第259話 『消えた村タムラム その顛末 (その5:神は神業、人は奇跡)』
うううっ 相変わらず1万字までに収まらない……。
何度もすいません。
「えっ、なにこれっ!」
俺の目の前には床の穴から、ゴウゴウと3メートルはありそうな赤いベロを繰り出す火柱が立っていた。
俺の肩や腕、ポケットのトカゲ達は、ただただ口を開けたまま、その深紅の光をじっと見つめるだけだった。
実はここに来る前に、ヴァリアスの奴にお喋りを封じられていたのだ。
何しろ『署名』を俺もやるという話になった時、彼らが一斉に騒いだからだ。
『おいおい、『署名』って、不味くないか』
『そうだよ、旦那は何考えてるんだ?!』
『バレちまったら元も子もねえぞぉ』
『おれは旦那だけがするのかと思ってたのに――』
「うるせえぞっ! お前ら」
奴が一喝すると、トカゲ達が全員口をパクパクさせた。声は全く出ていない。
こいつ、俺にヘタなこと言わないように遮音をかけやがった。
ちなみに 奴の遮音は『音』魔法なので、口のまわりのみに使っても呼吸とは関係なかった。
本来の遮音とはそうしたもので、俺のやり方(空気振動を消す)のほうが亜流なのだ。
「言っとくが蒼也。オレはお前が本当に出来ないことは勧めたりしないぞ」
俺に向き直るとしゃあしゃあと言った。
確かにそうだが、このオッサン達の慌てぶりからして、結構ヤバいもんじゃないのか。
それに結局俺の手に負えなかった、地竜の件もあるしなあ。
「そうですよ、ソーヤさん。初めての方はちょっと驚かれるかもしれませんが、別に危険なことはありません。
先程もあのダッチさん達にもやって頂いたばかりですしね」と、主任が促す。
「え、ダッチさんも?」
「ええ、彼には誓約が付いていなかったので、これで証言を保証してもらいましたので」
人のことは言えないが、あの男が出来るなら俺も大丈夫なんじゃないのか。
俺の中の勝手なヘタレランク意識が働いた。
どのみちやらないと、この場は収まりそうにないしな。
なんて思っていたが俺が甘かった。
別室でやると言われて連れて来られたのは、かなり階段を降りた先の地下室だった。
ガランとした20畳ほどの、天井が教会のように高い石造りの部屋には、中央に魔法陣と、更にその真ん中に井戸ほどの穴が開いていた。
そうしてニコルス氏がそこに魔石をセットし、火の神様の名前を呼びながら詠唱した途端に、その穴から炎が出現したのだった。
もう嫌な予感しか浮かばない。
自然に口を開けていた俺の横で、奴がさっさと主任から先程の音石を受け取ると、そのまま火の中に腕を突っ込んだ。
赤やオレンジの中に青白い筋が現れる。
「それではお尋ねします。この石に記録された事は真実ですか?」
主任が厳かに奴に声をかけた。
「もちろんだ」
ゴウッ! と音を立てて、火柱が天井まで噴き上がった。炎が全て青白い光を放った。
「と、まあこんなとこだ」
奴が炎から抜いた手を、ニコルス氏の前で開いて見せる。
火柱は一瞬で再び元の高さに戻っていた。
「有難うございます。しっかり刻印頂きました」
その掌の青い石には、さっきまで無かった爪痕のような太い赤い筋が刻み込まれていた。
その痕跡をじっと見ていると、恐ろしいほどの波動が滲み出て来る。
これは探知や魔法力が少ないものでも分かる、奴のオーラの刻印だ。
奴にとっては軽く引っ掻いた程度だが、他の者にとっては十分な脅威だろう。
こうする事で、どの程度の者が刻印したか分かるんだ。
しかしこの行為って……。
「おい、蒼也、何を呆けてる。次はお前がやるんだよ」
奴が俺の手に石を握らせてきた。
さすがに俺は慌てた。
「ちょっと待ってくれ。
これってオーラの刻印ですよね。なんでわざわざ炎を通すんですか?」
「これは元々『審判の火』と同じものなのです。こうして真偽の判断を火の神様に委ね、正しいとしたものに署名刻印が出来るのです」と主任。
「審判の火って……真偽!?」
『審判の火』とは、審問機構が主に行う真偽を確かめる方法の一つだった。
それはこうして神の炎に体の一部を入れ、自分の言った事が正しいか宣誓するのである。
もし嘘だった場合、その時は炎がたちどころにその穢れた体を焼く。
つまり嘘がつけない、真実の火なのだ。
ちなみに審問機構ではもっと大きな炎を使い、被疑者は檻、もしくは椅子に縛られ全身を炎に入れられる、まさに拷問状態でやるのだそうだ。
「大丈夫ですよ。見た目は派手ですが、嘘をついてなければ恐れることはありませんから」
主任がニコニコとしながら、どうぞと炎に手を向ける。
おい、冗談じゃねえぞ。俺はその大ウソつきじゃねえか。そんなの一発で丸焼けだろ!
