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乂阿戦記2 終章 死せるクトゥルフ、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり-21 絶対勝てない大魔王登場

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読みやすくなりますよ❤︎


鶴翼の陣を敷いた真狂王軍は瓦解しつつあった。

クトゥルフを倒した後、アルゴー号は戦艦形態で着陸し、艦内に残存する兵達が武器を手に真狂王軍の陣の背面を強襲したのだ。

鶴翼の陣は側面や背面からの攻撃に弱い。

その為、アルゴー号からの攻撃に対応できず本陣を奇襲され真狂王軍は総崩れになった。

だが真狂王軍にトドメを刺さんと兵を率いるドアダ七将軍"銀仮面"は訝しんでいた。


(おかしい……敗走しているのに士気が高い? 鶴翼の陣は防御のため……ならば、何を守っていた? クトゥルフか? いや、違う。……そういえば……戦闘中、邪神軍の分隊がアルゴー号へ侵入していたな)


(まさか、真狂王は……奴らの作戦を護るために布陣を……!?)


真狂王軍は連合軍にじりじりと押されつつもよく戦っていた。

総大将が乗るイット・ジ・エンドが先頭に立って、勇者アーレスタロス機とロート・ジークフリード機を相手に果敢に戦っていたからだ。

真狂王の奮戦に彼の部下達が鼓舞されていた。

真狂王は闘いながら勝利のカギの到着を待っていた。

(クックック、まだだ!まだアレがある!アレが到着しさえすれば戦況を打開出来る!!)

真狂王は逸る気持ちを抑えながら、その時を待った。


一方、連合軍の本陣では通信兵から報告を受けていた銀仮面が驚愕していた。「なに!?アルカームがイサカさんを攫い艦内から離脱した!?」

銀仮面はすぐさま、通信兵にアルカームの向かった先を聞いた。

そして彼は即座に悟ったのだった。

(しまった!やられた!)


真狂王と交戦するレッドはアルゴー号の方に視線を向け、呟いた。

「アレは……まさか……」

彼の額に汗が流れた次の瞬間だった。

突然風が激しく吹き荒れ始めたのだった。

「こ……この風は……!」

レッドが呟く。

そして真狂王は、突如吹き荒れ出した強風に話しかけたのだった。

「でかした! よくぞ間に合ってくれたアルカーム!!……」

真狂王の前に跪き、風の中から現われたのは、かなりの手傷を負ったイタクァ・アルカームであった。

彼は真狂王に向き直ると深々と頭を下げた。

「ボス〜! ネオ・エクリプスの奪還に成功いたしましたぜ〜!!」

アルカームのその手には、気を失っているイサカが抱かれていた。

「……ご苦労! 大義である!」

アルカームは安堵の表情を浮かべ、真狂王に頭を垂れた。

「ネオ・エクリプスは再び我が手に戻った!!そして確信した!エクリプス・コアは無事完成体となりイサカに根付いたのだと!さあ、今こそ新たな最悪の魔女の誕生だ!!!」

真狂王が哄笑を上げる。

その言葉に連合軍がどよめいた。

そんな中フレアが叫んだ。

「ふざけるな!イサカさんをエクリプスになどさせるものか!!」

彼女の言葉に対しレッドも同意するように頷く。


「そうだ、イサカをエクリプスになどさせるものか!!」

「……あいつは、俺たちの、大切な家族だ!!」


2人の熱い言葉を聞き、真狂王は神妙に2人に語りかける。

「イサカはよい家族に恵まれたものだ。ヌシ等は血は繋がらねど紛れもない家族だ。だがワシはそれを踏みにじる。戦をおこしたならばどんな手を使おうと勝たねばならぬ。それが王たるものの責務だからだ。」

