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乂阿戦記1 第ニ章- 青のHERO狗鬼漢児と戦神ベルト アーレスタロス-5 青の魔法少女狗鬼絵里洲

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読みやすくなりますよ❤︎



翌日学校帰りにそのまま家に帰った俺は、妹の絵里洲の部屋の前に立っていた。

ノックをすると中から返事が返って来たので中に入ることにした。

「アホ兄貴どうしたの?なんかあった?」

兄の顔に浮かぶ、わずかな翳り。いつもの能天気とは違う、妙な真剣さに――私は、胸の奥がざわめいた。部屋に入って来たアホ兄貴はなんだか少し浮かない顔をしていたけど、どうしたんだろう?

「ちょっとお前に頼みがあってな」

「何なに~? 珍しいね~」

「実は今日うちに俺の知り合いが来てるんだ」

「ふ~んそれで?」

「その知り合いなんだけど、その子がお前に会いたいって言うんで連れてきたんだ」

「・・・・・・・・・はぁ?」

「ほら入って来い」

「失礼します」

「・・・・・・あれ?ユッキー?」

「あれ?絵里リン?」

「ん?なんだお前ら知り合いか?」

「うん、同じクラスの同級生、ほらアーレスタロスの色紙を友達が欲しがってるって言ったじゃない。エリリンがアーレスタロスのサイン欲しがってたんだよ。」

「ああ、なるほど」

「アホ兄貴、ママ達まだ帰ってない? おやつ買いに行ったきりまだ帰って来ないのよ。あたし紅茶が飲みたい。ユッキーにもお茶だすから携帯使って早く茶菓子持ってくるよー言って」

「あいよ」

そう言ってアホ兄貴は部屋を出て行った。

携帯で呼び出せばいいのにわざわざ走って迎えに行くとは本当アホな兄貴だ。

挿絵(By みてみん)

あたしはユッキーこと永遠田・ユキちゃんをリビングのソファーに座らせると台所に行ってお湯を沸かす事にした。

それにしても驚いたなぁ、まさかこんな所でクラスメイトに会うなんて… でも何でわざわざあたしの家に来たんだろ? 

そんな事を考えながらお湯が沸くのを待っていたら部屋のドアが開いてアホ兄貴が入ってきた。

「ただいまー母さん達が帰って来たぞー、エリ降りて来いってさ」

「おかえり〜分かったわ」

さてっとじゃあ行くか…と思ったけど、どうしよう? この子も一緒に連れて行くべきなのかな? 

「ねえユッキー良かったら一緒に行かない? 私のお母さんを紹介してあげるわ」

「え?いいの?是非お願いします!」

よしっ!そうと決まればさっさと行こう! そう思って立ち上がった時だった、玄関の方でなにやら騒がしい声が聞こえたのだ。

誰だろうと思い廊下にでて玄関の方を見やると声を掛けられた。

「絵里洲!ユキルという少女はまだ家にいるか!?」

声をかけたのは私のお母さんだった。

狗鬼優乃、女だてらに格闘道場を経営し切り盛りする我が家の大黒柱。

いつもは武士のように冷静沈着なのにこんなに血相を変えている母はすごく珍しかった。

母の様子に戸惑いつつも質問に答えることにする。

「うん、居るけど」

すると、母が私の肩を掴んでこう言った。

「どこだ? どこにいる!?」

何事かとユッキーがひょっこり私の後ろから顔を出し母の顔を覗いた。

母はユッキーの顔を見たとたんボロボロと泣き出し彼女に抱きついた。


その顔を見た瞬間、ユノの全身から力が抜けた。十五年の時を超えて、喪われた友が再び目の前に――。

 その名を、記憶を、胸に刻み続けたあの少女が。

「……ユキル……ユキルぅ……!」

抱き締めた腕に、泣き声が染みこんだ。


エリスの母ユノは心の中で泣き叫んでいた

(ユキル! ユキル! 15年前とかわらないその顔! ああやっぱりユキル! 無事転生を果たしていたんだな!!)