ふと見るとトカゲ達が、俺の顔をじっと見つめていた。
そうだよ、
焼かれるのも嫌だが、そうしたら嘘がバレちまう。
そうしたら全てが終わりだ。
ったくどうすんだよっ!
「さっきまでこれ以上の炎に接してたんだ。これくらいどうって事ないだろ」
奴がニヤニヤしながら促して来る。
嫌がらせかっ!
これ、本当にあの3人も、ダッチもやったのだろうか。
失礼だがあいつ、結構肝が座った奴だったのか。
でも考えてみたら、彼らは真実しか話さなかっただろうから、恐れることは何もないんだ。
彼らはこの世界の住人だから、この火の安全性を良く知っている。
裏を返せば、嘘つきには容赦ないって事だ。
そう思うと急に炎の熱が酷く熱く感じられた。
実際はまわりを焼かない不思議な炎なのだが。
「蒼也、なにモタモタしてるんだ。さっさと済ましちまえ」
無責任なサメがニヤニヤしながら、崖っぷちの俺の背中を押そうとする。
あんたは太陽に飛び込んだって平気だろうが、俺は生身の人間なんだぞ。
しかもこれは真偽を見定める為なんだから、炎を抑え込むとか訳が違うだろうに。
うう、ホントにどうしよう……。
「大丈夫ですか? 顔色が悪いようですけど……。
ああ、先程までとんでもない炎の現場にいらしたんでしたよね。
それは確かに怖……、いえ、お嫌でしょうが、これは本当に無害で安全ですので」
ニコルス氏が勝手に察してくれる。
申し訳ないけど、心配なのはそこじゃないんです。
と言っても本当の事を察せられても困るのだが……。
じんわりと冷たい汗が噴き出して来る。
トカゲ達のゴクリと唾を飲みこむ喉が動く。
「蒼也、思い切ってやってみろ。やっちまえば大した事はないぞ」
『(お前は正しいと思ったことをやったんだろ。だったら堂々としろ)』
奴が声に出したのとは別に、直接頭に話しかけて来る。
『(そりゃ正しいとは思ってるさ。だけど事の真偽とは別だろ……)』
『(道義だと信じてるなら自信を持て。モノの真偽なんざクソくらえだっ!)』
『(使徒のあんたがそれ言うか!
こっちはあんたみたいに神業が使えるわけじゃないんだぞ)』
だが続いて奴が言った一言が、俺の背中を押した。
『(じゃあ人らしく奇跡を起こしてみせろ)』
奇跡……ミラクルか。
そうだ。
急に子供の頃から好きだった、数々のヒーローものを思い出した。
俺が特に好きだった話は、恰好良く敵を叩きのめすエピソードではなく、何度も負けそうになりながらも必至に食い下がり、最後には奇跡的に逆転勝利を得る話だった。
大人になったら現実に押し流されて、そんな話は全て物語だけのものとしか思えなくなってしまった。
だけど諦めたら全て終わりだ。奇跡も逆転する可能性も何もかも手放しちまう。
俺は自分の魂に恥じたことはしていない。少なくともこの証言は。
俺は石をグッと握りしめた。
「……すいません、お待たせしました。落ち着きましたのでもう大丈夫です」
俺はニコルス氏に軽く頭を下げて前に進み出た。
目の前にメラメラどころか、ゴウゴウとした炎が唸っている。
トカゲ達が体を硬直させたのを感じる。
横で主任や奴の顔が真っ赤に染まり、まさに地獄の獄卒そのものに見えた。
「いいぞ、いいツラ構えになった」
鬼がニヤリと笑った。
炎を突破した時のように、自分の気で目一杯右腕を覆う。
あの時は自分の防御のためだけだったが、これは俺の大義のためだ。
身の程知らずにも、この炎に抗おうという気が湧いていた。
真偽も正義も、時と場合と人によってみんな違ってくるんだ。
こんなもの、『クソくらえ』だ!
