乂阿戦記1 第三章- 黄金の太陽神セオスアポロと金猪戦車アトラスタイタン-1 異世界に呼ばれし少年
\異世界転移✖️勇者の証✖️世界を救う使命/
目覚めたのは、見知らぬ森。
そこにいたのは、祈るように立つ白き少女――そして、七部族に崩壊の兆し。
少年の物語が、ここから始まる。
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第三章- 黄金の太陽神セオスアポロと金猪戦車アトラスタイタン
――目覚めたのは、見知らぬ森だった。
「――ここは……夢の続きか、それとも終わりか」
土と苔の匂い。森の冷気。目覚めた龍獅鳳を包んだのは、現実にしてはあまりに異質な静寂だった。
龍獅鳳はむくりと身を起こす。鼻をついたのは、湿った土と苔の匂い。
視界に広がるのは、木々が鬱蒼と茂る原生の森。差し込む斜光が神の視線のように彼を照らし、その冷たく澄んだ空気が、現実離れした感覚をさらに強調していた。
ついさっきまで、学校近くの空き地にいたはずだ。
なのに今、自分はまったく別の世界に立っている。夢か幻か――いや、これは明らかに違う。
(……どういうことだよ、これ)
混乱と不安を胸に押し込めながら、獅鳳はとりあえず森を歩き出した。
やがて、木々の切れ目からぽっかりと光が差し込む空間に出る。
その中心に聳え立つ巨木。その根元に寄り添うように、古びた祠が佇んでいた。
そしてその祠の前に、彼女はいた。
白い髪、透き通るような肌、宝石のように澄んだ蒼の瞳――
まるで幻想から抜け出してきたかのような少女が、静かに祈りを捧げていた。
少女は、獅鳳の視線に気づくと、ふと顔を上げて優しく微笑んだ。
「こんにちは、龍獅鳳くん、ですよね?」
「え……? ああ……そうだけど……」
「私はアヤシキと申します。ようこそ、《スラル》へ」
――目覚めたのは、見知らぬ森だった。
「……ここは……夢の続きか、それとも終わりか」
湿った土と苔の匂い。森の冷気。
龍獅鳳は身を起こし、周囲を見渡す。鬱蒼とした木々が天を覆い、斜めに差し込む陽光が、まるで神の視線のように彼を照らしていた。
現実離れした静寂と空気。ここが日常の延長線上ではないことは、感覚がすべて告げていた。
(……さっきまで、学校の空き地にいたはずだろ)
戸惑いと不安を抱きながらも、獅鳳は立ち上がり、慎重に歩を進める。
やがて、森の奥で光が開ける場所に出た。一本の巨木。その根元には、風雨に晒されてなお荘厳さを保つ、古びた祠が佇んでいた。
そして、その祠の前に――彼女はいた。
白銀の髪、透き通る肌、宝石のような蒼の瞳。
祈る姿は幻想的で、まるで絵画の中から抜け出してきたようだった。
その少女は、彼の視線に気づくと、ふと顔を上げて微笑んだ。
「こんにちは。龍獅鳳くん、ですよね?」
「え……ああ、そうだけど……」
「私はアヤシキと申します。ようこそ、《スラル》へ」
その言葉は、驚くほど自然に耳に届いた。
彼女から感じられるのは、不思議なまでの安心感。敵意はなく、むしろ懐かしささえ覚える。
「スラルって……どこだよ、ここ? 俺、学校の近くにいたはずなのに」
「ここは地球とは別の次元――異なる世界です」
「は?」
あまりに突飛な答えに、思わず間抜けな声を返してしまう。
「別の次元って、おいおい……それ、本気で言ってるのか?」
疑念を隠せない獅鳳に、アヤシキは困ったように笑った。
「信じられなくても無理はありません。でも、すぐにわかりますよ。ここが……現実なのだと」
その瞬間、森の奥から風に乗って、神殿の鐘のような音が鳴り響いた。
それを背に、アヤシキは静かに、けれど真剣な眼差しを彼に向ける。
「獅鳳くん。お願いがあります」
「……お願い?」
「この世界を……救っていただきたいのです」
その言葉は、あまりに突拍子もなく、現実感がなかった。
だが、彼女の表情には一切の嘘がなかった。ただの“祈り”だった。
「……どういうことだよ、それ。俺はただの中学生だぞ?」
「いいえ。あなたは“翠の勇者”――この世界に選ばれた存在なのです」
その瞳はまっすぐに獅鳳を射抜く。彼の中の現実感が、静かに崩れていく。
「……説明してくれるんだろうな?」
「もちろんです。では、まずこの《スラル》という世界のことから」
そう言って、アヤシキは森の奥へと歩き出す。
獅鳳も一拍置いてから後に続いた。
やがて、枝葉の隙間から差し込む陽の光の下で、彼女は語り出す。
