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ヤンデレ女の短編集  作者: ヤンデレの鮭
1/1

ヤンデレ双子

「お母さんはなんで私たちがどっちがわかるの?」


「そうだよ!なんでなんで?」

 

「あら、それはね…」





「はぁ…やっと飯の時間だ!」


俺こと龍太(りゅうた)は高校2年生。

育ち盛り真っ盛りという事で昼ごはんの時間が1番楽しみである。

特に今日は母親が俺の大好物の唐揚げを弁当に入れてくれたそうだ。


「龍太は本当に飯の時間が1番幸せそうだな…」


この目の前にいるのが友人の健太(けんた)だ。


「当たり前だろ!俺達は育ち盛りなんだから沢山飯食わないとな!」


「だからってそんな嬉しそうにしなくてもな…」


呆れ顔で言う健太であるが健太も飯食うのを楽しみにしてるだろう。


「まぁ、いいじゃん。とりあえず頂きまーす!」


俺が弁当箱を開けて唐揚げをつまもうとすると教室のドアが開いてクラスがざわめき出した。


「お、龍太。また来たぞ、あの子達が」


俺は食べようとした唐揚げを一回置いてざわめきの中心の方を見てため息がでた。


「はぁ…またあいつらか…」


ざわめきの中心にいる人物達は俺を見るとこちらに笑顔でやってくる。


「先輩〜一緒にご飯食べましょ〜」


「龍太さん、ご飯を一緒にしてもいいですか?」


そう言って来たのは顔から体型、声から髪の毛、何もかも一緒な2人の双子がきた。


「はぁ…シオンとメグミ、お前らは1年生だろ?1年の自分の教室で飯食べてこいよ」


「いいじゃないっすか!沢山で食べた方が美味しいっすよ!」


「シオンの言う通りですね!あ、あと龍太さん、私龍太さんにお弁当のおかず作って来たんで良かったら食べてくれませんか?」


この双子はシオンとメグミ。

俺達の高校の中でのあだ名は双子の女神。

誰だよ。こんなダサいあだ名考えたやつ。

しかし女神と言われるだけあって見た目まさに可愛いらしくもあり、しかし美人でもあると言う名前の女神に負けない2人である。

しかもこの2人、勉強も運動も平均以上に出来るらしく、学校中の人気ものである。

しかし一つだけ欠点があるとすれば…


「あ、てか先輩私があーんでしてあげるっすよ!てかしてもらちゃおうかな?」


「いいえシオン、ここは龍太さんのために弁当を作ってきた私にその権利は有ります!なので今回は私がしてもらうのでシオンは我慢してください。」


何故かこの俺に懐いてると言うところだ。




何故こんなにもこの2人が俺に懐いたか理由と言うか原因はわかる。

実はこのシオンの方が街で迷子になってるのを見かけて声をかけたからだ。

シオンとメグミは元々ここら辺に住んでいた訳ではなく、最近引っ越して来たらしい。

なのでシオンの方が入学して一ヶ月くらい経って、せっかくなら街を冒険してみよう!となったらしく町に行ったところ迷子になって、そこでたまたま通りかかった俺が声を掛けて無事問題なく家に帰れたって訳だ。めでたしめでたし…