…………お父さん、すいません。
俺も少し奴に感化されているようです。
そうして俺は手を炎の中に入れた。
見た目は炎だというのに熱さは全く感じない。深紅とオレンジが絡み合う3DCGのようだ。
ただ光と違って、皮膚を直接さわさわと何かが触れていく感触がする。
「それではソーヤさんにお尋ねします。この石に記録された事は真実ですか?」 主任が言った。
信じろ、自分の正義を。
「はい、正しいです」
ボォン! 火柱が鼻先を掠めた。俺はつい目を瞑った。
「よくやった、蒼也」
奴が俺の頭をポンポンと叩いた。
「ソーヤさん、もういいですよ。お手をどかしてください」
目を開くと、俺の腕はまだ赤い光の中にあった。
慌てて引っこ抜いたが、もちろん袖の一ミリも焦げていない。
……ああ、助かったのか。良かった。お父さん有難う……。
全身から力が抜けて、ついその場にしゃがみそうになった。
『『『ふわあぁぁぁぁ……』』』
トカゲ達の吐き出す息の音が聞こえた。遮音が解けたようだ。
開いた掌に乗った石には、奴が刻み込んだ太い爪痕の横に、小さな小指の先ほどの楕円形の赤い点がぽちっと現れていた。
我ながら小っさ! とは思ったが、これは俺の信念の証し、奇跡の第一歩だ。
「おお、綺麗な真実の赤色です。さすがはお見事です」
お世辞なのかわからないが、主任が俺の手から恭しく石を受け取って言った。
とにかくやり遂げたんだな、俺。
再び上に戻るために階段を上がりながら、奴がテレパシーで話してきた。
『(オレの言った通りだったろ。お前はやれば出来るんだよ)』
牙を見せながら言うセリフでもないが、まあ悪い気はしない。
『(冷や汗ものだったけど、確かにうまくいったな。
だけどあんたは大丈夫なのか?
俺は父さんが守ってくれたのかもしれないけど、あんた、また嘘をつく羽目になったんだろ?」
そうなのだ。こいつは俺が誓約を軽んじた責任を負わされるんだ。
今度は火の神様の、ある意味誓いを破ったんだから更に不味いのではないのか。
『(その点は大丈夫だ)』
ニーッと横に大きく口を裂けながら、俺を横目で見た。
何度見てもその顔、本当に神様の使徒なのか疑惑度満点なのだが。
前を歩く主任を顎でしゃくりながら
『(人間共はあの炎を『真偽』の火と解釈しているようだが、本当は違う。
あれは『正邪』の炎だ)』
『(なに?)』
『(つまり正心か邪心か、って事の見極めだ。
嘘をつくと、どうしてもそれが良くない事だと不安が生じる。
たとえお前みたいに人を救うための嘘でも、『嘘を暴くモノ』と言われると、どこか動揺するだろ。それが引っ掛かるんだよ。
だが、間違いないと信じればそれはそれで正しいことになる)』
『(そんな抜け道が……。
しかし神様の力を借りて、そんな穴だらけなシステムでいいのか?)』
逆に言えば真性の悪党は簡単に通ってしまわないか。
まるで落ち着いてやれば通ってしまう、ウソ発見器みたいなんだが。
邪心混ざりどころか、こんな邪心マックスみたいな奴も通ってしまうなんて。
『(根っから嘘を嘘とも思わない奴には、質問の答えに関係なく骨まで焼き尽くすまでだ。
神々の正義はお前たちと違ってずっと柔軟だぞ)』
そう言って俺の方を見た奴の顔は、薄暗がりの階段の陰影で更に凶悪ヅラになったが、なんでこいつが使徒なのか、やっと腑に落ちた感じがした。
働き者の代表各、蟻や蜂の世界にも一定数の働かないとされる少数派が存在しているように、どちらでもない者がいる。
彼らは零れた者ではなく、種としての存続・進化に刺激を与える存在、またはバランスを取る為に必要不可欠な存在なのだ。
使徒たちもまた、進化途上なのだとしたら。
果たして合っているかどうかはわからないが、奴のグレーのコートを見てそんな考えが浮かんだ。
「なるほど、必要悪ってことか……」
俺はついポロッと口出して呟いてしまった。
「あ”?」
奴が意味を理解出来なくて良かった。
