表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

243/283

第241話 『VSオッサン VS幻』

 今回もほんのちょっとグロい部分があります。

 どうかご注意お願いします。


 どうしてよりによって、オッサンの手なんか握っちゃったんだろう。

 すぐにスタンガ(電気)ンを放とうとしたが、弾かれるように抑えられてしまった。

 

 グイっと引き寄せられると同時に首に太い腕が回り込む。

「のこのこ捕まりに来やがって、この馬鹿がっ」


 危ねぇっ! 咄嗟に肩から上に身体強化を集中して良かった。

 絞め上げられるどころか、もうちょっとで首を捩じられるところだった。

 このオヤジっ、殺す気かっ!


 俺も強化と同時にオッサンの手を掴んでいた。

 元よりこんな体格差、首にまわされた腕どころか手を振りほどくのさえ難しい。

 相手も同じく身体強化(パワーアップ)しているからだ。


 だが手をまるごとは無理でも、指1本だけならなんとかなる。

 俺はオッサンの左手の小指を掴むと、思い切り捻った。

(首を絞められた時の護身術の1つ。

 骨折する可能性があるので、遊びでは決して真似しないで下さいね)


「あ”ぃデェッ!!」

 締め付けていた力が緩んだ瞬間、腕を振りほどき、膝を蹴って飛び退いた。


 転移――っ 出来ねぇっ! 

 辺りをつつむ闇が、高反発マットのように通り抜けるのを阻む。

 今や厩舎の暗がりは、ただの闇ではなく黒い檻となってしまっていた。

 オッサンの闇スキルだ。


 即座に光玉を打ち上げる。

 が、発生させたそばから、どんどん闇に浸食されて萎んでいく。

 放ったままじゃ駄目だ。維持しないと。


 脱臼した指を戻すオッサンから目を離さずに、自分のまわりの光に力を注ぎ続けた。

 そうしないと、この闇に絡めとられてしまいそうだ。


「……てめぇ、ふざけた真似しやがって……」

 左手を摩りながら、怒り心頭に真っ赤な顔をしたオッサンが唸った。


「それはこっちのセリフだ。のっけから殺す気満々じゃないかよ!」

 じりじりと後ろに下がりながら、探知の触手で辺りを探る。

 闇の中ではこっちに分が悪い。

 何しろオッサンの闇に抑えられて、厩舎の外どころか、光の届く範囲しか視ることが出来ないのだ。


「別に殺すつもりなんかねえぜ。ちょっとばかし眠ってて貰うつもりだっただけだ」

 あのやり方じゃ、ちょっとどころか永遠になっちまうとこだったぞ。

「だけど、今ので気が変わったぜ。やっぱりてめえは生かしちゃおけねえ」

 オッサンの後ろの闇が、ぐわぁんと膨れ上がる。


「言っとくが、ゴディスさんを殺したのは俺じゃない。あんたを見つけてここに入ったら、もう死んでたんだ。

 俺はあの人に生きてて欲しかった」

「口では何とでも言えるぜ。これだから余所者は信用出来ねえんだ。

 ()()()()()の奴だって、始めは物分かり良いような振りしやがって――」


「鉱石商って、オッズさんのことかっ! じゃあ あんたが――村長、あんたがあの3人を殺したのか――」

 熊だって獲物を土に埋めたりはするが、袋なんかに入れたりしない。絶対に人の仕業だと思っていたが。


「ふん、言っとくが毒を盛ったのは()()()()()だ。

 ()()()()後始末をしただけだからな」

「エッ?!」


「てめえは確か、あの鉱石商の事を調べてたんだよな。

 それで問い詰め過ぎて、うっかり殺っちまったんじゃねえのかっ」

 ジャリっと大きくオッサンが近寄る。

「だから違うっ! 

