乂阿戦記2 第六章 紫の魔女ナイアルラトホテップと邪神ロキは暗躍の影で嗤う-8 機械神ベリアルハスターvs機械神イタクァ
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黄衣の風が吹いた。
「いあ……いあ、はすたあ……はすたあ・くふあやく・ぶるぐとむ……」
低く、だが確かな音で詠まれる言葉は、この世の理すらねじ曲げる禁呪だった。
オームの眼に宿るのは静謐な狂気。そして彼の唱える名は、旧き神々の最たる黄衣の王。
「ぶぐとらぐるん……ぶるぐとむ……あい、あい……はすたあああ!!」
次の瞬間、世界は裂けた。
光ではない、音でもない。
黄――黄の風が世界を染め上げ、視界が染み込むような光彩に包まれる。
誰もが目を覆ったその後、真実の姿が露わになる。
そこにいたはずの「狂王エンザ」は──
ハイドラの触手の先端が擬態した、ただの肉塊だった。
「あーあ、バレちゃった〜☆」
突然背後から声がして、一同は慌てて振り向く。
そこにはイサカを抱き抱えたマクンブドゥバと狂王エンザが立っていた。
彼らはルルイエ神殿の奥に逃げようとしてるところだった。
モビーディックラーケンは大破し、20メートルの大きさに縮小した旧支配者イタクァが踏み付けてる。
イサカは意識を失ってるのか、ぐったりとしている。
「貴様……イブさんをどうするつもりだ!?」
獅鳳は叫ぶ。
「どうするって……もちろん、ポクチンのものにするのよ♪」
そう言うとエンザは、イサカの顔を長い舌でねっとり舐め回す。
「おい!!イブさんから離れろォ!!!」
獅鳳は激昂するが、イサカは目をさまさない。
「イサカたそったら、気絶してるみた〜い♪でゅふふ♡」
イサカの体を弄びながら、恍惚とした表情を浮かべるエンザ。
その身体は震え、目を見開いたまま痙攣している。
どうやら快楽のあまり、脳がショートしかけているようだった。
「止めろぉぉぉぉ!!!!」
獅鳳がユグドラシルを駆り殴りかかるが、その前に邪神イタクァが立ち塞がった。
(くっ……!!こいつ、俺の攻撃を全て防ぎやがる!?)
獅鳳の攻撃は全て弾かれ、逆にユグドラシルにダメージが蓄積していく。
(このままでは、ユグドラシルが持たないっ!?)
その時、後ろから白い閃光が飛来し、ユグドラシルを弾き飛ばした。
「ぐああっ!?」
ユグドラシルは壁に激突する寸前で体勢を立て直した。
そして振り返るとそこには、邪神ダゴンとハイドラが立っていた。
「クックク〜…クトゥルフの復活の邪魔はさせないぜ〜」
イタクァの方から声がした。
イタクァの姿は以前戦った時とは違い、どこか機械化されたような姿……そう、機械神の様な姿だった。
「っ!、その声は!?」
聞き覚えのある声にアーレスタロスを操縦していた漢児がイタクァの方を振り向いた。
イタクァの胸部が開き操縦席に座る一人の男が姿を現した。
九闘竜No.6アルカームだった。
「お、お前はアルカーム!いや、それよりイタクァが機械神みたいになってるって事はそのイタクァは!?」
漢児の問いかけにアルカームが答える。
「ご名答、旧支配者イタクァ改め改獣イタクァ・アルカームだ……そして今の俺はアルカームにしてイタクァ、旧支配者イタクァを改獣イタクァ・アルカームにパワーアップする際、操縦者アルカームとイタクァの精神を融合させたのが今の俺さあ!まあ、つっても旧支配者たるイタクァにヒトみたいな精神や思考は殆どないから、こうやってお前さんと話してる俺はほとんどアルカームなんだがな……、だがイタクァとして覚えてるぜえ。狂気山脈でガープやお前達と戦って封印された屈辱をよお!……あの時の屈辱を晴らさせてもらおうか!」
そう言って仮面の中でニヤリと笑うアルカーム。
「……なるほど、イタクァは狂王の配下になったのか」
「あぁ、狂王様は素晴らしいお方だぜ、俺を改造してくれた上に、力をくれただけじゃなく、地位まで与えてくれたんだ、俺はあの方に忠誠を誓っているのさ」
それを聞いた瞬間、漢児の目が変わった。
