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νcentury   作者: 図法
9/12

8

【樫本永遠彦 視点】


 そーっと音を立てずに背後らから忍び寄り、一息に後頭部を金属バットで殴りつける。

ヘルメットを着用しているためか一撃で気絶しなかったので念入りに背中や頭を殴りつける事でようやくテロリストは意識を失った。


「コレ死んでないよな…。あとなんかすごい罪悪感があるんだけど」


 ピクピクと死にかけの魚みたいに痙攣するテロリストに端末のカメラを向けてキラにそう尋ねる。


 やっててなんだが本当にすごい罪悪感に苛まれてくる。

特に最後、こう縋るように伸ばした手がパタリと力なく落ちてくる辺り心が折れそうになる。


『うん、死んでないよ。ちゃんと心臓も動いてるし、脳出血も起こしてない。それに新人類種は頑丈だからねー。ちょっとやそっとじゃ死なないよ』


 それはよく理解してるけど、あの殴り方はちょっとやそっとなんてレベルじゃないんだよなあ。

ついさっきスポーツ用品店からパチッ……拝借したばかりの鈍色の金属バットは既にテロリスト達の返り血で真っ赤に染まっていた。


『コレで2階も制圧完了だね。あとは一階の5人だけ。さ、とっとと妨害装置置いて、次に向かおう』


 テロリスト同士の通信を止めるためになにか無いかと電化製品売り場を漁っていると盗聴機対策の妨害電波の発信装置が売っていたのでそれをいくつか《《借りて》》制圧したフロアに置いて行っているところだ。


「良いのかなあ。ほんとに良いのかなぁコレ」


 側から見れば俺も悪者にしか見えない気がしてきた。バットに着いた返り血を何気無しにぬぐいつつ、ため息をこぼす。果たして今日何度目のため息だったのだろう。もし本当にため息の数だけ幸せが逃げて行くのなら多分俺は不幸すぎて死んでるレベルだと思う。


「はぁ……」


 なんて、考えてると気付けばまた溜息が出ていた。


 人っ子一人いないのにせっせこ動き続ける哀れなエスカレーターに乗って一階に降りる。

視界端に映るのは1階西入口と東入口でバリケードを設けて管理局と睨み合いを繰り広げるテロリスト達。キラが引っ張ってきたここの監視カメラの映像だ。

他の階にある隣との連絡橋を塞いでいるからこそ入口での防衛戦は意味があるのであって他の階のテロリスト達が全員倒れてしまった今、その行為はほぼほぼ意味をなしていない。


「4人を一気にってなるとバットじゃ普通は無理だな」


 普通じゃなくても無理だろう。かなり目立つし、今後目もつけられるかもしれないが背に腹は変えられない。


「外にいる管理局の無線に割り込めるか?」


 どうやるつもりなのかは知らないが、キラはグッとサムズアップだけして画面から消える。

わー頼りになるなー、はやくコイツ捨てらんねーかなぁーなんて思いながら待つ事約1分。


『よし!出来たよー』


 画面に戻ってきた。1分で割り込まれる無線って…ホントに大丈夫か管理局。警察に変わって治安を維持してるはずの管理局のザルさに一抹の不安を覚えつつ、無線での会話を始める。


「んんっ……あーあー聞こえるか?」


 若干声を変えようと試みるが、声変わりがまだ来ていないのであまり低い声が出ない。


『子供の声だと!?誰だ!どうやってこの無線に介入した!?』


 子供ってバレてるし。良いよもう普通に話すよ。すっかり聞き慣れたキラの声と打って変わって、かなり狼狽した様子の男の声が耳元から聞こえる。


「そんな事はどうでもいい。アレだ、連絡橋。もう守ってるテロリストいないから。あともうちょいしたら人質が逃げ出すだろうから入口守ってる奴らもすぐ片付けてね。じゃ、そう言う事だから」


