乂阿戦記2 第四章 漆黒の魔法少女鵺は黒馬エリゴスに騎乗する-5 最強の封獣エリゴス
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「ククククク、封獣を使うか女神ユキル!そりゃそうだよね。だが忘れていまいな!私もまた七罪の魔女の一人!淫欲と奸智を司る紫の魔女!封獣機神はワタシも召喚出来る!!にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! 〈紫の理〉よ、我が声に応えよ!〈淫欲の仮面〉よ、忌まわしき胎動を顕現せよ……出でよ、封獣機神パズスフィンクスッ!」
ナイアが懐から紫猿の魔神像を取り出す。
そして呪文を唱えると紫の煙が吹き上がり、中から機械仕掛けの巨大ロボが現れた。
その姿はかつて激闘を繰り広げた邪神オード・ジ・アシュラに酷似していた。
空中に浮遊する四つの顔ある腕も、それぞれが装備する大太刀、搥、大楯、狙撃銃、そして本体が持つ二対のニンジャ刀までも同じである。
ナイアは紫の煙の中から現れた紫の巨神に乗り込む。
パズスフィンクスが紫のドラゴンの翼を広げて飛ぶ。
その姿はまるで神話に出てくる悪魔のようだ。
「あれはまさか封獣!?……ナイアって本当に何者なんだ?」
アクアは思わず呟いてしまう。
彼女は今封獣機ユグドラシルのコックピット後方にいる。
培養カプセルのような物の中で全裸で浮かんでいるのだ。
「雷華、ミリルちゃん、エリリン!ナイアは私が惹きつけるから早くセドゲンスさんを逃してちょうだい!」
神羅がコックピットの中から雷華達に指示をだす。
ウサ耳の封獣がボーガンを構え魔法の矢を放つ
「ふん!小癪ぅ〜!」
ナイアが大楯で光の矢を防ぎ、お返しとばかり狙撃銃を連射する。
ユグドラシルは盾で防ぐが、大太刀と槌を持った手が迫って来たので翼を羽ばたかせ空に逃れる。
ユグドラシルを追う様にパズスフィンクスも翼を羽ばたかせ空を飛んだ。
ナイアは触手生やす黒い球体を巨大な黒雲に変化させ、黒雲に身を隠しながらライフル銃を構える。
(あの程度の攻撃では傷ひとつつかないか)
ユグドラシルの中で神羅は上空に滞空しながら相手の様子を観察していた。
すると空中に漂う黒雲がいきなり爆発を起こす。
爆煙が晴れるとそこには巨大な大砲を構えた少女の姿があった。
少女の名は白水晶
彼女が持つ武器の名は対艦砲アーク・レイカノンと呼ばれる巨大兵器である。
「し、白ちゃん!?」
思わぬ援軍に神羅が声をもらす。
「……アーク・レイカノン命中確認………敵機ダメージは不明」
白水晶は飛行外骨格を纏い空を飛んでいた。
「妹機よ、おそらくパズスフィンクスにダメージはない。黒い雲の様な邪神に攻撃を防がれたと見るべきだ」
白水晶の隣りに彼女と同じジュエルウィッチシリーズの一人ネロ・バーストエラーが飛行外骨格を纏い飛んできた。
「相手は封獣パズスフィンクス、同時にアーク・レイカノンを連射する!」
「了解………アーク・レイカノン発射準備完了……」
「砲構え!撃て!!」
アーク・レイカノンは本来戦艦級の大型機動兵器に装備される超火力を誇る主砲である。
その威力たるや一撃で戦艦すら破壊するほどの威力があると言われている。
そんな物を人間サイズが持てるサイズにまで小型化したのだから驚きを通り越して呆れるしかないだろう。
だがそれでも大の大人3人で持ち上げるのがやっとの重さだ。
しかしこの少女達はそれを軽々と持ち上げているのである。
二人はアーク・レイカノンを構えて照準を合わせると躊躇なく発射する。
砲弾はそのまま一直線に飛んでいくがまたも黒雲に阻まれ、途中で爆発したため標的まで届かなかった。
それでも凄まじい爆風が発生しておりそれだけで普通の戦闘ロボなら大破する程の威力がある事が窺える。
しかしそれはあくまで通常の兵器の話であり封獣パズスフィンクスには蚊が刺すほどのダメージにもならない。
そもそも相手はこの世界の常識が通用しない存在なのだ。
だから例えどんな攻撃をしようともこの程度で倒せるはずがない事は分かっていた。
「フン、人形どもが無駄よ!」
ナイアは嘲笑い大太刀と槌を持った腕をネロと白水晶に差し向ける。
「危ない!」
神羅が叫ぶ。
しかしその心配は全く無用であった。
何故なら既に新たな援軍は到着していたからだ。
空間に亀裂が走った……。
そしてその亀裂から黒い馬の前足が見えた。
続いて胴体と頭が現れると、最後は全身が姿を現した。
その姿はまさしく神話に出てくるような黒馬だった。
ただし普通の黒馬と違う所はその馬は象の様に大きいというく点だろう。
その黒い馬は空に浮かんだままナイアの大太刀を前足で蹴り抜いた。
全長10メートルある大太刀は白い光に包まれたかと思うと次の瞬間には刃先が砕け散っていたのだ。
「何ですって!?」
驚くナイアをよそに黒い馬に乗った少女がユキルと白水晶を守るよう空中に降り立った。
ユキルは少女の背中に声をかけた。
「鵺ちゃん!来てくれたのね!」
自慢の大太刀を砕かれナイアが声を荒らげる
「あんた、その馬一体なんなの?どうしてあたしの攻撃を防げたのよ」
「戦闘中に手の内を明かすと思って?……」