真狂王はそう言うと、クトゥルフの生首に浮かぶマクンブドゥバの顔に命令を下した。

「ネオ・エクリプスを起動させよ!」

その命令を受け、マクンブドゥバの左眼に紫色の文様が浮かび上がった。

フレアが叫ぶ。

「マクンブドゥバ!やめろ!!」

しかし、その言葉は間に合わず、マクンブドゥバの眼球から放たれた禍々しい光により、気を失っているイサカを覆う結界が発生した。

イサカは意識のないまま白目を剥いて立ち上がる。

その身体から邪悪なオーラが放たれ、それはマクンブドゥバの左眼と同調していた。

そして結界が消え去った時、そこに立っていたのはエクリプス・コアを宿したネオ・エクリプスたるイサカ・アルビナスだった。

「ハーハハハハハハハ!ついに最悪の魔女エクリプスが復活したぞ!!さあ、再び邪神の軍勢を産み出すのだ!!」

真狂王が勝ち誇る。

連合軍の皆は絶望の淵に落とされた。

オームが舌打ちをする。

「まさか、この土壇場でイサカさんを攫われるなんて……クソッ!何て事だ!」


その時だった。


「グルァア”ッア”ッア”ッア”ッア”ッア”ッ!」


耳をつんざくような笑い声が、戦場に轟いた。


「え……?」


突如、戦場全体が一瞬にして静まり返る。

空気が凍りついたように動きを止めたその中、誰よりも先にアルカームが振り返る。


――ズドン!!


爆音と共に、乂族のロボの一体が爆発し、その残骸の中から黒い影が吹き飛び出した。


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”……!」


人影が咆哮しながら、空を裂くように一直線。

次の瞬間、屈指の超スピードを誇るアルカームの顔面に――裏拳が炸裂した。


ドゴォッ!!!


何の反応もできぬまま、旧支配者と融合した邪神が、ルルイエ遺跡の壁を突き抜け、地平線の彼方、いや、大気圏すら越えて宇宙のかなたへと消えていった。


「な、なにが……」


誰もが言葉を失う中――


その黒影は、止まらなかった。


イサカのもとへ一直線に突進し――


ザクッ!!


手刀が、彼女の胸を貫いた――かに見えた。


だが、その身体には傷一つない。


否。貫かれていたのは肉体ではない。

――魂だ。


灰色の闘気が、イサカの胸から歪んだ白い宝玉を掴み出し、引きずり出していた。


「エクリプス・コア……!」


その異様な光景に、オーム、エドナ、絵里洲が叫ぶ。


「大武神流超奥義――魂抜き!」


彼女たちはそれを知っていた。

神羅を洗脳から救った、あの伝説の技。

肉体を傷つけることなく、邪悪な呪詛のみを引き剥がす覇王の奥義――。


「お、お師匠様……?」


モニターに映るその姿に、オームが息を呑む。


そこに立っていたのは、彼の師。

乂族の長にして、雷音の兄。

この物語の最奥に潜んでいた“闘争の覇王”。


乂阿烈であった。


白い宝玉――エクリプス・コアをその掌に握った阿烈は、しばし静かにそれを見つめる。


そして、嗤った。


口を大きく開け、牙をむき出しにし、狂気と歓喜を混ぜた咆哮と共に――


「グルァ〜ッア”ッア”ッア”ッア”ッア”ッア”ッ〜〜!!」


その笑い声は、戦場を支配した。


阿烈本体は白い宝玉を握りその場にとどまり、灰色の闘気像は気絶するイサカを抱えフェニックスヘブンの前に降り立った。

鳳天が機神化を解除し生身でイサカを受け取る。

「フ、懐かしき友よ……無事輪廻転生を果たしたのだな……」

灰色の闘気が周囲に聞こえない小さい声で古き友に話しかける。

「ああ、久しぶりだな楚項烈……いや、今は乂阿烈だったな……」

鳳天も周囲に聞こえない小さい声で灰色の闘気像に話しかける。

「その名はまだしばらく内緒で頼む。それとお前の女……今世はしっかりと守ってやるんだな朋友よ……」

それだけ伝えて乂阿烈の闘気は砂のように消えた。

鳳天は阿烈から渡されたイサカを両手で抱え彼女に詫びる。

「……イサカ……すまなかった……」

その言葉は気を失っているイサカには届かない。

それでも彼は謝罪を口にした。


乂阿烈の本体は、なおも白い宝玉エクリプス・コアを高く掲げ、恍惚と邪悪な笑みを浮かべていた。

そして、どこかで聞いたようなセリフを高らかに口にする。


「グルァ〜ッア”ッア”ッア”ッア”ッア”ッア”ッ〜!!

ついに!ついに完成しおったぞ最終兵器エクリプスが!!