「ちょっとお母さん! ユッキー困ってるよ!」

私がそう言うと母はハッと我に返り彼女の体から離れた。

「す、すまない」

「いえ・・・」

「そう、そのあれだなんだ! ろくすっぽ友達のいないうちのバカ娘に友達ができたから、思わず感激しすぎて泣いてしまったのだ! ハハハハハハ!」

「ひど! ちょっとお母さんなんてこと言ってくれちゃってんの!? もうユッキーうちのお母さんちょっと変な人だから相手しなくていいよ! 上で一緒に遊ぼう!」

「あー絵里洲、獅鳳ももうすぐ帰ってくるから、後で一緒に遊びに混ぜてあげなさい。」

「えーわかったー」

私はしぶしぶ了承し、ユッキーを連れて自分の部屋に戻ったのだった。

部屋に入るなり彼女が私に尋ねてくる。

「ねえ、さっき言っていた獅鳳って?」

「ああ、私の弟分っていうのかな? うちのお母さんの知り合いの息子さんなんだけど、ちょっと訳ありで一緒に暮らしてるの。すっごくいい奴なんだよ!」

「そうなんだ・・・その獅鳳って子はあなたの弟分なのね。」

「ただいま、兄貴〜、絵里洲、お菓子買ってきたよー」

「噂をすれば、なんとやら獅鳳が帰ってきたよ」

「おかえり獅鳳。」

「あ、はじめまして。私ユ•••」

挨拶しかけたユキルが硬直する。

ドアを開け入ってきた少年獅鳳は、彼の義弟、雷音に瓜二つの顔をしていたからだ。


雷音と同じ顔の少年を見てもユキルは、雷音のことを完全には思い出せずにいた。

とても大切な人、とても大切な存在なのに、それが誰だかどうしてだか思い出せない。

記憶の欠落がひどくユキルの心をざわつかせる。

「……」

「どうしたの?」

「あー……えっと、あの、その……」

「うん」

「あの獅鳳君、私たちどっかで会ったことない?」

「……さあ? 気のせいでは?」

「そっかぁー」

「ところでなんでそんな事聞くんですか?」

「だってなんだかさっきから胸騒ぎするんだもん。なんかこうすごく嫌な予感が……」

ユキルは混乱する頭を落ち着かせ、何を話すべきか頭の中で整理しようと頑張ってみる

「あの、だいじょうぶですか?」

そんなユキルの様子を獅鳳が心配する。

「ええ、大丈夫よ」

「そうですか」

獅鳳の気配りにユキルはよりテンパってしまい、とうとう雷音との記憶のなかで1番鮮明に頭の中に残っている映像を引き当てた。

それは魔剣クトゥグァの力を解放し、巨大ロボのクトゥグァを招来したあの記憶

「そうそう! 私いろいろあって、昔の記憶がないんだけど、私ってあなたとキスしたことってないかしら!?」

「……え!?い、 いや、そんなことはしてないですよ!?」

顔を真っ赤にする獅鳳を見てユキルはしまった!と後悔した。

絵里洲がキスのセリフに目を輝かせ、マシンガンのように質問をぶつけた。


「えーー!? なになに!? それってつまり……そういう関係ってこと!?」


絵里洲の目が、マシンガンのようにキラッキラと光っていた。


「いやいや違うわよ! ただ、私が魔剣クトゥグァの力を解放したときに、雷音君の唇を奪ったような気がしただけで……」


「はいはいはい、中二病設定みたいなこと言ってごまかそうとしたってそうはいかないわよ? なになにユッキーって私に会いに来たってのは建前で獅鳳に気があるわけ!? ヒューヒュー、堅物だと思ってたのにやるじゃない獅鳳! で?で? 二人はどこまで仲が進展してるの?」


「ち、ちがうってばーっ! 私、まだお付き合いだとかに興味なんかないんだから!」


 頬を真っ赤にして俯いたユキルが、羞恥心の限界を突破した瞬間だった。


「ま、魔法少女ユキル、変身っ!」


 煌びやかな光と共に、彼女はステッキにまたがり、優雅に――いや、全速力で窓をぶち破って飛び去った。


「あいええーえ!? 魔法少女!? なんで魔法少女!? 夢見てるの私!? 獅鳳、ちょっと私のほっぺつねってみて!」


 獅鳳は無言で絵里洲の両頬を思い切りつねる。


「痛い痛い! もういいよありがとう!」


 頬をさすりながら絵里洲は立ち上がり、勢いよくリビングを駆け抜ける。


「アホ兄貴〜! 聞いて聞いて! アホアニキが連れてきたユキちゃん、魔法少女に変身したのよ!」


「おう、ちなみに俺は変身ヒーロー・アーレスタロスだ!」


 そう言い放った兄・狗鬼漢児は、豪快なポーズを決めてアーレスタロスに変身した。


(あいえええ!? 私の憧れ変身ヒーロー・アーレスタロス様が、うちのアホ兄貴!? あれ? あれ? なんで?)