ならよかったのだが、話は上手くいかないもので、それからシオンの方が懐いてきて、いつの間にやらメグミもいるって感じだ。


「はぁ…なんでこいつら懐いたのかな…」


「ん?どぅしたんすか?なんか悩み事っすか?」


口をもぐもぐしながらシオンの奴が聞いてくる。

てかお前飲み込んでから喋れよ。


「その前にそれ俺の唐揚げじゃねえか!なに勝手に食べてんだよ!」


こ、こいつ俺の楽しみにしてた唐揚げを…


「ん…ごくん!すいません、あんまりにも美味しそうだったからっすね」


笑顔で答えてくるシオン。


「まぁ…唐揚げ一つくらいでイライラしてたらキリないか」


「そうっすよ先輩!あとなんで私のこめかみの所を掴んでるんですか…て先輩!痛い痛い!頭が頭が割れちゃうぅぅー」


イライラしてたらキリがないが、それはそれで罰はしっかりと与える。


「もう、シオンの自業自得だよ。そんな事より龍太さん、私が作った唐揚げの方もどうぞ」


するとメグミのほうが俺の口元に唐揚げを待ってきてくれた。

俺はそれをそのまま口に入れた。

うむ!これは塩唐揚げか?タレ唐揚げと違ってこれはこれでまた美味しいものだ。


「先輩!早く早く手を離してください〜頭が割れちゃうっす〜」


おっとシオンの頭を掴んだままだった。

俺はシオンの頭から手を離してやる。


「めっちゃ痛かった…可愛い後輩になにしてくれてるんっすか!」


シオンは俺の方を睨んでくるが…


「自分で可愛いとか言うなよ…まぁ、実際可愛いけどな」


俺がそんな事を言うとシオンの顔が真っ赤になった。


「い、いきなり可愛いとか言うなっす!反則っすよ!」


なんでこいつ怒ってんだよ…

すると俺と服の裾の方が誰が引っ張ってる。

引っ張られてる方を見るとメグミがニコニコしてこっちを見てる。


「龍太さん、私も可愛いですよね?」


「いや、そりゃシオンとおんなじ顔だし…」


「龍太さん、わ、た、しも可愛いですよね!?」


「はい、とっても可愛いです…」


先輩としての威厳もないし、言わされた感がすごかったが仕方ない。

いや、だって目の前でニコニコした顔でおんなじ事聞いてからだぜ?

そりゃ少し怖かったからすぐ言ってあげるよ。


「3人さんは俺のこと忘れてるのかな?」


健太が苦笑いでそんな事を言ってきた。

忘れてた訳ではない。ただコイツら2人の勢いが凄すぎて構ってやれなかっただけだ。

許してくれ、健太。


「なんか龍太の奴が失礼な事を考えた顔したけどいいや、それよりも龍太はよく双子の見分けがつくよな。」


ん?コイツらの見分け方?

未だに頭が痛いのか半泣きでこっちを睨んでるシオンと隣で可愛いって言われた後とニコニコしてるメグミの見分け方?


「いや、龍太はあんまり意識してないかもだけど、喋り方は2人とも違うけど見た目はあんまりそっくりだから基本的に喋り方でしか判断できないぞ。」


ん?たしかに言われてみればそうだが…


「なぁ、ちょっとメグミとシオンお願いがあるんだがいいか?」


「なんすか?先輩」


「どうしたんですか?龍太さん?」


「ちょっと、1回2人とも廊下に出てさ普通に入ってきてくれる?どっちがメグミでどっちがシオンか判断するから」


すると2人は顔を合わせて笑顔になった。


「いいっすよ!先輩!ちょっと待っててくださいね」


「龍太さん、少し待っててくださいね」


そう言って2人は廊下に出て行ってくれた。

少し待ってて?いや別に普通に入ってきていいのだが…

するとすぐにメグミとシオンが入ってきた。

うむ、無言だとたしかに2人ともそっくりだから判断できなさそうだな…


「「さぁ、龍太先輩!どっちがシオンでどっちがメグミでしょ?」」


マ、マジか…2人とも口調まで揃えてきやがった。


「なぁ健太、お前これどっちかわかるか?」


「いやいや、無理無理!こんなのわかる訳ねえじゃん」


俺たちのクラスでやってるので周りの奴らもどっちがどっちわからないようだ。

そこら中で議論が行われてる。

しかしよくみれば見る程コイツらそっくりだな。


「「さぁ龍太先輩!早く当ててくださいね!」」


おっと、一応これ俺が当たるのか…。


「ん〜多分だがこれ右がシオンで左がメグミじゃないか?」


すると2人はお互いに顔を合わせて飛びついてきた。

え?いやいや何ですか?いきなり?


「流石先輩っす!大正解っす」


「流石私の龍太さんです!」


どうやら2人とも当てられた事が嬉しかったようだ。

全く可愛い奴らだ。

あとメグミ、俺はお前のじゃないのだが…


「龍太…お前よくわかったな」


健太の奴がなかなかびっくりしてるようだが。


「うーん、なんとなく勘かな?」


そう言うと健太の奴が呆れ顔になった。


「なんだよ…勘かよ。てっきりに2人の見分けが付いてんのかと思ったわ。」


「いや〜流石に喋り方までおんなじだとわかんねえ。」


あととりあえず2人ともそろそろ離れてくれないかな?

