線上ではないことは、感覚がすべて告げていた。


(……さっきまで、学校の空き地にいたはずだろ)


戸惑いと不安を抱きながらも、獅鳳は立ち上がり、慎重に歩を進める。

やがて、森の奥で光が開ける場所に出た。一本の巨木。その根元には、風雨に晒されてなお荘厳さを保つ、古びた祠が佇んでいた。


そして、その祠の前に――彼女はいた。


白銀の髪、透き通る肌、宝石のような蒼の瞳。

祈る姿は幻想的で、まるで絵画の中から抜け出してきたようだった。


その少女は、彼の視線に気づくと、ふと顔を上げて微笑んだ。


「こんにちは。龍獅鳳くん、ですよね?」


「え……ああ、そうだけど……」


「私はアヤシキと申します。ようこそ、《スラル》へ」


その言葉は、驚くほど自然に耳に届いた。

彼女から感じられるのは、不思議なまでの安心感。敵意はなく、むしろ懐かしささえ覚える。


「スラルって……どこだよ、ここ? 俺、学校の近くにいたはずなのに」


「ここは地球とは別の次元――異なる世界です」


「は?」


あまりに突飛な答えに、思わず間抜けな声を返してしまう。


「別の次元って、おいおい……それ、本気で言ってるのか?」


疑念を隠せない獅鳳に、アヤシキは困ったように笑った。


「信じられなくても無理はありません。でも、すぐにわかりますよ。ここが……現実なのだと」


その瞬間、森の奥から風に乗って、神殿の鐘のような音が鳴り響いた。

それを背に、アヤシキは静かに、けれど真剣な眼差しを彼に向ける。


「獅鳳くん。お願いがあります」


「……お願い?」


「この世界を……救っていただきたいのです」


その言葉は、あまりに突拍子もなく、現実感がなかった。

だが、彼女の表情には一切の嘘がなかった。ただの“祈り”だった。


「……どういうことだよ、それ。俺はただの中学生だぞ?」


「いいえ。あなたは“翠の勇者”――この世界に選ばれた存在なのです」


その瞳はまっすぐに獅鳳を射抜く。彼の中の現実感が、静かに崩れていく。


「……説明してくれるんだろうな?」


「もちろんです。では、まずこの《スラル》という世界のことから」


そう言って、アヤシキは森の奥へと歩き出す。

獅鳳も一拍置いてから後に続いた。


やがて、枝葉の隙間から差し込む陽の光の下で、彼女は語り出す。


「この世界には《七つの部族》が存在します。

それぞれが異なる神を信仰し、独自の文化と力を有しているのです」


アヤシキは指を折りながら語る。


「一、《乂族》──灰色の女神ラスヴェートを信仰し、知と力を併せ持つ最強の部族」

「二、《メギド族》──黄緑の黒羊シュブニアを母とする、森を守護する獣人の民」

「三、《タイラント族》──紫の愛と毒の女神エメサキュバを崇める誘惑の部族」

「四、《タタリ族》──黄色の大母獣エキドナを信奉する魔物の末裔」

「五、《アシュレイ族》──翠の明星ヴァールシファーを祀る騎士の家系」

「六、《ジャガ族》──漆黒の時神ルキユに仕える、夜の民」

「そして七、《ナイン族》──白き統治神エクリプスを信奉する、かつての神官王族」


「七つも……?」


「この七柱が均衡を保って、この世界は存在していました。ですが、いま――その均衡が、崩れつつあるのです」


アヤシキの声が、ほんのわずかに陰を帯びた。


「だからこそ、あなたのような“外界の勇者”が必要なのです。

あなたの力が、この世界を救う鍵になる」


アヤシキは、そっと手を差し出す。


その手には、迷いも嘘もなかった。

獅鳳は少しだけ息を吸い、そして静かに頷いた。


「……まずは、ちゃんとこの世界を見てから判断する。俺の目で、俺の足で」


「……ありがとうございます、獅鳳くん」


彼女の瞳が、安堵と決意の光を湛えて微笑んだ。


そして二人は歩き出す。

――物語は、ここから始まる。



アヤシキに案内され、獅鳳が辿り着いたのは、石造りの巨大な城塞都市だった。

威圧的な門の前には、重装備の門兵たちが睨みを利かせている。


「おう、嬢ちゃんか。……そっちの少年は?」


「新しい仲間なんです。獅鳳くんといいます」


「ああ、そうかい。そりゃめでたい。中に通んな」


無骨な門兵はにやりと笑い、門を開ける。

アヤシキは何事もなかったかのように笑って振り返る。


「大丈夫。評議会とは顔なじみだから、こういうのは慣れてるの」


そう言って、そっと獅鳳の手を引いた。


冷たい風の中、その手はやけにあたたかかった。



街の中は、まさに異世界と呼ぶにふさわしい活気に満ちていた。

石畳の上を馬車が行き交い、行商人が賑やかに声を張り上げる。


果物や香草、見たこともない魔導具が並ぶ露店。

獅鳳は、夢のようなその光景に目を奪われていた。


「……すげぇ。まるでゲームの中みたいだな、ここ」


「よく言われます。でも、これは“現実”ですから」


アヤシキの言葉に、獅鳳はなんとなく背筋を伸ばした。

やがて彼らは、街の端にそびえる建物の前で足を止める。


その建物の看板には、金色の文字でこう刻まれていた。


《スラル中央冒険者ギルド・アシュレイ支部》


「ここが……ギルドか」


「ええ。あなたに“冒険者”として登録していただきます。

そして、あなた自身の力を、ここで“証明”してもらうのです」


重厚な扉を押し開けた瞬間、雑踏と熱気が一気に飛び込んできた。


中は酒場のように騒がしく、武装した冒険者たちがひしめいていた。

剣士、魔導士、獣人、エルフ――人間以外の存在が混在するこの空間は、どこか現実離れしていて、それでいて圧倒的に“生きていた”。


「わ、わあ……」


「大丈夫ですよ。ちゃんと受付がありますから」


そう言ってアヤシキがカウンターに向かうと、愛想の良い職員が迎えてくれた。


「ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件でしょう?」


「彼に、冒険者登録をお願いしたいのです」


「それはそれは……それでは、まず《ステータスカード》の発行からですね」


職員は銀色に輝く薄板――カードのようなものを差し出した。


「このカードは、個人の“魔力属性”や“クラス適性”などを数値化して記録するものです。

こちらに手をかざしてみてください」


言われるまま、獅鳳が手をかざすと――


次の瞬間、眩い翠の光がカードから立ち上がった。


「っ……!」


浮かび上がった文字列を、職員が読み上げる。



【名前】龍 獅鳳りゅう・しほう

【年齢】11歳 【種族】人族

【クラス】アサシン

【属性】雷

【魔力色】翠



挿絵(By みてみん)


https://www.facebook.com/reel/892407973034260/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0


↑イメージリール動画

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