乂阿戦記2 終章 死せるクトゥルフ、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり-4 真狂王ジ・エンド
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残るは敵は残機108体となった狂王エンザ共とロキ達九闘竜である。
まずはエンザ撃退に魔法学園問題児クラスが一丸となって撃退に動く。
ヒーローランキング2位"ラ・ピュセル"ことルシル・エンジェルの聖剣が閃く。
赤の勇者雷音の竜のブレスが燃え盛る。
愛すべき筋肉馬鹿キースが大岩をぶん投げる。
翠の勇者獅鳳が雷剣ドゥラグラグナで雷光の斬撃を放つ。
雷華の炎の魔法が、リリスティアの隕石魔法が、ネロと白水晶のアークレイカノンが、セレスティアのキューピットの矢が雨あられのようにエンザ共にふりそそいだ。
「うわー!」「ぎゃー!」「ひげー!」
悲鳴を上げ次々倒れていくエンザ達
撃破数95体
残機は残り13体
「くそっ!この程度でポクチンは死にましぇ〜ん!」
「そうかな?なら試してみるか!」
雷音は龍化した拳を握り締めると、一気にエンザに向かって走り殴りつける。
「死んだ〜!」
撃破数1体
残機は残り12体
残りのエンザ共は口々にクラスの女子を罵る。
「うわーん!お前らなんか大嫌いだ!! お前らちょっと強いからって弱い者イジメしていいと思ってるのか!? こんな事して恥ずかしくないのかよ!! 女の子が男を力でねじ伏せようなんて最低じゃないか!! この性格ドブス共が!! 女だからって弱い者いじめするような卑怯者は絶対に許さないんだ!! ふざけんな!! このバカ女!! いいから早くポクチンに屈服してハーレム奴隷になれ!!パカっと足をおっ広げるんだよう!!」
エンザの発言にリリス、セレスティア、ネロ、アクア、フレア、神羅、絵里洲、ミリル、白水晶、雷華、鵺の理性の糸が切れる。
「ユグドラシルアロー!」
「炎に焼かれろ変態!」
「隕石でぶっ潰れろ!」
「許可不要……消去……」
「アークレイカノン発射!」
「消えるのだ!」
「マジきもいんですけど?」
「ハラワタをブチまけろ!」
「殺っちゃうぞ☆」
「魔剣よ、燃やし尽くせ!」
「…………死ね」
撃破数11体
残機は残り1体
オロオロとブザマに狼狽えている。
残り一体のトドメは神羅達を押し退け雷音、ルシル、キース、獅鳳4人が前に出る。
……違和感があった。
否、嫌な予感が膨れ上がっていた。
この4人はクラスの中でも戦いに関する勘が特に鋭い。
油断なく最後のエンザに武器を構え迫る。
彼らは4人が4人とも一気に攻め入らず警戒しながら最後のエンザに近づいた。
「何やってるのよあんた達!一斉にかかるのよ!」
「そうだぞ〜!何を遊んでいるの〜!」
リリスとセレスティアが叫ぶが、4人は無視してゆっくりとエンザに近づく。
「おい、みんな。あいつ何かおかしいぜ」
「うん。様子が変だ」
「確かに妙だ。罠かもしれない」
「…………」
4人は足を止めた。
「どうしたの?早くやっちゃえ!外道しばくべし!」
「あんた達、まさかビビッてるの?情けない!」
「黙れ!そんなんじゃねえ!ただ、こいつからは、嫌な気配を感じる」
「……見事だ。欺けると思ったが、お前たちを侮っていたようだ」
怯えていたはずの最後のエンザが、ふいに口元を吊り上げた。
その手にいつの間にか、異様に巨大な方天画戟が出現する。
「来るぞ!」
雷音たちは瞬時に警戒し、防御態勢をとる。しかし、その一振りは予想を遥かに上回る破壊力だった。
「ぐっ……!!」
「なっ……!?」
怒涛のような一閃により、雷音・キース・獅鳳の三人が地面を転がり、仰向けに吹き飛ばされる。
ただ一人、ルシルだけが防御の構えを保ったまま踏みとどまっていた。
「おいおい……なんだ今のは!?」
起き上がったキースが、目を丸くする。
「初めて見る技だ……が、これはただの一撃じゃない」
雷音の目が鋭く細まる。
「同時に四人を狙った……それも、無駄なく完璧にだ」
獅鳳の言葉に、場の空気が一層重くなる。
やがて男――“最後のエンザ”が構えを解き、悠然と語る。
「ふっ、我が奥義"四門大覇道"をよくぞ防いだ」
「四門……だと……?」
「なに、通常肉弾戦で一人に対し飛びかかれる数は4人が限界だ。その飛びかかってくる四人をまとめて倒す為の女神国王家の護身術だよ」
最後のエンザがコオオと大きく呼吸を整える。
「我こそは最悪の暴君!心求めるまま振舞い欲一念を貫きし狂気の圧政者!有象無象の心ある者どもよ!我を否定せよ!正義の名の下、我に刃を向けよ!試練を捧げよ!試練こそは我が娯楽!それを乗り越えしは至福!貴様らの正道を打ち破り我は婆娑羅の頂点に至らん!!」
突如、男の肉体が脈動を始めた。
筋肉が隆起し、衣服が音を立てて裂け、痩せた道化師の仮面が剥がれていく。