そして今、全宇宙の命運を左右する力が……このワシの手の中にあるッ!!」


ぐっと拳を握りしめた阿烈は、さらに叫ぶ。


「そう、ついにワシは神の力を手に入れた!!

何者も抗えぬ究極の力を手に入れたのは――このワシだ!!

灰燼の覇王、乂阿烈だっ!!」


天地を揺るがすその声に、戦場は一時騒然となった。

次の瞬間、彼は高らかに宣言する。


「さあ、我が前に傅け! 平伏せよ!!

脆弱なる、あまねく宇宙の愚民どもよぉぉぉぉぉ!!!

跪き、服従を誓うがいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


――その光景に、ついに真狂王ジ・エンドが耐え切れず怒声をあげる。


「阿烈、貴様っ!まさか神の力に……手を出すとは!!」


彼の怒りを前に、しかし阿烈は涼しい顔で鼻で笑った。


「フン、愚か者共め!!

このワシを誰だと思っておる?

かつて世界を救った英雄と讃えられた男ぞ?」


阿烈は肩を竦めながら一歩踏み出し、宝玉をぐるぐると回す。


「見よ!これこそ我が覇道の果て!!

神々の力を以て、神々を打ち倒し、宇宙のすべてを制するのは――

この覇王、乂阿烈だああああああ!!!」


その言葉に、誰もが確信した。


この男こそが――

狂気と理性を併せ持つ、“宇宙最大の矛盾”にして、究極の男なのだと。


阿烈は高らかに高笑いを響かせ、そして言い放つ。


「ついに、ついに小狡い貴様を出し抜いたぞ真狂王〜!!

貴様の権謀術数には幾度も煮え湯を飲まされたが、

最後の最後に笑うのはこのワシだ!! この覇王乂阿烈だ!!」


真狂王は、唇を噛み、阿烈に詰め寄る。


「ぬぬぬ……乂阿烈!!

闘争の権化たる貴様が、今まで戦場に姿を現さなかったのは――!」


阿烈はそれに満面の笑みで応える。


「しかりしかりしかりッ!!

最終兵器エクリプスの強奪こそがワシの本命作戦よぉおお!!

貴様が復活させると言った瞬間、ワシの脳裏に閃いたのだよッ!」


そして、拳を震わせ、感無量に語る。


「ワシはこの瞬間のために……あふれ出る闘争本能を必死でこらえ……

ジィイィ〜ィィ〜っと、スタンばってたんだよおおおおお!!!

感謝するぞクトゥルー教団!! お前達はわざわざ我が覇道の礎となるエクリプスを生成してくれたあああ!! グルっ、グルルル、グルルルルルル! グルァーッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"〜〜ッ!!!」


その雷鳴のように轟く笑い声を聞き、雷音のクラスメイト達は声を揃えて叫んだ。

「「「「「大魔王だアレエエエエエエエエエエエ〜〜ッ!!!」」」」」


アルゴー号の艦内は――阿鼻叫喚、混沌の様相を呈していた。

(や、やばい! これはヤバすぎる……!!)

内心で冷や汗をかく雷音。

だが、それは当然の反応でもあった。

何しろモニターの前で核爆弾発言を吐き散らかす大魔王は紛れもなく自分の兄、乂阿烈なのだから……。

そしてそんな大魔王のことで、クラスの皆が自分に視線を向けてきたことで心臓が止まりそうになるくらい緊張した。

「オイイイイ!ちょっとコラ雷音!あれお前の兄貴だよね?なんかエクリプス使って宇宙征服するみたいな事言ってんだけど?止めて!お前の兄貴今すぐ止めて!!早く説得して来て!!」

アキンドが雷音の胸ぐら掴みガクガク揺さぶる。

「無理〜〜!兄貴だよ?あの阿烈兄貴だよ!?アレは絶対説得とか無理!死ぬ!殺されるわ!兄貴に逆らったら秒で殺されるわ〜!見てない!俺は何も見てないいい!!いやだ、まだ死にたくないいいいい!!」

