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『七行詩集』

七行詩 731.~740.

作者: s.h.n


『七行詩』


731.


足の爪先から 手の指先まで


今日も力を 使い果たしてしまった


熱に溶かされた 砂糖菓子は甘く


夢を見せ 疲れを癒すでしょう


全ては 来るべき未来のために 貴方に寄り添う


弾き終えても 尽きることのない音楽は


明日もその手が 奏でるでしょう



732.


遠くに見える星のように


限りなく遠い光に


泥を被って 食らいつけなければ


何のために 爪を磨き 牙を尖らせてきたのか


逃げ出しそうな自分がいたら


鎖で縛り 引き摺ってでも連れて行く


一等星や 燃える朝日を その目に見せつける日まで



733.


厳しい目が向けられたときは


より美しくあろうと 立ち上がり


涙は人に見せない


せめて 優しい目が向けられたときは


優しさの中で眠りについて


その羽を休めてください


夜明けとともに 飛び立つ貴方を 今見つめておきたい



734.


百年、二百年と 生き永らえた音楽は


どうしてこうまで 美しいのか


それはきっと 愛し愛され


人の心を知る 人の手が生んだものだからでしょう


ここに生まれる 歌も同じです


この手に掴んだ旋律は


貴方へ続く階段となり 私を連れて行くのです



735.


初めて知った 里を離れる涙の中


私は都への切符を買い


未知や 可能性の渦に飛び込んだ


深い孤独は 出会いを呼び寄せる引力になる


それが人であれ 出来事であれ


望んでいたのかも 思い出せない


けれど私はこうして 出会うことができたのです



736.


乗り越えられない試練なら


私はいつか 逃げ出すかもしれない


その時は私を 嘲笑ってください


槍で突き もう一度 その気にさせてください


自分ではつけられない傷を


杭に刻み 時を重ねてゆく


その傷が 私の歩いた証なのです



737.


相手を信じる誰かと 信じない誰かが


互いの片足を括りつけ 二人三脚で歩くとき


呼吸の合わない 歩みで転び


相手のことを 庇えるでしょうか


私は貴方を庇えるように在りたい


最初から 完璧でなくてはいけませんか


合わせてゆくことが 無意味だと言わないでください



738.


いつの日か 生まれ変わるとき


苔の蒸す 不動の岩となるなら


空や景色が変わり続ける中


いつまで待ち続けるでしょう


貴方が 私の側を通ったときは


懐かしい その靴音に気づくはず


私は変わらず 貴方の背中を見守るでしょう



739.


もしこのまま 片目の視力を失っても


貴方が傍に居てくれれば


もう片方の目で すぐに見つけられるでしょう


けれど 貴方を失えば


この両目は 貴方を探し出すことができず


開いていても 閉じていても


見つめるのは 燃え残る蝋燭の火だけ



740.


私達は 交差する 二つの流れ星


出会って別れたが最期


もう引き返すことはできないなら


すれ違った道の先で


それぞれ何を掴むのでしょう


私は 向かうべき 最愛の両腕の中へと


飛び込む前に 燃え尽きるでしょう





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