小さな異変
なんとか3人とも着替えて更衣室から出るとそこにはみんなが揃っていた。
「お、3人ともでてきたね」
「こんにちは!優希先輩。」
私たちに気づいて声をかけてくれたのは部長である優希先輩。
「お前ら遅いぞ!またどうせ雫と紗良が遅かったんだろ?」
「いつものことだが、結衣も置いてきたらどうだ?」
プンプンと怒っているのは、私たちと同級生である早里直翔。
その横で雫と紗良に冷たく、私に向かって説教をするのは大木瑛人。
2人とも私たちとは部活で知り合ったが、2人は中学校の時からのライバルらしい。
「じゃあ、練習はじめるよ?」
「はーい!」
私たちは元気に返事をして、コートに入り、練習を始めようとしていた。
その時だった。
ものすごい音と周りの空が紫色に変わった。
(まさか……そんなうそ……)
「なんだこれ?」
「怖い〜!結衣!雫!」
「大丈夫よ………きっと………」
みんなが叫ぶ中、私は一人。
(これって………結界封印………)
(どうして?この世界ではないはずよ?)
そんなことを思っていると地獄から来たかのような低く冷たい声が聞こえた。
「姫巫女は……どこだー!!」
(……っ!?私を探してる!?)
「姫巫女?って何??」
「そんなの聞かれても知らないわよ」
「なんだそれ……」
(ここにいるけど……みんなには隠したい)
すると、蛇の姿をした魔物が姿を現した。
私たちを見つけると話し出す。
「お前らは……人間か?丁度いいお前らを生贄にして姫巫女を呼び出してやる。」
「この世界にいるはずだからな……」
そう言って、そいつは私たちの方に向かって、炎を放つ。
(仕方がない!みんなを傷つけるわけにはいかない!!)
私はサッと、みんなの前に立つ。
「結衣!危ないよ!!」
紗良やみんなが何かを叫んでいるけれど、今は気にしていられない。
直ぐに魔力解放と共に呪文を唱える。
「我が力より、我がものたちを守り給え。結界!!」
唱えると同時に私たちの周りに、虹色に光る壁ができる。
やつが放った炎は壁にあたり消えていく。
「お前……まさか!!」
「私が貴方が探している。姫巫女よ。あなたのすきにはさせない!!」
やつが驚いている隙に、全ての魔力を解放し、魔力を弓矢の姿に変える。
「風流の矢!!」
やつが近づいてくる隙も与えないまま叫び、矢はやつに向かって刺さる。
魔物はそのまま地面に倒れながらも私の方を見る。
もう一度弓矢を構えた時魔物が話し出した。
「……………姫巫女……………メリアン……ローズ……危険………魔物…………居場所………無くなる………助けて………………向こうで…………待ってる………魔王の………森………」
そう言って消えていく。
(私に助けを求めに来たの?魔王の森?)
やつが消えた場所を見ながら、魔物が言っていたことを考えていると、上から気配と殺気を感じる。
急いで弓矢を構え矢を放った。
しかし、そいつには、矢が届くことはなく跳ね返って、私の元に返ってくる。
私の矢は、私が当たって欲しくない人や物には当たらないし届かない。
そして、そういう風にしたのは1名だけ。
「ルナウス!!」
「よ!姫巫女!久しぶりだな」
こちらも見て、ニヤっと笑う男。
間違いない。
私がただ1人。
もう1つの世界で気を許した男だった。