今日で転移から三ヶ月目。
今僕は海賊に囚われている。
幸か不幸か一週間前に筏で漂っていた所を大きい船に救助してもらった訳だが、その船は海賊船だった。
そして助けて貰ってそうそう捕まった訳だが、流石に捕まる前に相手が怪しいことは分かっていたし、アイテムボックスを使える人物は殆どいないことはステータスの詳細で知っていたので泣く泣く一月以上乗ってきた筏を僕は焼却処分して、僕を乗せてくれた海賊船は僕が来た方向へ進んでいった。
そんなこんなで海賊船に乗った僕は今ではそこまで悪くない生活をしている。
その理由は魔法だ。
実は未だに『発生』の魔法しか使えない僕だが、それでも今では球状の最大で直径3メートル、形も棒状板状網目状などかなり自在に操作出来て、何よりも今では寝てても丸一日以上維持出来る様になっていたためだ。
まあぶっちゃけこの辺はどうでもいいのだが、これぐらい操作出来るようになると大抵何でも出来る。
そしてこの海賊船には魔術師がいなかった。
僕が乗ったとき、海賊船はかなり不衛生だった。
船長に聞いたところ僕が拾ってもらったところは一番近い陸地まで二月はかかる距離だそうでそこへ向かう途中だったらしい。
なのでそこまで魔術で海賊船全体の生活環境を良くする代わりにそれなりの待遇をしてもらうことになった。
生活環境を良くすると言ってもいつも通り、ある程度バランスの良い食事の提供、とても多く溜まっていたかなり汚い服や布団などの洗濯、そして散見する血の後などの掃除をするだけだ。
しかし今ではその程度の消費だと魔力が有り余ってしまうため定期的に風の魔術で船を加速させたりもしていた。
そして今日、とうとう島が見えてきた訳だが船員内でかなり揉めている。
理由は僕の扱いだ。
どうやら元々の予定では僕を売り払うつもりだったらしいのだが、この一週間だけでも僕が頑張ったお陰でこれまでの船旅とは比べ物にならない程の快適さを知ってしまった。
それを手放すのが惜しくなってしまったそうだ。
この海賊たちは既に何人か魔術師を売ってるそうで僕を売った場合の売値がとてつもなく大きくなることは分かっているが、それでも、と思う船員が少なくなかった。
船長も同じように悩んでるようで数日前からずっと考え込んでいた。
まあどちらにせよ僕はどっちも嫌だ。
ところで魔術を使うには魔術具と呼ばれるものが必要だ。
コレはよくある杖とか指輪などの装飾品があり、それらもアイテムボックスに最初から色んな種類が入っていた。
そして僕は杖を一本しか海賊たちには見せておらず、アイテムボックスも知られていないため杖を預かっていれば問題無いと判断されている。
だから見張りとかもいない訳だがアイテムボックスにはさっきも言った通り魔術具は幾つもあるのでその内の一つを使いバレない様に逃げた。