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第272話 『 応援ー支援ー試練?!』


 ダンテスには昼前には着いた。

 スカイバットだけでなく、転移を駆使することで時間をずい分節約できたからだ。


 転移も以前と比べてかなり距離が伸びたし、止まって行うよりこうして加速した状態の方がより遠くへ(空間を)跳ぶことが出来た。

 おそらく加速によるエネルギーが加わるせいだろう。


 ただ出現する際のスピードが恐ろしいほどに上がるので――時速60キロが次の瞬間600キロになったりするのだ――あまり連続には出来ないが。


 さて上から見たダンテスは遠目からでも色とりどりの屋根や塔が立ち並ぶ、観光地さながらの色彩豊かな町だった。


 中央には黄金色の鐘楼――天辺のモニュメントからして『光』の教会だろう――が一段と高くそびえ立っている。

 今日は生憎分厚い雲に覆われて太陽が見えないが、晴れの日ならこの光のシンボルがまさに光り輝いているはずだ。


 ちょっと気になったのは、それと同じシンボルを先につけた棒を高くかざしながら、市壁の外側を練り歩く団体だった。

 

 おそらく恰好からして『光』の僧侶か修道士だろう。みな口々に祝詞を唱えているのが風に乗って聞こえてくる。

 その数人のまわりを護衛の兵士が取り囲みながらゆっくりと歩く。

 何かの儀式だろうか。


 ふと地面に映った俺の影に兵士が顔を上げた。俺は簡単に会釈して上空を通り過ぎた。


 いつも通り門から見えないところで降りてあらためて門を通る。

 どこか疲れた感じの門番は、俺がハンタープレートとギルドに用がある事を伝えるとちょっとだけ意外そうな顔をして顔を上げた。

 だがすぐに元通りの項垂れるように下を向くと、そのまま「あっちだ」と気怠そうに頭を振った。


 まあ俺も断る気満々なので他人のことは言えないが、二日酔いなのかやる気なさそうだな。

 などと思っていたら、町全体がどんよりしていた。


 寒いのは確かだが、雨が振っている訳でもないのに妙に空気が湿っている。その湿気がまったりと体に纏わりついて来る感じがするのだ。

 海辺や川沿い近くの水の含みとはまた違った嫌な湿り気が。


 そうして外観の新しい店が立ち並ぶ、賑わいありそうな大通りでも人の姿は少なかった。たまたま昼食時で引っ込んでいるのか。


 ハンターギルドは他の建物に負けず劣らず瀟洒な5階建てだった。

 水色に塗られた壁に白いドアや柱がモダンなホテルのような外観で、太めの白枠の窓にはガラスがはまっている。内部の床は木製だったが、艶と傷防止にワックスが塗られていた。

 色々なギルドを見てきたが、ここはなかなか儲かっているところだと思った。


 だが思ったよりハンターの出入りが少ない。もっと活気があっても良さそうなのに。

 そうして受付におずおずとやって来た所長は、三日間徹夜でもしているような疲れ切った顔をしていた。

 見た目は4,50代のようでもあり、60にも思える。充血した暗緑色の目だけがギョロギョロとしていた。


「せっかくご指名頂いたのに大変恐縮なんですが、先に申しあげておきます」

 俺は応接室のソファに座ると単刀直入に言った。


「私はこの案件を請け負う気はありません。何しろ私の得意とする分野からかけ離れていますし、正直やり遂げられる自信がありません。

 ですから誰か適任な人にまわしてください」

 自信がないなんて言わない方がいいのだが、ここははっきりと断らないと。

 曖昧な返事は相手にも失礼だ。

 

 オットーと名乗った所長はいきなり断られたにも関わらず、軽く瞬きをしただけで視線を外さずにこう言ってきた。


「貴方が断るだろうことはラーケルのアイザック氏からも伺っております。

 ただせめて、最後まで話だけでも聞いてください。それが()()()()()()()()()()ですから」

「あの方……、それって『A』と名乗る人ですか? 私を推薦してくれたという――」


「そうです。実はそのA氏が貴方がこの依頼を請け負うのを条件に、多大なるご支援を約束されました。

 それがこれです」

 スッと、テーブルに置いた俺が持って来た例の依頼書を指さした。

 そこには報酬金950万e+α と記載してある。


 「特別報酬金として別途1,550万をご支援頂いております。これで本来の報酬金に上乗せして合計3,000万となります」

「いや、待ってください。というか、駄目です。

 いくら積まれても、根本的にゴースト案件は請けられませんから」

 