 言うだけ言ってとっとと通信を切る。下手に長い事話ししてると事を終わらせる前に管理局が突入して来かねん。


「……これ大丈夫?身バレしない?」


『まあ……多分?』


 ばれかけた時は逆に精一杯高い声か低い声出せばいいだけか…え、そーゆー事じゃ無い?話は逸れるけどバリトンボイスってやっぱり憧れるよね。


 気づいたらまたため息を吐いていた…癖ってホントに怖い。 次の自由研究は人の癖の仕組みとそれを応用した効率的な学習法とかにしようかな。多分完成したら大賞取れると思う。


『で、今からラスボス戦だけどどうするの?』


「だからラスボスじゃないって」


 来た道を戻りつつキラにそう返す。ラスボスは今から向かう先で堂々と寝てる魔王様(美音さん)だっての。

金髪のボステロリストもちょっと扱いに困っちゃってるじゃねーか。


 アレ、絶対捕まったフリだぜ?気付いたら拘束用の縄とか結束バンドは切れてる、絶対。

あの人ほどラスボスが似合う人ってそうそういないと思う。

……あとどうでもいいけど女性の魔王って聞くとロリっ子かグラマラスなお姉さんを想像しちゃうのは俺の偏見なのだろうか。とりあえず()()()()()()()()に奇襲を仕掛けるため上階に戻った。


───現在地は3階のセンターエリア。


 下を覗き込み、ターゲットの金色の後頭部を確認する。交渉があまり上手く行ってないのだろうか、かなりイライラした様子でどかっとベンチに腰掛けていた。得物のグリップをしっかり握り直し、気合いを入れ直す。


『行け〜頑張れ〜』


 間の抜けた応援を聞き流しながら転落防止用の手すりに足を掛け、俺は一歩を踏み出した。


 万有引力の法則に従って俺の体は地面めがけてグングン加速して行く。尻がヒュッとしたなんてもんじゃない。もうこれはビュンッ、って感じだ、慣れてない人なら失禁しちゃうレベル。

……まさかエクスに騙して連れて行かれたスカイダイビング、フリーフォール、バンジージャンプその他諸々の絶叫アトラクションでの経験がこんな所で役に立つだなんて。


 目標が近づくにつれて俺はバットを握り直す。

空からの奇襲攻撃のいい点はとにかく立てる物音が少ない事だ。背後からの奇襲は息遣いや、靴が床を叩くわずかな音で気付かれてしまう事が多いが、これなら強襲素人でも安心!

憎い相手への先制攻撃に皆さんいかがでしょう。デメリットはぶん殴るタイミングを合わせるのが若干難しいのと、飛び降りたところが高すぎると、着地で自分自身もダメージも喰らってしまうところ。


 ともかく、ここまでは完璧。あとはタイミングだけ合わせてバットを振るだけ。太●の達人エアプの俺の腕前を見せてやるぜ!


 ここまでは、はなまるなムーブだったと自分でも思う。


「キャァァァッ!!空から人がー」


 俺を飛び降り自殺者かなにかと間違えたのか、女性が1人叫んでしまったのだ。

そんな事をされてしまうと奇襲は失敗したも同然。


 金髪のテロリストは上空から近づく俺に感づきサッとその場から離れる。振り下ろしたバットは金色の頭ではなくベンチをぶん殴った。


 カーンッ!っと甲高い金属音がフロアに響く。


「チッ……運のいい奴め」


『そのセリフだけ聞いたら今の君すごい悪役だよ?』


なんて言いつつ、何気無しに人質の方を見る。

……キャァァァッまでは迫真の叫びだったんだが、なんかその後がすごい棒読みだったような気がするんだが?


 一体誰が叫んだんだろう。

別に見つけて責めようだなんてこれっぽっちも思っちゃいなかったが、怯える人質の中で唯一ニヤリと笑ってる美音さんと目が合い、俺は全てを悟った。


「あの大根役者め……ほんと覚えてろよ」


 そう呟いた後、俺は叫ぶ。


「出入り口の奴らは管理局が片付けた!今なら逃げられるぞ!」


 縛られているのは両手だけなのはすでに確認済みだ。俺の言葉を聞き人質達は我先にと脱兎の如く走り出す。

両手を縛られてるのに器用なもんだなあなんて他人事のように思ってみる。


 金髪のテロリストも追いかけるものかと思っていたが、俺を睨み微動だにしない。


 人質も逃げ出し、残ったのは俺と金髪のテロリスト。全ての計画をおじゃんにされた彼が何を言うのかと、楽しみに待つこと約1分。彼はようやく口を開いた。


「ふむ、貴様()は逃げぬのか?」


 貴様()

