のんびり過ごして
前作 「カフェしおん」にて〜詩織の物語 を読んだ友人からヒント&アドバイスを貰い、改めて、同じ背景の「カフェshion」物語として、読み切り連載の形で書いていこうと思います。
それぞれ独立したストーリーになりますので、軽い気持ちでお楽しみください。
「あ〜っ、やっと終わった!」2週間かけて長編小説を書き上げた。机上の時計は朝の9時半を指していた。この1週間は毎日の様に徹夜続きで、流石の詩織も疲れを感じた。
ドキュメントタッチの社会派ストーリーであった為、自ら調べた資料を整理をし、足りない部分は専門家の教えを請い、自ら学ばなければならぬ事も多かった。それを纏めて1つの作品に仕上げた。かなり大変であったが、それだけに仕上げた時の達成感は大きかった。
そう、詩織はライターなのである。時折、複数の依頼が立て込むと、昼も夜も無く書き続ける。特にこのひと月は毎日の様に徹夜続きだった。やっと今朝、最後の長編を仕上げて一区切りついたのだ。一休みしようかとも思ったが、不思議に眠気を感じない。それで少し早いがいつもの様に散歩に出る事にした。
そして詩織は「カフェshion」へやってきた。窓際の席に座り、そこから中庭に咲く季節の花を眺める。そして詩織好みの苦めブレンドを飲む。やはり此処の珈琲が無いと、詩織の朝は始まらない。のんびりと外の景色を眺めながら味わう珈琲は、詩織のエネルギー源と言っても過言では無いのだ。今日は特に〜ゆっくりと時間をかけてその香りを楽しんだ。そうして最初の1杯を飲み干した時〜、
「お疲れの様子ですね?」スタッフの亜美ちゃんが話し掛けてきた。
「そうなの、徹夜明け。」
「またですか?お体、大丈夫なんですか?」
「いつも気に掛けてくれて有難う。うん、大丈夫、、今日は仕事お休みなの。此処で一日のんびり過ごすわ。」と笑って答える。
珈琲のお代わりを頼んで、また窓の外へと目を向ける。久し振りの休みと言っても、詩織にはこれといってやりたい事がある訳では無かった。
一眠りして、部屋を片付け、食料及び日用品を買いに行く。そしてこの「カフェshion」で珈琲を楽しむと、それで1日が終わってしまう。そしてまた翌日から書くことに専念するのだ。それが詩織の日常であり、そしてそれに何の不満も無い。詩織にとって書く事は、それそのものが人生なのかもしれない。