健太と喋ってる間ずっと俺の胸元に顔を埋めてぐりぐりしてるよね?

そろそろ痛いんだけど…あと女の子特有の柔らかさとあり得ないほどいい匂いがしてるので男子校生である俺にとってはキツいものがあります。

とりあえず2人を引き剥がす。


「やっぱり先輩っすね!」


「はい、やっぱり龍太さんですね」


なにがやっぱりか全くわかんないが、とりあえずこうやって慕ってくれる可愛い後輩がいる事はなかなか幸せな事だ。





あれから昼ごはんも終わり、待ちに待った下校タイム。

今日は早く家に帰ってゲームをしたかったのだが…


「あ、先輩〜一緒に帰りましょー」


「龍太さんよかったらご一緒に帰りませんか?」


「流石龍太だな、モテる男は違うね。」


校門の所でシオンとメグミが俺の事を待っていた。

流石に後輩から誘われてるのをゲームで断ることなんて出来ないからな。


「わかったわかった。一緒に帰るから」


「やったー!実は今日先輩と行きたい場所があったんすよ〜」


「そうなんですよ、実は私も行きたい所があってですね!」


そう言って俺の両側に立ってくる2人。


「かぁー、モテる男は辛いな龍太。じゃ今日は俺は別の奴と帰るわー」


そう言って別の友達のグループに行く健太。

しゃない。今日は一緒に帰るだけじゃなく買い物くらい付き合ってやるか。

そうして俺達3人は歩き出した。




「あれ…ここは…」


そう言って3人で歩き出して着いたのはショッピングモールとかではなく公園だった。

しかもこの公園って…


「懐かしいっすね。この公園で私は迷子になって先輩に助けてもらったっすね」


そう、ここは迷子になっていたシオンにあった場所だ。


「そうですね。そして私が初めて龍太さんと会った場所でもあります。」


それに加えてここは初めてメグミにあった場所。

所謂3人にとっての思い出の場所だ。


「俺も久しぶりに来たが、少し懐かしいな…」


まだ全然最近だが本当に懐かしい。

俺が懐かしいんでると両側にいた2人が目の前にきた。

いきなりどうしたんだ?


「先輩…」


「龍太さん…」


すると2人は真剣な目でこちらを見ている。 


「いきなりどうした2人とも?いきなり真面目な顔をして…」


「「私たちどっちかと付き合ってください!」」


え?ん?あれ?今なんて言った?


「えーと…おふたりさん…もしかしてだけど今俺告白されてる?」


するとシオンとメグミが顔を上げた。


「そ、そうっすよ。今先輩に告白してるんすよ」


「そ、そうですよ!それなのに何ですかその態度!どこの鈍感系主人公ですか!」


「いや、別に俺鈍感じゃないからな!」


「いや、先輩は鈍感っすよ。だいたい女の子が普通好きでもない男の人の胸に飛び込んでくると思うっすか?」


た、確かに…

言われてみればそうだ!とは思うがどうも頭の方がついていってない…

「でも何で俺なんか…」


自慢して言う訳ではないが俺は多分イケメンではない。

なんなら健太の方がまだイケメンだ。

俺の顔の偏差値なんて中の下くらいだ。


「そ、それは先輩が私とメグミを見分けられるからっす!」

はぁ?何だその理由?ますます頭が混乱する。


「先輩は覚えるっすか?私がここで迷子になってる時に先輩からかけてくれた言葉」


俺がシオンにかけた言葉?

普通にありふれたと思うが…確か…


「確か…うちの学校の1年のシオン…ちゃん?だっけとかだったような…」


そんな感じで確かシオンには声をかけたはず。

この双子入学当時から学校中で話題になってたし、顔と名前くらいなら知っていた。


「そうっす!そんな風に声をかけてくれたのがとっても嬉しかったんすよ!」


「いや…別に普通じゃないか?後輩の女の子が迷子になってんのかな?って思って声かけるくらい…」


何なら迷子かもしれないと思ってよく知らない後輩に声かけてる俺の方が少しヤバイ気がする。


「いや、1番嬉しかったのは私をシオンと分かって声をかけてくれた事っす!」


「え?意味がわかんないんだが…シオンはシオンだろ?」


「いや、そう言う事じゃないんすよ。私がメグミじゃなくてシオンと分かって声をかけてくれた事っす。普通の人なら私達がどっちかなんてわかんないっす」


あ、確かに。今日の昼に教室でしたようにあの状況でシオンがシオンであるいう保証はなかった。

確かにもしかしたらメグミかもしれなかった訳だし。

それなのに俺は何でシオンと当てれたのだろうか?