 大体なんで、あの3人を殺したんだっ? 理由はなんだっ」


 もっと後ろに下がろうとしたが、後ろに下がれば下がるほど、背中の闇が分厚く感じられて来る。光のパワーも上がらない。

 オッサンの奴、外に逃がさないように、俺の背後の闇を深くしてやがる。


「そんな事、今更聞いてどうする。もうギルドに報告なんかさせねえぜ」

「……せめて冥土の土産に聞かせてくれたっていいじゃないかよ……」

 死ぬ気はこれっぽっちも無いけどな。


「ああん? 何がメイドの土産だよ。てめえ、この後に及んで、情婦(イロ)への寝物語にでもする気かあ?」

「そのメイドじゃねえよっ!!」

 ついカッとなった勢いで、一気に光が盛り返した。

 オッサンが一瞬眩しそうに顔の前に手をかざす。


 後で知ったが、こちらではあの世を『冥土』とは言わずに、『冥界(ハデス)』と言っていたのだった。

 俺は別にバカにされていたわけではなかった。


「信じられっかっ! どうせゴディスさんの事も嘘だろっ。あんたなんかいい加減でだらしないくせにっ」

 こんないい加減な野郎の言う事に、一瞬動揺した自分が悔しい。


「なんだとっ、誰がいい加減だってんだよっ!!」

 オッサンの闇もまた膨れ上がる。火に油を注いでしまった。

 マズい、やっぱりオッサンの闇の力の方が強い。


「老人殺しのてめえなんかに言われたくねえよっ!」

「だから俺じゃねえって言ってんだろっ!」

 もう不毛な言い争いだ。

 

 俺の方は護符のチャージがあるから魔力切れの心配はないが、モタモタしてたら他の奴らに気付かれる。

 いや、その前にオッサンのこの圧力に負けそうだ。

 じりじりと光が闇に押されていく。


 闇と光というと光の方が優位っぽく感じるが、ただ対極にあるというだけで実際の優劣は力の差なのだ。

 深海にまで太陽の光が射さないように、深い闇にはかなわないのだ。


 オッサンは闇以外にこれといった魔法は使えないようだが、とにかくその一点スキルがとにかく強い。

 俺なんか多種持っていても、こうして全力を使う時は1つか2つしか使えないし、おまけに『光』はあんまりパワーが出せない。


 くそぉ~、光魔法、生活魔法止まりにしていたツケがまわって来た。

 このまま負けても絶対死なないだろうが、ボコられるのも絶対嫌だ。

 なんとかするんだっ 俺!


 どこかに闇のほころびでもあれば、なんとかこじ開けて転移できるかもしれないが、それには光が足りない。


 光、明かり、ライト――

 ランプも光石もライターも道具は持ってねえし、せめてペンライトになるスマホは奴に貸したままだった。

 ったく、こんな時にあのヤローのせいで――

 

 ん、待てよ、アレならどうだ?!