漢児の体から凄まじい殺気が溢れ出し、周囲にいた者は全員震え上がった。
漢児は操縦桿を握る手に力を込めると、ダゴンとハイドラに向かって突撃した。
それを見た邪神達は一斉に身構えた。
漢児の乗るアーレスタロスが、蒼いビームサーベルを振り下ろすと、邪神達の一体であるダゴンの体が真っ二つに切り裂かれた。
「グォォォォ!!」
ダゴンは断末魔の叫びを上げながら地面に倒れ伏した。
それを見て他のハイドラが動揺する。
ハイドラは慌てて触手を振り回し、機械神アーレスタロスを攻撃した。
アーレスタロスはその攻撃を躱そうと後ろに下がった。
しかし、足が何かに引っかかった。
足元を見ると、いつの間にか地面が沼になっていた。
地面に手をついているエンザの魔法の様だ。
そして、アーレスタロスはその沼の中に潜ったハイドラに引きずり込まれようとしていた。
「しまった……!」
ダゴンを倒した隙を突かれてしまったようだ。
ハイドラの触手が伸びてくる。
このままでは捕まってしまうだろう。
だが構わずアーレスタロスはハイドラに密着するほど接近し、拳を胴体に添えつけ技を放った。
『奥義爆極発勁!!』
ゼロ距離からの拳撃を受け、邪神ハイドラは瞬時に爆発四散した。
「オオ!?今の技は最強魔女ラスヴェードの必殺奥義!!」
鳳天と激闘を繰り広げていた胡蝶蜂剣が思わず手を止めアーレスタロスを注視する。
「ぬうっ!銀河連邦のHERO以外にあれほど強力なHEROがいたのか!!」
鳳天も目を見開きアーレスタロスを見た。
「……なるほど狗鬼漢児、我が愛弟子レッドがライバル視するだけのことはある……」
「蒼の勇者狗鬼漢児……いや、蒼のHEROアーレスタロス、このままモグリのHEROやらしとくのは惜しい人材だぜ」
女神国最高の聖王と最強の剣士が狗鬼漢児の実力を認める。
「おいおい、蒼の勇者様よ〜、お前さん前より強くなりすぎじゃないかあ〜?この前狂気山脈で戦ったときは、三機がかりかつガープの助力を得てやっと互角って程度だったのに、別物のパワーアップを遂げてるじゃねーか?それとも以前は実力を隠して戦っていたか?」
イタクァ・アルカームの問いかけにアーレスタロスが答える。
「俺の大叔父貴、蛇王ナイトホテップの強さに喰らいつこうとしたら強くなれたのさ! イタクァ、確かにお前は強いんだろうが、俺はもっと強い蛇王って漢と戦ってんだ。以前の強さのままだと舐めてると痛い目をみるぜ?」
「ふん、言うじゃねえか〜。あの蛇王ナイトホテップと戦闘経験があるってか〜。そりゃスゲェ〜!…まあ、こっちも負ける気はないけどな〜。じゃあ、いくぞおおお!」
そう言って、イタクァ・アルカームは背中の翼を広げ、空に飛び立った。
そして、空中から巨大な氷の槍を出現させる。
「さあ、始めようか〜」
その言葉と同時に、イタクァ・アルカームの背中から、無数の氷柱が出現し、雨のように降り注ぐ。
「黒炎よ!」
イタクァが放った氷柱が黒い炎に消し飛ばされる。
炎は封獣ベリアルハスターを操縦するオームの呪文だった。
「お前の相手は僕がする!いでよグングニールレプリカ!」
オームが叫ぶと、黄色く輝く槍が現れる。
準神具グングニールレプリカだ。
「オーム、お前みたいなひよっ子が俺に勝てるとでも思ってるのかあ? 笑わせんなよ、身の程知らずがぁ!」
そう言いながら、イタクァ・アルカームは再び大量の氷柱を生み出し、放つ。
今度は、オームに向かって降り注いだ。
「無駄だよ、僕には君の力は効かない」
瞬時にオームは黒い炎の魔法バリアを貼り攻撃を防ぐ。
そして封獣機ベリアルハスターを飛行機形態に変形させ空を駆けた。
「は!俺に空中戦を挑もうってか?この"風に乗りて歩むもの"イタクァに!ますますもって小癪ぅ〜!星間空間や異次元を移動する我が機動力にお前如きがついて来れるのかい〜?」
そう言って笑いながら空を飛び、オームを追いかけるイタクァ。
(やはりそうか……)
上空に飛び上がったイタクァを見てオーム確信を深める。
(イタクァとベリアルハスターは同じタイプの機械神……!それなら勝機は充分にあるぞ!!)
