乂阿戦記2 終章 死せるクトゥルフ、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり-6 ロキの大召喚
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ロキは血濡れの掌を天へとかざし、嘆きのような詠唱を唇に乗せた。
「フェンリル・オリジン──ヨルムンガンド・オリジン……
神殺しの牙よ、終末の咆哮と共に顕現せよ……!」
天が震え、大地が裂ける。
紫黒の光を纏った巨大な魔法陣が地平を飲み込み、その中心から這い出すように現れたのは、牙を持つ狼――《フェンリル・オリジン》と、万物を喰らう蛇神――《ヨルムンガンド・オリジン》。
咆哮ひとつで軍を沈め、巻きつくだけで世界を損なう、最終災厄の獣たちである。
空が軋み、地が呻く。
神代の奈落より呼び戻された〈神殺しの原初〉に、千の獣たちが呼応し、吠えた。
「まだだ――終末は、これで終わらない……!」
ロキは両腕を左右へと大きく開き、黒い霧を放った。
濃霧は瞬く間に地を満たし、その中心から異形の影が次々と姿を現していく。
20メートルを優に超える悪魔たち。その背にまたがるは、鋼の鱗を持つ漆黒の竜たち。
空を覆い尽くす竜騎兵団、その数、数百――。
ロキの足元にひざまずいたのは、漆黒の鎧に身を包んだ、六本腕の大悪魔であった。
「バルログ竜騎兵団、参陣完了。命を、殿下の勝利のために捧げましょう」
「うむ。よくぞ応じた、ゴズモグ将軍。今こそ――我らが憎き“銀の魔女”を討つ時だ」
ロキは左手を高く掲げる。
「全軍、出撃!! この戦場を焼き尽くし、“エクリプス”を奪取せよ!!」
「「「「「全騎展開――炎翼を開け!!!」」」」」
号令と共に、空が燃える。
バルログ竜騎兵団が空を切り裂き、地に影を落とす。
ロキの肩がわずかに震える。呼吸は乱れ、魔力の消耗は限界域に達しつつあった。
「はぁ……はぁ……まだだ……まだ“彼女”は還っていない……!」
フェンリル、ヨルムンガンド、そして竜騎兵団。
ロキの命と魂を削りながら、召喚された〈終末の軍勢〉が、ついにこの戦場にその姿を現した。
ロキの激しく息を切る様子から、彼が命を削りながら召喚魔法を駆使してるのが一目でわかった。
「ナイア! イサカのキジーツを早く新しい体に収めるんだ!! コイツらは僕が黙らせる!!!」
必殺の形相でロキが叫ぶ。
「あーもう! ロキってば〜、らしくなく熱くなって〜! イサカ、イサカってもう!もう!」
ナイアはぶつくさ文句を言いながら褐色のイサカにキジーツを収めに向かう。
「「「「させない!!」」」」
その行手をナインテイルとモビーディックラーケン、そしてラ・ピュセルが立ち塞がった。
「ああ、もうガキどもめ!」
ナイアは舌を打った。
戦いの最中、必死に抵抗するロキを見て羅刹は神妙な顔つきになっていた。
「……フン、やっぱりな……本当はお前はハナからエクリプスなんか眼中にない……子供みたいに青臭い理由で慕っていたイサカを甦らせたいだけだ……嫌いじゃないぜそうゆーの……だがダメだ……この戦争で大勢の兵士が死んだ……所詮お前は人類に仇なす邪神なのだ……落とし前ってヤツがある……だからロキ……私は屈指の強敵として敬意をもってお前を殺す!!」
「ハッ! やって見ろ! 僕は今忙しいんだ! 僕の邪魔をする奴は誰だろうと容赦しないぞ!!」
「いいだろう! ならば私を倒してみせろ! 我が名は羅刹!! 乂族を守る最後の盾にして最強の剣!!最強の魔女ラスヴェードが転生体!!」
「上等だ! 僕を怒らせたこと後悔させてやる!!」
ロキは召喚魔法を唱えて黄金の巨大竜を呼び出す。
「黄金竜スマウグ騎乗!!」
指輪王は巨大な黄金竜の背中に飛び乗ると、魔王のメイスと魔王の盾を構え、徹底抗戦の姿勢をみせた。
だが直接ケルビムべロスに突撃しようとはしない。
当然だ
彼はこの戦場において盤上のキング
彼が倒れれば召喚した軍勢は元の世界、妖魔世界たる紫宇宙に強制転送される。
つまりは敗北だ!