ん? と、主任が軽く振り返って来ただけで、その場をやり過ごすことが出来た。
それから1階奥の買い取り所裏に行って、ゴディス老人や鉱石商達の遺体を引き渡した。
ギルドには遺体安置所がないので、こうして魔物の肉などを保管しておく倉庫に一時保管するようだ。
ホールに戻ると、また待機していたハンター達が一斉に俺達に目をやってきたが、出て行く時にヴァリアスがひと睨みしたおかげで随分と大人しくなった。
主任は俺達を応接室に入れると、「少々お待ちください」とカウンターの方へ小走りに出て行った。
『いやあ、さっきは肝が縮んだぜ』
オッサンが俺の肩の上で大袈裟に息をついてみせた。
『全くだ。体が小さくなった上に、すくみ上がる〇まで無くなっちまったし』
テーブルの上に飛び出したゾルフが、後ろ足で立って肩をすくめてみせる。
他のトカゲ達も思い思いに、その場に胡坐をかく。
その様子は何かのピクサーアニメみたいだ。
『でもこれで村の者には手出しはされなさそうだ。
本当に有難うな、兄ちゃん』
オッサンはそう言うと器用に前脚を交差させて、俺に向かって頭を下げた。
他のトカゲ達もあらためて、みんなが俺を見上げてお辞儀をした。
「いいよ、もう、そういうのは」
なんだかあらためて礼を言われるのもこそばゆい。
その時ドアをノックする音がして主任が戻って来た。
「すみません、ただ今 買取りの主任が遺体を確認しておりますので、もう少々お待ちください」
2本足で立っていたトカゲ達が、慌てて四つん這いに戻った。
そこでオッサンが啼いた。
『悪いが、あともう1つの件を先に話しちゃくれねえか』
そうだな。待ち時間もあるようだし、先に済ませておくか。
「あの主任さん、実はもう1つ、村長から大事な要件を頼まれてまして」
「ほう、なんです?」
主任が軽く身を乗り出した。
「確かギルド銀行に、村長が村の名義で預金をしていたとか。
それを残った村民の為に使って欲しいそうなんです」
そうなのだ。
オッサンは鉱山で得た収益を、こまめに銀行に村の金として預けていた。
だから食糧と酒を売った時に、手元に金が無かったのだ。
オッサンの記憶によるとおそらく800万前後とか。
それでも村人1人辺りに配るには、当座の資金にも満たないが無いよりはマシだろう。
しかし残高を確認して戻って来た主任から告げられた金額は400万にも満たなかった。
『え、なんでだ?! 確かまだ800ぐらいはあったはずだが――?!』
オッサントカゲが目をグリグリ回しながら、素っ頓狂な声を出した。
「えーと、すいません。確か800ぐらいなかったかと言って――、いえ、なかったですか?」
すると主任はギルドの記録と、横に置いてあった村から持ち出した出納帳をめくると開いて見せた。
「いえ、ここにも記載されてますが、一カ月ほど前、確か嵐の来る直前に大金を引き出してますね」
そこには確かに415万ほどの預金の引き出しと、すぐにその同額の支出内訳が書いてあった。
『あ~、そうだったぁ! 冬支度分とミスリルを加工するために、コークス大量発注してたぁ!!』
オッサン! 大事なとこ忘れてんなよっ。
これじゃ一カ月の生活費にもなんねえじゃないかよ。
渋い顔をする俺の肩で落ち着きなく前脚で顎を引っ掻くトカゲを、ニコルス氏が不思議そうに眺めた。
そこへまたノックがあって、係の男がトレーを持ってやって来た。
「おお、終わったか。早かったな。ご苦労さん」
トレーを受け取ると主任がニコニコとこちらを見た。
「お待たせしました。
今、解析が済みまして、遺体はオッズ氏本人と確認が取れました。
これで奥方もひとまず安心されるでしょう」
そう言ってトレーから、書類と銀色のカルトンをテーブルに置いた。
「こちらが報酬金です」
目の前には領収書が2枚。それぞれのカルトンにはコインが乗っている。
「あれ、こちらは領主様のですか?
でも私達、領主様の隠し事を暴いた上に、脅し……、いえ、上申までしてるのに良いんですか」
しかもケチなんだろ?