はて?と首を傾げ、周りを見回すと凹んたベンチに悠然と座る美音さんの姿があった。


「ふぁっつ!?」


「逃げちゃうと彼の能力の観測って言う私の仕事が出来ないからねー。バイト代貰っちゃてる以上、ここで私が逃げると怒られちゃうわけよ」


 驚く俺を他所に彼女は淡々と会話する。金貰ってんのかよ……通りでやたらと俺を戦わせたがるわけだ。依頼主は──いや。この人にそんなのを頼むような人間だ、ろくな奴じゃない……詮索しないのが吉と見た。


「と、言うわけよ樫本くん。サクッと殺っちゃいなさい」


「ほう、俺を相手に余裕だな」


 俺をって言われてもここに来たばっかだからお前の事をなんも知らねーんだわ。


「なに?なんか有名人なの?」


 ボソリとキラに尋ねるが帰ってきたのは、さあ?の一言。ネットと言う情報の海を生きるこいつが知らないなら俺が知らなくても無理ないな。


「まあよい。そこのガキを殺してから改めて貴様を人質にすればよい話だ」


「あら、彼を殺すの?果たして貴方に出来るかしらね。あの子あの見た目で結構強いわよ……多分?」


「ねえねえキラ君。あの人はなんの根拠があってあんな無責任な事を言ってるんだと思う?」


 そうやってハードル上げていくのやめてもらえません?

もしサクッと負けちゃったりしたら貴女も恥ずかしいけど俺もっと恥ずかしいんすよ。


 美音さんの言動をフンっと鼻で笑った金髪は俺に視線をスライドし指をクイクイッと動かし挑発する。

チラリと彼女の方を振り返ると足を組み顎で俺に、さっさと仕掛けろ、と指示を飛ばしている。


『行け、だってさ』


 断ったら…あとが怖いか。

彼女は笑いながら親指で首を切るジェスチャーをしている。笑顔が今日見た中で一番な笑顔な所が良い感じに恐怖に拍車をかけてる。


「ええい、早くせんかたわけ!!いつまで俺を待たせるつもりだ!」


 男はそう叫ぶ。どうやら自分から仕掛けるつもりはないらしい。このまま逃げて……はい、行きます準備するので待ってください。


 美音さんの無言の圧力には勝てなかったよ。


「うるせーこっちだって色々準備があるんだよ!」


 主に心の準備とかさあ!いくらゲームで慣れてるからってなんの心構えもなしにスプラッタなもんとか見たくねーよ。リアルスプラッタはゲームなんか比にならないほど酷いから、ポッカキ●トとか見る時は本気で心構えが大事。

ご飯中とかには絶対見ちゃダメ。

あれだよ、一昔前のチェーンメールとか最悪だよ?脳死でメールに添付されたurlに飛んだら、CEROレーティング基準だと発禁レベルのグロ画像が出てくんだから。


「こらー樫本くん。靴紐結ぶフリなんてしてないで早く仕掛けなさーい」


 えーそう言われても。相手の情報がなにもない以上迂闊に突っ込むのもなあ。

臆病風に吹かれたと言われたらなにも言い返せないが、まあ実際命は惜しいし仕方ないよね!


「仕方ない」


 色々諦め意を決した俺はちょいちょいと男を手招き、手を差し出す。


「まずは握手ですよ。俺たちは同じ新人類種ですからね。これから行うのは意味のない無駄な殺し合いじゃなくて、正々堂々とした漢の勝負です」


 最初は訝しむような顔をしていた男も、俺の言葉に心を打たれたのか良い笑顔で手を握り返してくれた。


「ほう……なるほど。ガキと思っていたが中々どうしていい心がまぬぉぉっ!?」


 俺に手を握られ逃げる事も出来なかった金髪は、空から降って来た業務用冷蔵庫(180kg)に押し潰された。冷蔵庫が落ちた時の地鳴りと男の悲鳴が不協和音を奏で、誰もなにも喋らないフロアに響いた。


