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なろう転生と主役の座  作者: 妄想のまえりー
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#2 アルスラ・プロット

なろう転生ものってこういう感じで合ってるんだろうか?




その少年は数えで10を向かえる前に竜を雷で倒した。

その少年は剣聖に才を見出されその奥義を教え込まれた。

その少年は抜きんでた魔力量で計測結晶を砕いた。


辺境ではあるが裕福な領主の間に生まれ、幼少期から魔術を操り領地では神童として知られていた。


その少年が数えで16になった時、魔術学院から入学を是非にと誘われる。

その才を磨く為に彼は招待を受ける。


剣技を極め、魔術を極め、心清く生きる。


彼はいずれ"勇者"と認められるだろうと。


「まあ、それが目標だからさ」と件の少年は独白する。


神の加護を受けて生まれ、この神秘世界に転生した元29歳の男。


黒谷 充という名前から、

"アルスラ・プロット"という名前になっていた。


こうしてアルスラは魔術学院がある王国の中心部の光の都へと住処を移した。





光の都は国を興した初代国王の行いを讃えて付けられた名前だ。

暗黒大陸と言われていた魔境にて戦い、暗黒に光を灯すが如く王国を興した。


それからさらに広げた領土で魔境との境に最も近い都は"火の都"とか言うのだが割愛。


僕が訪れた光の都は国王のお膝下ゆえ非常に発展しており。

高い城壁と整備された石畳の道路、張り巡らされた水路、高い尖塔を携えた王城のあるテンプレートなファンタジー世界の都だった。

辺境とは違って濁った空気が混ざって居るが、とても賑やかで屋台から空腹を誘う匂いが多い。


都の北部は都の玄関口で人の出入りする区画で露店がたくさん並んでいる。

僕が匂いを嗅いでると傍に立つ相方が腹の音を鳴らした。


緑色がベースの旅装に身を包み。

淡いピンク色の髪と宝石のような緑の瞳のついた顔が頬を赤く染めている。


"ルティ・ハーヴェント"恥ずかしそうに消え入りそうなか細い声で眼を白黒させていた。


「ぼ、坊ちゃま…その…」


この照れ屋で実は人見知りの激しい"美"少女は僕の幼馴染だ‼︎

この二次元のみで許されるビジュアルをした"美"少女が‼︎

僕の幼馴染だ‼︎


「やったぜ」

「坊っちゃま?」


彼女は我が家の使用人の娘で優しい父は使用人にも家族のように接していた。

よってルティとも幼い頃から兄妹のように過ごして来た。

ちなみに今は旅装だが屋敷で暮らしていた時にはフリルの付いたメイド服を着ていた。


ぶっちゃっけ僕がセミラ母さんにねだって仕立ててもらって着せたものだ。


彼女には僕の専属の従者兼同級生として魔術学院で共に過ごす事になっている。


約束された勝利の異世界転生学園生活‼︎


かつて灰色の青春…というか真っ暗なドブ色の青春を送った僕にはチート能力やファンタジーライフなんかより遥かに嬉しいものであった。

もちろん生まれた時、というより生まれ直した時からずっと神様に感謝してる‼︎

機会があれば神様は英国風の紳士だと世に定着させる所存だ。


「坊っちゃま!あの!」

「あ、うん…ごめんちょっと長大なモノローグを思い浮かべてた…」

「?、坊っちゃまは相変わらずわけのわからない事を仰りますね」