 推すどころか倍近くの援助にも驚いたが、3,000万は相当な高報酬だ。

 今まで見てきたギルドの基準からすると、おそらくAクラスの中でも高位レベルの依頼に値するだろう。もしかするとSに相当するかもしれない。

 イコールそれだけ難度が高いってことだよな。

 それに何? その法外な援助の仕方??

 

「その人って――」

「依頼が完了に至らなくても、違約金を請求することは致しません」

 遮るように続けてオットー所長が畳みかけてきた。


「この依頼をソーヤさんが請けて下されば解決の有無に関わらず、A氏からの支援が約束されているのです。

 もし万が一、貴方がこの依頼をやり遂げられなかったとしても、 力のある司教様(ビショップ)を寄こしてくれると」

 そこでつと、所長は両手を開いてテーブルの上に置くと、ガバッと頭を下げてきた。


「それならばきっと、土地の浄化や、あの悪霊も祓えるはずなんです。

 ですからお願いです。どうか貴方様に一度、この件を請けて頂きたいのです!」


 あ、これはガチでヤバいヤツだ。

 話が飛躍し過ぎて混乱しながらも、俺の危険アンテナが鋭く反応した。


 司祭(プリースト)でも1つの教会を任される店長クラスなのに、司教はその複数の教区をまとめて管理するフロア長だ。

 そんな上位クラスの僧侶に頼らざるえないって、思った以上に深刻な状況に違いない。

 

 おそらく『リング』並みの脅威があるとか……、想像もしたくない。


「頭を上げて下さい。唐突にそう言われても、答えられません。まずはそのA氏のことを教えてもらえますか。

 一体誰なんです?」

 その推薦人のことが非常に気にかかる。

 ただ申し訳ないが、俺の返事は『断る』一択だ。今回は(ほだ)されないぞ。

 絶対に却下だ。


「実は――わたしも、A氏についてはほとんど存じ上げておりません。名前も伏せられたままです」

「はっ?」

「ひとまず話を聞いてください。こういう事はたまにあるのです」

 俺が立ち上がると思ったのか、右手を上げると所長はやっと伏目がちに俺から目を逸らした。


 所長曰く、本部を通してほんのたまに依頼人を明かさないまま、請負う者を指名して来る事があるそうだ。

 

 そういう人達は高い地位や名声を持つ者であり、下々と関わりがあると知れると宜しくない上位階級に位置することがほとんどだ。

 そんな人達にとっての醜聞は、ただのゴシップでは済まなくなるのだ。 


 例をあげると、三文オペラの下役者に熱を上げるお姫様とか、場末の娼婦に恋をしてしまう王宮騎士など、身分違いの情熱などだ。


 ギルドの場合も、強くも見目麗しいヴァルキリーや、カリスマ性のある独身ハンターに、影のファンとしてそっと宝石やお金をプレゼントする人が少なくはないそうだ。

 

 そうしてたまに俺みたいに平凡な風体で、人を惹きつける魅力なんか持ち合わせていなくても、頑張っている売り出し中の新人を応援して悦に入る酔狂な者もいるらしい。金持ちの一種の道楽だな。

 俺が異邦人という点も、相手にとって面白いのかもしれない。


 なんだか『あしながおじさん』とイメージが重なってくる。

 もしかしてその人が実は女性で、綺麗な有閑マダムだったりしたら気分が上がる一方で、せっかくのご縁を台無しにするのが少し勿体ないなあ、などと頭の片隅をちょっぴり雑念が()ぎった。


