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乂阿戦記2 終章 死せるクトゥルフ、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり-20 アルゴー・ユグドラシル号vs大いなるクトゥルフ神

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両軍が激突する戦場の背後で、空を覆う二柱の巨神が激突していた。

全高五百メートル――古き神クトゥルフ。

対するは、全高三百メートル――機神アルゴー・ユグドラシル号。

大地を割り、空を裂く、超巨体同士の白兵戦がいま、始まっていた。


『ムグウルイイアアアアアアアア!』

邪神は女神への憎悪を込め叫ぶ。

「女神ユキルよ、人間を支配するのがそんなに楽しいか!?」

クトゥルフ神の叫びに舵を握る雷音は怒鳴り返す。


「うるせえんだよ、タコ野郎!神羅は人間を支配なんかしてねぇ!」

「お前らのやってることは“支配”でも“進化”でもねぇ……ただの破壊と略奪だッ!」

「人間が弱い? だからどうした!だからこそ、俺たちは立ち上がれるんだ!」

「倒されても、傷ついても、それでも守りてぇものがある限り、何度でも立ち上がる!!」

「それが――俺たちだ。俺たち人間の、誇りなんだよッ!!」

「テメーらに比べたら人間は弱い存在かもしれないが、だからこそ知恵や技術を発展させ世界をより良くしてきた!!それを壊されてたまるかよ!!!」

『それがどうしたという!?我等が滅びた後繁栄した人間どもの世界なぞどうでもよいわ!目障りなだけだ!!』

邪神は巨大な腕を叩きつけてアルゴー・ユグドラシル号を叩き潰さんとする。

クトゥルフ神はまるでこの戦争そのものが自らの復讐劇であると主張するように暴れ回る。

「クトゥルフめ、狂ってやがる!この戦争に何の意味がある!?」

獅鳳が思わず叫ぶ。

「だが、やるしか無い!」

雷音が叫び返す。

『ハーハハ!』邪神は勝ち誇ったように笑う。

そして再び巨大な腕を叩きつけようとするが……そこに機械神ベリアルハスターと機械神ラ・ピュセルが割り込んだ!

「いあ! いあ! はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい! あい! はすたああああ! 吹き荒れよ黄衣の炎風よ!!」

「聖光剣エグゼクティブセイバーーーーー!!!!」

オームの必殺魔法とルシルの必殺剣技が炸裂する。

『ぐえぇえ!?』

顔面に受けた突然の衝撃に邪神はバランスを崩し、振り上げた拳がアルゴー・ユグドラシル号に僅かに当たる。

だが、その程度で潰れる超巨大ロボではない!

クトゥルフが体勢を崩した隙に雷音は一気に勝負を決めることにした!

雷音は最強の魔剣クトゥグァをかざし詠唱を唱えた。

「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!」

それは世界の理を変える呪文である。

この呪文を唱えれば世界の法則すら変える事も可能なのだ。

ただしその代償として、耐え難い闘争への飢餓が芽生える。

「あ・・・あああああ!!!」

凄まじい飢えが彼を襲う。

体が熱くなっていくのがわかる。

しかし同時に彼はそれが力となることも実感できた。

それに呼応するようにアルゴー・ユグドラシル号が人型から戦艦形態に戻って行く。

「いくぞクトゥルフ!封獣クトゥグァの力を上乗せしたアルゴー号の力をみせてやる!!うおおおおおおおおおおっ!!!!」

クトゥルフが吠える。

『小童どもおおおおおおお!!』


「見せてやるぜ――これが俺たちの最終形態だ!!」

「《終極鳳凰転身(アルティメット・クトゥグァ=バードチェーンジ)》、発動ッ!!!」


戦艦アルゴー号が赤熱し、次の瞬間、爆ぜるような閃光とともに炎が天へと吹き上がった!

炎は翼を生み、尾を生み、神々しき鳳凰の形をとる。

超巨体が焔の羽根を広げ、天を裂いて飛翔する――

それはまさに、機神の終極形態。《鳳凰転身バードチェンジ》の発動であった!


空を裂き、時を超え、神すらも貫く高速突撃――!