浮かび上がったのは、戦場で幾千の命を薙ぎ払った剣豪の肉体。
その身には幾つもの傷痕。どれもが、過去の死闘の記録だった。
その眼は、もはやかつてのエンザではなかった。
底知れぬ老獪さと、軍略の知恵。何より、暴君の器を湛えていた。
「……フン、やはりな。混ざっていたか、あんたも酔狂な真似を……真狂王?」
ロキが肩をすくめ、皮肉な笑みを浮かべる。
「“真狂王”……? そ、それって……」
神羅が訝しげに最後の狂王に尋ねる。
「なに、臆病で猜疑心の塊だったオリジナルのエンザは数多くのクローンを作り戦の前線に送り出していた。戦場でほとんどのクローンが消えていく中、運良く生き延びた古株のクローンがいた。それがワシだ。別に本物のエンザだとかいうわけではない……」
ロキは肩をすくめ戯ける。
「運良く生き伸びたあ?よく言うぜ!パピリオ等三狂神と共に、叛逆する敵を次々打ち滅ぼし、オリジナルのエンザもその手にかけ、狂王の恐怖伝説を作り上げたのは他ならぬアンタだろう?……他のクローンと違いアンタだけは、苛烈な戦場で数多の英雄、名将と激闘を繰り広げ武仙の高みに至った。かの伝説の名将楚項烈はアンタの事を真狂王と呼び警戒した。そして他のエンザ共とキチンと区別させ警戒を怠らぬよう別の名称で呼ぶ事を部下達に徹底させた。そうだろう? 真狂王ジ・エンド!!……いや、今はカルマストラ二世と呼ぼうか?」
その名が放たれた瞬間、戦場の空気が凍りついた。
「……え? カルマストラ……二世?」
レイミの声がかすれる。
「ま、まさか……そんな……叔父さんが……狂王……?」
「ハッハッハッ! 驚かせてしまったな、我が姪よ!」
真狂王ジ・エンド――いや、カルマストラ二世が豪快に笑い飛ばす。
仮面を剥いだ彼の顔には、あの“族長”と同じ骨格が浮かんでいた。
誰も気づかなかった。否、あまりにも印象が違いすぎたのだ。
しかし今、全てが繋がった――。
「我はタイラント族を簒奪した裏切り者、かつての族長アングを陥れた梟雄――カルマストラ二世。そしてこの戦乱の渦を操る者、真なる“狂王”ジ・エンドよ……!」
そう、体格と道化化粧の有無で気づかなかったが、エンザとカルマストラ二世の顔は同じ顔立ちだった。
だが双方の印象があまりにもかけ離れ過ぎているので誰も気づかなかったのだ。
だが言われて気づく。
その顔の造形は同じだと言うことに。
真狂王の正体こそはカルマストラ二世。
スラル七大部族タイラント族の前族長アングを陥れ、タイラント族の支配者に収まった戦国の梟雄!
「フッ、ジ・エンドか……楚項烈もドアダも貴公も勝手な二つ名を付けてくれるものだ……」
ジ・エンドに言われてロキは再び肩をすくめると、そのまま黙ってしまった。
(なるほど、納得いった! パピリオをはじめとする三狂神達が、エンザみたいなアホに従ったってのがどう〜しても納得いかなかった! 三狂神達が従っていたのはエンザじゃない! この真狂王ジ・エンドだったんだ!……。)
雷音は改めて目の前にいる男の恐ろしさを感じた。
クトゥルフの改獣昇華は半ば以上完成していた。
500メートルの巨体は巨大ロボというより巨大戦艦
それも半分肉で出来た悍ましい化け物戦艦
ジ・エンドは改獣クトゥルフを見上げ命を下す。
「目覚めよマクンブドゥバ!今こそクトゥルフと融合を果たし最終兵器エクリプスを生成するのだ!ドアダが保持する残り滓のエクリプスではない。新たにパワーアップを果たしたネオ・エクリプスを我がモノにするのだ!!」
不快なオーボエの様な音が轟いた。
『グググ、ググググググ!』
そしてクトゥルフから二度と聞きたくなかった男の笑い声が聞こえてきた。
「こ、この声はマクンブドゥバ!?そんな!マクンブドゥバはさっき確かに!!」
アクアが信じられ無いと言った顔をする。
真狂王が笑いながらネタを明かす。
「くっくっく、ワシはマクンブドゥバから三つある心臓の一つを預かっていてな、それをクトゥルフ神の心臓に投げ入れ融合させたのだよ。そう、アルカームとイタクァを融合させたのと同じ要領でな!」
「なんですって!?」
驚愕の声を上げる神羅。
「今マクンブドゥバは我の呼びかけに応じてクトゥルフと融合し、最終兵器エクリプスを生成しようとしているのだ。それこそが我が目的にして悲願。そうすればその力でこの世界を混沌に貶め、全ての…、この世すべての栄華をワシの手に握ることができる!クックック、ハーッハッハ!!」
「なんて事を……」
「ふっ、もう遅いぞ勇者よ。既にエクリプスは完成間近、お前たちがいくら頑張ってももう止められはせぬ。大改獣クトゥルフ起動は間もなくじゃ」
「そ、そんな……」
「さて、では始めよう。マクンブドゥバよ。最終工程を開始せい」
『御意』
「なに?最終工程?」
「クックククク、そうさ。クトゥルフの改獣化は最終段階に入った。あとはエクリプスの魂の依代となる者に憑依させれば新たなエクリプスは誕生するのだよ」
雷音達の教師タットが叫ぶ!
