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乂阿戦記2 第五章 黄緑の魔法天使ニカは今日も元気に遊びまわる-2 覇王の威厳


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読みやすくなりますよ❤︎

ここは、深き者どもの本拠――邪神イハ=ントレイ。

普通の幼子が踏み入れれば一瞬で正気を失うような場所だ。

だが、そんな禁域をものともせず、シルフィスやニカは今日も元気に走り回っていた。

なぜか? 答えはただ一つ――彼女たちは、“護られている”のだ。

人間の皮を被った究極戦闘生物が娘達に害が及ばないよう絶えず分身を貼り付けて警護しているからだ。

当然だろう。

特にニカは今絶対目を離してはいけない魔の二歳児と呼ばれる時期だ。

この時分の子供は、保護者は絶対目を離せないのだ。

別に盗み聞きする意図はなかったが、Dr.ファウストは分身の使い魔を通しイサカとユノの会話を耳にしてしまった。

彼はパピリオに会話の内容を打ち明け相談していた。

パピリオはフレアと烈人の剣の師で、ファウストとも深く交流があった。

二人は椅子に腰掛け話し合いをしていた。

「……イサカ、馬鹿な子……せっかく復活したんだからつまらない罪悪感なんか持たず今世を満喫すればいいじゃない!」

パピリオはイサカの善良さが歯痒かった。

彼女の魂は善の側に傾いていた。

だから自分が蘇った事に対して後ろめたさを覚えていた。

「あの子もね、私と同じように、いえ、それ以上に苦しんできたのよ……」

女神国にいた頃、パピリオは奴隷階級出身の身分でそれはひどい幼少期を過ごしてきた。

彼は人間らしい生活を手に入れるため脇目も降らず剣の腕を磨き武人としての地位を昇ってきた。

弱いものはただ奪われる。

彼はそれを身に染みて知っていたから敵対するものを斬り落とし、ひたすら武芸者としての地位を斬り昇り、彼は女神国一の剣士の称号を手にし、狂王エンザ最側近として"剣の鬼神"に取り立てられたのだ。

自分と同じ三狂神だった"復讐の女神"イサカをパピリオは妹のように思っていた。

弟子の烈人やフレアも我が子のように思っていたし、フレアの義妹シルフィスやニカもやはり可愛いがっていた。

フレア、シルフィス、ニカの娘達三人は今イサカを母のように慕っている……

「でも、それでも、あの子はもう十分苦しんだ。イブちゃんって人格には悪いけど私にとって大事なのはイサカちゃんなの………」

「……アレが母親役をするようになってからフレアがよく笑うようになった……シルフィスとニカも今やアレを本当の母と思っている……フン……」

ファウストは無表情

だがその口調には何かの決断が感じられた。

2人の怪物が椅子から重い腰を上げる。

彼らはイハ=ントレイを後に蔭洲升町に向かった。


赤の魔法女神ホエルはシルフィスとニカを自宅に招待していた。

重度の子育てマニアのホエルは、ことと次第では2人を引き取り養子にするつもりだった。

とりあえず先はどうなるかわからない。

まずは仲良くなることが先決だった。

ホエルはノンカフェインのお茶と砂糖の入ってないクッキーを用意して2人が来るのを待っていた。

だが、そこにやってきたのは2人ではなかった。

「母者、久方ぶりに孫を連れて参った」

「ホエルちゃんご無沙汰! ほら羅雨、おばあちゃんに挨拶をして」

「ラウ〜、ウ!」

自分が産んだが今や自分より20歳以上年上の長男阿烈が、自分より200歳年上のエルフの妻と一緒に今年2歳になる孫娘を連れて挨拶に来たのだ。

…………我ながら何を言ってるのかと混乱するが、事実だから仕方ない。

ホエルの長男の名前は阿烈、その嫁はかつて冒険仲間だった風の魔法女神プリズナ・ヴァルキリード、孫娘の名は羅雨である。

挿絵(By みてみん)

ちなみに長女と次女の羅刹と神羅は本当は阿烈とプリズナの娘なので実は孫だったりする。

ホエルは自分の家の家庭事情がややこしすぎて、時々眩暈がするときがある。

だから細かい事は考えず、心赴くまま自然体に過ごすことにしている。

「あらあら、まあまあ、よく来てくれたわね。ささ、座ってちょうだい」

「うむ、失礼いたす」

「お邪魔します」

「うー」

「今日はどうしたの?」

「いや、それがねホエちゃん、たまには顔を見せようと思ってね。それと土産も持って来たの」

「まあ、お土産ありがとうね」

ホエルとプリズナは年齢差とか嫁姑関係だとか考えるのがややこしいから内内で会う時は冒険者時代の時のように対等に話す事にしてる。

「あら、美味しそうなお菓子!今日遊びに来る子供達がきっと喜ぶわ!ありがと!」

「母者、本日お伺い致したのはほかでもござません。実は母者には幼子達を連れて故郷のスラルか、家内が住むエルフの里に疎開していただきたいのです。クトゥルフ復活の兆しはご存じでしょう?それに呼応するように闇の勢力も力を取り戻しつつあります。奴らは地球を滅ぼそうとしております。その前にご避難を」