 現実離れした情報量に脳が処理不能となった絵里洲は、ひとこと「はう」と呟き、その場に気絶した。


◇ ◇ ◇


 その晩。狗鬼家、緊急家族会議開催。


 メンバーは、母・優乃、兄・漢児、妹・絵里洲、そして居候の獅鳳。議題はもちろん――ユキルについて。


「というわけで、明日からあの娘をこの家にしばらく泊めることになったから、みんな仲良くするように」


 漢児の言葉に、一同は拍手で応じた。


「それで、お兄ちゃん、あの子のこと……どう思うの?」


 絵里洲が探るように問いかける。兄は少し考え込んだあと、まるで軍師のような口調で言った。


「あの子は、お前が一人前の魔法少女になれるよう、修行をつけてくれるそうだ。絵里洲、面白そうだからお前、魔法少女になれ!」


「なっ……」


 一瞬沈黙した後、絵里洲は怒りの鉄拳を兄に向けて振りかぶった――が、空を切り、そのまま床に転がった。


 パンチを軽々とかわした漢児が、転がった妹を抱き上げ、まるで父親のように優しく言う。


「落ち着けよ、絵里洲。お前の気持ちはわかる。でもこれはチャンスだ。ユキルとかいう娘と一緒に特訓すれば、お前は必ず立派な魔法少女になれる。そして俺と同じようにユキチューブで生活費を稼げ! そしたら晩飯が一品増えるぞ!」


 しばらく沈黙していた絵里洲が、ぽつりと呟いた。


「……わかったわ、お兄ちゃん。私、魔法少女になる! そしたらアイドルみたいにテレビに取り上げられて、みんなにもちやほやされて、勝ち組の人生を送れるのよね? 夢のセレブ生活を手に入れるんだから!」


◇ ◇ ◇


 翌朝から、特訓開始。


 まずは「魔法少女とは何か?」という基礎レクチャー。そして、変身ポーズや決め台詞の反復練習。さらに実践編として、基礎魔法の訓練へ。


「第一課題、変身ポーズ20連発! 感情を込めて、観客の心をつかめ!」

「第二課題、キラキラセリフ100通り! パターンは“ツン”“デレ”“クール”の3種から!」


「第三課題、水系魔法の初歩「ウォーターボール」」


 ぽよん、と掌の上に現れた水玉に、ユキルが微笑む。


「さすが青の魔法少女! もうウォーターボールが出せるなんて」


 ユキルに褒められ、絵里洲はうっとりとその水玉を見つめた。


 続いて「雨雲召喚」の呪文に挑戦。見事成功。


 しかし――。


「ちょっと待って!! これじゃあ私が風邪ひいちゃうじゃない!!!」


 全身ずぶ濡れになりながら叫ぶ絵里洲。白い制服は透け、下着の色が如実に浮かび上がっていた。


「ご、ごめん。確かにこれは配慮が足りなかったよ……衣装が透けて、パンツもブラも丸見えだよね……」


 漢児はゲラゲラと笑い、獅鳳は顔を真っ赤にして視線を逸らしていた。


「うん、ここまできたら、巨大ロボ・アーレスタロスをそろそろ召喚してもいい頃合いだな」


 自信満々に頷いた絵里洲に、漢児が号令をかける。


「いでよ、アーレスタロス!」


 天を裂くような轟音。そして、突如として現れた巨大な機神が、家の屋根を盛大に突き破った。

幸いにも周りには誰もいなかったため被害はなかった。

挿絵(By みてみん)


ロボの全高は20メートル。圧倒的存在感。


「すごい……! なんてカッコいいロボなんだ……! こんな大きいロボ、初めて見た!」


 ロボの動作に合わせてキャッキャと跳ね回る獅鳳に、漢児は思わず笑いがこみ上げた。


 その後、獅鳳が操縦席に乗り込んだ際、後方のカプセルに裸の絵里洲がぷかぷかと浮かんでいるのを見て、鼻血を噴き出して気絶するというトラブルもあったが、それはそれ。


 ひととおり飛行訓練を終えたあと、絵里洲は機神招来を解除した。


 変身が解けると、彼女はふと自分の姿に気づいた。


(あれ? 変身前はパジャマだったはずなのに……なんで学校の制服着てるの?)


 小さな疑問が頭をよぎったが、すぐにかき消した。


 この家にいる限り、「普通」の定義はとうに崩壊しているのだから――。


https://www.facebook.com/reel/1605566287042962/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0


↑イメージリール動画

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