「撃てえええええええッ!!」

主砲、副砲、魔導砲、すべての砲撃が炎の軌跡を描いて邪神へ襲いかかった。


『なに!?』

戦艦アルゴー号は炎を纏い鳳凰の如くクトゥルフの周囲を高速で飛び回る。

そしてすれ違いざまに主砲、副砲をはじめ、さまざまな砲撃を放つのだ。

クトゥルフは防御する暇もなくダメージを受けていく。

まわりの雑魚邪神達も次々駆逐されていく。

邪神クトゥルフは水圧のレーザーを放ち応戦するのだが全く当たらない。

逆に後ろに回り込まれた際、後頭部に主砲を受けて吹き飛ばされる。

クトゥルフは怒り狂い自ら前にでて殴りかかる。

だがそれすらも空振りに終わる。

『脆弱な人間の、脆弱な人間の分際でよくも、よくもこの大いなるクトゥルフを!おのれおのれおのれ!小賢しいヒト種のサル共がああああああああああ!』

邪神クトゥルフが腕を振り回し攻撃するたびに鳳凰と化したアルゴー号はひらりと身をかわして挑発するのだ。

『どうした?その程度か、大邪神クトゥルフさんよ!』

『生意気なあああああ!!』

「今だ!獅鳳君!!」

「承知!」

アルゴー・ユグドラシル号に指揮するタットが指示を出した。

すると戦艦アルゴー・ユグドラシル号はまたも人型に変形を開始する。

その手には二本の剣が握られていた。

右手に巨大化した魔剣クトゥグァを、左手に巨大化した雷剣ドゥラグラグナを二刀流で構える。

吹き出す闘気と魔力は赤と翠が混ざった黒!!

月に映し出される12人の女神達の歌もハイボルテージに達しようとしている。「『私達、ここにその想いを示すよ。真に愛する者たちの為ならば、恐れるものなど何もない!!月よ!我が声とともに想いを届けて!!』」

「『愛の名の元に!!』」。

月は一層輝きを増し、その光は二本の剣に集まって行く!!そして!遂にその時がやってきたのだ!!

「今こそ想いを解き放つ……皆の思いを一つにした、この奇跡を!!」

女神達の歌により極限まで高められた真の力を解放し、同時に最後の攻撃に移る!!

この攻撃が最後になるであろうことは誰の目にも明らかだった。だからこそ全霊を込めて放つ必要があるのだ!!!

雷音と獅鳳……否、操縦室のクラスの仲間達……否、12人の歌姫を含む戦艦に乗るアルゴー号の船員達……否、この苛烈な戦場に集まった全ての戦士達の力を結集し最高の一撃を放つ準備をするのだった!!!

「……みんなー……行っくよー!!」

月に映し出されたユキルが歌に合わせグーパンチを振りかぶる。

あらゆる色の闘気と魔力が混ざり女神ユキルと同じ桜色の光となった。

見れば雷剣ドゥラグラグナが魔剣クトゥグァと合体し一本の剣となっていた。

クトゥルフはその剣を見て恐怖で顔を歪める。


『あ……あれは……いや……な、なぜ……なぜあの刃がここに……!?』

巨躯が震え、無数の目が一斉に恐怖に見開かれる。

『ウィーデルの……双星の刃……ば、馬鹿な……これは幻……幻だ……グウゥルゥゥ……わ、我ハ……クトゥ……ル……』

古き神の咆哮が、やがて呪詛とも悲鳴ともつかぬ泡となって掻き消えた。


クトゥルフが恐怖のあまり発狂する。

「双星剣ドゥラグクトゥグァよ……我が魂に応え、今ここにその力を示せ!!」

その瞬間全ての刃に凄まじいまでの魔力が凝縮され爆発的に膨れ上がった!

そしてそれは全て解き放たれ、巨大な光の剣となる!!

かつて雷音と獅鳳の母達が前大戦でエクリプスを消し飛ばした時と同じ技だ。


雷龍剣ライトニングブレイド!!!


全高300メートルのヒトガタが大いなるクトゥルフに必殺の一撃を放つ。

雷をまとい、巨大な剣と化した神雷聖剣が振り下ろされようとした。

「「うおおっ!超極大剣くらいやがれえええ!!」」

その一撃は万物を打ち砕く絶対破壊の権能である。

『やらせるかああぁっ!!ゔおおおお・ふんぐるい むぐるうなふ たいだるうぇえええええぇぇゔ!!』

クトゥルフも負けじと全存在力を注ぎ込んだ大津波を高出力で叩きつける大魔法で対抗した。

2体の超巨体が放った神の一撃が激突する。

しかし、両者の攻撃は拮抗し大爆発を起こした。

激突の余波により、周囲の大地はクレーターとなり瓦礫の山が出来上がっていた。

もうもうと白煙が立ち込め視界が悪くなる中、両陣営は戦いの結末を目にする。

クトゥルフは頭部と右足首以外を残しすべての体が消滅していた。

大地に転がるクトゥルフの頭部に、人間の顔が浮かび上がってくる。

クトゥルフと融合していた呪いの魔神マクンブドゥバの顔だった。

「ば、ばかな……大いなるクトゥルフが……神にも等しきクトゥルフが……あ、ありえぬ!我が神が敗れるなど……神の器たるこの私が負けるなど……なぜ?……何故なのだ……」