「そうです!私の悪戯の時もそうでした!」


俺が考えてるとメグミが悪戯した時の事を言ってきた。

悪戯てあの時のことか…


「シオンが迷子になった日、シオンが帰ってきた時シオンはずっとニヤニヤしていたのでシオンに聞きました!なにがあったのかと」 


シオンの奴、迷子になった時道を教えてやる時もニヤニヤしてたが帰る間も継続してたのか…


「そうするとシオンは言いました。私を私だと分かってくれる人がいたと、そして次の休みの日に街を案内してくれる約束をしたと教えてくれました。」


そうなんだよな…あの後道を教えて帰ろうとすると今度の土曜日に街を案内してくれないっすか?って言われたんだよな。

俺もこんな可愛い子からこんな事言われて普通に嬉しくてわかったって返事したっけ。


「そうして私は思ったんです。どうせたまたまシオンをシオンだと分かっただけだと。私達で言うのは変ですが私達双子は本当によく似てます。そんなまだ一回くらいしか会ったことない人に判断できる訳がないと、そして私は思ったんです。なら本当に判断できるか私が確かめてやると」


「あぁ…だからあの時あんな事したのか」


「はい!私はシオンの待ち合わせ場所にシオンより早く行って龍太さんに会って私がシオンじゃないと見抜けるか勝手に行きました。」


まぁ、実は俺も前日から結構緊張して30分前には着いてしまっていたのだが…


「結果は…龍太さんは見抜いて見せました…私がシオンでなくメグミという事に」


確かにあの時もシオンが来たと思ったが何となく違う気がして「もしかしてメグミちゃん…かな?」とか言ったな

まさか本当に違うとは思ってなかったから本当にメグミの方が来て俺の方が焦ったけどね


「その時から龍太さんに私を惹かれていきました…私を…ちゃんと私と見てくれる人…そんな人にやっと出会えたんです!今まで居なかったのに…そんな衝撃的な出会いをしてしまったら好きになってしょうがないじゃないですか」


「いやいや、ちょっと待ってくれ!確かに俺はお前ら双子を見抜くことは出来たけどそれは何となくでちゃんと分かってる訳じゃないんだぞ!?」


「でも今まで先輩が間違えたことなんてないじゃないっすか!」

「そうです!龍太さんが私達を間違えたことなんて一度もないです!」


ぐぅ…確かに何回も一緒に会ってるが一度も間違えたことない…なんとなくなのにいつも正解はしてるが。


「なので私たちどっちかと付き合ってください」


「お願いするっす!」


「いや、でもちょっと待ってくれ!俺は2人のどっちから選ばないといけないみたいな感じじゃないか!」


「そうっす!二股させる訳にもいかないからっすね!」


「でも大丈夫です!振られた方は将来的に義妹になるので家族はなれますので、どっちか選ばらなかった時は覚悟してます」


なんだその無駄にしっかりとした覚悟わ!

しかも将来の結婚まで考えてやがる…

少し重い感じなんだが…

俺は悩んだ、別にどっちかを選ぶ事に悩んでる訳ではない。

俺は…俺は…


「わかった、なら今返事をしよう」


すると2人は期待と緊張が混じったような顔を向けてくる。


「俺は………」







私は気づいたら自分の部屋にいた。

今日はあの思い出の公園にずっと伝えたかった龍太さんに対しての想いを告白した。

シオンとは話し合って2人同時に告白して選ばらなくても恨みっこなしと約束していた。

約束していたのに…


「なんで…どうしてなの…なんで龍太さんは…」


涙が止まらない…どうして…どうして…


「なんでどっちも選んでくれなかったの…」


龍太さんの出した答えはどっちも拒否だった。

龍太さんはこう言った。


「告白はすごく嬉しい…だけどごめん。俺はどっちとも付き合えない…俺はあくまでお前ら双子の事を可愛い後輩としか見てなかった…多分それはこれからも変わらないと思う。だから今回は本当にごめん2人とも!」