「心配してくれるのは嬉しいけど、私は大丈夫よ。それより、あなたの方が心配だわ。あなたは昔から長男としての責任感が強くて、何でも一人で抱え込んでしまうところがあるでしょ?」

「しかし、このままでは……」

「あのね、あなたが私達を心配する様に、私もあなたを心配してるのよ?大体あなた、闘争本能に火が付いたら地球ごとクトゥルフを消滅させちゃうじゃない?私が地球にいとかないと力加減を忘れて大暴れしちゃうじゃない?今まで一体いくつの星を消滅させてきたと思ってるの?この前だってジャムガさんと酔って喧嘩したとき惑星を一つ消したでしょ?人が住んでない星だったからよかったものの……。嫌よ、地球を滅ぼしちゃ?私この惑星を気に入っているの。だから、お願い、ね?」

「母者がそこまで言うのなら、分かりました。この話はここまでにします。ですが、何かあれば必ず連絡を。駆けつけますので」

「ええ、ありがとう。優しい子」

横で会話を聞いていたプリズナは地球にとって真の脅威は自分の夫なのではないかと嫌な汗を流していたが、あえて突っ込まないことにした。

その時、突然家の庭の方から大きな爆発音が聞こえてきた。

「何事だ!?」

爆発音を聞きつけた阿烈が慌てて庭に出ると、そこには……

「きゃっきゃっきゃ♪」

「あははははは!」

「にゃかにゃにゃにゃ〜♪」

子供達三人が巨大蛇型ロボを投げ飛ばし合いながら遊んでいた。

巨大蛇型ロボ"メガルヨムルガントマークⅡ"は阿乱が一度スクラップにされたメガルヨムルガントを直して改造した10メートル級ロボだ。

ロボの方は振り回されて過ぎてまたも半分スクラップになっている。

あろうことか紅阿、シルフィス、ニカの三人はその巨大ロボをまたもブンブン振り回し遊んでいた。

家に来たシルフィスとニカは玄関先で紅阿を見かけ、お母さんへの挨拶を忘れ真っ先に遊びだしてしまったのだ。

「ひええ!シルフィス嬢ちゃん、ニカ嬢ちゃん!お願いやから危ない遊びしやんといて〜〜!」

三人の子供をなんとか止めようとオロオロしているのは、ファウストから子守を命じられたセトアザスである。

ニカは一緒に遊ぼうとメガルヨムルガントⅡをセトアザスに投げつける。

「ギニュアアアアアアアア!!」

当然ペシャンコになる

「だ、だじげで……」

「にゃ〜〜〜……」

潰れて動けないセトアザスをニカがなんで一緒に遊んでくれないの?とつまらなさそうに見る。

セトアザスは血がドクドクながれ瀕死の重傷だ。

「……なんだ子供の戯れであったか」

その惨状を阿烈はほっこりと微笑ましそうに眺めた。

新しく現れた大人にニカが顔を輝かせる。

セトアザスを下敷きにしているメガルヨムルガントを持ち上げ、あろうことか阿烈に投げつけてしまった。

阿烈は動じることなく投げつけられた鉄の塊を指一本で受け止める。

(ほう、これはなかなか)

阿烈の顔に人喰い虎じみた笑みが浮かぶ。

「んにゃ!んにゃ〜にゃ!」

ニカは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。

「ん〜〜〜?お嬢ちゃんどうちたのでちゅか〜〜?遊んで欲しいのでちゅかあ〜〜?」

阿烈はギチャ〜ッとそれはそれは恐ろしい笑顔で、赤ちゃん言葉でニカに尋ねる。

指を動かしてメガルヨムルガントをニカに優しく投げつける。

ちなみに重さは300キロほどだ。

ニカはそれを軽々キャッチすると阿烈に投げ返す。

阿烈は器用に指1本でそれを受け止め、また投げ返す。


阿烈は300キロの鉄塊でまさかのキャッチボールを始めた。まるで羽根でも投げているかのような軽やかさで。

それにニカも負けじと応じる。二人の距離は、投げ合うたびに縮まっていく――。

そして、最後の一投。

阿烈は鉄塊を真上に蹴り上げると、そのままニカをヒョイと抱き上げ、宙を舞うメガルヨムルガントを左手一本で受け止めてみせた。


しかし、ニカはそれにかまわず、さらに嬉しそうな顔で阿烈に抱きつく。

「んにゃん!うれにぃ!遊ぼ!うにゃ!うにゃ〜!」

そう言って、阿烈の頭に猫パンチを繰り出す。

ちなみに普通の人間なら頭蓋骨が陥没してる破壊力だ。

「グルっ、グルルル、グルァーッア"ッア"ッア"ッア"!人懐っこい娘っ子だのぅ〜、神羅の幼い頃を思い出すわい……んん〜、そこの銀髪の娘っ子なんか羅刹ちゃんの子供の頃に瓜二つではないか!」