「……ああ、いやいい……なるほど、その馬は封獣エリゴスね。魔剣クトゥグァと双璧なす最強の封獣……ああ、今日はあんた仮面つけてないんだ。黒の魔法少女"今宵鵺"!……まさかこんな所でお目にかかれるとはねえ……」
鵺と呼ばれた少女はそれに答えずにエリゴスを駆りパズスフィンクスに迫った。
「ちょっと!無視しないでよね!それとも余裕がないのかしら?」
「……あなたごときと話をする時間が惜しいだけ」
そう言うと少女の乗る馬が嘶いたと思うと凄まじいスピードでパズスフィンクスに迫るとその前足を振り上げる。しかしその瞬間、パズスフィンクスの足元の黒雲からでできた無数の腕が伸びて馬の四肢を捕らえたのだ。
「くっ……この程度ならっ……!」
すかさず体制を立てなおそうとする馬に今度は大太刀を手放した腕が掴み上げたと思ったら一気に締め上げ始めた。
「バオオオオオオオ!!」
だがエリゴスが馬とはおよそ思えない嗎を上げ、その身を捩って触手と腕をバラバラに弾け飛ばした。
「………は?」
ナイアが間の抜けた声をあげる。
だがそれも無理はない、なにしろ自分の召喚した捕縛の拘束が一瞬にして蹴散らされたのだから。
だがそんな隙を逃すことなく鵺の操る馬はナイアへと肉薄する。
咄嗟にナイアが出した黒い蛇たちが絡みつくが、それをものともせずに突っ込んでいく。
そのままパズスフィンクスを押し倒すようにして馬の前足が巨大ロボの首を掴んだかと思うと、ナイアの身体はコックピットの中で宙に跳ね上げられたのだった。
「ぐっ……ううっ……」
苦しげに呻くナイアを尻目に今度は少女が馬を降りると、その手に持った発信機をパズスフィンクスに貼り付け離脱した。
ここに来てナイアは、ようやく黒い馬が何者であるかを再認識することができた。
「ああ、そうだった!馬の姿に惑わされた……アレはクトゥグァと双璧成す最強の封獣エリゴスで黒天ジャムガの愛馬なんだ!」
コックピットの通信機からロキの通信が入ってきた。
「オイ、ナイア!召喚魔法で君をこちらに召喚する。急いでその場を離脱しろ!そこは連合軍仮設基地の近くだ。すぐに援軍がそちらに駆けつけてくるぞ!封獣ベリアルハスター、ケルビムべロスの反応を確認した!急げ!今すぐ撤退しろ!!」
しかし、そんな状況でもナイアは強気な態度を変えなかった。
「……いやだね!こんな楽しい事、そうそうないじゃないか!もう少しやらせてもらうよ」
そう叫ぶなり、彼女は封獣エリゴスに向け封獣パズスフィンクスを疾走させたのだ。
それに反応するように黒い馬は彼女の行く手を阻むように立ち塞がるが、それを難なくかわすと、逆に体当たりをして突き飛ばすような仕草を見せたのである。
パズスフィンクスは当たり負けして弾き飛ばされた。
0.5トン程の黒馬に50トンの巨大ロボが紙切れの様に弾き飛ばされたのだ!
「ウッソでしょオイ!!……この質量差で、押し負けた?? あれ……馬でしょ!? なんなのこのバケモノ!!」
たまらずナイアが叫ぶ。
その光景を遠くからそれを見ていた白虎型の巨大ロボに乗る女は驚きのあまり叫んだ。
『アレがクトゥグァと並ぶ最強の封獣エリゴスの力か……』
白虎の機体、封獣ケルビムべロスの後部培養液の中で羅刹は二機の封獣の戦いを観戦していた。
自分と兄羅漢が駆るケルビムべロスでさえ、あの黒馬の突進を受けたらひとたまりもないであろうと思われた。
「黒天ジャムガがあのエリゴスに騎乗し戦場を駆け巡る姿を思い描くと、想像するだに恐ろしいな……」
ケルビムべロスのコックピット席で羅漢が嘆息する。
二人がそんな事をぼやいていると此度の連合軍副指揮官を務めるオームから通信が入って来た。
『お二人に頼みがあります』
モニターに映るオームは真剣な面持ちで語りだした。
『この作戦の目的はあくまでクトゥルフ復活計画を探る為の斥候ですが、それは建前で少数精鋭による教団殲滅が実際の目的です。……パズスフィンクスに乗ってるのはおそらくナイアです。今回の教団殲滅作戦の対象外の相手です』
「……つまりナイアの相手は適当にして泳がせておけというわけか?」
羅漢の言葉にオームは首を横に振る。
「いいえ!あのクソ邪神……あいつだけは許さない。神羅にちょっかい出した時点でアウトだ。作戦ついでに、ここで必ずぶっ潰す!!」
オームの発言を聞いた二人は顔を見合わせると少し困った顔をした。
『いや……その……』
珍しく言い淀む羅刹に代わって羅漢が言った。
『了解、すぐに神羅達の援護に加わり敵を殲滅する』
『お願いします!お義兄さん!お義姉さん!』
通信が終わったあと羅刹は空いた口が塞がらなかった。
「……あれは本当に首脳会議で辣腕を振るった覇星オームか?あのロキを舌戦でやり込めた切れ者と同一人物とはとても思えん……はっきり言って今のアイツ少しアホだぞ?……」
「彼が神羅がかかわると人格が変わると言うのは本当のようだ。」
羅漢が苦笑する。
(彼は本当に妹を愛しているのだな……我が二人の父乂舜烈と楚項烈が神羅の許嫁に決定したわけだ……)
羅刹も半ば呆れながも妹を大事に思うオームを好ましく思った。
↓物語をイメージしたリール動画
https://www.facebook.com/reel/539149632473293/?s=fb_shorts_tab&stack_idx=0