その時私は…いや、シオンもだと思うけど頭が真っ白になった。

確かに選ばれない可能性は十分あった。

でも…それでも片方が選ばれたらもう1人は義妹としてずっと龍太さんと居れると思っていた。

しかしどっちも選ばれないなんて予想してなかった。

いや、可能性は確かにあった。

でもその可能性は最初から頭に入れてなかった。

あの後どちらも振られてその後の事は覚えてない。

私はフラフラした足取りでシオンの部屋に向かった。

ノックしても反応はなくドアノブに手をかけて回してみると鍵も掛けてなく、部屋の中に入ってみるとベットの上で体操座りして泣いているシオンの姿があった。


「シオン…落ち着いて…ねぇ?」


私はシオンを落ち着かせるために声をかけたが…

わかっている、そう言ってるが私も落ち着いてない。

私が声をかけるとシオンは顔を上げた。

その顔は泣きすぎて顔全体が赤くなってるほどだ。 


「ねぇ…メグミ…なんで先輩は私達のどっちも選ばなかったのかな…」


シオンのその一言に私も涙がまた出てきた。


「そうだね…なんでだろうね…」


私達双子はそのまま抱き合ってお互い泣いた。

それから何分…いや体感ではもう何時間も泣いてる気持ちだった。


「ねぇ…メグミ…先輩は誰か他の人と付き合うのかな…」


「そうかもしれないわね…私達どちらとも付き合わないならそうなるわね…」


お互いぽつりぽつりと会話を始める。


「でもさ…メグミはそれに耐えられる?」 


「私は…無理かもしれないわ…龍太さんが他の人と付き合うなんて…」


「私も絶対に無理だと思う…先輩が誰かと付き合うなんて…」


そう会話してるうちに私達の中になにがドス黒いものが生まれてきた。


「前さ…お母さんが言ってたよね…お母さんが私達を見分けられる理由…」


「そうね…確かに言ってたわね…お母さんが…」


「ならさ、先輩を私達は離しちゃいけないと思うんだよね」


「そうね、確かに龍太さんは絶対に側にいてもらわないといけないわね」


あれ?なんか楽しくなってきた…

これから龍太さんとどう暮らしていくかとか、何をしていくのかとか、一緒にどこに行くのかとか…


「ふふふふふ…」

「はははははっ」 


そう考えると何故が笑いが込み上げてきた。

それはシオンの方も同じらしく2人で笑い合っている。

この時に私達双子は何かが壊れたのかもしれない。

でももういい。

いくらでも壊れていい…あの人…龍太さんが手に入るなら。



「はぁ…勿体ない事したのかもな」


シオンとメグミの告白を昨日断って土曜日の朝。

俺はどんよりとした気持ちになっていた。

多分他の男子連中からしたらシオンとメグミは彼女にしたいだろう。


「でもあいつらはな…」


俺にとってあいつらはあくまで可愛い後輩であって恋愛としてはどうしても見えなかったのだ。


「てか月曜日どんな顔して会えばいいんだよ…」 


流石のあいつらも俺と顔を合わせるのは辛いかもな…

俺が少し落ち込んでいると家のチャイムが鳴った。


「あれ…朝の10時だが…宅配か?」


両親は土曜日でも共働きでいないし、こんな朝早くから宅配が来るなら俺に一言会ってもおかしくないのだが…

そう思いながら玄関の方に行きドアを開けるとそこにはシオンとメグミがいた。


「なぁ…お、お前はなんでここにいるんだ」


昨日の今日だ。

流石に俺も会うのが気まずい…


「いえ…昨日の件で先輩に会いにくかったっすけど…」


「はい…やっぱりこのまま縁が切れてしまうのも怖かったので…」


「そ、そうかとりあえず家の中に入って話そう」


そうして2人とも家の中に入れてあげた。

ガチャリと音がしたので振り返るとシオンの奴が鍵を閉めていた。


「すいませんっす…一応鍵閉まってたんで閉めた方が良いかなって思って…」


別にどちらでも良かったから別にいいが…


「まぁ、とりあえずリビングに案内するから入って入って」


そうして口を並べてリビングに案内する。

ん?ちょっと待てよ?なんでこいつら俺の家を知っているんだ?