「よし勝った」


「アレで良いわけないでしょーがっ!!」


 ペシーンっといい音が不協和音に加わった。振り返るとどこからともなく取り出したハリセンを手に持ちにこやかな笑みを浮かべる美音さんが立っている。


「なんでですか!別になんの不正もしてないし、なんならアナタのお望み通り能力だって使ったじゃないですか!?」


 手口が汚かったのは認めるけど、勝負の世界だし是非もないよネ☆


「君、ほんの少し前に正々堂々とか言ってなかった?」


「実はアレを言ったのは俺じゃなくて俺の声真似をしたキラなんです」


『さらっと僕を巻き込むのやめてくんないかなぁ!?』


 てか俺としては発電機も一緒に落とさなかっただけありがたく思って欲しいくらいなんですけど。なんならまだ生きてるみたいだし、次は壊れかけのテレビ台を落としてやろうか。


「やめなさい」


 またしても美音さんに頭を叩かれた。……どうやら彼女は本当に俺の心が読めるらしい。

迂闊な発言どころか迂闊な考えもするわけにはいかんな。


「とにかく、早くあの冷蔵庫どけて。てかアレどっから出したのよ」


 まあわかる人は分かるだろうがアレが俺の能力。いや、壊れかけの業務用冷蔵庫を出すなんてそんな需要のかけらも無い能力じゃないよ?俺の能力は異界への門を開く能力、俗に言う〔空間操作能力〕の()()()()()だ。

亜種派生型を端的に言い帰るなら突然変異。ちなみにお菓子のおまけみたいな感じだが、空間の認識力が向上している辺り空間操作系列の能力である動かぬ証拠らしい。


 美音さんが怖いので、渋々冷蔵庫を退ける。

俺が冷蔵庫に触れると約180kgの巨影は音もなく消えた。

金髪の男は「おおう…」とトドのような呻き声を漏らし下から這い出て来くるなり俺に摑みかかる。


「いきなり何をするか!貴様はあァ!?」


「うっせー勝負の世界にルールなんかねーんだよ!」


 男の方が余裕で背が高いので俺は胸倉を掴まれ持ち上げられ形になるのがひたすらに悔しい……身長、身長が欲しいっ!!


「ええいっ、仕切り直しだ。次は俺から行くぞ」


 怒りに怒りまくった男はペイっと俺を投げ捨てると一歩二歩と俺から離れて行く。えぇナニこいつ、めっちゃ律儀じゃん。ここまで律儀だと、なんでこんな奴がテロなんかに加担してるのかが何より気になってきた。


「ねえ、貴方。どうして貴方はこんなお粗末なテロ(笑)に加担したの?」


 お粗末て……や、中学生如きに阻止されてる時点で間違っちゃいないんだけどさ、もう少しオブラートに包みません?普通。


 唐突な美音さんの質問に男は足を止め、顎に手をやり少し考える。今この話にはあまり関係ないが、背の高いイケメンがそーゆー事すると妙にキマッて見えるのが腹立つよな。


「ふむ、俺は少し前まで戦場に居てな。ほら、貴様らも知っておろう。あの、アレだあの山の中で戦ったアレ」


「恐ろしいほど抽象的すぎて分かんねーよ」


 アレとかそれだけで説明する人ってよく居るけどああいうのってまったく分かんないからほんとやめて欲しい。

そのくせして分かんないですってハッキリ言ったらものすごく不機嫌になるしさぁ。

ああ、思い出しただけで腹立って来た。


「まあなんだ。俺はその戦場で変なロボに命を救われてな、そいつに言われた故な。お前のために戦え、と」


 へー…変なロボねー。どこ行ったら会えるんだろう。ガンダムとマクロスが大好きな俺としては是非ともお会いしてみたい。


「そこから俺は戦う意味を探して戦地を彷徨っていたのだが、気付けば戦争は終わっていたのだ」


「なるほど。それで、お前は戦う意味を探す為にこんな事に手を貸したわけだな」


「いやそれは違う。コレはただ単に面白そうだから協力しただけだ」


 えぇー…面白そうでテロに参加しちゃうとか、お前、千反田えるちゃんでもそんな好奇心旺盛な事しねーぞ。

利子つけて俺の納得を返せ。てか、前置きの話が理由と繋がってねーじゃねーか。


「へーなるほどー」


 あーほら、聞いた美音さんも途中から超どうでも良さそうに爪いじり始めちゃったじゃねーか。どうでもいいけど、この人ほど聞いといてそれはねーだろ、って言いたくなる人はいないと思う。