「わたしが聞いた情報ではソーヤさんが以前、村を丸ごと救った活躍にA氏がいたく感銘を受けたとか。それにここまで異例の速さの昇進です。

 そこで今回の件も、きっと力を振るわれるはずと仰っていたそうです」


 そんな期待してくれるのは凄く嬉しいけど、今回の案件は期待外れだ。せっかくの善意が迷惑になっている。ただの気まぐれの方がどんなに気が楽か。


「しかしなんで……この案件なんでしょう? 今までそんな気配ちっともなかったのに。

 今回たまたまなんですかね」

 つい『 よりによって 』と言いそうになったのは飲みこんだ。


「おそらくソーヤさんの新しい御活躍をご覧になりたいのじゃないでしょうか。

 最近は――失礼ながら、比較的落ち着いた仕事をこなされているようですから。

 御贔屓をされる方にはよくある事です」

 やめてそういうの。もう無様な姿しか見せられないから……。


「そうそう、A氏についてもう1つ分かっていることがあります。

 この方は我が町の『水』の教会の信者とのことです。その御縁もあり、今回この御支援をお申し出くださったようです」

 どこか誇らしげに所長は口元を上げた。


「そこまで分かっているなら、その方が誰か特定できそうですよね。それとも()えて言えないんですか?」

 俺も座り直すと少し体を前に傾けた。

 情報を小出しにしてくるな。そうやって術中にはめようという気か。負けないぞ。


「それが逆に分からないのですよ」

 所長はまた憂い顔に戻ると小さく溜息をついた。


「自慢するわけではないですが、我が町は周囲の町よりも多分に都会的で垢抜けていると自負しております。

 おかげで富裕層の方も少なからず在籍されておりますが、さすがにこれだけの大金を寄付される方がいらっしゃるかどうか。

 またここで信者が多いのは『光』の教徒の方でして、それなりに教会も大きいのですが、少数派の『水』の信者にここまで裕福な方はついぞ存じ上げません」


「それはワザと偽の情報を流したとか……」

「それはあり得ませんな。少なくとも神を隠れ蓑に使うような真似をする者が、大金を出してまで大義を行うとは思えません」

 キッパリと言った。


 う~ん、何か裏があるような気もするが、ここは宗教感の違いなのか。

 もっとも魔法が普通にある世界なのだから、神様に対する意識もかなり違う。

 それでも盗賊とか平気でいるんだよな。そっちはきっと悪の神を信仰しているに違いない。


「かなり高貴な方と思われますが、お忍びで来られるのか、そのような方の情報が全くないのです」

 所長曰く、先の話に出たビショップクラスになると、通常金だけでは動かないのだそうだ。(俺は中には生臭坊主もいるとは思うのだが)


 そんな高位の僧侶を簡単に派遣できるという、つまり大金をポンと気前よく寄付出来て、尚且つ多大な権力を持つ人物。

 名ばかりの貧乏貴族では到底出来ない。となると、名実ともにかなりのトンデモない、いや、富んだお貴族様ってことか。


 ん――?

 俺の脳裏に一瞬にして、ピースが合体し始め1つの形を成してきた。

 それはある男の人懐(ひとなつ)っこい笑顔を浮かび上がらせる。


 ぁあ――――!! いたっ! 1人だけそんな途方もない権力持ちで絶対に大金持ち。

 しかも気まぐれなお遊び好きな(ひと)がっ!

 

 不味いっ! マズいぞ、これはガチの絶対権力者だ。


「大丈夫ですか?」

 俺は動揺を見せないように、手元の(ぬる)くなった紅茶を一気飲みして、つい(むせ)てしまった。

 寒い時期には珍しくないことだが、お茶には結構な割合でウォッカが入っていて、気化したアルコールを思い切り吸い込んでしまった。

 

「ゲホォッ ゲホ……だ、大丈夫でぇ、ゴホッ……です」

 そう咳き込みながら俺はソファから立ち上がった。


「ええと、ゴホッ、その大変申し訳ないんですが、そのA氏も分からないという事ですし、辞退する気持ちは変わりませんので、これで失礼します」

 俺はバッと頭を下げて素早く出て行こうとした。


 ここでA氏が誰なのか知った上で断ったなんてバレたら、それこそこの国に居られなくなるかもしれない。

 誰だか知らなかったと押し切れば、後で文句を言われても仕方ないと叱責だけで済むかもしれないのだ。

 とにかく今はここを早く離れるのが先決――

 

