乂阿戦記2 終章 死せるクトゥルフ、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり-19 鶴翼の陣
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「ほう!あやつらも機械神を招来したか……だが、それでワシに勝てると思うなよ!!」
真狂王ジ・エンドが天に掲げたのは、禁断の魔導書――《ネクロノミコン》。
その頁が風もなくめくれ、黒い煙が這い出す。
魔力が地を這い、空間を歪めていく。
「現世の理よ、ねじれろ……我が血をもって禁を破り、封じられし邪神どもを呼び覚ます!!」
大地が裂け、空がねじれる。
現れたのは二柱の災厄――
一体は、無数の眼とヒレを持ち、体から瘴気をまき散らす“毒の邪神”イソグサ。
もう一体は、氷のような皮膚と長大な腕を持つ“氷獄の邪神”ゾス=オムモグ。
彼らはクトゥルフの血を引く、次男と三男――
『『グォアアアア!!!』』
二柱が咆哮を上げた瞬間――世界が、止まった。
天は落ち、地は沈み、風が止まる。
すべての生命がその声に怯え、すべての神話がその名に黙する――
現世に顕現したは、クトゥルフの血を引く災厄の双神。
『毒神イソグサ』、『氷獄ゾス=オムモグ』――
それは、「神ですら立ち向かうことをためらう神」だった。
「イソグサ、ゾス=オムモグ……我が指揮に従え。
その毒で、冷気で、戦場を“終焉”の色に染めてやるがいい……!」
左右に並んだ二柱の巨神が一斉にうねり出す。
瘴気、氷結、そして死の咆哮――
それら全てが、戦場の空気を一変させた。
だがその時、真っ先に一歩を踏み出したのは――レッドだった。
彼は自分のパートナーであるフレアを守るためにも果敢に立ち向かうのであった……。
(俺は絶対に負けない!!フレアを泣かせないために……俺はもう二度と、目の前で大切な人を失いたくは無いんだ!!)
「行くぞぉおおオオオ!!!!」
レッドが吠え、全身の毛を逆立てながら敵に向かって走り出した!!
アーレスタロスもそれに並走する。
機械神アーレスタロスと機械神ロート・ジークフリードは互いに頷き合う。
そして、互いに同じ敵を見据える。
真狂王はイソグサとゾス=オムモグを左右の主力に据え、残存邪神軍とタイラント軍を率い鶴翼の陣を敷いていた。
中央にガタノソアに騎乗する真狂王、右にイソグサと左にゾス=オムモグの二大邪神を配置する。
鶴翼の陣は、古くから中国で使われていた陣形で、日本でも戦国時代や近代でも使用されている。
籠城戦等を考慮したとき、兵の損失を出さないために考えられた策。
突撃してきた敵軍に対して集中攻撃を加え自軍の被害を抑えることができる陣形である。
アーレスタロスとロート・ジークフリードの前に地球連合軍残存部隊のロボ兵団が合流してきた。
イサカが沈黙した事で機神招来が可能になったケルビムべロスと、タイラント兵を駆逐し終えたフェニックスヘブンの姿もあった。
真狂王が手を上げ号令を出す。
そして同時にイソグサが毒霧を撒き散らしながら、ゾス=オムモグが冷気を吹き付ける。
更には邪神ガタノソアが石化の魔眼を発動し連合軍の動きを封じてくるのだ。
六つの目から放たれた歪な光が自軍のロボ達をパイロットごと次々に石化していく。
アーレスタロスとロート・ジークフリードも光を浴び足下から石化していく。
「くっ!」
「し、しまった!」
そこにフェニックスヘブンが姿を現し、石化していく二体の機神に向け、指で印を切った。
「錬丹術で石化の呪いを解除する。じっとしていろ!」
聖王が結んだ錬丹術とエルダーサインの加護でアーレスタロスとロート・ジークフリードの石化が解除された。
二機は再び邪神達に立ち向かう!