「して、貴様は?」


 へ、俺?男は不意に俺を指差す。


「貴様は何のために俺と戦うのだ。貴様を見ておって俺にはそこがイマイチ理解出来ぬ」


 えー、何でって聞かれてもなぁ。


「大体は俺の後ろで暇そーにしてるあの人のせいなんだよなぁ」


 戦う理由も何も、こんな事しないでも逃げられたのに、あの人のお陰でこんな面倒な事に巻き込まれちゃった訳だからネ。普通に今あんたと向き合ってるのはこの人のせいなんすわ。


「悪いが俺は戦う事にそんな崇高な理由や理念なんて持つ事は絶対ねーよ」


 それでも無理やり理由をつけるなら、飛んで来た火の粉を払う為、が正しいのだろうか。


「まあ、うん。あんな事するくらいだしな。我納得」


 うるせーほっとけ。


「さて。コレでいいか女。そろそろ始めなければ決着の前に局の者共に邪魔される故な」


 そう言うと、男はどこからともなく取り出した武器を手に持つ。

アレ…何?シャムシール?三日月刀に似たそれを手に持ち男はフフンと鼻を鳴らす。


「おおっと、忘れる所であった。貴様の能力は見せてもらった故な俺の能力も教えてやろう、感謝しろよ?」


 そして、頼んでもないのに手の内のを明かし始めた。


 ああこれ勝ったわ。自分の手の内をひけらかす奴って大体負けるよね。ジョースターさん家のジョセフくんがそんな事言ってた気がする。


「俺の能力はな、聞いて驚け?あらゆる物を0から創る能力だ。どうだ凄かろう?もっと褒めても良いのだぞ?」


「わー、凄いぞ金髪~カッコいいぞ金髪~」


 俺の後ろからそんな声援が男に飛ぶ。


「フッ、当然だ。だが、もっと我を褒めよ」


『凄いぞー強いぞー…あと凄いぞー』


 ポケットからもスピーカー越しにそんな声援(?)が聞こえた。


「フハハハハ!良い、良いぞ、貴様ら!!」


 は〜い。楽しそうで何よりです。最後褒める事なくて凄いしか言ってない所とか絶対馬鹿にしてるよね。

話は変わるが、男そのものはあの性格だしあまり関わり合いになりたくは無いのが、奴の能力には大いに興味がある。


 だって、物を0から生み出す、なんて能力だぜ?物理法則ガン無視じゃん。や、もしかしたら本人が知らないだけで物理の法則には則ってるのかもしれないけど、単純に興味が尽きない。


 てかおい。長身金髪であの喋り方のくせに武器作る能力とか、絶対逆だろ。


「お前ちょっと試しに俺に続いて言ってみ?…行くぞ英雄王。武器の貯ぞあいたぁっ!?」


「言わせないわよ?」


背後にはハリセン構えた美音さんが立っていました、はい。


「う、うむ……俺は今実に気分が良い。今なら見逃してやる事もないぞ?小童こぞう


「え、まじで!?……はい、分かってます戦いますだからハリセンはやめて!」


 ハリセンってあれ意外と痛いんだよね。本当にどこから出してるんだろうあのハリセン。俺と同じ能力でも持ってんのかな?


「う、うむ…貴様も中々に苦労していると見た」


「あ、分かってくれる?」


 何が一番驚くかって俺とあの人、出会ってまだ三、四時間しか経ってないのに完璧な上下関係が出来つつある所だと思う。


「まあ、それとこれとは話が別だ…そろそろ行くぞ。そう簡単に死んでくれるな。精々俺を楽しませろよ(わっぱ)ァ?」


 男はそう言って俺との距離を一気に詰めてきた。


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