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乂阿戦記2 第六章 紫の魔女ナイアルラトホテップと邪神ロキは暗躍の影で嗤う-9前編 ネロの砲撃

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戦艦アルゴー号で突入するやクラスの魔法少女達が、こぞって攻撃呪文を放ち触手共を駆逐していった。

「うおおおおお!!なんじゃこりゃあ!!?」

突然現れた謎の巨大船を見て、狂王は思わず叫んだ。

巨大船の船首ハッチが開き甲板にいた生徒達や、地球防衛軍の兵士達が次々とルルイエ神殿に乗り込んで来る。

「あれが……地球防衛軍……」

「すごい、あんな巨大な船を動かせるなんて、意外と地球の技術もすすんでたんだな〜。」

「かっこいい〜!!」

雷音達は口々に感嘆する。

穴を通った先は馬鹿馬鹿しまでに広大な邪神の祭壇が広がっている。

祭壇は島1つ分ぐらいは入りそうな異常な広大さだ。

「ムキ〜!ムカ着火ファイヤー!」

狂王は歯ぎしりする。

だが、すぐに気を取り直し、マクンブドゥバに指示を出した。

「おいマクンブドゥバよ、そいつらを殺せ。あいつらを倒せば我々の勝利だ。さあ行け!!!」


――その時、狂王の目が一点に吸い寄せられる。


少女がいた。巨大な砲を抱えた少女が――自分に狙いを定めていた。


「な、なにィ!? やめ――うきゃあああああ!!」


「忌々しい姉機のストーカーめ!アークレイカノン発射!!」


咆哮とともに砲撃が放たれ、狂王の頭が空に舞った。


「ざまあみろォ!」

「きったねぇ花火だぜ……最高じゃねえか!!」


生徒たちの歓声が咆哮のように爆ぜる。まさに悪の断罪、これぞ正義の一撃だった。


――だが。


熱狂の渦のなか、ひとりイサカだけは動けなかった。顔を上げても、手を握っても、胸のざわつきは消えない。


(……違う、何かがおかしい。終わっていない……)


吹き飛んだ肉片が地に落ちる音だけが、静かに耳の奥で反響していた。


「……違う」

「えっ?」

「これだけじゃない……」

そう呟くと、イサカはすぐに走り出した。

慌てて追いかける仲間達。

「ど、どうしたんだ!?」

「まだ終わってない……!」

イサカはそのまま走り続ける。

やがて目的地、最奥の祭壇に着くと、そこでは既にクトゥルフ復活の最後の儀式が始まっていた。

マクンブドゥバが悍ましい詠唱を唱えている。


ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐん

いあ!いあ!くとぅるふふたぐん!


クトゥルフの復活の最後の儀式が始まったのだ。

「嘘だろおい!?」

動揺している彼らをよそに、マクンブドゥバはさらに呪文を唱え続ける。


ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐんいあ!いあ!くとぅるふふたぐん!


すると、突如地面が大きく揺れ始めた。

「うわっ!?地震か!?」

「いや、これは……!逃げろ!!」

次の瞬間、祭壇の下から巨大な触手が現れ、その場にいた地球防衛軍の兵士達を薙ぎ払った。

そして、そこに現れたのは、体長500mはあるであろう、巨大な異形の怪物だった。


それは、クトゥルフ神話に語られる旧支配者――クトゥルフ。


その巨影は、五感を否定した。


視れば、目が焼ける。

聴けば、耳が裂ける。

近づけば、心が壊れる。


その存在は、「生きてはいけないもの」の象徴だった。


タコのような頭部からは、無数の触腕がうねり、爪のついた手足が大地を引き裂く。

背中には腐ったコウモリのような翼。全身は粘液に覆われ、あらゆるものを穢すような膿が流れ出していた。


まさに、邪悪の権化ともいうべき存在だった。

挿絵(By みてみん)

だが、これで終わりではない。

クトゥルフは、次々と手下の下級邪神を呼び出していた。

そう、無数のダゴンとハイドラ達

召喚された邪神たちは、いずれも、クトゥルフほどではないにしろ、恐るべき力を持つ者たちばかりであった。

マクンブドゥバが哄笑する。

「グググ、グーッググググググ!クトゥルフ様の復活は成った!あとはクトゥルフ様を改獣へと進化して頂くだけだ!さあ、イサカよ!最後のお勤めだ!クトゥルフ様を改獣に昇華するために最後の魔術式の演算を行うのだ!!!」