「この世界には《七つの部族》が存在します。
それぞれが異なる神を信仰し、独自の文化と力を有しているのです」
アヤシキは指を折りながら語る。
「一、《乂族》──灰色の女神ラスヴェートを信仰し、知と力を併せ持つ最強の部族」
「二、《メギド族》──黄緑の黒羊シュブニアを母とする、森を守護する獣人の民」
「三、《タイラント族》──紫の愛と毒の女神エメサキュバを崇める誘惑の部族」
「四、《タタリ族》──黄色の大母獣エキドナを信奉する魔物の末裔」
「五、《アシュレイ族》──翠の明星ヴァールシファーを祀る騎士の家系」
「六、《ジャガ族》──漆黒の時神ルキユに仕える、夜の民」
「そして七、《ナイン族》──白き統治神エクリプスを信奉する、かつての神官王族」
「七つも……?」
「この七柱が均衡を保って、この世界は存在していました。ですが、いま――その均衡が、崩れつつあるのです」
アヤシキの声が、ほんのわずかに陰を帯びた。
「だからこそ、あなたのような“外界の勇者”が必要なのです。
あなたの力が、この世界を救う鍵になる」
アヤシキは、そっと手を差し出す。
その手には、迷いも嘘もなかった。
獅鳳は少しだけ息を吸い、そして静かに頷いた。
「……まずは、ちゃんとこの世界を見てから判断する。俺の目で、俺の足で」
「……ありがとうございます、獅鳳くん」
彼女の瞳が、安堵と決意の光を湛えて微笑んだ。
そして二人は歩き出す。
――物語は、ここから始まる。
アヤシキに案内され、獅鳳が辿り着いたのは、石造りの巨大な城塞都市だった。
威圧的な門の前には、重装備の門兵たちが睨みを利かせている。
「おう、嬢ちゃんか。……そっちの少年は?」
「新しい仲間なんです。獅鳳くんといいます」
「ああ、そうかい。そりゃめでたい。中に通んな」
無骨な門兵はにやりと笑い、門を開ける。
アヤシキは何事もなかったかのように笑って振り返る。
「大丈夫。評議会とは顔なじみだから、こういうのは慣れてるの」
そう言って、そっと獅鳳の手を引いた。
冷たい風の中、その手はやけにあたたかかった。
*
街の中は、まさに異世界と呼ぶにふさわしい活気に満ちていた。
石畳の上を馬車が行き交い、行商人が賑やかに声を張り上げる。
果物や香草、見たこともない魔導具が並ぶ露店。
獅鳳は、夢のようなその光景に目を奪われていた。
「……すげぇ。まるでゲームの中みたいだな、ここ」
「よく言われます。でも、これは“現実”ですから」
アヤシキの言葉に、獅鳳はなんとなく背筋を伸ばした。
やがて彼らは、街の端にそびえる建物の前で足を止める。
その建物の看板には、金色の文字でこう刻まれていた。
《スラル中央冒険者ギルド・アシュレイ支部》
「ここが……ギルドか」
「ええ。あなたに“冒険者”として登録していただきます。
そして、あなた自身の力を、ここで“証明”してもらうのです」
重厚な扉を押し開けた瞬間、雑踏と熱気が一気に飛び込んできた。
中は酒場のように騒がしく、武装した冒険者たちがひしめいていた。
剣士、魔導士、獣人、エルフ――人間以外の存在が混在するこの空間は、どこか現実離れしていて、それでいて圧倒的に“生きていた”。
「わ、わあ……」
「大丈夫ですよ。ちゃんと受付がありますから」
そう言ってアヤシキがカウンターに向かうと、愛想の良い職員が迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件でしょう?」
「彼に、冒険者登録をお願いしたいのです」
「それはそれは……それでは、まず《ステータスカード》の発行からですね」
職員は銀色に輝く薄板――カードのようなものを差し出した。
「このカードは、個人の“魔力属性”や“クラス適性”などを数値化して記録するものです。
こちらに手をかざしてみてください」
言われるまま、獅鳳が手をかざすと――
次の瞬間、眩い翠の光がカードから立ち上がった。
「っ……!」
浮かび上がった文字列を、職員が読み上げる。
⸻
【名前】龍 獅鳳
【年齢】11歳 【種族】人族
【クラス】アサシン
【属性】雷
【魔力色】翠
https://www.facebook.com/reel/892407973034260/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0
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