乂阿戦記2 第五章 黄緑の魔法天使ニカは今日も元気に遊びまわる-9 邪神の副王ヨグソトースvsドアダ最強スパルタクス
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一方ドアダ最強の男スパルタクスは邪神の副王ヨグソトースと異次元の戦いを繰り広げていた。
結論からいえば両者の力は拮抗しており、互いに決定打を与えることができない状況だった。
「……ふん、なかなかやるではないか」
「そちらこそな」
睨み合う両者の間に沈黙が流れる。
先に口を開いたのはヨグソトースの方だ。
「フン、オリンポス主神デウスカエサルと互角に渡り合ったと言うのも得心いく……」
「そう言えば彼は貴方の息子でしたね。クロノス?」
「クロノス……懐かしい名だ。オリンポスに君臨していた時代そう名乗っていたこともあったな……あの鬼子デウスカエサルを始めとする6人の子らが謀叛を起こした時、我は子供らにこの身を6つに裂かれ封印された……」
「その6つの内の一つが今目の前にいる貴方と言うわけだ……」
「然り……」
両者は互いに向かい合ったまま動いてないかのように見える。
だが違う。
まず初手、時の神は異次元の穴を開けてスパルタクスを異次元空間に放り込もうとした。
しかしスパルタクスは氷の鎖を作りだし時の神の体にそれを巻きつけ即座に脱出、さらにそこから反撃に出たのである。
次に動いたのはスパルタクスの方である。
無数の氷柱を作り出し、それらを同時に発射した。
それらはまるで弾丸のように飛んでいき、時の神の体を貫く。
続いて彼は剣を引き抜くと、そこにエネルギーを収束させた。
「奥義・零下一閃……!」
放たれたエネルギー波が時の神を襲う。
だが、相手は時空を支配する神だ。
そう簡単に攻撃を許すはずがない。
「ぬぅん!」
気合い一閃、ヨグソトースはスパルタクスの攻撃を打ち消してみせた。
だが、それこそがスパルタクスの狙いだったのだ。
「ぬっ!?」
次の瞬間、彼の放った冷気によって時の神の動きが封じられる。
それはほんの僅かな時間ではあったが、スパルタクスにとっては十分すぎる隙であった。
「これで最後だ、くらえッ!!!」
「ぬおおっ!?」
剣の一振りで、スパルタクスは時の神を両断したのだった。
氷よりなお白き一閃が、時間すらも凍らせて――ヨグソトースを貫いた。
否、それは貫かれる寸前の幻影であった。
「甘いな、英雄よ……」
刹那、空間が歪む。否、時間が捻れた。
視界が軋む。
音が歪む。
認識が崩れる。
次の瞬間、世界が一度、巻き戻された。
穿たれたはずの神は傷一つなく、最初の睨み合いに戻っていた。
「……時間を、巻き戻した……!」
スパルタクスの両目が、戦場の因果を読み解く。
彼の脳裏に浮かぶのはただ一つ――神の領域、因果律すら操作する恐るべき力。
「まさか……お前、“自身が殺された過去”をなかったことにしたというのか……」
「その通り。我は《時間》そのもの。死した自分すら、なかったことにできる。貴様の力は認めよう、だがそれが我に届くかは別問題だ」
瞬間、ヨグソトースが揺らぎ、空間を歪めて消える。
スパルタクスは即座に感知、反射よりも早く背後に剣を振るう。
が――その前に、既に神の刃が彼の背に迫っていた。
「しまっ――」
「“時間差”とはよく言ったものよ、凡愚」
閃いたのは、漆黒の刃。
アダマスの鎌――天を裂き、父神ウラノスを斬った伝説の刃。
だが、斬撃が届く直前、スパルタクスの姿は霧散した。
否、あまりにも速く移動したのだ。光の帯が残像すら残さず疾る。
「フン……時の干渉をも超えて、光よりも速く動くか……だが、逃げ切れると思うなよ」
──限界を超えた光速戦争が始まる。
肉眼では追えぬ閃光が、戦場を駆ける。
それはもはや戦いではなく、時空の裂け目そのものだった。
剣と鎌。氷と時間。英雄と神。
幾千の交錯が一瞬で繰り広げられ、終局を迎えんとしたその刹那。
再び、スパルタクスの掌に“それ”が宿る。
――霊なる氷結、神の運命を穿つ槍。
「これが……終末の槍」
「……ほう」
一歩、踏み出しただけで空気が割れる。
スパルタクスは言葉を告げるよりも早く、動いていた。
「神をも穿て。これが――聖約・運命の神槍!!!」
次の瞬間、時の神の表情が変わった。
その刹那のために、神は無限の演算を行い、己が時間を極限まで加速させる。
世界の全てが止まったように見えるなか、ヨグソトースはひとつ、目を細めて呟いた。
「……貴様の名、刻んでおこう。スパルタクスよ」
そしてまた、すべてが交錯し、空間が悲鳴を上げた。
それはもはや、“戦い”ですらなかった。
時の狭間に放たれた、ただ一度限りの――神と人の、運命の試し合いだった。
一方ガープは与徳、ユノ、プリズナに耳打ちし作戦を伝えていた。
「よいか、ワシがありったけの支援魔法を使ってサポートするからお主らはあの白い男の横を通り過ぎ女王の間にいるイブを奪還するのじゃ!チャンスは今しかない。見よ!あの白い男から放たれる夥しい数の魔法陣を!あの白の男は今二組分の神域の闘いを中和しているのだ。神クラスの実力者同士が戦えば世界が滅びかねない破壊が巻き起こる。奴はその破壊の力を中和しているのだ!理由は知らぬが奴はこの海底神殿を壊したくないよーじゃ!つまりわしらがこの隙を突いて突破すればイブを助けだせるということ!」
それを聞いて全員が頷く。
ガープはありったけの魔力で皆に防御と速度向上の支援魔法をかけた。
そして次の瞬間一斉に走り出すと、あっという間にヨグソトースとウォーロックの横を通り抜けて行ったのだった。
「ぬっ!?」
「なにっ?」
二人は慌てて振り返ると、そこには既に誰もおらず呆気に取られてしまう。
ヨシ!いける!