羅刹は天に手をかざす。
「いでよ!死してなお我に忠誠を誓う修羅の英霊達よ!」
『イエス、マム!!』
すると空中に無数の魔法陣が出現し、無数の黒く焼け焦げた骨の兵士が現れる。
骨の兵士達の足から焼け焦げた20メートル級の巨大ロボが現れる。
この世のモノならざる地獄から駆けつけた幽鬼の兵器、キラーマシンとでも言おうか…
黒骨の兵士達は次々と焼け焦げたキラーマシンに乗り込んでいき羅刹が騎乗するケルビムべロスにひざまづいた。
さらにケルビムべロスの後ろからドアダの紫のカラーリングのロボ軍団、乂族の銀のカラーリングのロボ軍団、オリンポスの黄金色のロボ軍団も到着する。
「よくぞ来た同志諸君!この灰色の魔女の加護のもと、いざ鉄撃を起こし敵を打ち倒そうぞ! 兄上号令を下さい!!」
羅刹に促されドアダ七将軍"銀仮面"羅漢が号令をだす。
「我は羅漢! 我等が精鋭達よ、我らは全ての魔を討ち滅ぼさんがため馳せ参じた! これより魔の軍勢に正義を示す!皆の者続け!!」
「「「「「おおおぉーーーーーーーー!!!」」」」」
20メートル級の巨兵達の中でも、両軍の精鋭と精鋭が合いぶつかるその戦闘はまさにクライマックスの最終戦と呼ぶに相応しい激戦であった。
「ハァッ!!」
「ぐぅっ!!」
ケルビムべロスの爪の斬撃が指輪王の盾を真っ二つにする。
「まだまだぁ!!」
ロキは炎弾を放つが羅漢はケルビムべロスの肩の装甲を外し盾代わりにする。
「ふん!!」
ケルビムべロスの装甲が炎弾を弾き飛ばす。
指輪王とケルビムべロスの戦闘にイット・ジ・エンドが割り込んで来る。
「ロキ殿、あまり前面に立つな!此奴はワシが抑える!」
「すまない! 助かった」
ロキはイット・ジ・エンドの背後に回る。
巨大ロボ軍団の戦闘を見守っていたタット教授はクラスの皆に号令を出した。
「みんな、地球防衛軍のアルゴー号に乗り込むぞ! はっきり言う! ロキはイサカの復活を果たす! 彼はそれをやり遂げる!! それはいい。だが彼はエクリプスも甦らせるつもりだ! そんな事は絶対にさせちゃいけないんだ! 今ならまだ間に合う、急ごう!」
タット教授の号令で生徒達は次々とアルゴー号に乗り込み、戦艦内部にある、とある舞台へと向かっていく。
その様子を見ていたカルマストラ2世は目を細める。
「んん? タットの小僧め、何を企んでいる……待て! アレは確かアルゴー号! かつて女神ユキルが乗り奇跡の歌を届けそして戦場を駆け巡った伝説の船! 確か神羅の小娘は女神ユキルの生まれかわりという噂……お、おのれ! さてはアレを起動させるつもりか!?」
目論みに気づいた真狂王は機械神を駆りタット達に立ち塞がろうとするが、ルシルがパズスフィンクスとの戦闘を離脱し、イット・ジ・エンドの行手を阻んだ。
「真狂王!タット先生に手出しはさせない!!」
「ヌウウ!ラ・ピュセル!!」
イット・ジ・エンドの死神鎌とラ・ピュセルの聖剣が激しく火花を散らす!