一回も連れてきた事なんかないが…

まぁ、なんかの会話の時に俺が言ったのかもな。

そうしてリビングに案内して座ってもらうが…

正直気まずい…ふった俺の方からなんて声かけてやればいいんだ。

しかも2人ともさっき喋ってからずっと下を向いてるし…


「と、とりあえずお茶でも飲むだろ?ちょっと待ってろ」


俺は席を立ってお茶を取りに冷蔵庫に向かった。

やばいな…マジでなんで声かけたらいいんだろう…

俺はこの時2人のことで頭がいっぱいだった。

なので気づいてなかった…

2人が俺の後ろをついてきていた事に。

俺は首元にビリッと来た後倒れてしまった。

俺が最後に見た景色は黒い塊を持ったシオンのメグミだった。




んん…

ここは…


「俺の部屋?なんで俺の部屋に居るんだ」


俺は目を覚ましたら自分の部屋にいた。

確か…メグミとシオンが来て、家の中に入れてそれから…

思い出した!シオンの奴に何かされたんだ。

俺は思い出して体を起こそうとするか違和感があった。


「え?これ俺ロープで腕を縛られてる?」


よくみると腕だけではなく足なども縛られてる。

これで動くことができない。


「あ、やっと先輩起きてくれたんすか?」


「龍太さん!心配しました!なかなか目を覚さないから…もしかしてシオンのスタンガンの出力が強すぎたのかと」


俺は声のする方を向くとシオンとメグミがいた。

あの黒い塊はスタンガンだったのか。それよりも…


「シオン、メグミ!これは一体どういう事だ!」


なんでこいつら俺を縛ってやがる。

こいつら俺を気絶させた後俺の部屋に運んでロープで縛りやがったな!


「どういう事?どういう事もないっすよ先輩!」


「そうですよ、龍太さん!これはやらないといけない事なんですよ!」


「なんだよ!そのやらなきゃいけない事って!」


流石にこんな状況に俺は腹が立っている。

可愛い後輩とはいえ、やっていい事と悪いことがある


「あ、先輩一つ質問していいっすか?」


シオンが俺に質問があるらしいが今のこいつの口調も無性に腹が立つ


「はぁ?なんだよ?さっさと言えよ」


俺の苛立ちなんて全く気にしてないのかシオンはニコニコとした顔をしている。


「先輩が私とメグミを見分けられる理由ってしってるっすか?」


シオンとメグミを見分けられる理由?


「そんなあるわけ…」


「あるんですよ!龍太さん!」


俺の答えを遮って答えてきたのはメグミだ。


「はぁ?だからそんなのある訳ないだろ?たまたまだよたまたま」


「いいえ!ちゃんとした明確な理由があります!」


「なら教えてくれよ!その明確な理由ってやつを」


「はい!それはですね…」


メグミは大きく息を吸い込んだ。

そして答えてた。


「運命だからです!」


俺はこれを聞いた時どんな顔をしていたのだろうか?

多分、開いた口が塞がらなかっただろう。


「運命だと?それが明確な理由?」


「はい!昔母が言ってくれました!なんでお母さんは私たちを見分けられるの?って聞いた時運命だからと!」


「そうなんすよ、お母さんが言ってたんす。私は貴方たちと出会う運命だったのよって」


「その母親の答えと俺にどう関係あるんだよ!」


確かにこいつらの母親がこいつらを見分けられるのは運命だったからだとしても、俺がこいつらを見分けられるのは運命なのではない。まず家族ですらないんだ。そこに運命なんて存在しない。


