乂阿戦記2 第五章 黄緑の魔法天使ニカは今日も元気に遊びまわる-1 3人のママさん
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第五章 黄緑の魔法天使ニカは今日も元気に遊びまわる
二人の魔法少女による魔法対決は、魔法によって生み出された森を舞台に行われた。
ここはかつて地球に存在したとされる古代樹の森を模した場所であり、その環境を再現するために無数の魔法植物が生えていた。
そんな場所で二人が戦っていたのだが、戦況は完全に膠着状態となっていた。
何故なら両者ともに相手の出方を窺っていたからである。
どちらも魔法に関しては超一流であり、故に相手の動きを見極めてから仕掛けようとしていたのである。
そんな中、最初に動いたのは意外にもシルフィスの方であった。
彼女は手始めとばかりに火属性の魔法を放つが、ニカはそれを水の壁で防いだ。
だが、今度はこちらの番だと言わんばかりに、今度は彼女が攻勢に出る。
まずは風魔法で真空波を作り出し、次々と撃ち込んでいく。
しかし、それらは全て炎の壁に阻まれた。
すると、今度は土の槍を無数に作り出し、一斉に放つ。
だが、それらもすべて炎の盾に防がれてしまい、ダメージを与えることは出来なかった。
そこで、今度は火の鳥を生み出し、突撃させる。
だが、それもやはり同じように防がれてしまう。
その後も様々な攻撃を仕掛けるが、その全てが不発に終わった。
それどころか、逆に反撃を喰らってしまう始末である。
「二人とも、戦いはそこまでだ」
シルフィスとニカ、2人の戦いはそこで終わる。
なぜなら、午後3時、おやつの時間だからだ。
まぁ、要はごっこ遊び
魔法少女が活躍する絵本を見て、魔法少女になりきって2人は遊んでいただけである。
二人のママとなったイサカは、2人が虫歯にならないよう砂糖を使ってない和菓子を用意してテーブルの上に置いた。
今日のおやつは豆大福と草餅である。
もちろん、ニカが喉を詰まらせないよう細かく切ってやる
「わーい、ありがとう」
「にゃーい」
「いただきます」
「にゃにゃにゃきにゃにゅ」
「はい、どうぞ」
2人は行儀よく挨拶してから、それぞれ一つずつ手に取って食べ始める。
「ん~、おいしい」
「んにゃ〜」
「ママ、甘くて美味しいです」
「良かったわね」
そう言って2人を見守る彼女の姿は、まさに母親のそれだった。
「ねぇ、ママ!」
「なにかしら、シルフィちゃん」
「あのね、私も大きくなったら、ママみたいな立派な魔法使いになれるですか?」
「ええ、もちろんなれるわよ」
「本当!」
「でも、そのための努力は必要になるわ」
「え~」
「ふふふ、大丈夫。あなたはきっと、私より凄い魔法使いになれるわ。だって、こんなに可愛くて、優しくて、思いやりのある子なんですもの。才能は十分だわ。だから、一緒に頑張りましょう。まずは、このお団子を残さずに食べられるようになることから始めましょうか」
「……はーい」
渋々といった様子で頷くシルフィス。
それを見て、クスリと笑うイサカ。
そして、その横では、
「むー、むぅ、みゅ、んー、あー、うー、あぅ、うぅ、あぁ、ああ、あっ、」
ニカがおやつを目をつむりながら頬張って甘味を堪能していた。
しかし、まだ小さいせいか上手く噛むことが出来ず苦戦しているようだ。
口の周りが食べカスでいっぱい汚れてる。
その様子を見て、思わず苦笑するイサカはニカを抱き寄せ口周りを拭いてやった。
そんなとき、ふと視線を感じてそちらを見ると、そこには物欲しそうな目でこちらを見ているシルフィスの姿があった。
(はぁ・・・)
ため息を一つついてから、彼女は言った。
「ほら、おいで」
その言葉に顔を輝かせるシルフィス。
そして、そのまま勢いよく抱きつくと、イサカの胸に顔を埋めるのだった。
その様子を見ていたニパァと笑みを浮かべるシルフィスとこんどは逆に少し羨ましそうな顔をするニカ。
イサカはすっかり母親気分のようだ。
そんな中、不意にドアがノックされる。
コンコンッ「どうぞ、入っていいわよ?」
ガチャリとドアを開け、入ってきたのは二人の女。
雷音の母ホエルと漢児の母ユノである。
そして、その後ろには巫女服を着た女性が二人控えている。
ユノは爽やかな笑みを浮かべ、ホエルは軽く会釈をして部屋に入ってくると、口を開いた。
「久しぶりだなイブ…いや、いまはイサカだったか……ってことは敵対してた頃の人格ってことだから25年ぶりってことになるのか?」
ユノが指を折り年数を数える。
「私達歳を取らず封印の柱に封じられてたりしたから年数の数え方がややこしいことになってるわね……」
ホエルが困った風に嘆息する。
それを聞いてイサカが頷く。
「そうね……私も自分の年齢がよくわからなくなる時があるわ」
そう言ってイブ、いやイサカが苦笑してるとシルフィスがイサカから離れホエルに駆け寄ってきた。
「あー!紅阿ちゃんのお母さんなのです!」
「こんにちはシルフィスちゃん、ちょっと遊びに来たの」
ホエルが膝をかがめシルフィスに挨拶する。
「シルフィス、ニカ、紅阿ちゃんのお母さんにこの神殿の中を案内してあげてくれる?」
イサカに言われ二人はハイと元気よく手をあげる。
そして、ホエルの手を引き神殿内を案内するのだった。
部屋にはイサカとユノ、そして二人の巫女が残った。
静寂が落ちた神殿の一室に、ただ茶の香りが漂う。
数十年の時を経て、三人の魔法女神が机を囲む。
イサカ――かつて“三狂神”と呼ばれた最悪の魔女。
