お化け屋敷でありそうな怖い話
これはある有名なお化け屋敷で本当にあったとかなかったとか言われているお話です。
瑛太は一週間前、彼女の美咲と遊園地デートをしました。
絶叫マシンが大好きな美咲に強引に誘われ、ジェットコースターの三連チャンを体験した瑛太は、失神寸前になっていました。
でも美咲の手前、どうしても「怖い」とは言えず、堪えていました。
そんな美咲にも弱点はありました。
彼女は「お化け」が大嫌い。
ホラー映画はもちろんの事、ポスターすらダメなのです。
しかし彼女はその事を瑛太に悟られたくないのか、普段は我慢していました。
瑛太は美咲の友人から、彼女の弱点を聞いていたので、悪戯心が湧き、美咲をお化け屋敷に誘う事を思いついたのです。
そして決行の日。再び遊園地デートをする2人。
ただ誘うのでは断られると一計を案じた瑛太は、こんな風に言いました。
「いやあ、美咲は凄いなあ。俺、この前は、正直ビビリまくりだったよ」
「ホント? 瑛太ってさ、気が弱いんだよね」
美咲がバカにしたような物言いをしたので、瑛太はカチンと来ましたが、
「美咲ってさ、怖いものなんかないよね、ビビリの俺と違ってさ」
美咲は調子に乗っていたので、
「もちろんよ。瑛太と一緒にしないでね」
「そうだよな。で、提案なんだけど」
「何?」
瑛太はニヤリとして、
「お化け屋敷入らないか? 今ならカップル割引で、1人分で2人入れるんだってさ」
「お、お化け屋敷?」
いつもなら冗談じゃないと反抗する美咲でしたが、瑛太をビビリ呼ばわりした手前、そうも言えません。彼女は瑛太の計略に嵌ってしまったのです。
「わ、わかったわよ。行きましょ。瑛太、失神しないでよ」
「ああ、何とか頑張るよ」
瑛太はあくまで低姿勢に答えました。
そして・・・。
「しっかりしろ、大丈夫か?」
救急隊員の呼びかけに虚ろな目で答える瑛太。
「だ、大丈夫です・・・」
それだけ言うと、瑛太はまた気を失いました。
「この人、どうして気絶したんですか?」
「わからないんですよ」
おばけ屋敷のスタッフの女性も首を傾げながら、
「カップル割引でお願いしますって言われたので、どなたとご一緒ですかってお尋ねしたら、いきなり失神されたんです」