「ちょ、おま〜〜〜っ!!?」


一方リトル・ユグドラシルのステージ上では神羅が絵里洲からツッコミを喰らっていた。

「ひいいいい! ユッキーあれユッキーのお兄さんだよね? なんかヤバイんですけど!? なんかマジもんの大魔王なんですけど!? なんかエクリプス使って宇宙征服するみたいな事言ってるんですけどおおお!? 止めて! 今すぐお兄さん止めてえええ!!」

「アーアー、ミエナイ、キコエナイ、ワタシナニモミエナイ。ナニモキコエナイ」

神羅は目つむり、耳を塞ぎ現実逃避していた。

だが、絵里洲はそんな神羅に近づき頭を鷲掴みにする。

それから片手でアイアンクロー。

「うきゃああああああーーっ!?」

足をバタつかせる神羅だったが、絵里洲は流れる動きでヘッドロックを決めた後、そのまま首を極めつつ床に落とした。

(ぐえっ!)

「現実逃避しないでお兄さん説得する方法考えてええええ!!」

「ごめんなさい。ごめんなさい。うちの兄さんがなんかごめんなさい!!」

生真面目な雷華は神羅に代わりペコペコと皆に謝っていた。

・・・・・・

(同時刻)

『さて、そろそろ最後のステップに進もうか』

リーン・アシュレイと蚩尤将軍の2人に語りかけてきた声があった。

その声の主は他ならぬ邪神ロキであった。

「フ……今度は何を企んでいるんだいロキ?」

リーンは声のした方向を向いた。

そこにはナイアに肩を貸してもらい、死にそうな顔で立っているロキがいた。

指輪王の力を使いすぎた為、今にも死んでしまいそうなくらい顔が真っ青だ。

「ロキ!!大丈夫か!?しっかりしろ!?」

ナイアが本気でロキを心配している。

「クゥーン、クゥーン」

ロキの足下にいる白い狼が心配そうに主を見上げている。

なんとロキの最強召喚獣フェンリルである。

主の危機を前に無理にこの世界に止まったため、ほとんどの力を失い、普通の狼のサイズまで縮んでいるのだ。

「にょろ〜ん」

狼の頭の上に手のひらよりも小さな蛇がいる。

こちらは世界蛇ヨルムンガンドだ。

ロキはとりあえず、蛇と狼の頭を撫でてあげた。

「あー我が息子達〜、お前達はほんとに健気だなぁ」

「くぅーん」

「にょろ〜ん」

二匹は気持ちよさそうに目を細めた。

「遂に僕が用意した最強最後の切り札の出番だ……」ロキは戦場を見やりそう呟いた。


クトゥルフの生首に浮かぶマクンブドゥバは憎々しげに阿烈に吐き捨てる。

「おのれこの邪悪な悪党め! エクリプス・コアを抜き出したところでエクリプスの力を我が物に出来ると思っているのか!? 魔力ある女でなければエクリプス・コアは取り込めぬのだぞ! そして、どんな魔法少女も女神もエクリプス・コアをとり込めばたちどころにその邪悪な思念に飲み込まれ最悪の魔女と化す! 例外はない。それどころか、エクリプスの呪いに侵された女は、この世で一番邪悪な化け物となるだろうよ!!」


阿烈はにやりと嗤い、エクリプス・コアを高々と掲げたまま叫んだ。


「羅刹ちゃああああああああんッ!!」


その瞬間、大地が軋んだ。


雷鳴が轟き、空が血のように赤黒く染まり、風が逆流する。

まるで世界そのものが恐怖に打ち震えているかのようだった。


――ケルビムべロスの機神化が解除され、地に降り立った影。


黒衣の裾を翻し、ゆっくりと肩を揺らしながら歩むその女の名は――


羅刹ラスヴェード


この世で最も危険な魔女。

五十年前、あの妖魔皇帝が娘を犠牲にしてまで警戒した、最強の災厄。


戦場の兵士たちが、息を呑む。


その貌は美しい。

だが、その貌に宿るのはただ一つ――阿烈と同じ絶対的な悪意と嗜虐の笑み。


時間が凍るような沈黙の中、彼女は低く呻いた。


「待った……待ったぜえええ……この瞬間をよおおお!