そして、旧友であり敵でもあった二人――ユノとホエル。
場を取り巻く空気は穏やかなようでいて、どこか張り詰めていた。
「……まさか、私の呼びかけに応じてくれるとは思ってなかったわ」
イサカは言う。
声は静かに、だがその芯は確かに震えていた。
「ここはあなたたちにとって敵地のはず……それでもイハ=ントレイに来てくれた。礼を言うわ」
ユノはその言葉に首を振り、優しくも真剣な目でイサカを見据えた。
「……礼なんていらないわ。私は、考えがあってここに来た。私なりの……ね」
その背後に控える二人の巫女も、無言で頷く。
イサカは微かに微笑み、席を促す。
「お茶をどうぞ。最後になるかもしれないから」
カチリ。
湯呑が木の卓上に置かれる音が、やけに響いた。
そして、ユノが口を開いた。
「単刀直入に聞くわ。――私は、イブもあなたも、二人とも助けたい。
何か……あなたたちを救う方法はないの?」
イサカの眉がわずかに動いた。
だがその答えは、重く、決定的なものだった。
「……無理よ。イブだけなら、あるいは……。でも“私”は……救えない」
「どうして?」
「私は――すでに、地球そのものに纏わりついた“呪い”の一部になっているの。
人の理から外れた、戻れない場所にまで堕ちた存在……」
一瞬、場の空気が凍った。
その言葉が意味するのは、**“人間ではない”**という事実。
ユノが絞り出すように尋ねた。
「……やっぱり、“星辰の計算”は終わったのね」
イサカは頷く。
「ええ。クトゥルフを目覚めさせるのに、祈りも儀式もいらない。
必要なのは、ただ――星の配置だけ。
私は禁書を読み、演算し、導いた。“その刻”が迫っている。
マクンブドゥバの命で、邪神たちはゾス星系の星を動かしている。
このままじゃ、クトゥルフの目覚めは……時間の問題よ」
「そうね、けど、だからと言って諦めるわけにはいかないの。」
「もうじき、地球は滅亡する。クトゥルフが目覚めれば、すべての大陸は海に沈む。乂阿烈や神々はクトゥルフを倒せるだろうが地球を救えるかどうかはまた別問題だ。あれが目覚め海底に眠るルルイエが浮上すれば地球の全土は海に沈むのだ。恐ろしくはないのか?」
イサカの質問にユノは答える。
「恐ろしいに決まってるじゃない!でも私達は諦めない!私達の世界を救う為に!そして貴方を救う為に!」
答えを聞きイサカは悲しげに微笑む。
「最悪の魔女エクリプスを倒したお前達ならそう言うと思っていた……だからこそ私はお前達に未来を託したい……」
「どういう事?」
イサカはテーブルの上に1本のメモリースティックを置いた。
「これは?」
「これは地図だ。ゾス星系の邪神達を操っている呪いの魔神マクンブドゥバ
の隠れ家への地図だ。星辰の位置が整う前にマクンブドゥバを倒せば、あるいはクトゥルフ復活を食い止められるかもしれんぞ?」
「……どうしてこれを渡す気になったの?」
「……今、私への洗脳の呪いが弱まっている。星辰の計算が終わった今、マクンブドゥバにとって私は用済みなのだろう。奴が私に求めたのは、結局のところ禁書の翻訳と星辰の演算だけだ。今奴はその魔力を星を動かすことに重きを置いている。だから今の私はいくらか正気なのだ。奴の呪縛が解けるのも時間の問題だろう。そうなれば私もお前達に協力できるかもしれない」
「でも、裏切りがバレたらあなたは死ぬことになるのよ?だってマクンブドゥバの手元にはイサカ、貴方の本体とも言える脳のキジーツがあるんでしょ?裏切りが発覚すれば奴は即座に貴方の脳を破壊する。イブは無事戻るかもしれない。けど貴方は消えて無くなる!それでいいの?」
「ええ、裏切りがバレれば、私は殺されるわ。
マクンブドゥバの手元には、私の本体――“キジーツの脳”がある。
それを破壊されれば、私という存在は消滅する。イブは生きるかもしれないけど、“私”は二度と……」
「それでも、いいの? 本当に?」
その問いに、イサカは微笑む。
それは、どこまでも静かで、どこまでも――母親だった。
「かまわないわ。
私は、自分の罪を知ってる。
操られていたからじゃない。私は確かに憎しみを抱き、復讐を望み、狂気に酔った。
私の中には、確かな“快楽”があった。
……だからこそ、贖いたいの。
せめて、“娘たち”の未来を、あなたたちに託すことで」
その言葉に、ユノは言葉を失った。
目の前の女は、かつて敵だった。だが今ここにいるのは、間違いなく――“母”だった。
「……マクンブドゥバに気づかれる前に、行って。
私が消えたあと、イブが戻ったら――どうか、娘たちに会わせてやって。
私に代わって、あの子たちと笑ってやってほしい」
「イサカ……っ」
「ありがとう、ユノ。
……“三狂神”としてあなたたちと殺し合った日々も、今思えば、楽しかった。
でも――イブとして、あなたたちと過ごした時間は、もっと……もっと、幸せだった。
だから私は、あなたたちに未来を託すの。
頼んだわよ。――我が胡蝶の夢の、仲間たち」
ユノは、言葉にならぬ感情を抱えながら、メモリースティックを強く握り締めた。
だが彼女達は知らなかった。
彼女達が交わしたこの会話がこの事件、いやこの戦争に決定的な変化をもたらすことになった事を……
https://www.facebook.com/reel/472313265934206/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0
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