「馬鹿な!改獣一体でエクリプスを生成できるはずがない!かの妖魔皇帝も12体の改獣を揃えようやく自分の娘エクスにエクリプスを受肉できたんだぞ!?」
「クックック、タット教授、改獣はただその場に有りさえすれば死者の怨念や瘴気をエクリプスの要石たる大改獣に送ってくれるのだよ。今この戦場には何体の改獣が揃ってるかな? ジークフリードが持つヤマンソス・ドゥヴェルク、聖剣の乙女が持つラ・ピュセル、アルカームが持つイタクァ、No.1HEROが持つフェニックスヘブン、ロキが持つロード・オブ・ザ・リング……そしてこのワシが持つイット・ジ・エンド!!!」
真狂王の後ろに赤紫の道化に扮した死神の如き容貌の機械神が現れる。
カルマストラ二世は赤紫の機械神イット・ジ・エンドに乗り込み勝利宣言を続けた。
「ふはははは!大改獣と化したクトゥルフも含め半数以上の改獣が集まってるぞ!クトゥルフこそはエクリプス生成の要石!半分以上の改獣がいれば戦場の死者を生贄に新たな最終兵器を生み出だせる!!この戦争で敵味方含め充分な死者の数が揃ってるぞ!!」
「ば、馬鹿な!?ま、まさか今回の戦争はクトゥルフを改獣に昇華するのが目的じゃなく……」
「しかり!最終兵器エクリプスの生成こそが我が目的よ!感謝するぞ銀河連邦!お前達はわざわざエクリプスを生成する為の条件である改獣を寄越してくれた!さあマクンブドゥバよ、エクリプスの力をクトゥルフに宿し新たなエクリプスを産み出すのだ!」
真狂王が勝ち誇ったように嗤う。
「クッ、ここまで来てエクリプスを完成されるわけにはいかない!それにクトゥルフが完全な状態ならまだしも、今の奴は不完全だ。ここで倒せばエクリプスは作れない筈!」
「無駄だ、もう遅い。既にクトゥルフは目覚めつつある。さあ聞くが良い!大改獣に進化したクトゥルフの呼び声を!!」
その言葉と共に、クトゥルフが再び不快な音を発し――。
――ボオオオオオオオオ……!!
突如、戦場全域に絶叫が響き渡った。
兵士たちの耳に、脳に、魂に、何かが“侵入”してくる。
「ぐあああああっ!!!」
「うううっ……なんだこれは……! 頭が……割れる……!!」
「ひ、ひいぃっ……助けて……助けてくれえええっ!!」
次の瞬間――。
その者たちの身体が膨れ、皮膚が裂け、鱗が浮かび、手がヒレに、足が尾に、顔が魚のような異形に変わっていく。
「うわあああっ!?」
「ひ、ひいいいいぃ!!」
「な、なにこれ!? 人が……化け物に……!」
アクア、フレア、神羅、ミリルたちが叫ぶ。
「これが……《エクリプスの呪い》……!」
ネロが顔を引きつらせながら言った。
それはドアダが誇る最終兵器、エクリプス――
その忌まわしき力と、全く同じ現象だった。
「これ以上は……もう、止めなきゃ……!」
雷音が、燃えるような眼でジ・エンドを睨みつけた。
(――このままじゃ、本当に世界が終わる……!)
「イサカのキジーツを渡してもらおうか?」
ロキがキジーツを持つアキンドに向かい歩を進める。
「断る」
少しビビりながらもアキンドはロキを拒絶する。
「そうか。ならば力づくでも頂こう」
ロキがイサカのキジーツを奪い取ろうとするが、獅鳳がロキの前に立ち塞がる。「させねえ!」
「邪魔だ」
ロキは獅鳳を蹴り飛ばす。
「ぐっ!」
「獅鳳!」
「大丈夫だ!それより早く逃げろ!」
「獅鳳くん!」
「獅鳳!」
獅鳳はアキンドを逃す時間を稼ぐため、一人でロキに立ち向かっていく。
「無駄なことを」
「やってみなきゃわかんねぇだろうが!」
「邪魔をするならお前から排除させてもらうぞ……ドアダのマザコンおぼっちゃまよ?」
ロキが最強の改獣ロード・オブ・ザ・リングの指輪を掲げる。
その眼光は鋭く、いつものふざけた態度は微塵もみられない。
それは“神殺し”すら想起させる、戦士の――否、“修羅”の眼光だった。
↓物語をイメージしたリール動画
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