幼馴染の美少女従者を空腹のままにしておくのも主らしからぬ甲斐性なので屋台で軽く食事を取る。


天を突くような高さの王城を眺めつつ僕はルティが買ってきたガレットに口をつける。


「ん〜、美味しい!」

「はい!とても美味しいですね!材料は何でしょう?生地の色合いからして小麦ではないでしょうし…」

「蕎麦粉だよ」

「そばこ?」

「ああ、うん…あの白い花で臭い穀物」

「え⁉︎」


などと他愛のない話をして食事を済ませた。

その後、僕らは魔術学院のある都の東部へ向かった。


魔術学院は東部の全域にその敷地を広げており、川で分断されていた。

東部へ向かうには巨大な一本の橋が伸びていると聞いていたのだが。

僕らが魔術学院を切り取る大河まで続く道を道なりに進んでいたのに、突然その道が途切れてたのだ。




ー光の都の郊外



「ぎゃーはっはっはっはっはっはっ‼︎」


トロワとエクウスとケルウスの3人の男は大量の瓦礫の上でどでかい馬鹿笑いを上げていた。

彼らはおぞましき闇の勢力に加担する野盗の一味である。

彼らは光の都の魔術学院へと続く橋を3人がかりの転移魔法で盗んだのだ。

そしてあらかじめ出しておいた脅迫状で国王と魔術学院に大金を要求していた。


「さすが俺達だぜ!ダークエルフに魔術学院の新入生を皆殺しにして来いと言われた時はあまりの無茶振りにビビっちまったが!何の事はねぇ‼︎橋が無ければ新入生は入学できねぇんだよ‼︎」

「さっすがトロワのアニキ‼︎」

「まあ浮遊魔術(レビテーション)で行けるけど!すげぇぜアニキ!」


余計な事を言ったケルウスをトロワが蹴る。


「ばっきゃろー‼︎光の都の中では浮遊魔術は御禁制なんだよ‼︎ちゃんと考えてんだよ‼︎」

「さっすがトロワのアニキ‼︎何故なんだぜ⁉︎アニキ‼︎」

「ばっきゃろー‼︎オメー誰かれ構わずに空を飛んだら王城に忍び込み放題じゃねーか‼︎だから浮遊魔術を使ったら尖塔から迎撃魔術を撃たれるんだよ‼︎」

「なるほどー‼︎さっすがトロワのアニキ‼︎スゲーぜトロワのアニキ‼︎」

「でも金はどーやって受け取るんだアニキ?オイラ魔力を使い過ぎて一歩も動けねーぜ」

「大丈夫だ‼︎ちゃんと"ここの"場所も伝えてある‼︎」


三馬鹿目掛けて騎士団が迫っていた。






橋の途切れた街道には渡れずに立ち往生する魔術学院の新入生達が溢れていた。

50m先に校門が見えているのに関わらず流れの速い大河に阻まれ皆一様に困惑の顔をしている。


浮遊魔術を試そうかと考え王城を見て断念する者。

何とか方法を考えて魔力量の限界に気づき絶望する者。

舟を借りる手立てを考え激流に気づいて唸る者。


「ルティ、ステッキを」

「はい、坊っちゃま」


ルティが長籠から僕のステッキを取り出す。

黒いステッキの丸い持ち手を掴み、僕は途切れた街道の端に立つ。


「創造魔術、起動」


杖で円を描くように振るうと僕の魔力が淡い光の軌道を描き川向こうの道まで広がる。


それに気づいた他の新入生達は何事かと僕に目を向けた。


ギャラリーの目を無視して僕はイメージを抽出する作業に入る。


(赤土、煉瓦、アーチ状)


川の上に広がった魔力が渦巻いて。

世界を改編する。


空間が捻れたかと思いきや、弾むようにすぐさま元に戻った。


そうして一旦捻れた空間には川向こうまで続く長大な煉瓦造りの分厚いアーチ橋が出来ていた。


その光景にギャラリーは絶句しているようだった。


あるぇ〜、僕また何かやっちゃいました?