前世から数えて五十年……ついに……ついにこの時がきやがったぁ……!!」


その声は、まるで呪詛のように空気を震わせる。


「羅刹、なにを……!?」


最も近くにいたはずの兄・羅漢すら、困惑し震えていた。


だが、すでに遅い。


羅刹の周囲に立ちのぼる黒炎。

空間が歪み、地面が音もなく砕ける。

そしてマクンブドゥバは……絶叫した。


「あ……あ……あああああああああああああああああああ!!!」


――理解したのだ。


この女ならば、エクリプスの負の思念を力づくでねじ伏せ、完全に己のものにできるということを。


否。

もはやエクリプスが彼女を蝕むのではなく、彼女こそがエクリプスをも“食う”側なのだと。


羅刹――

いや、“最凶最悪”の存在そのものが、ついに目覚めたのだ。


黒い霧の中、邪悪な微笑を浮かべる二人の悪鬼――乂阿烈と羅刹。


その笑みはもはや、勝利の誇示でも誇張でもない。


“当然の結末”を迎えた者の、余裕と冷酷に満ちた微笑だった。


「……あ、詰んだ」


アルゴー号の誰かが、ぽつりと漏らす。


絶望という言葉に意味があるなら、それは今この瞬間を指していた。

神羅はその場に崩れ落ちるように座り込み、うつむいた。


鵺がそっと神羅の肩に手を置く。


「……気にしないで。あなたは悪くないわ」


だが、神羅はかすれた声で呻くしかなかった。


(どうしてこうなった……!? いやほんとに!

この空気、誰か、誰かなんとかしてぇぇぇええ!!)


覇王乂阿烈は宣言する。

「喜べ同志諸君!ついに我ら乂族に栄光の刻が訪れた!我らがこの宇宙から、邪神共を駆逐する日が来た! そして、その邪神共にとって変わり、我らがあまねく宇宙の支配者となるのだあああああ!」

阿烈は鋭い牙のぞかせ嗤い続ける。

戦場の兵士たちが歓声をあげる。

そう、今戦場で生き残っているほとんどの兵は、その強さ故生き残れたのは、乂阿烈手ずから地獄のしごきで鍛えあげた修羅の如き超強兵……つまり乂阿烈直属の乂族兵ばかりだったのだ!

その中に20名ほど殺悪隊の兵も混じってはいるが……

「あっるぇ〜?鮫島隊長〜、あの乂阿烈って人、絶対楚項烈館長ですよねぇ?」

副隊長ヒキガエルの問いに

「うむ、鉄仮面こそかぶっておらぬがアレは間違いなく我が偉大なる師、楚項烈館長だ……」

「えーと、敵対する気とかないでやんすよね?」

「俺が親も同然の師匠に拳を向けるわけないだろう……」

と、敵対する意思はまるで見受けられなかった。

「偉大なる覇王乂阿烈万歳〜!!」

「「「万歳〜!万歳〜!万万歳〜!」」」

「偉大なる覇王乂阿烈千歳〜!!」

「「「千歳〜!千歳〜!千千歳〜!!」」」

「大武神乂阿帝国万歳〜!!」

「「「万歳〜!万歳〜!万万歳〜!」」」

「大武神乂阿帝国千歳〜!!」

「「「千歳〜!千歳〜!千千歳〜!!」」」

「グルァーッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"ッア"〜〜ッ!!」

阿烈が叫ぶと周囲からも歓声が響く。

そして、その歓声に答えるように手を振り続けた。


挿絵(By みてみん)


その姿を見ながら雷音は諦観しながら思ったのである。

(……あ、俺歴史で嫌われ者一族の一人として悪名が残りそう……)


そんな時だった──

一人の漢が気を吐くように叫んだのは。

「まだだ!まだ終わりではない!!」

それは真狂王軍総大将カルマストラ二世だった。

「我が覇道はまだ終わらず!我、カルマストラ二世がこの名を全宇宙に知らしめるまでは!!」

すると阿烈もまた叫ぶ。

「グルァーッア"ッア"ッア"ッア"ッ! その意気や良し!! よかろう、総大将同士一騎打ちで立ち合ってくれる!! 皆の者、王同士の一騎打ちに手出しは無用ぞ!!!」


喧噪は、止んだ。


戦場の全てが、まるで息を潜めるかのように静まり返る。


そして、阿烈とカルマストラは向かい合い、互いに構えを取った。

↓イメージリール動画


https://www.facebook.com/reel/1064832901609526

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