乂阿戦記2 終章 死せるクトゥルフ、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり-18 超弩級人型変形巨大戦艦アルゴー・ユグドラシル号
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大いなるクトゥルフが500メートルの巨大を震わせ怒りの咆哮を上げた。
女神の奇跡で配下の邪神達が一気にその数を減らし焦りだしたのだ。
そして今も歌は続き、エクリプスにより産み出された邪神はどんどんと数を減らしていっている。
『おのれ女神ユキル! またしても、 またしても我等"グレートオールドワン"の前に立ち塞がるか! 忌まわしきヒトが産み出せし旧神よ!!』
融合した巨大を震わせ咆哮を上げる。
今この邪神はマクンブドゥバよりクトゥルフの側面が強く出ていた。
それは、マクンブドゥバの意識がクトゥルフに飲み込まれつつある事を意味する。
つまり、マクンブドゥバより強大な力を持ったクトゥルフが表に出ている現状は、極めて不利であると言えた。
そして巨神クトゥルフは女神達ごと戦艦アルゴー号を破壊すべく、鋭い鉤爪を振りかぶり迫ってくる。
大神殿に、衝撃が走った。
「くっ!あのデカブツの圧が上がりやがった!」とアーレスタロス。
「チィ!!あの巨体でなんてスピードだ!!」とレッドは叫ぶ。
(みんな、作戦通りにお願いね)
((了解よ!))
クトゥルフが鉤爪を振り下ろすと同時にアルゴー号も動き出していた。
「うおらーッ!! 全速前進!!」
雷音の絶叫と共に、アルゴー号が宙を切り裂くように加速する。
それはまるで、星を裂く彗星。
一拍遅れて、クトゥルフの鉤爪が振り下ろされる――
ズガァァァァン!!!
地が裂け、爆風が天地を飲み込んだ。大神殿に生まれた直径数百メートルのクレーターは、クトゥルフの一撃の余波にすぎない。
そのときだった。
爆煙の中から、再びクトゥルフが飛び出してくる。
「来るぞッ!! 回避行動!!」
雷音の怒鳴り声と同時に、アルゴー号は急反転。
機体が軋みを上げながら横滑りし、空間を引き裂いて突進する巨神をギリギリでかわす。
直後――
ドオォォォン!!
地響きと共に、クトゥルフの突進が地面にめり込み、再び土砂が爆ぜた。
「こんな……あの図体で、なんてスピード……!?」
汗を拭いながら舌打ちする雷音。
巨体ゆえの鈍重さ――そんな常識は、この怪物には通用しない。
そして巨神は、咆哮と共に、なおも追撃の構えを見せていた。
地響きを立てながら迫ってくる巨大邪神に対し雷撃長イポスは自己が持つ特殊能力を発動するのだった。
「すーべすべすべ滑り草!!」
戦艦から魚雷が発射されクトゥルフの足元に着弾!
摩擦力をゼロにする魔法の草が地面一面に広がる。
500メートルの超巨体が足を滑らせる。
巨大神が轟音を上げ尻餅をつき倒れる。
「チャンスだ!一斉攻撃!」
艦長タットの合図と共に砲術長アキンドが叫んだ。
「副砲発射用意!!目標、敵巨大魔物、距離4000地点!!」
艦内が慌ただしくなる中、艦長の声も自然と熱がこもる。
「弾幕薄いぞ!何やってる!」
「砲門開けろ!!」
「敵巨大魔物、砲撃来ます!!」
タットはモニターに映るクトゥルフの背鰭を見やる。背鰭が僅かに開き青白い光が砲身に集まってきている。
エネルギー充填が完了している証拠だ。
(不味いな……この距離でアレを食らえば戦闘不能になる……!)
タットは慌てて指示を出そうと口を開くが、先に雷音が叫んだ。
「退避ぃー!!緊急回避ー!!ヨーソロー!!」
「ヨーソロー!!」と甲板員達は瞬時に反応し機体を反転、その場から離脱する。
その瞬間、強烈な衝撃波が戦艦アルゴー号を襲い、大爆発を起こした。
戦艦アルゴー号の4倍ほどの巨大さを持つ水の巨神クトゥルフはその掌から極太の水圧ビームを放っているのだ。
そうはさせまいとオームが船のバリアを最大出力で展開し、さらに自分の魔力の上乗せしてビームを防ぐ。
ルシルもオームに協力し魔力でバリアの出力を底上げする。
だが、それでも船のダメージは甚大だ。
「くっ……なんて力だ!この船が押し負けている!?」
(これ程なのか!4大霊の一角を占めるクトゥルフの力とは……!)
タットはモニターを見る。
そこには、クトゥルフの巨大な姿が映っている。
(くそっ……このままじゃ……このままじゃ……!)
その時だった!!凄まじい轟音と共に戦艦アルゴー号が揺れ動いたのだ!
まるで地震のような激しい振動に襲われながらも、全員がその衝撃に耐えていた。
そして艦橋からの指令が飛ぶ!!