たまらずカルマストラ2世が通信機に向かって叫ぶ。
「イタクァ・アルカーム!いつまでオームの小僧と遊んでいる!?こちらの状況は佳境だ!直ちにこちらに合流せよ!!手が足りん!急ぎこちらに合流せよ!!」
通信機を通してアルカームが返事を返す。
『ラジャー、ボス!』
ルルイエの外で激闘を演じていた鳳天、胡蝶蜂剣、ベリアルハスター、イタクァ達
彼等の内まず改獣イタクァを駆るアルカームが、突如戦闘を中断しルルイエ内に飛び込んで行った
それを見て一同はルルイエ内の戦闘が佳境に入ったことに気づいた。
アルカームを追いかける形でベリアルハスターが封獣形態を解除し、操縦者オームとエドナが雷音達が通った穴を使い、ルルイエ内部に突入した。
続いて胡蝶蜂剣が剣で壁に穴を開けルルイエに飛び込み、最後に鳳天がオーム達の後を追うようにルルイエ内部に侵入した。
一方その頃、ロキはケルビムべロスに苦戦していた。
「くっ、これほどの強さなのか!?……つーかカルマストラのジジイめ! あっさり僕の警護を放棄しやがって! おいゴズモグ将軍!…って……ああ! なんてこった! 鮫島鉄心率いる殺悪隊と交戦している! ええい、もういいさ! 自分の身は自分で守る!!」
カルマストラ二世の意識が神羅達に向いた隙に、羅漢が抜け目なく敵軍大将である指輪王ロキを強襲したのだ。
騎乗する黄金竜の上から魔王搥を振り回し、激しくケルビムべロスと打ち合う指輪王
ケルビムべロスのいたる所が破損する。
だが最小限の破損に過ぎないようだ。
最強にして禁断の機械神に生命力を吸われ、ロキの意識は朦朧としつつあった。
「ふ、ふふ、どうだい? これが僕の切り札、ロード・オブ・ザ・リングだよ。これで君もお終いだね。」
息も絶え絶えにもかかわらず、ロキはニヤリと笑い挑発する。
だが、それに対する羅漢の返答は、あまりにも静かだった。
「……確かに強力な機体だ。しかし、操る貴様が剣士でない限り……その力は十全には発揮されぬ」
「へぇ……だったら、試してみろよ!」
「望むところだ」
次の瞬間、黄金竜スマウグが口を開き、金色の熱線を吐き出す。
「焼き尽くせえええええッ!!!」
竜の咆哮と共に放たれる、極光の如きビーム。だが。
――ズバァッ!
一閃。
羅漢は背負った大太刀を抜き放ち、空間ごとその光線を両断していた。
「な……ッ!?」
「その程度の“熱”では、我が剣は折れぬ」
ロキは怒りの叫びを上げ、スマウグを球状にして砲弾のように突撃させた。
――しかし。
「斬!」
居合の如く構えたケルビムべロスの大太刀が、黄金竜の突進を真正面から受け止め、その巨体を跳ね返した。
「な、何が起きたというんだ……!?」
「竜ごときに、小細工など不要。貴様の攻撃はすべて、既に“見切っている”」
「……ほざけッ!!」
苛立ちに満ちたロキが、魔王搥を振り上げる。
「ラァッ!! 死ねええええええええ!!」
ケルビムべロスがそれを受け止め、羅漢が言い放つ。
「効かぬ」
ここから、肉弾戦へ――
拳、蹴り、膝、肘、打撃、打撃、また打撃。
だが、すべてが流れるような武の型で返される。
まるで“型”そのものが、生き物のように。
「な、なんで……! 僕の《指輪王》が……押されている……!?」
「貴様は召喚術師。術で操る機体の威力は確かだ。だが――肉弾戦の“読み合い”で、貴様が武道家たる私に勝てる道理がない」
「チィ……! ならばこれならどうだ!!」
ロキは地面に魔王搥を突き刺し、大地に血の術式を刻む。
周囲の地層が揺れ、地熱が噴き上がる。
「マグマを……!?」
羅漢が目を細める。
ロキの黄金竜スマウグが、灼熱のマグマを吸い込み始めていた。
「さあ目を開けろ! これが真の姿だ――!」
スマウグの両肩が膨れ上がり、変形を始める。
隆起する肉塊、牙、頭部――
やがて姿を現したのは、三つ首の巨竜。
「キングスマウグ!! 見せてやれ、お前の力を!!!」
三つの咆哮が雷鳴のように轟き、空が引き裂かれた――
↓物語をイメージしたリール動画
https://www.facebook.com/reel/2236988226692545