「もちろんです。なにしろ今回の依頼はあくまで村の怪異の解明です。
ソーヤさん達は、ちゃんとその依頼をこなして下さいました。
ですからギルドはそれに対して約束通り、報酬は必ずお渡しします」
主任が俺の目を見てキッパリと言った。
絶対的縦社会の中であって、横の繋がりは独自に国外にも及ぶギルド。
そうしたFBI的な連合勢力のおかげで、唯一中立的な立場が取れる組織。
これは領民としての立場ではなく、あくまでもギルドとしての信念と矜持なんだ。
「わかりました。では有難く頂戴するところですが、まずこちらの」
俺は鉱石商オッズ氏の方の報酬金を、カルトンごと主任の方に押し出した。
「このお金はそっくり、オッズさんの奥さんに見舞金として返してください」
「はあ?」主任が怪訝な顔をした。
「始めはもちろん仕事として受け取るつもりでしたが、考えてみたら旦那さんを亡くされた上に、こんな出費をされるのはこれからが大変じゃないかと……」
ゴンッ! テーブルの上に乱暴に奴の足が投げ出された。
「蒼也、前にも言ったがこれは仕事なんだぞ。慈善事業じゃねえ。正当な報酬は受け取っとけ」
一瞬、目をしばつかせた主任も、奴の意見に同意した。
「そうですよ、ソーヤさん。ここは受け取っておくべきです。
それにこういう事例をつくってしまうと、他の救助依頼にも今後影響が出る可能性があります」
うう、そう来たか。
確かに以前にも奴に注意されたが、今回のは同情というより罪悪感があるからなんだ。
なんたって俺は、その旦那たちを殺した犯人を匿ってるんだぞ。
どのツラ下げて金まで貰えるってんだよ!?
「それに悲しいとは思いますが、彼女には立派に独立されたご子息が他の町におります。
今後はその方と一緒に暮らされるようですよ」
そうなんだ。それだけはまだ救いかな。
しかしこの金を貰うわけには……。
「じゃあ、こちらの300万と合わせて、村のひ……」
俺の口から音が消えた。
「もういい。お前はしばらく喋るな」
奴がシッシッと追い払うみたいに手を振った。
この野郎っ、俺にまで遮音使いやがったなぁ!
「世間知らずな奴はほっといて、先にこっちを済ますぞ。
オレも代理人としてもう一つ用があった」
大きく足を組み替えながら奴が主任に向き直った。
「はあ……」
奴に掴みかかる勢いで睨む俺と、そんな様子にお構いなしの奴を、主任が心配そうに交互に見た。
「あの村だが、しばらくは人がまた住もうとは思わねえだろう。
少なくとも向こう何十年か、この事件が風化するまでは」
「まあ、そうでしょうなあ。こんな後ではもう恐ろしくて、鉱山にも手は出せないでしょう」
主任が頷く。
「だからオレが(精霊と)交渉しといてやった。
それならせめて向こう100年、人が手を出さないように代わりの物を出せと。
オレが仲立ちをしてやるってな」
奴がテーブルにさっと手を振った。
テーブルの上に、拳大の歪な金色の岩がゴロゴロと転がった。
「ホアッ?!」と主任が素っ頓狂な声を出した。
声が出せない俺の口も同じ形になる。
トカゲ達ももう遮音されてないのに、口だけをパクつかせた。
ここまでお読みくださり、どうも有難うございます(●ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
やっと今話ラストの目処がついたので、次回で終わりそうですが、
ただ最近、夜になると眼精疲労でPCで文字を打つのがちょっと辛い……(;´Д`)
そうして次回の1話で今度こそ終わらしたいのに、どうしてもあと1万字は軽く超えることがわかり……。
1万字超をドンと一話にまとめるか、それともまたもや2話に分けるか。
悩み中です……(;´Д`A ```
***
ところであまり関係ないですが、ミラクルと言えば
ジャッキー・チェンの『少林寺木人拳』主題歌「ミラクル・ガイ」が好き!
You've Got The Miracle! ♪
たまに聞きたくなります。
あともっと関係ないけど『続・荒野の用心棒』のテーマソング『ジャンゴ』も。
あの泥臭いウエスタン物。そしてオープニングの荒野の後ろ姿がもうたまらんぜ!
あんな話が描けたらいいなあ~(´∀`●)