4人が白い男の横を通り抜けようとした時、彼らは見えない壁にぶつかり弾き飛ばされた。
「うわっ!」
「きゃっ!」
「きゃあっ!」
「くっ、なんじゃこれは!?」
それはまるで透明の壁のような物体で4人を阻んだのである。
よく見ると、半透明の膜のようなものが彼らを覆っていた。
その壁は物理的な障壁ではなく、何か特殊な力によって作られたもののようだった。
恐らく、結界の一種なのだろう。
そんな彼らの様子など全く気にせず、白い男は二組の神域の闘いを見守りながら破壊を中和していた。
「くそっ、こんな所で立ち止まっているわけにはいかないのに……!」
「どうしよう、このままじゃあ……」
「くそう!ここまで来て諦めるものかっ!!」
ガープ、与徳、ユノ、プリズナの4人が一斉に白い男に襲いかかる。
瞬間、白い男の体がユラリと揺れ4人の視界から消える。
ガープのお株を奪う瞬歩無拍子の動きだ。
ユノとプリズナが後ろの首筋に手刀を受け気絶する。
ガープはかろうじて攻撃をかわし、与徳は攻撃を受けたがクソ根性で気絶するのを耐えた。
しかし、与徳の方は次なる追撃を避けることはできず再び意識を刈り取られてしまった。
「赤紫の勇者、この程度とは興醒めだな………」
(馬、馬鹿な、二組分の神域破壊の中和を行い、さらにあれほどの動きを……!)
気がつくと目の前に白い男が立っているではないか。
全く気配を感じ取ることができなかった。
この男の実力の底が知れない。
このワシが全く反応できなかったとは……いや待て、この感じどこかで……?
「……お前は一体何者なんだ……?」
「……ふむ」
すると突然、彼は右手を前に突き出したかと思うと人差し指と中指を合わせて指鉄砲の形を作りこう言ったのだ。
「バンッ…」
直感でガープは瞬歩無拍子を繰り出しその場を離脱する。
さっきまでいた場所の真後ろが爆発し轟音と共に砕け散るのが見えた。
あぶないところだった……あのままあそこにいたら確実に死んでいただろう……
しかし、今のは間違いなく神技、それもこの破壊力は…………!
驚愕の表情を浮かべるガープに白の男は言った。
「流石はドアダ首領ガープ・ドアーダ、老いてますます盛んとはこのことか」
と感心するように呟くと今度は左手を伸ばして手のひらを上に向けるようにして構える。
その手に膨大な神力が集約されていき光を放ち始めると一気に拡散した。
あまりの眩しさに思わず目を瞑るが、目を開けるとそこには……何もなかった。
ただ声が聞こえてきた。
『イサカ君の演算は終わったようだ。再会を妨げて申し訳ない。我々はこれで失礼しよう』
それだけ言うと気配は完全に消えてしまった。
炎の魔獣と時の神の姿もない。
どうやら本当に帰ったらしい。
それから程なくして与徳らも意識を取り戻した。
ギルトンとスパルタクス、イポスら戦闘員達も合流したので、今度こそ全員揃って最後の部屋へと足を踏み入れるのだった。
広大な最深部の部屋には祭壇のようなものがあり、その上に何かが置いてあるのがわかった。
それを見て真っ先に声を上げたのはやはりガープだった。
彼は一目見てその正体に気づいたからだ。
間違いない、あれはまさか……!
その姿を見て誰もが言葉を失った。
何故ならそこに横たわっていたのは1人の女性だったからだ。
「おお、イブ!イブや!!」
ガープが心配そうに駆け寄る。
彼にとってイブは単なる部下ではない。
長年苦楽を共にしてきた同胞であり、戦友であり、娘だった。
だからこそ彼女がこのような姿になったことに動揺し、涙を流したのだろう。
そんな様子を察したのかイブと呼ばれた女性は微笑みながら言った。
「大丈夫だドアダの首領よ。疲れて眠っていただけだ。命に別状は無い。そしてすまぬな。今の私はイブではなくイサカなのだ……」
それを聞いた瞬間、安堵からか崩れ落ちそうになるところを何とか堪えると改めて彼女を見つめる。
その姿は確かにイブ本人であった。
しかし彼女から感じる気配はいつもと違う。
やはり本人が言うように、今の人格はイサカなのだろう。
しかし、そんなことはどうでもいいとばかりに駆け寄ろうとする。
すると、突然彼女の前の空間が光り輝き始めたではないか。
「ぱんぱかぱあぁーん!」
甲高い男の声が聞こえた。
何事かと思っていると、次の瞬間には信じられない光景が広がっていた。
なんと、イサカの前に長身の男が現れたのだ。
気持ち悪い道化の身なりをして王冠をかぶっている。
ガープは絶句する。
スパルタクスも信じられないといった面持ちでその男を見た。
女神国革命戦争に関わった者達はその男をよく知っていた。
忘れようはずがない。
彼らが、知り得るこの世でもっとも邪悪でおぞましい人間。
今は無き女神国最低最悪の暴君
狂王エンザその人であった。
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