序章
初めて書いたのでまだまだ拙い文章ですが
優しい目で見てくださると嬉しいです。
貴方と出会えたことにありがとう。
さようなら
暖かな風が吹く春の日。
少年はチューリップが満開の庭園で1人の少女を見つけた。
少女をよく見ると隅の方で泣いているのが分かった。
「どうしたの?」
少女は泣きはらし、凄まじい形相に見えなくもない可愛らしい顔でこちらを見上げた。
「話しかけてこないでくださる?乙女が泣いているのですから紳士たるもの放っておくのが
礼儀でしょう!」
少年は驚いた。女というのは人前で泣いて気を引く生き物だと思っていたし、実際に彼の周りの同年代の女は
皆そうだったのだ。彼は少し少女に興味が湧いた。
「それは…ごめん。でも、誰かに話してみて変わることもあると思う。」
「私は疑い深い人間なの。貴方がどこの誰でどんな人間か分からない以上話すことはできないわ。」
「僕は毎週ここに来ているから気が向いたら話してみたらどうかな。」
「もしかしたら、その未来は気が遠くなるほど先かもしれないわよ。」
「僕は辛抱強い人間だからね。気長に待つよ。」
それから、毎週同じ曜日に彼はこの庭園を訪れた。
最初は2人の距離も遠かったが毎週話しているうちに近くなり、お互いに波長が合う人間だと思い始めていた。
少女は物知りで彼自身無知な方ではなかったが、知らない話もたくさんあった。
それに着飾ることや噂話以外の話をする令嬢を彼はみたことがなかった。
そして3ヶ月後とうとう少女はあの日泣いていた理由を彼に語った。
「あの日、母が亡くなってちょうど2週間だったの。母は優しくて平等な人だった。
あまりにも突然で心の整理もつかぬまま亡くなったわ。でも、私は長女だから妹達の前ではなく訳にいかなかったの…」
「それはよくがんばったね。僕の前では泣いても大丈夫だよ。僕が隠してあげるから。」
少女は母親が亡くなって以来初めて彼の胸で泣いた。
それだって彼には泣き声が聞こえないように引きつりながら。
彼は彼女が愛おしいと感じそんな自分に驚きながらもこれが恋かと思った。