 ドン! と、ドアのほうに振り向いた途端、硬い壁に弾かれて俺は再びソファに尻もちをついた。


「おっと、ちゃんと前見ないと危ねえぞ」

 聞きなれ過ぎたヤクザ声。

 目の前のオットー所長が大きな目をさらに引ん剝いて、みるみる口を開け始めた。


 突然現れておいて注意しろもないもんだが、それが奴マイウェイ・チャンプ:ヴァリアスだ。しかしこのタイミングかよ。

「どうせ大した用もねえだろ。暇つぶしに話だけでも聞いていこうぜ」

「ヴァリアス! あんた――」


「あ~、オレはただの付き添いだから気にするな。

 茶で薄めずにストレートのままでいいぞ。面倒だろうからな」

 ドスンと俺の左側に座ると、デカい態度で足を組みながら酒を要求するただの付き添い。


「はっ、はい! ただいまっ!」

 急に目が覚めたように所長はぴょこんと飛び上がると、ドアの方に小走りに駆けていった。

「すいません、ホントにお構いなくー。こいつでしたらメタノールで十分ですから」


「なんでだよっ! アレは飲みもんじゃねえだろが」

「あんたは毒なんか関係ないだろ。どうせまた浴びるほど飲むんだから、アルコールなら何でもいいだろ」

「風味が全然違うんだよ!」

 全くアルコールには五月蠅い奴だな。


 それにしても相当慌てたのか、所長は自ら酒を取りに行ってしまったようだった。すぐに戻っては来なかった。   

 

「あんた、話の内容はもう知ってるんだろ? だったらこの案件、俺に絶対不向きだと思わないのか?」

「さあなあ、そいつはまず話を聞いてから判断すればいいんじゃねえのか」

 奴がふんぞり返りながら背もたれに両腕を回す。

  

「ちなみにお前、例のスポンサーが誰だか見当はついたのか?」

 ニヤニヤしながら訊いてきた。


「……もちろんだよ。だからこうして焦ってんじゃねえかよ」

 やっぱり奴は全てお見通しってわけだ。それでもって愉しんでやがる。

 クソ面白くない。


「A氏の『A』って謎のXみたいな単なる記号じゃなくて、名前の頭文字なんだろう?

 でもって絶対権力者で俺のことをこんなに応援してくれる気まぐれ者なんて、もう外に考えられないよ」


「ほう、思ったより早かったな。もう少し悩むかと思ったが」

 ヴァリアスが本当に感心したのか、眉を上げて銀色の目を大きくした。


 確かに俺もしばらく忘れていた。

 あの時はアッシュと名乗っていた貴族中の貴族。

 本名はエドアルド=イーシャ・アシュレイ・リヒト・ランコヴァー、

 この国の上王様だ。


 なんたってあのヤンチャな天真爛漫ぶりだ。

 ほんの気まぐれで、知っている俺に仕事を与えて応援しようと思ったのかもしれない。

 おまけに彼の主教は『水』であり、水の女神アネシアス様の守護天使がついていたはずだ。

 あの人ならやりかねない。


 しかし、なんてこった。そこら辺のただの有力者ならまだしも、こりゃ最高権力者じゃねえかよ。

 あの人だと認識しておきながら断ったなんて、絶対にバレたらエライことだ。気不味いどころじゃ済まなくなる。

 所長にはなんとか俺が感づいてないと思わせておかないと。

 そんな事が俺の頭の中をぐるぐる回っていた。


 すると奴が急にソファから立ち上がった。

「良かったな蒼也。正解した褒美に少しだけ会ってくださるそうだぞ」

「――は?」


 と、突然俺は右側からハグされた。

「よくやった、我が息子」

お、お父さん(マイ・ゴッド)っ!?」

 そこにはキアヌ・リーヴス似の端正な顔があった。


「エ、ぇえええ?!! どういう……??」

「驚いたか、確かに忙しい身だが、お前に会いにこうして抜け出してきたんだ。

 もっと素直に喜んでくれんのか」

 そう俺の肩をバンバンと叩きながら隣りに座ってきた。


「も、もちろん! 凄く嬉しいですけど、まさかお父さんが来てくださるとは思ってもみなかったので――」

 再会の喜び反面、俺の頭の中は混乱した。


 正解のご褒美にって、何、どういう意味? 