そう考えながら彼は再び呪文を唱えた。
すると、彼の周りを黄色い光の輪が囲む。
次の瞬間、眩い閃光とともに光の柱が空から降り注ぎ、イタクァを狙い撃つ。
イタクァはその攻撃を以前の戦いの時同様、素早い機動力で回避していく。
「おいおいおい、こんなもんかよ?!もっと本気出せよなああ!!」
そう言いながら高速で飛行するイタクァは次々に冷凍光線を発射していく。
だが、オームの光速移動能力によって全てかわされてしまう。
「ふん、そんな攻撃じゃ当たらないよ。君こそ、僕に勝つんじゃなかったの?!」
「ハハハ!ほざけえええ!!!」
挑発に乗ったイタクァはさらに多くの氷柱を作り出し放った。
しかし、それでもなお、オームのスピードには追いつけなかった。
「……ちっ、ちょこまかと逃げ回りやがって……!」
「あはははは!イタクァはん、ウチを甘く見たらあかんでー!この前ナイトホテップにスピード勝負でぼろ負けした時めっちゃ悔しくてなあ、ウチは取り柄のスピードじゃぁ絶対誰にも負けたくないからめちゃくちゃ修行したんや!今やったら限定的な条件下でなら光より早く動けるで!!」
「キーヒヒヒ!吠えるねえエドナの嬢ちゃん!!じゃあ見せてもらおうじゃないか、あんたの実力をなあ!!」
エドナは両手を前に突き出した。
すると、ベリアルハスターの両手の間に小さな球体が現れた。
それは次第に大きくなっていき、直径1メートル程の巨大な光球となった。
そして、それを思い切りぶん投げた。
すると、光球は凄まじい速度で回転しながら、一直線にアルカームに向かっていった。
「うおっと、危ねっ!」
慌てて避けるアルカームだったが、光球はそのまま地面に衝突し、爆発を起こした。
土煙が舞い上がり、視界が遮られる。
だが、すぐに煙の中から何かが飛び出してきた。
「そこかあああああああ!!!!」
エドナは咄嗟にグングニールレプリカをミサイルのように放った。
しかしその攻撃は空を切った。
外れた槍が着弾し、そこには大きなクレーターが出来ており、その中にあった瓦礫などが吹き飛ばされていた。
イタクァとベリアルハスター、2体は飛行形態で互いに有利なポジションを取り合おうと激しいドッグファイトを繰り広げた。
イタクァはその鋭い爪で何度も切り裂こうとするが、ベリアルハスターはそれを巧みな動きで躱していく。
さらに隙を見ては雷を纏ったグングニールレプリカを放ち反撃する。
対するイタクァも負けじと風を操り、真空波を放つことで応戦する。
2体の機械神の戦いは次第に激しさを増していった。
聖王と胡蝶蜂剣、そしてベリアルハスターとイタクァが激闘を繰り広げる隙に狂王とマクンブドゥバは、イサカをさらってルルイエ神殿の奥底に逃げて行った。
入り口は狭く機械神では入れない。
雷音達は機神招来を解除し生身で入り口に入ろうとする。
だがその行手をワラワラと現れた黒い触手を生やした球体達が立ち塞がった。「邪魔だあああ!!!」
雷音は魔剣クトゥグァを構え、一気に薙ぎ払った。
その瞬間、衝撃波が発生し、次々と球体達を消滅させていった。
だが、数が多すぎた。
次第に雷音の体に触手が伸びていき、絡みついていく。
「くっ……!こいつ……!」
「雷音!今助けるぞ!」
そう言って獅鳳は飛び出そうとする。
「ちょっと待つのだ〜〜っ!!」
だが、それを制止する者が現れた。
「雷音〜!私達が応援に来たのだ〜!」
空から聞こえる。
大きな少女の声。
雷音の婚約者ミリルの元気な声だ。
空を見上げたとき雷音達一同は目を見開き驚いた。
その雄姿は、まるで絶望を切り裂く希望の刃だった。
なんと地球防衛軍の戦艦アルゴー号が猛烈なスピードで、こちらに突っ込んでくるではないか!
しかもミリルと白水晶の他、鵺をはじめとするクラスメイトの仲間達まで乗っている。
キース、アキンド、イポス、アクア、レイミ、リリス、ネロ、ルシル、セレスティア
クラスの問題児軍団がこぞって勢揃いしていた。
そしてさらに彼らの担任教師タット教授までいた。
「え?なんで!?」
思わずそう呟く雷音に、鵺はこう答えた。
「私がタット先生に頼んだのよ。あなた達だけじゃ不安だからってね。」
確かにこれまでの冒険で、雷音や神羅達
一同は、敵の罠にかかり敵に捕らえられるという失態がよくあった。
特に、敵本拠地であるルルイエの中枢に乗り込むとなれば、いくら雷音達が強くても心配になるのも無理はないだろう。
アルゴー号はそのまま、マクンブドゥバ達が通った穴を通り、船首を奥へと潜り込ませた。
↓物語をイメージしたリール動画
https://www.facebook.com/reel/630491609893662/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0