 白色の光を消すと同時に、深紅の炎の帯をオッサンを囲むように出現させた。

 すぐさまオッサンが負けじと闇の剛腕で押し返す。


 だが、俺の炎の威力が光より激しく、赤いフレアと黒い波が拮抗する。

 いや、炎の方がやや強いか。押せているぞ。


 そう、俺の攻撃魔法の中では『火』が一番強い。

 『電気』もある程度強い方だが、パワーだけなら『火』がトップだ。


 何しろスタンガンならまだしも、火はダイレクトに燃やしてしまうので用途が違ってくる。

 ある程度、圧力と流れの操作を心がける事が多い電撃と比べて、火は力任せにパワー重視でやっていたからだ。


 まだ数回だが、秋葉原での『アイディア企画部長』の仕事=修行の成果も現れているのかもしれない。

 やっぱり馬鹿に出来ないチリツモ修行。


 俺はそのまま温度を上げて、炎の色を赤からさらに黄色、明るく白っぽいイエローへと変化させていった。


 闇に対抗するなら白っぽい光の方が対極になる。そうして赤い炎より白色の方が温度が高いのだ。

 この温度はオッサンの闇でもダメージなしに防げるかどうか。


「アチッ クソッ! 焼き殺す気かっ! この○○○(ピー)野郎っ!! 女1人も相手出来ねえくせに、てめえの――――――」

 オッサンが昨夜の風呂場での事情を、口ぎたなく罵ってくる。

「うるせぇっ! 俺は○○○(ピー)じゃねえっ! 出来ないんじゃなくて、()()()()()だっ。

 このデカいだけの○○ャ○○(ピー)野郎っ!!」


 ったく、女たちはどんなふうに俺の事を伝えたんだ。

 さすがに男として、そこは単なる悪口でも捨て置けない。

 闇と炎でせめぎ合いながら、口では罵詈雑言の侮辱合戦が展開した。

 もうこのままでは不毛ラウンド2になってしまう。

「とにかくこのまま焼かれたくなかったら、この闇を退けろっ!」


「ぐぬぬぅぅ……」

 火に対抗するために、俺の周囲を包んでいた闇がオッサンの方に引いていった。

 付近の闇が、殺気だった威圧的な黒から普通の薄暗がりに戻る。


 まだ入り口や天井、壁のまわりにはしつこく悪意の膜が張っているが、先程より断然薄くなっている。

 これなら一点集中で圧力をかければ突破できるかもしれない。

 脱出できるぞ!


 しかし今はまたとない機会だ。

 俺はオッサンと睨み合いながら問いただす事にした。


「あんた、オキ、じゃなくて、乞食の男のこと知ってるよな。

 彼に何をしたんだっ?」

「あ? それがなんだってんだ。 関係ねえだろっ!」

「関係あるから訊いてんだよ。答えろよっ」


 白っぽい炎の帯を強く揺らして威嚇したが、オッサンの方も自分の周囲の闇を鋼鉄の鎧のように濃くしている。

 まるで耐火金庫の分厚い壁のようだ。


「俺は知ってるんだぞ。あの鉱山からミスリル銀が出たんだろ。

 あんたこそ、その取り引きのことで鉱石商と揉めて殺したんじゃないのか?」

 俺のかけたカマに、オッサンの顔が赤くなったり青くなったりした。

 図星かよ。


 だが、本当の理由少し違っていた。

 この時俺はまだ、子爵がこの村を調べることに誓約までつけさせた意味をあまり深く考えていなかった。

 ただ、自分の領地内で起きた事件で要らぬ不名誉は避けたい、なるべく穏便に事を済ませたいのだろうぐらいに思っていた。


 まさかこれが『鉱石商殺し』の()()になっているとは思ってもいなかった。


「てめえ……やっぱり、余所んちのスパイだったのか。いってえ、どこのまわし者だっ?!」

「だからスパイなんかじゃねぇって!

 俺はオッズさんの事と、この村の異変を調べに来たんだ。 

 この異変はあの乞食みたいな姿をした奴のせいなんだよっ!」


 するとオッサンがちょっと顎を引いた。 

「――言うに事欠いて、今度はなんだあ、罪のなすりつけか。男らしくねえぜ」

「だから嘘じゃないってっ! あいつは『森の翁』! この先の森の精霊なんだっ!

 あんた達が『ノッカー』に何かしたから、怒ってこの村に呪いをかけたんだよ。

 いい加減分かれよっ このバカッ!!」

 ついバラしてしまったが、もういいだろ。


 今度こそオッサンの顔つきが変った。

 目を俺から外してキョロキョロ動かしたり、しきりにその分厚い手で顔を摩りだした。


「……いや、そんなわけはねえ……。奴は確かに始末したんだ。手応えだってあった。

 そんな精霊だかなんかだったら、物理的に殺せる訳がねえ……」

 どこかまだ信じたくない、疑るような顔つきに戻りながら呟いた。


 普通小汚い恰好をした者を精霊とか、日本ではまず考えないだろうが、不可思議なモノに精通しているこの世界だからこそ、その違和感に思いつくことがあるのだろう。

 それにボロを纏っている姿だけなら、ブラウニーなど地球の伝承にもいたりするのだ。


「今まで村中、幻覚をかけられてたんだぞ。それくらい誤魔化すのなんか簡単だ。

 第一、なんで翁を殺した?