『本艦、反転!撤退せよ!』
「了解!全速力で退避~!」と雷音が指示すると、アルゴー号は一斉にその場から動きだす。
その背後で巨大な砂塵が舞上がる中、戦艦アルゴー号が大きく横に回転を始めるのだった。
そして船体が大きく傾きながら方向を変えると急速に加速しその場を離脱しようとする。
しかし・・・この時すでにクトゥルフの触手のようなヒレが戦艦の周囲を取り囲むように展開されていた。
そしてその周囲から黒い何かが現れたかと思うと瞬く間に形を変えていく・・・。
それは無数の下級邪神達であった・・・そう、まるでクトゥルーの触手のように、次々と這い寄ってきていたのだ。
そして邪神達は一斉に触手を伸ばして戦艦を絡め取り、捕えていく!
艦長タットが叫ぶ!
「馬鹿な・・・こんな広範囲から現れるなんて・・・くっ・・・引き剥がせ!」(このままじゃやられるぞ)と雷音は心の中で呟く。
「まだだ、この程度ではな!!」と総司令官オームが艦橋内に響くように叫んだ!
「対邪神用攻撃機関、始動――!」
オームの号令と同時に、艦内警報が鳴り響いた。
《対神破魔術式アルゴー・ユグドラシル、展開開始――!》
ブリッジのモニターが一斉に切り替わり、魔術陣が幾何学模様を描きながら起動する。艦体が震え、空間ごと軋むような重圧が全身を貫いた。
「変形開始!全モジュール、リミッター解除!」
艦体後部のエンジンユニットが分離し、翼状のフォルムに展開。
艦首は旋回して装甲が割れ、艦橋がそのまま頭部となる。
腹部からは関節機構がせり出し、船体全体が――巨大な人型へと再構成されていく。
「変形率70%……80……90%……最終形態に入ります!」
膨大なエネルギーが艦体を覆い、全高300メートルの超巨神が姿を現した。
《対邪神決戦用形態・アルゴー・ユグドラシル――完全起動。》
その両の眼が蒼く煌めいた瞬間、拘束していたクトゥルフの触手を片腕で引きちぎる。
次いで、回し蹴りのような動作で周囲の下級邪神を吹き飛ばした。
「な、なんだあの巨人は……!?」
「ロボだ……でけぇ……! ってか、ウチの戦艦がロボってどーいうことだよぉおお!?」
「いいから慌てず乗れ、今さらだろ!!」
ブリッジの中では、タットと雷音、そして乗組員たちが慌ただしくコンソールを操作していた。
――それは、まさに戦艦が覚醒した最終形態。
人類が誇る、神殺しの意志の象徴。
《アルゴー・ユグドラシル、出撃せよ――!!》
戦艦アルゴーは人型巨大ロボへと変形していったのだ。
『ぬうぅ!?』
全高300メートルの超巨大ロボがクトゥルフの触手を引きちぎり拘束を解く。
周囲の下級邪神も次々殴り倒していく。
その頭部のコックピットの中ではタットと雷音達が慌ただしくコンソールを操作している。
『艦長、変形完了しました!』
対邪神決戦用形態アルゴー・ユグドラシルがその全貌を現した。
「総員、全力攻撃開始!!」とタットの号令と共にアルゴー・ユグドラシルの右手の砲門から膨大なエネルギー粒子が発射される。
それは光線となって前方の邪神達を焼き払わんとするのだが、そこにクトゥルフの触手のようなヒレが伸びてきて、それを防いでいく!
その瞬間だった!!戦艦ロボが大きく揺れ動いたのだ!! 雷音はコンソールを操作して状況を確認するが・・・!?
『船体にダメージ発生!!』艦長はすぐさま指示を出す。
「右肩部シールド展開!」という指示により右肩側面に装備されていた円形シールドが展開される。
「この程度の攻撃ならば大した被害にはなりませんが・・・一体何の攻撃でしょうか?」とルシルが聞く。
「敵の数が、多すぎる・・・それにクトゥルフ自体も!」
雷音の言う通りだった、アルゴー・ユグドラシルに向かって来る触手の数は10や20と言った生ぬるいものではなかった!!
『艦長!船体の損傷率が20%を超えました!!』という報告が入る。
(ダメだ!このままでは、先にこちらが持たない!)ロボを操縦して雷音はそう判断した。
しかしその時、さらに大きな衝撃が艦全体に伝わる!!
『後部ハッチ破損!邪神達の侵入を許しました!神羅達がいるステージに向かっている!』
艦内に警報が鳴り響き、オペレーターがそう叫ぶ!
(くっ、神羅達がいる場所と邪神達が向かう場所は近い!!)
「くくくくく…勝負ありのようだな」
戦艦ロボと大邪神の戦いに目をやり、真狂王ジ・エンドは勝ち誇ったように赤と蒼のHEROを見下ろした。
「いや、まだだ!」ロート・ジークフリードは叫び、立ち上がる!
そして剣を両手で正眼に構えた!