そこにさらに後方からもう一体、機械神の助太刀が加わった。
羅漢と羅刹が乗るケルビムべロスである。
「鳳天殿の錬丹術はまさに天恵だ。邪神ガタノソアの石化の呪いはこの上なく凶悪と聞く!フェニックスヘブン、援軍感謝する!」
羅漢からの通信に鳳天が返事を返す。
「右のイソグサは、俺に任せな。俺は錬丹術で毒や石化、呪いの攻撃を無効にできる。全ての自軍機体に毒と石化と呪いへの対策を施しておいたぜ。」
(流石は聖王イルスの生まれ代わり鳳天!前世では厄介この上ない難敵だったが味方につけばこれ以上なく頼もしい!私にも言えることだが、これでもまだ全盛期の力を取り戻してないのだから恐ろしい……コイツに関してはこれからも敵に回したくないものだな……)
ケルビムべロスの中の羅刹が複雑な思いで鳳天の協力を喜んだ。
「左のゾス=オムモグは我等が相手となろう!その他雑兵共は我が軍と殺悪隊が相手をする。貴殿ら2人は大将首を頼む!」
ケルビムべロスの中の羅漢が漢児とレッドに通信を送った。
漢児達がケルビムべロスの方を見やると巨大な空飛ぶ鮫に騎乗した殺悪隊の姿があった。
それを指揮するのは当然ながら鮫島鉄心である。
「お父さん!」
「へ、こいつぁ心強いぜ!」
そして羅刹は心の中で漢児達に詫びる。
(まあ、お前等は軍属の正規部隊ではない。陣を指揮してくる敵には相応の対応フォーメーションというものがある。だが兵士じゃないお前等が上手くフォーメーションどおりに動いてくれる確信が持てない。だから言い方は悪いがこちらが利用するカタチでお前等に戦ってもらおう。でないと逆に足を引っ張られるケースがあるのでな……。だが、貴様らの強さと特性をきちんと把握しているからこその判断なんだぞ。)
・イソグサ→鳳天&右翼担当
・ゾス=オムモグ→羅漢&左翼担当
・中央突破→アーレスタロス&ロート・ジークフリード
――戦場の構図が、明確になった。
「行くぞぉおおオオ!!」
烈人の叫びに呼応し赤い機械神が走り出す!
ケルビムべロスは風の魔法を両手に凝縮した塊を発射する魔法弾を撃ち出す。
風の弾丸で敵を打ち砕くのだ!!
この魔法弾を、邪神ガタノソアが巨大な腕で掴む。
そして、魔力を吸収する!
「させない!」
そこにアーレスタロス機が蒼い雷を纏う水の槍で攻撃する。
パートナーのアクアの力だ。
「アクア!合体魔法だ!」
さらににロート・ジークフリード機の炎の円弾が加わり合体攻撃となった。
パートナーのフレアの力である。
雷と水が重なり、炎が踊る。
アーレスタロスの水槍が、アクアの魔力と共鳴し蒼雷を生む。
ロート・ジークフリードの円弾が、フレアの炎を纏って紅蓮と化す。
二つの奥義が交差し、“呪いすら焼き尽くす”新たなる輝きが生まれた――
それは《双星機神合体奥義――水翔雷炎双撃》!
青と紅が交差し、天地を裂く十字の閃光がガタノソアを貫いた。
『ごえええええ!!』
膨大な魔力を吸収しきれずガタノソアの腕の一本が弾けた。
「おのれぃい! ハーハハハハハ!!」
ガタノソアに騎乗する真狂王機イット・ジ・エンドが嬉しそうに悔しがる。
真狂王は歯ごたえのある戦争を楽しんでいた。
「しえええええい、しえいっ!!」
真狂王機が、死神の鎌を振り抜き、漆黒の斬撃波を放つ――!
「うおおおおおおおおおぉ!!」
まず迎え撃ったのはロート・ジークフリード機。
その機体が翻すのは、剣の鬼神《胡蝶蜂剣》に伝授された**“獄焔の舞”――《煉獄紅蓮乱舞》!**
剣閃が紅い残光を描き、蝶の羽のように交差する。
優雅でありながら、烈火のごとく苛烈。
その剣は“炎の円舞”となって、真狂王の鎌撃を斬り払い、力で対抗するのではなく、“技”で受け流した。
「うおおおおおおおおおぉ!!」
続いて、アーレスタロス機が突進する。
その剣はただ一つの型――真っ向勝負にして絶対の一撃。
「くらえ!《蒼天剣アーレスダイナミック》ッ!!」
蒼く輝く剣が、雷を纏って振り下ろされる。
それは師たる“黒天ジャムガ”をも恐れさせた、至純なる破壊の一太刀――
剣が鎌を受け止め、激突点から生まれた衝撃が、周囲の邪神を吹き飛ばす!
「いえあああああああああああ!!」
「ぐぬぅぅぅ……面白いッ!!」
真狂王は狂笑しながら、騎乗する邪神ガタノソアと共に再び突進してくる。
「『来たれ正義の英雄よ!我、今こそ婆娑羅の剛毅知らしめん!汝が義を知らしめんとするなら、それを討ち倒すが我が本懐なり!!』」
「「――上等だ真狂王ッ!俺たちの“正義”は、誰にもねじ曲げさせねぇ!!」」
死神の鎌 vs 英雄の剣――
一進一退の死闘が、いま戦場の中心で爆ぜていた!
真狂王&ガタノソア対アーレスタロス&ロート・ジークフリードの戦いは佳境に入っていた。
↓イメージリール動画
https://www.facebook.com/reel/2113811772319840