クトゥルフ対戦艦アルゴー号の激突は神が味方したことによりアルゴー号の勝利となった。

そう……

誰も気づかないが……

神が……

創造神たるリーン・アシュレイが力を貸したことにより雷音達は勝利出来たのだ。

リーン・アシュレイはステージで歌うユキルを感慨深げに見つめていた。


「……残っていたか。あの子の魂が、この世界に。」

百年という時の彼方を見つめるように、リーン・アシュレイは静かに呟く。

「人は愚かさを抱き、滅びを選ぶことすらある……だが、それでもあの魂は……前を向く。」

その声は神でありながら、かつて人を愛した者の祈りに似ていた。

「フッ……ならば私も応えねばなるまい。あの子との“約束”に。」


リーン・アシュレイは過去を思い返すようにポツリと呟いた。

彼女が彼と初めてあったのは今から100年前のことだ。

彼は人間を愛していたが、人はいつも争いや愚かな選択をする生き物だと思い、またそれを繰り返させる事でより高次元へと導くべき存在だと思っていた。

だが、彼女は違った。

彼女はただ慈悲の心から人類を守るために戦ったことで神に目をつけられたのである。

それでも彼女は絶望せずに前を向き続けた。

そして彼女に力を貸したのが宿敵たる破壊神ウィーデル・ソウルだったというわけだ。

そんなことを思い出しながらステージを見るとそこで今なお歌を歌い続けるユキルの姿があったのだった。

決着前クトゥルフが艦内に放った邪神の軍団は強力だった。

艦内の戦力では歌の続行はおろか、魔法少女達全員もなす術なく蹂躙されていただろう。

だがそうはならなかった。

ステージに向かおうとした邪神の軍勢は塵一つ残さずにその全てが焼き払われていた。

リーン・アシュレイ屈指の側近"雄牛の角持つ炎の魔獣"ウォーロック1人の力によって……

それが対クトゥルフ戦における勝利の分岐点だった。

女神達の歌でリトル・ユグドラシルが活性化しなければ、クトゥルフを倒し得る反物質エネルギーは溜まらなかっただろう。

敵を駆逐し終えた赤の魔獣は、屈強な人間の戦士に姿を変えリーン・アシュレイに声をかけた。


挿絵(By みてみん)


「リーン殿下、戦況報告いたします。」

「うむ、蚩尤将軍、戦況は?」

「現在クトゥルフの沈黙により邪神軍の指揮系統は完全に崩壊。エクリプス化された戦力も急速に浄化中、残すは総指揮官である真狂王ジ・エンドの直轄軍のみ……」

アシュレイ族最強の猛将蚩尤は、その特徴的な赤い瞳でリーンの様子を伺いながら言葉をつづけた。

「ステージに向かって来た戦力は全て殲滅、しかし本隊から分裂したもう一方の戦力はアレの奪還に成功した模様です。……アレにあらかじめ発信機をつけていたようです。」

「アレは確か殺悪隊が警護していたはずだが……」

「アレを奪った戦力に"風に乗りて歩むもの"がいた模様。激戦だったらしくアヤツも手傷を負い手勢を失ったようです。」

「だがそれでも任務を遂行したか……やはり優秀な駒だな彼は……真のエンザ・ソウル……最後まで抜け目がない男だ……」

リーン・アシュレイは再びステージに視線を向けるとそこには笑顔で歌い続ける彼女がいた。


「……どうにも、戦場の気が静かすぎるな」


「この戦……まだ“終章”ではないようだ」

リーン・アシュレイは空を仰ぎ、月を見つめながら、そっと手をかざした。

そして誰にも聞こえぬ声で、確かに言った。


「応えよ、黒の女神……約束の時は来た」


リーン・アシュレイはそう呟くと手を空にかざし、ある人物に魔力を送った。

するとその人物からすぐに返信があり、リーン・アシュレイはそれを確認するとニヤリと笑いこう呟いた。

「フッ……黒の女神は私との約束を守ったようだ……」

そう言って振り返るとそこには3人の女達がいた。

「我が強壮なる使者より報告があった。ロキは無事だ。だが二人ともだいぶ疲弊している。いま黒天ジャムガの下にいる。ハイサキュバス達よ、迎えに行ってニャルラとロキを安全なところまで送り届けるのだ」

三人のサキュバス、ライト・ブルー、マジ・エンダ、オレンジアはうやうやしく頭を下げ、「は!」と一言答え、その場から姿を消した。


リーン・アシュレイの唇が、微かに弧を描く。

それは万象を見渡す“創造神”の余裕。

次なる災厄――この戦いすら“序章”に過ぎぬことを、

神々の座に立つ彼だけが、知っていた。

↓イメージリール動画


https://www.facebook.com/reel/331066506163102

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