『ノッカー』の事で責められたからなのか?」


「……採掘口付近にチョロチョロ姿を見せやがるからだよ。

 どうやって入ったのか、あんな奴が村にいたら絶対目立つのに、見た奴がほとんどいねえ。こりゃあどっかのスパイだと思うだろ。

 しかもオッズの奴らの死体を運ぶとこを見られたんだ。

 そりゃ殺るしかねえ」


 それは隠蔽とかじゃなく、彼が精霊――人じゃないからだ。普通そんなに姿を見せるものじゃないだろう。

 ただ、オッサンが闇能力者だから視えたのか。それともノッカーの事でワザと姿を見せたのか。


「――んや、やっぱりあいつは精霊なんかじゃねえ。

 ()()()奴らの死体を埋める時、まだちゃんと残ってたからなあ」

 オッサンが自分に言い聞かせるように、ぶるっと首を振った。

「もうちょっとでてめえに騙されるとこだったぜ」


()()って、オッズさん達は森の中に埋めてあったぞ」

「違えよ。他の侵入者たちのことだ。お前と同じ、ギルドから来たとかぬかしやがった奴らのことだ。

 あの嵐の中、外に出られねえからな。だから一時的にここに埋めたんだ」

 そう言って太い親指を足元に向ける。


 そういえばこの村には墓地や教会はない。この厩舎に隠すのが妥当だったのか。

 しかし――


「おかしいぞ。なんでオッズさん達は森に埋めて、その場で一緒に殺した相手だけここなんだ? 

 なんで同じところに埋めなかったんだ?」

「な――、そりゃ おめえ……うっ……?!」

 オッサンの目が再びキョドる。

 

 矛盾に気がついたのか。それこそ幻覚なんだよ。

 そうやって彼は自分の存在をアピールしたんじゃないのか。

 真綿で首を締めるように、呪う相手に存在を見せつける。

 ただオッサンが鈍感で、それに気付かなかっただけだ。


「だからそれが幻覚なんだよ。ここに埋めたと思わせ――

 待てよ、あんた今、他のハンター達の死体もって言ったんだよな?

 それは()()()どこに埋めたんだ?」

「あぁ? だからここだって言ってるだろ。6人ぐらい、土魔法で簡単に埋められる。

 ただ、嵐だったし、運ぶ(ロックポーター)がいねえから……」


「それも幻じゃないのか。ここには何も埋まってないぞ。

 本当はどこへやったんだ? 思い出せないのか」

 6人のハンター達が亡くなっている事は現実なのだろう。


 だけど彼らの遺体はどこに消えたんだ? 

 さっき念入りに土の下も調べたぞ。そんな何十メートルも下に埋めたのか?


「んぁ……あぁアァァァ……!」

 急にオッサンが顔を強烈にしかめだした。

 まるで毒にでも当たったみたいに、口を引き攣らせ始める。

 そして突然うぶっと前屈みになると、その場に吐いた。


「ど、どうした?! 大丈夫かっ」

 だが迂闊に近寄れない。

 まさかこれも呪いのせい?! 


 オッサンはちょっとゲーゲー吐いていたが、急にキッとこちらを睨み返して体を起こした。

 

「……てめぇ……、本当はてめえが俺に言霊を使って思い込ませてるんじゃねえのか……」

「なに……? 何を言ってるんだ」

「さっきからてめえの話を聞くたびに、記憶が混乱する。いくらなんでも()()()()するわけがねえ。

 精霊だの呪いだのとか言って、ホントはお前が仕掛けてるんだろっ、

 この妖術使いがっ!!」


 ぶわぁぁっと、オッサンの怒りにまかせた闇が突風のように押し寄せてきた。

 つい話に気を取られていて、押さえ込まれそうになるのを慌てて押し返す。

 だが、その闇に乗った()に触れて、一瞬だがイメージが俺の脳裏をかすめていった。


 殺処分したロックポーター(大トカゲ)たち、殺した侵入者たち――2種類の死体が重なる。


「あんた……、その、ロックポーターと、騙されて――」

「黙れっ! 騙してるのはてめえだろうがっ!!