ジ・エンドの目の前には1体の邪神が召喚されようとしていた。
「クックック、武芸者として貴様らと立ち合うのはここまでだ。ここからは武将として戦争勝利をもぎ取りに行く! この局面、もはや戦力の温存なぞ考えん! 禁断の魔導書ネクロノミコンよ! 我に力をよこせい!!」
ジ・エンドは左手に握った《ネクロノミコン》を高く掲げた。
「……踊れ、ヒーローどもよ。我が演目の幕開けだ」
その声が響いた瞬間、天を裂くように空が悲鳴を上げた。
黒雲が渦巻き、稲光が天地を交錯する。
そしてジ・エンドの詠唱が、死の言語で紡がれていく。
「フングルイ……ムグルウナフ……
ガタノソア・ルルイエ・ウガ=ナグル・フタグン……
いあ……いあ……ガタノソア……フタグン……!」
空が捻じれた。
異界の裂け目が開き、そこから這い出るようにして現れた影――それは三つの頭部を持ち、全身を蠢く無数の触手で覆われた巨大な塊。
その肉体から発せられる魔力は、周囲の空間そのものを狂わせ、存在するだけで物理法則が歪んでゆく。
「目覚めよ、ガタノソア。破滅の胎より生まれし、災厄の王よ……!」
六つの邪眼が煌めき、戦場のすべてを威圧する。
それはもはや“召喚”ではなかった。
神が神を呼び起こした、禁忌の顕現――。
「さあ、舞え!
我が神殺しの機神、この災厄と共に、世界を屠れ!!」
真狂王は己の改獣を全高60メートルのガタノソアの背にまたがせると、死神の鎌を構えて叫んだ。
黒と紫の稲妻が落ち、彼の軍勢――タイラントロボット兵団が、次々に起動する。
そしてその先頭で、ジ・エンドとガタノソアが、光の巨人アルゴー・ユグドラシルへ向けて突撃を開始した――!
「おのれ真狂王!!」
「野朗!行かすかよ!!」
アーレスタロスとロート・ジークフリードが封獣と改獣を昇華させそれぞれの機械神を招来しようとする。
そんな二人のヒーローに二人の魔法少女が声をかけた。
アクアとフレアだった。
「漢児さん、待って下さい!お願いします。私も一緒に戦わせて下さい!!」
妹とは違う青の魔法少女がアーレスタロスに助太刀を申し出る。
そして烈人の妹分フレアがロート・ジークフリードに申し出る。
「兄貴……兄貴がアタシに仇討ちなんてさせたくないの、分かってるよ。
でも、今回は違う。これは復讐なんかじゃない。
――イサカさんが最後まで信じてくれた“生きる希望”を、今度はアタシが守りたいだけ。
だから……お願い。一緒に戦わせて。アタシ、みんなを護りたいんだ!
……烈人お兄ちゃん!!」
「フ、フレア……」
妹に真っ直ぐな目で訴えられたじろぐレッド
その肩を好敵手アーレスタロスが叩いた。
「おいこらレッドてめぇ!妹分達の心意気に応えないとかそれでも男かよ!!漢なら応えるもんだろ?なあ兄貴?」
ロート・ジークフリードは戸惑う。
確かにここは共闘しなくては勝機は無いだろう。
しかし、ここで彼女の力を借りていいのだろうか?フレアは強いことは知っている、だが実戦経験は少ないはずだ。
そんなフレアと共闘していいのか?
そう考えていることを察したのだろう、ロート・ジークフリードの心が読めるアーレスタロスがこう続ける。
「まあ、確かにあの子達は実戦には慣れていないけどよ・・・でもな、今は戦場の真っ只中でしのご言ってる場合じゃねぇっ、逃げ場なんざどこにもねえし、だったら1番自分に近いところで守るのが最善だろ? それに男ってのはよぉ! 女の前でだけはかっこつけてぇもんなんだよなぁ!! ここは俺がお前を守ってやる! 黙って俺について来いって見栄張るのが漢ってもんだろうが!!」
「・・・そうだな」
好敵手の言葉にロート・ジークフリードは覚悟を決めた。
ロート・ジークフリードは変身を解き紅烈人の姿でフレアに尋ねる。
「フレア、行けるか?」
「勿論。兄貴!私はいつでも行けるよ!」
そう言ってウィンクした。
「よし、ならば行くとしよう」
レッドとフレアは同時に駆け出した。
そして、お互いの手をしっかりと握り合い――
掲げたその拳が、天の魔力を貫いた。
「「顕現せよ! 英雄が屠しファフニールの力!
皆曰く、その性は雄風高節にして磊落不羈、
他に並ぶものなくして、古今独歩の大豪傑なり。
その名は人々の口からも生々世々絶えることなかるべし――
機神招来!!ロート・ジークフリード!!!」」
爆発する光。
顕現したのは、紅蓮の龍騎士――人機融合の英雄機神だった。
一方――
狗鬼漢児は、隣に立つ少女に手を差し伸べた。
「――嬢ちゃん、行くぞ。お前の覚悟、受け取った!」
「……はいっ!」
アクアが手を取る。
その瞬間、二人の間に奔る魔力が爆ぜた。
短く、だが力強く――。
「「勇者の誓いによりて、我らは一つ!
機神招来――アーレスタロス!!」」
光の渦の中、蒼き機神が姿を現す。
咆哮と共に、召喚主を乗せて、戦場へと飛び立っていった。
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