 なんで貴族の推しを当てたくらいで ―― ま、まさかっ?!


「あの、ちょっと待ってください。あのヒントの『水』の信者ってのは……」

「なんだ、そこは思いつかなかったのか」

 キアヌが軽く眉を上げた。

「男という者はみな、妻の信徒だろう? お前もそのうちそうなるんだぞ」

 

 あ――っ! 父さんの正妻(水の女神)の! そういう意味か。


 しかし俺にイタズラっぽくウィンクしながらこうも言った。

「ちなみに、ここの『水』のシスターはなかなかの美人がおるぞ」

 そっちの信者かいっ!

 相変わらず元気にやってるんですね、お父さん。


 ――なんて暢気な親子の思いに浸っている場合じゃない! 


 これじゃ最期の締め上げに、ドン自らやって来たも同然だ。

 国内最高どころか、この星の究極の権力と脅威を持つ者。

 つまり名前は名前でも、『アドアステラ』の方のAだったのだ。


「あ、あの、お父さん……、応援して頂くのはとても感謝なんですけど、私にはちょっと、イヤ、だいぶ荷が重いんですけど……」

 ハーネスをがっちりと装着されて、あとはナイアガラの滝へバンジー一歩手前の状態ながら、俺は最期の足掻きをした。


「正直言うと、私は幽霊苦手で――」

「何を言う。お前はそう言いながらも、映画とかを見て日々克服しようとしているそうじゃないか」

「え、いやそんなつもりで見ている訳じゃ――」


 確かに最近ホラー映画を見る機会が増えているが、あれは絵里子さんとのデートであり、2人なら怖くないからなのに。


 その時、俺の斜め前で休めの姿勢で立っている奴と目があった。

 奴はすっと、視線を逸らした。


「ヴァリアァァース!! このばっ、ばぁあ(か)~~っ!」

「お前は同じ人種(アジアン)のホラーは苦手だが、海外のなら怖くないとか言ってたじゃないか。

 ()()()()()()()()()全然余裕だろ」

 悪魔が悪びれずにしれっと言う。


「それは怖さのツボが違うからだよぉ。それになんたってリアルは駄目だろぉがぁ」

「百本も見てれば同じようなもんだ。あとは実戦あるのみだ」

 そんなに見てねえぇし。

 最終的には祓ってくれるのかもしれないが、なんでいつもとにかく突撃させたいんだよ、もうヤダこの教官。


「じゃあな、蒼也。

 皆を待たせているのでな、もう戻らんとならん」

 父さんがチラリと上の方を見て言った。

「早くカードを切れと、オスカーの奴(闇の神オスクリダール)がさっきから五月蠅いんでな」

 神様たちはカードゲームで忙しかった。


 それからもう一度ハグをしながら背中を叩くと

「初めては誰も怖いと感じるものだ。

 だが大丈夫、お前は我の子なんだから」

「じゃ、じゃあ、せめて一発で祓えるような力を貸してもらえますか?」


 そんな怯えた息子に神様はニッコリ笑うと、横に立っている用心棒に声をかけた。

「あとは任せたぞ、ヴァリハリアス。()()()()()サポートはしっかりとな」 

「御意」

 奴の珍しい頭を下げる姿。


 お、お父さん! 見ました?! 今のあいつの顔!

 まるでドンから直接命を受けた、地獄の殺し屋みたいな笑みを浮かべてましたよ。

 こんな奴に息子を任せるんですか??!


 それにお父さ(神様)ん、支援が直下型試練になってます!


 神様の姿が消えると同時に、トレーにデカンタを持って戻って来た所長は、頭を抱える俺と隣りで牙を見せながらニヤつく奴を見てギョッとしていた。


 いつも読んでくださり有難うございます。

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