 いくらなんでもそんな事やらねえぞっ! 全部てめえの嘘っぱちだっ!」

 まわりの闇がまた勢力を増してくる。怒りに力を得ているのだ。


 翁――あんた何てことしてくれたんだ。

 

 死体を、肉を無駄にしないためか、それともアテつけか。

 幻覚でハンター達の遺体を、ロックポーター達と勘違いさせたんだ。

 そうしてその大トカゲたちは殺された後、勿体ないから食べられた。

 この村の人達に。


 普通なら大きさも違うし、ロックポーターの数が増えてる事にも気付くと思うのだが、きっと夢のように矛盾に気がつかなかったのだろう。

 夢を見ている時は、どんなに変な事でも何故か納得してしまうものだ。

 そうして起きてからやっと、そのオカシさに気付く。


 今やっと、オッサンは()()()()()()()()のだ。

 後から忌まわしい真実に気が付かされる驚愕。

 これも翁が仕掛けた呪いの1つなのか。


「げぇっ ハァ はぁ……。こうやっておれを弱らせようとしても……そうはいくかってんだ!

 何しろもう、てめえのいう事は金輪際、信用しねえからな」

 口を拭いながら、大きな体を揺すった。


 禍々しい現実を信じたくないから、全て俺のせいにするつもりか。

 俺の言ったことによって記憶が訂正されたのだから、ある意味、俺のせいなのかもしれないが。


「いい加減に目を覚ませよ。それは事故だ。それだけは仕方なかったんだろう。

 だけど辛くても、現実を認めないと呪いは解けないんだぞ」

 しかしオッサンは睨んだまま、もうピクリとも表情を変えなくなった。

 俺の言う事に意識を向けなくなったんだ。


 くそぉ、あと少し情報を引き出したかったがこうなったらもう無理か。

 しかもまた闇の圧力が復活してきてる。これじゃ一点突破も難しい。

 ギラギラとした怒りのパワーが力を増大させている。

 全てを俺のせいにしてぶつけて来る気だ。


 最早、倒すしか逃げる方法はないのか。

 殺さなければ、後でなんとか治せばいいだけかもしれないし……。

 そんな黒い考えが沸き起こって来る。


 ただ、俺にそこまで人を傷つけられる覚悟があるのか。

 いや、まず加減出来ずに本当に殺しちまわないか?

 いやいや、そもそも、俺、オッサンに勝てるのか??


 オッサンが背中側に手をまわすと、おもむろに腰の後ろに括りつけてあった、スパイク付きの金属棒を手にした。

 ヒュンッと風を切る音をさせながら鋭く振ると、そのメイスは3倍近くに伸びた。 


 とにかく俺もダメ元で、カバンからバスターソードを抜いて両手で構えた。

 これは両刃だから峰打ちなんかできないが、ファルシオンよりも刀身が長い。

 もう人をなるべく傷つけたくないなどと、甘い事は言ってられないのだ。

 それこそ幻想だ。

 何しろこれは殺し合いなのだから。


 ほんの刹那の間に色々な思考が駆け巡った次の瞬間、俺の耳に沢山の人々の足音が聞こえてきた。

 間違いない。こちらに向かって走って来る。

 

 勘付かれた?!

 あっ、もしかすると、オッサンが外に闇でサインを送っていたのかもしれない。

 いいチャンスとか思っていたが、罠にかかったのはまたもや俺のほうだった。


 くぅ~~~っ なかなか教訓が生かせない俺……。


 厩舎のまわりをグルッと20人近くが取り囲む気配を感じると同時に、俺の炎が横からの別の圧力で急に搔き消された。

 入れ替わりに再び光を放つが、まわりからの助太刀の圧力(気)でさっきより力が入らない。


「村長、無事かっ!」

 勢いよく扉が開いて、手に手に獲物を持った男達がなだれ込んできた。

 しかしおかげで人々の背後から陽の光が射しこめる。


 今だっ! 俺は自分のまわりに力の限り、スパークを飛ばした。

 みんながほんの僅か目を細めた瞬間、俺は外に転移した。


あらためていつも来ていただき、またブックマーク、ご評価を頂きどうも有難うございます。

皆様のご反応が続ける力となります。

最近10日前後のペースですが、どうか今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