などと心ない煽りはしないが、流石に気分が良かった。


通常、魔力を物質化させるのは長い時間をかけるか渾身の出力で空っぽになるまで束ねるかしなければならない。

しかし神様からもらった力のおかげで僕はその過程を最効率化させることができる。

だから煉瓦造りのアーチ橋を作るくらいでは使った分の魔力が端から回復していく。


さらに末恐ろしい事に僕の魔力量は今まで一度も枯渇した事がない。

どうも計り知れない量の魔力を持って生まれてしまったようだ。

もし本気を出したらどうなるのかと、考え恐ろしくなってやめた。


「あいつ、これだけの物量をどうやって?」

「何者なんだ?」

「アイツひょっとして辺境領地のアルスラ・プロットじゃないか?」

「あの竜を倒したっていう⁉︎」

「剣聖デュランディオから手解きを受けたっていう」


しかしギャラリー達が僕を見ながら騒ぎ始める。


気分が良くなっていた僕は急に羞恥心がこみ上げて慌ててルティの手を掴んで走り出す。


「い、行こうルティ!」「はい!坊っちゃま!」


ああいうまるで主人公を持ち上げる為のモブのセリフみたいなのは実際に向けられると顔から火が出そうだった。

ルティも同じ感性だったのか二人で顔を赤くしてそそくさとその場を離れる。





僕の作ったアーチ橋を渡って来た新入生達は無事に学院の門をくぐった。

彼らが入学の手続きをしているのを先んじて済ませた僕とルティは遠巻きに眺めていた。


「良かったですね、坊っちゃま」

「うん?」

「坊っちゃまのおかげで皆学院に辿り着く事ができました、きっと皆坊っちゃまに感謝してると思います」

「どうかな?あのままでもいずれ誰かが何とかしてたと思うけど」

「だったらその誰かの苦労を代わってあげたって事ですよ」


そう言われると僕では返す言葉がない、ルティは僕の謙遜をいつも覆してしまう。


「よしよし」


そうして僕を強引に褒めて芝生みたいな金の髪を撫でてくる。

ルティは僕のする事をいちいち褒めてくれる、人前では僕の後ろに隠れたりする癖にお姉さんぶるのだ。


「ですが坊っちゃま、新入生には洗礼が待ってますよ…」


魔術学院は魔術を学ぶ為の学び舎だが、実態はもっと複雑だ。

魔力は魂だけでなく肉体にも影響されているとされており、魔術学院の学生は知識だけでなく心身共に鍛えられる。

現実は国中に本当に優秀な魔術師を増やす事が目的だが、学院が最大に期待しているのは"勇者"と呼ばれる程の英雄を生み出す事なのだ。

よって入学早々に新入生同士で本気の決闘を行う。


「うん、でも実戦は大切だよ…戦わずして勇者と呼ばれた人はいないんだから」

「ですが私は心配です…治療はしてもらえるそうですが手当てが間に合わなかったりしたら…」

「それは相手も同じだよ、でも安心して」

「"秘策"…ですか?」

「うん、だからきっと相手を怪我させずに済むと思うよ」


そう、僕は現代の知識と価値観があり。

それ自体が僕に圧倒的なアドバンテージを持たせていた。






ふっと、目を開けると泣き跡でぐしゃぐしゃになったルティの顔が見えた。


「え?」

「坊っちゃまあああぁ‼︎」


状況のわからない胸にルティは顔を埋めてわんわんと泣く。

周りを見回してみると木製の簡易ベッドが大量に並べられた魔術学院内の講堂だった。

おそらく決闘で怪我をした新入生を治療する為の簡易病棟だろう。


「あ"」


記憶が飛んでいたが、すぐに僕は恐ろしい事態になっている事に気付いた。


「ルティ、僕は⁉︎」

「まげでじまいまじだぁあぁ‼︎」


鼻水を垂らした泣き顔上げてルティは答える。


「はじまっでぇ、10秒くらいでえぇ…」

「じゃあ、順位は…」

「ひゃぐ…ずずッ…150人中、ううッ…」


新入生は150人今回は5組に分けられる。

そして勝敗を決するまでの時間を得点として勘定する。


「最下位の"ドベ"ですうぅ‼︎」


僕は滑稽極まるマヌケ面をして他の新入生達がいなくなるまで魂が抜けていた。



アルスラの対戦相手は斧使いのキッドって言うんだって、きっど強いぞ〜

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