「いえ、関係あります!龍太さん、貴方は私達と結ばれる運命なんです!」


「そう、先輩は私たちと結ばれる運命なんすよ」


そう言って俺の顔を2人で覗き込んでくるが、俺はその時恐怖した。

こいつら双子の目には何かドス黒い物があった。

眼球と呼ぶにはあまりにも黒すぎるその瞳に。

俺は怖くなって逃げ出そうとした。

しかし、手足を縛られてる俺が動くことなんて出来る訳間なくその場でもぞもぞと動くだけであった。


「あはっ、先輩もぞもぞ動いて可愛いっすね」


そう言って俺の右の方から抱きついてくるシオン


「本当ですね…ふふ、なんで可愛いんでしょう」


そう言って左側から抱きついてくるメグミ


俺はもう怖くてたまらなかった。

いつもあんなに可愛い後輩だった双子がこんなにも怖く見えるなんて思ってもいなかった。


「お、お前らは俺になにを望んでるんだよ!」


俺はとりあえずこいつらの要求をのむしかなかった。


「私達からお願いは一つだけっすよ!先輩」


「私達からのお願いは一つだけです」


「な、なんだよ言ってみろよ」


「先輩…」

「龍太さん…」


「「私達と付き合ってください」」


「はぁ?お前達この状況でそれをまた言うのか…」


俺は流石に唖然とした。

今俺の状況はこいつらのお願い事を聞くしか道がないのにも関わらず、まさか無理やりにでも付き合おうとしてくるなんて…しかも私たちって…2人ともと付き合えと言ってるということだ。


「お前ら…あんだけ浮気になるからとか言ってたくせに2人と付き合えとか言うのか?」


「そうっす!もう私たちは周りの目なんて気にしないっす!」


「私達は運命で結ばれてるんです!その運命が解けないようにするなら私達は何でもします!」


こいつらは自分達が言ってる事が変と言うことに気づいてないのか?

確かにこの状況なら俺は断るという道はない。

ただその先に幸せがあると思うのか?

こんな無理やり付き合わせて…

そんなんじゃまるでこいつらが…


「狂ってるみたいじゃないか…」


俺はボソリと言った。

しかし狂ったコイツらはそんなこと気にしてはない。

ここはもう俺が諦めるしかない。


「わかった…2人と付き合う。だからこの縄を解いてくれ!」


俺はもう諦めるしかなかった。

しかしとりあえず付き合った後別れればいいだけの話である。


「本当っすか!やった!やったねメグミ!」


「本当です!やりましたなシオン!」


そう言ってはしゃいでる2人。

コイツなんでこんなに素直に喜べるんだ?

この状況の告白成功に意味がないことがわかってないのか?

しかし、そんな事気にはしてられない。

早く俺を縛っている縄を解いてもらおう。


「あ、そういえばまだやってない事があったっす」


「あ、そうでしたね。せっかく彼女になれたんですもの」


そういうといきなり服を脱ぎ始める2人

おいおいまさかコイツら…


「おい…お前らまさか…」


「はい!先輩が考えてる通りっすよ!」


「今から龍太さんと愛を深めあいましょう」


そう言って下着姿になるシオンとメグミ。


「いや、まて先にこの縛ってる縄を解いてくれ!」


やばい。

このままでは俺はコイツらに犯されてしまう。


「あ、でもそれより前に…」


「やらなきゃいけないことがありましたね」


そう言って2人が脱いだ服から取り出したのはカッターナイフだった。


「お、おい!お前ら何をするつもりだよ!」


「何って…大事な先輩が私達のってわかるように」


「龍太さんの腕に私達の名前を刻むためですよ」


そう言って右側にシオン、左側にメグミがきた。


「お、おいやめてくれ!頼むからさ!」


俺は必死に抵抗するが、所詮両手両足縛られてては何もできない。


「あ、後私達と先輩の営みはバッチリ録画させてもらいますから」


「はい!もしも別れるなんて言ったら私達は今日撮った動画をどうするかわかりませんよ?」


そしてニコニコ笑う2人。

俺は絶望のドン底に落とされた気分だ。


「じゃ先輩…」


「じゃ龍太さん」


「「やりましょうか」」





「あら龍太、そこの可愛い2人は誰なの?」


「あ、先輩のお母さんっすか?私は先輩の後輩のシオンって言います」


「私も龍太さんの後輩のメグミって言います」


「あら、何で礼儀正しい子達なの、あら?それと龍太あんた風邪でも引いたの?元気ないし長袖なんか着て…」


「大丈夫ですよ!おかあさん!私達がずっと側にいるんで何かあったらすぐに知らせます」


「はい!ずっといるので安心してください」


「あら、なんていい子達なの…これらも龍太をよろしくね」


「はい!ねぇ、先輩…」


「はい!ねぇ龍太さん…」


「「これからもずっとよろしくお願いします」」


俺はもう逃げられない。

この腕に刻まれた名前を背負いながら一生生きていかなければならないのか…

そうして痛む両腕に書かれた名前の本人達は一生離さないと決めたかのように彼の両腕をお互い抱きついて離さなかったのである。








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