「ふざけるな!誰が!」

言いかけたイサカだがマクンブドゥバが胸に融合した彼女の脳に呪力を注ぐと、彼女は自我を失いマクンブドゥバの操り人形になってしまった。

「無駄だ無駄だ、ワシの本気の呪いにあがなえると思ったか?さあ、我が姪よ!演算を始めよ!!」

「……承知いたしました、マクンブドゥバ様」

イサカは頷くと、両手を頭上に掲げた。

すると、そこに巨大な魔法陣が出現する。

それはまるで生きているかのように脈動していた。

そして、次の瞬間、膨大な魔力が収束していくのを感じる。

「ググ、グググ・・・!おおっ、感じるぞ、クトゥルフ様の邪悪なる波動を・・・。今こそ復活の時だ、クトゥルフ様ァアアアアアアアッ!!!」

マクンブドゥバが絶叫を上げると同時に、眩いばかりの閃光が迸る。

同時に凄まじい衝撃波が発生し、周囲の柱を破壊していく。

イサカだった。

彼女はマクンブドゥバの呪いに必死に抵抗し、演算を中止しようとしていた。


「……ネロ、お願い……っ。――殺して……!」


ぽたりと瞳から涙が落ちる。

だがその奥には、怯えでも諦めでもない、命を賭けた意思が宿っていた。


「マクンブドゥバの胸に……埋め込まれた、私の中枢を……撃ち抜いて……!」


その言葉に含まれていたのは、死にたいという願いではない。

“誰かを生かすために死んでもいい”という、悲痛な祈りだった。


だが、手は動く。魔力は走る。心とは裏腹に――イサカの身体は、なおも魔術式を築いていく。


「……お願い……私を……これ以上“怪物”にしないで……っ!!」


イサカの肉体は完全に術式の支配下にあり、魔術式の構築を止めることができない。

だが、魂だけはまだ抵抗していた。

ぐちゃぐちゃになっても、崩れそうでも、それでも――

彼女は最後の一線を越えず、愛する仲間と妹たちの記憶にすがって立ち続けていた。

このままではイサカの魂は無論、その半身たるイブの魂も崩れ去ってしまうかもしれない。


「……ッ、イサカ殿……いや――姉機……!」


ネロの脳裏に、過去の光景が蘇る。


ネロはさる大国のテロ殲滅作戦の際、空爆作戦の誤爆により命を落としかけたテロとは無縁の一般人だった。

彼女は誤爆で親類縁者を全て失い、死の淵を彷徨った。


――あの焼け落ちた町。血まみれの自分に、手を伸ばしてくれた唯一の人。

――「君は、生きてていい」と言ってくれたその声が、今でも耳に残っている。


ネロは涙を拭う暇もなく、アークレイカノンを構えた。


「……姉さん。これが――私の、恩返しだ」


照準は、ただ一点。彼女の心の痛みに、真っ直ぐ向いていた。


イブ=イサカ


あの人がいなければ、今の自分は存在しない。

なのに、いま目の前で、その人の半身が自ら死を望んでいる。


(なぜ……どうしてこんなことに……)


ネロは奥歯を噛み締め、拳を震わせる。


(――だけど、だけど小官はイブさんを救わないといけない!)


「イサカさん……! いいえ……姉さん!」


アークレイカノンを構えるその手に、迷いはなかった。

だが、照準に映るのは、過去の記憶と重なる微笑だった。


「小官は、あなたを守ると誓ったのだ……!たとえ、この手で貴方の半身に対し引き金を引くことになっても……!」


全身が震える。涙が頬を伝う。


――それでも、引き金は、確かに引かれた。


砲撃弾が閃光の尾を引いて、一直線に飛ぶ。

照準は――マクンブドゥバの胸。

そこにある、“イサカの心”を貫くために。


狙いは寸分違わず、マクンブドゥバに命中するはずだった。


――その瞬間、世界が、燃えた。


紅蓮の業火が砲弾を喰らい尽くし、空間を灼いた。

光。熱。衝撃――そして、静寂。


その炎の中心に、誰かの影が立っていた。


「……な、誰だ……?」


一同が目を凝らす。やがて、揺らめく火の帳の向こうに現れたのは――

金髪の少女だった。


「フ、フレア・スカーレット……!」


その瞳に宿っていたのは、怒りでも恐怖でもない。

ただ一つ――**“決意”**だった。

↓物語をイメージしたリール動画


https://www.facebook.com/reel/1184753859944706/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0

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