阿烈はそう言ってニカの頭を優しく撫でる。

するとプリズナの腕の中で抱っこされていた羅雨が、物凄い勢いで飛び出してニカを突き飛ばした。

突き飛ばされたニカは倒れているセトアザスの方に吹っ飛んだ。

「ほんげえええええ!!」

ニカとぶつかったセトアザスがさらなる重傷を負う。

だがニカはかまわずケラケラ笑っていた。

「フ〜〜〜っ!!ウウ!!」

羅雨が阿烈の前で手を広げてニカを威嚇する。

お父さんを盗られると思ってヤキモチを妬いてるようだ。

だが阿烈はそんな羅雨もヒョイっと持ち上げる。

「お〜〜、ヨチヨチ!羅雨たんが1番可愛いでちゅからね〜〜、おおう、ヨチヨチ〜〜、ああ〜〜可愛い可愛い〜〜!」

そう言いながら二人を両手で抱き上げて頬ずりするのだった。

「うっ、うぅ〜」

羅雨は少し恥ずかしそうにしながら撫でられていた。

「さあ、そろそろ帰るぞ、いつまでもここにいても仕方あるまい」

そういって皆を促すが、誰かの手がズボンの裾をつかみ阿烈に話しかけてきた。

「だ、だじげで……きゅ、救急車呼んで………」

今にも死にそうなセトアザスだった。

どうやら今の衝撃で内臓破裂したらしい。

阿烈がセトアザスをみる。

「なんじゃこりゃ?ひどい有様よのう……どれ、ちょっと見せてみよ」

そういうとおもむろに服をまくりあげ患部を見る。

「ふむ、これならすぐ治せるな」

そう言うと、いきなり傷口に手を突っ込みグリグリしはじめた。

当然激痛が走るわけで……

「ぎゃああああああああ!!!痛いいたいいいいっ!!!!」

セトアザスが断末魔のような悲鳴をあげて転げ回る。

だが阿烈はまったく気にせず治療を続ける。

「よし、これでよかろう」

「……え?治った?」

数分後、何事もなかったかのように立ち上がるセトアザスを見て

「ところで貴様何者だ?怪しい奴め!いや、それより貴様見たな!?この覇王阿烈が子供と戯れるところを!!……覇王たるもの威厳と貫禄はなんとしても死守せねばならぬ!!よって貴様には証拠隠滅のため死んでもらう!!」

「え〜〜〜〜〜〜っ!?」

突然の死刑宣告に驚くセトアザス。

「ま、まってくれやあ、確かに見てたけど、誰にもいわへんさかい命だけは助けてください!」

「うるさい、問答無用じゃ、死ねい!」

阿烈は有無を言わさず手刀で首をはねようとする。

「あなた、貴方が子供にバカ甘だってことは家族のみんなはとっくの昔に知ってるわよ?」

阿烈の妻が溜め息をつく。

「っ!?……む、むぅ!……ま、まことか妻よ!?」

阿烈は愕然と驚いて動きが一瞬とまった。

その隙にセトアザスは土下座して、何度も地面にヘドバンしながら猛烈に阿烈に哀願した。

「ひいい!助けてください!助けてください!ワテなあああんも見てまへん!!今日見た事は墓場まで持っていきますから、命だけは助けてください!!お願いじまずうううう!!!」

阿烈はそんなセトアザスの姿を見て少し考え込んだ後、こう言った。


「……うむ、そこまで土下座するなら、今回は見逃してやろう」

阿烈の慈悲の言葉に、セトアザスは安堵の涙を流す――が。

「ただし、条件がある」

「えっ……」

「貴様の脳味噌、ちょっとパーンといじって記憶をポイする。ついでに少しアホになるかもしれんが……まあ、気にするな!」

「や、やめてぇえええええええええっ!!!」


そういってまた手を突っ込もうとする阿烈を必死に制止しようとするセトアザス。

「ちょ、ちょっと待ってやあああ!!!」

結局阿烈に頭をいじられ、ここ1週間分の記憶を失うことになった。




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↑イメージリール動画

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